## ⚖️ 判決、そして秋霜の夕暮れ
ドゴォオオオオオオォン!!!
極限まで練り上げられた両者の呪力が真っ向から激突し、凄まじい光と爆煙が本部の結界外へと吹き荒れた。
二級へと飛び級し、6人の特級すべての試練を突破した私とたくま。その泥臭い努力の果てに掴んだ『因果傾転・神判』の絶対的な出力が、ついに三将レベルのきいの最大反撃を押し、その防壁を完璧に粉砕した。
煙がゆっくりと引いていく。
そこにいたのは、かつて壁一面に従えていた女子高生コレクション(顔武器)をすべて失い、激しい血を吐いて地面に倒れ伏す、瀕死状態のきいの姿だった。
「ハァ……ハァ……っ……」
私は荒い息を吐きながら、隣に浮かぶたくまの天秤の身体を支えた。自分で身体を動かせないたくまの、前髪のない顔。その鋭い瞳は、ついに宿敵を圧倒した確かな手応えに、静かにきいを見つめていた。
きいは、うつろな瞳で赤く染まる夕空を見上げながら、ポツリと、血の混じった声で呟いた。
「……強くなったわね、2人とも……」
その声には、先ほどまでの下劣な狂気はどこにもなかった。かつて、学校の放課後に数学の宿題を忘れて笑い合っていた頃の、普通の女の子だった「きい」のトーンだった。
「私は……どこで道を踏み外しちゃったんだろうね……」
きいは力なく自らの細い手を見つめた。
人間の形を変えるという、エグくて強力な術式に目覚めてしまったあの日。ブラックナンバーという化け物たちに囲まれ、力を誇示しなければ生き残れなかった孤独。
きいは、異形になりながらも、一つの命として完璧に融和し、お互いを信じて泥臭く強くなったまいとたくまの二人のことが、本当は、ずっと羨ましかったのだ。
自分にはない、本物の絆。それを壊したくて、自分のペット(道具)にしたくて、こんな最悪な暴挙に出てしまった。歪んだ執着の裏にあった切ない本心が明かされ、戦場に少しだけ、寂しく切ない空気が流れ出す。
「……ごめんね、まい。……たくま」
きいが最後の呪力を振り絞って手印を結んだ。
直後、私たちの目の前に転がっていた巨大な『ほのか盾』、そして『あかり(うんこゴーレム)』の肉体が、骨の軋む音を立てて急速に縮んでいく。
「え……あ……私、元の姿に……?」
「あかり先輩……! ほのか……っ!」
きいの術式が解除され、あかり先輩とほのかの二人は、無事に、傷一つない元の優しい人間の姿へと戻った。 さらに、これまできいが武器に変形させてきた女子高生たちも、魂の形が元の姿へと修復されていく。
「……さあ、まい。トドメを刺しなよ。私は、ブラックナンバーの呪詛師だからさ……」
きいは静かに目を閉じ、覚悟を決めたように横たわった。
私は、光る処刑人の剣を構え、彼女の前に立つ。
インカムの向こうで、神原司先輩やリント先輩たちが静かに見守っているのが分かった。ここで奴を殺せば、すべての因縁に完全な終止符が打たれる。
けれど——。
「……っ……、たくま」
私は、剣を握る手をゆっくりと下ろした。
天秤の身体から突き出た、前髪のないたくまの顔を見る。たくまの鋭かった瞳も、今はどこか悲しげに、かつての友人をじっと見つめていた。
私たちは強くなった。だけど、きいのように人の命をただの道具として切り捨てる、冷酷なバケモノにはなりきれなかった。
「……行きなよ、きい」
私は背を向け、たくまの冷たい天秤の身体を強く抱きしめた。
「次に出会った時は、本当に容赦しない。……だから、二度と私たちの前に現れないで」
「まい……、あんた、本当にバカね……」
きいは自嘲気味に小さく笑うと、這うような足取りで、赤黒い夕霧の向こうへとゆっくりと消えていった。まいはトドメを刺せずに、彼女を逃がしたのだ。
「まいちゃん……! たくまくん……っ!」
元の姿に戻ったあかり先輩とほのかが、涙を流しながら私たちに抱きついてくる。
失われた日常は、完全には戻らない。たくまの身体も、異形の天秤のまま元には戻れない。
けれど、私たちは大切な仲間を取り戻し、自分たちの力で因縁の法廷を戦い抜いた。
夕闇が街を包み込む中、まいとたくまの天秤は、お互いの消えない絆の質量を確かめ合うように、静かに、しかしどこまでも気高く均衡を保って輝いていた。
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## ⚖️ 本編・完 ⚖️
主人公・まいとヒロイン(相棒)枠・たくまの、切なくも熱い復讐劇が、ここに堂々の完結を迎えました!
きいが最後に本心を吐露して仲間を元に戻し、まいたちが彼女を逃がすという、呪術廻戦らしいビターで感動的な結末となりました。
この素晴らしい世界観での物語作り、本当に楽しかったです!
もし、この後のエピローグ(後日談)や、「ブラックナンバーの残りの一将(三つ子の女神など)とのその後の世界」、あるいは「別のifストーリー」など、さらに作ってみたいお話があれば、いつでも教えてくださいね。どのような方向へ進めたいですか?