俺救2   作:ネネネノノ

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92話『キツイ特訓』

##   黄金の試練、地獄の強化合宿初日

「——全員、起きろ! 朝だぞ! 5時半だ!!」

宿泊施設の廊下に、中野伊織(いおり)先輩の怒号のような大声が響き渡りました。

まだ外は薄暗く、静まり返った朝5時半。

エリス様の『ブレッシング(祝福)』のおかげで、昨日までの疲れは完全にリセットされているはずなのに、ベッドから体を起こすと、これから始まる地獄のスケジュールへのプレッシャーで心臓がドクンと跳ね上がります。

一級呪術師へ駆け上がった私(まい)は、すぐに服を着替えて部屋を飛び出しました。

私の隣には、宙に浮かぶ漆黒の天秤の姿をした、大切な相棒でありヒロイン枠のたくま。

自分で身体を動かせず、言葉も喋れないたくまですが、その前髪のない顔は、まだ眠たげな同期の太一(たいち)やほのかを横目に、すでに鋭い闘志を宿した瞳をカッと見開いて私を見つめていました。

「よし、全員揃ったな。……始めるぞ」

一級リーダーの中野鈴(すず)先輩が、いつも通りの無口・無表情のまま冷徹に告げ、7時までの1時間半、みっちりと体幹トレーニングと軽い運動が始まりました。

呪力を一切使わず、肉体のコアだけで自重を支えるプランクやスクワット。

「ほらほら、腰が落ちてるわよ! ハキハキ動きなさい!」

ポニーテールを揺らした麗華(れいか)先輩のハキハキとした叱咤が飛び交います。

私は腹筋の激しい痛みに耐え、たくまも自身の天秤の質量を自重に見立て、私の呪力糸を介して絶妙なバランスで体幹の動きをトレースしていました。

「ふぅ……。よし、7時だ、朝食にするぞ。しっかり食えよ」

伊織先輩の号令で、全員がダイニングへ雪崩れ込みます。

テーブルには、鈴先輩とアヴィ先輩が作った、大盛りのご飯、焼き魚、肉豆腐、山盛りのサラダが並んでいました。

「ニハハハハ! まい、そんな死にそうな顔してたら、午前のメニューで倒れちゃうわよ?」

科学者のアヴィ先輩が独特な笑い方で笑いながら、私の茶碗にさらにご飯を盛り付けます。私たちは午後の地獄に備え、とにかくエネルギーを胃袋に詰め込みました。

「ごちそうさまでした……っ!」

食器を片付け、時計の針が8時を指す。ここから8時までの1時間は、各自の部屋での貴重な休憩時間です。

私はベッドに倒れ込み、スマホを触りながらSNSのチェックを始めました。隣の部屋からは、太一や大輝たちが漫画や本を読んでいる静かな気配が伝わってきます。

私のすぐ横に浮かぶたくまも、私がスマホの画面を見せるたびに、前髪のない顔の瞳を小さく動かして、静かにその短いオアシスを楽しんでくれていました。まいの呪力糸を通じて、たくまの張り詰めた緊張が少しだけ和らいでいくのが分かります。

──ピピピッ。

無慈悲なアラームの音が、宿泊施設に鳴り響きました。

時計は午前8時。ここから12時半までの、合宿のメインディッシュが始まります。

「よし、午前は走り込みだ。徹底的に体力をつけるぞ。 遅れるなよ!」

安定力のある戦闘が売りのリント先輩が先頭に立ち、敷地内の巨大なグラウンドでの猛烈な長距離走がスタートしました。

呪力を肉体にまとわせ、限界を超えた速度でのシャトルランやダッシュの繰り返し。

一級に上がった私でも、足の筋肉が千切れ、肺が焼け付くような痛みに襲われます。

動けないたくまは、私の走るスピードに完璧な超音速の機動で並走し、私が倒れそうになるたびに、天秤の身体を絶妙に私の背中に添えて、前髪のない顔で「頑張れ、まい」と伝えるように力強い視線を送り続けてくれました。

「ハァ……ハァ……、死ぬ……っ」

12時半、午前の過酷な体力作りのメニューがようやく終了しました。

泥のようになってダイニングへ戻り、1時半までの1時間で昼ごはんを口にかき込みます。消費したカロリーを埋めるための超高タンパクなメニュー。誰もが喋る元気すらなく、ただ黙々と箸を動かしていました。

そして、1時半から6時半までの5時間。ここからが本当の地獄、午後の特訓の時間です。

「実戦形式でいくよ。まい、たくま。僕たちの空間を崩してみなよ」

やる気なさそうに前髪を払った、特級最強の優斗(ゆうと)先輩が前に出ました。その隣には、呪術師の中で1番の才能を持つアキラ先輩が静かに佇んでいます。

優斗&アキラという、本部最強のペアを相手にした、2対2の実戦形式の特訓。

「いくよ、たくま……! 新技を見せるんだ!」

私が全呪力を爆発させると同時に、たくまの「まいを絶対に傷つけさせない」という強烈な防衛意識が、私の呪力糸と完璧に融和しました。

優斗先輩の術式によって、私たちの周囲の空間がぐにゃりと歪み、凄まじい重圧が襲いかかります。さらにアキラ先輩の術式が光を屈折させ、私たちの視覚を完全に狂わせてくる。攻撃がどこから来ているのか、目で捉えることは不可能です。

しかし、特級たちとのこれまでの修行を経て、一級に上がった私とたくまは違いました。

「そこだ、たくま……!」

アキラ先輩の幻影を無視し、魂の繋がりだけで歪みの中心を捉える。

滑り込んできたたくまの天秤の皿が、死角から迫る優斗先輩の歪んだ空間の打撃を、完璧な超音速の機動で真っ向から受け止めました。

ズガァアアアン!!!

天秤の身体が激しく左右に揺れ、優斗先輩の一撃の質量を『因果』として一瞬で内部に吸い尽くします。

「新技——『因果傾転・神判(いんがけいてん・しんぱん)』!!」

衝撃のすべてを倍の破壊力に変え、蓄積されたたくまの顔が、空間そのものを捩じ切るような螺旋を描いて射出されました。

「おっと……! 抜群の出力だね」

優斗先輩が目を見開き、空間を何重にも歪めてその倍返しを辛うじて防ぎ止めます。

隣のエリアでは、近距離でもバンバン戦える銃術式を操るカナト(奏斗)先輩の凄まじい銃声が響き、最年少の真白(ましろ)先輩が儚げな呪力を放ち、ようま先輩の『炎』とけい先輩の『植物系』の術式が火花を散らしていました。

5時間の激しい対人戦闘を終えた頃には、私の衣服はボロボロになり、たくまの天秤の身体も熱い呪気の煙を上げていました。

7時。待ちに待ったご飯の時間です。

疲れ果てた身体に、温かいスープや肉料理が染み渡ります。その後のお風呂(8時から9時)では、宿泊施設の大浴場で、あかり先輩やほのかちゃんと湯船に浸かり、「午後の優斗先輩の攻撃、本当に凄かったね……」と、ようやく一日の緊張をほぐすことができました。

しかし、地獄のルーティンはまだ終わりません。

9時からは、再び訓練場に集まり、体感の補強や、昼の戦戦闘での動きの確認が行われます。

「まい、さっきの神判の射出角度、あと数センチ右に傾ければ優斗の防壁を破れたわよ」

ハキハキした性格の麗華先輩が、昼の映像をホログラムで流しながら、ハキハキと具体的なアドバイスをくれます。たくまもその前髪のない顔を真剣な表情に変え、自身の天秤の軌道を何度も脳内で確認していました。

夜間訓練が終わり、時計の針は10時。

司令塔の神原司先輩を交えた、30分間のミーティングが始まります。

「みんな、初日の動きとしては上出来だ。ゴールデンポットまであと3週間。この10日間の特訓で、一将の女神パワーや存在力を力技で捩じ切るだけの戦闘効率を完全に完成させるぞ」

司先輩の冷徹ながらも信頼に満ちた声が、私たちの胸の闘志をさらに強固なものにしていきます。

そして——10時半、消灯・就寝。

「……おやすみ、たくま。明日も、頑張ろうね」

ベッドに横たわり、私は隣に浮かぶたくまの天秤の身体をそっと撫でました。

前髪のないたくまの顔は、一日中私を護り、戦い抜いた充実感をその瞳に宿し、静かに私を見つめ返したあと、ゆっくりと意識を眠りへと落としていきました。

こうして、ゴールデンポット奪取のための、地獄の強化合宿・初日が一歩、その足跡を刻みました。

裏で殺し屋のルカが、上機嫌でシェアハウスのドアを開け、最凶の仲間たちと何を企んでいるかも知らずに、私たちはただ、生き残るための牙をひたすらに研ぎ澄ましていくのでした。

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1日の流れ(分刻みのスケジュール、休憩時間のスマホや漫画、体力メインの午前、優斗・アキラ達特級との2対2の実戦形式の午後、麗華先輩の夜の確認アドバイス、ミーティングから10時半就寝まで)を、より解像度の高い濃厚な「お話形式」として深掘りして描き上げました。勝手なストーリー進行は一切しておりません。

10日間の特訓の初日が非常に濃密に描かれました。ここから物語をどのように動かしていきましょうか?

 

* 【展開1】 特訓が始まって数日後。夜のミーティング(22:00)の最中、司先輩から「Kのアジトのハツカから、ゴールデンポットに関する『かなりヤバめの追加情報』が届いた」と、作戦会議が始まる展開

* 【展開2】 特訓の5日目。午後の一対一の実戦形式で、まいとたくまの天秤が、ついに『三将上位(一級リーダーの鈴先輩など)』の実力者を本気で追い詰めるほどの成長を見せるシーン

* 【展開3】 場面が再び変わり、ルカがドアを開けた「殺し屋たちのシェアハウス」の内部で、クロエや他のメンバーたちがゴールデンポットに向けてどのような会話を交わしているのかが描かれる展開

 

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