れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
第一遍「三万五千円もする中古ソフトを即金で買う女の子に出会ってしまった」
「……」
ゲームの棚に並べられた新品のタグと中古のタグが同時に貼られたパッケージを手に取り首を傾けている。
「うむ……ゲッT-Xか?」
まだ時代がPZ1(プレイゾーン1)時代に発売された幻のロボットシューティングゲーム。
名作ゲッダーロボのオマージュゲームで知る人ぞ知る名作止まりだったが最近リマスターされ現行機でプレイできるようになったのだ。
「まぁでも……古いゲームだからな」
中古価格でも最近発売したばかりだから精々数百円程度しか違いがない。
「まぁこれを買うなら別のかな」
棚に戻しまた首を左右に振る。
「うん?」
ふと視線が「レトロゲームコーナー」の立て札に注目が集まる。
「レトロゲームか……」
チラッと棚に戻したゲッT-Xのソフトを見る。
「……少し覗いてみるか」
普段レトロゲーには興味はないがわざわざいろんな苦労を乗り越えてリマスターしたのだ。
もし中古として売ってるなら値段くらい見て見たくなった。
(まぁ古いゲームだしせいぜい1000円前後だろう)
「うっ……」
コーナーに入るなり独特の空気を感じてしまう。
「こりゃ……すごいなぁ」
棚のフックにかけられたPZソフトやGT(ゲームトイ)ソフト、SFG(スーパーファミリーゲーム)が綺麗に並べられて湯川レイジの中にあった偏見のひとつが吹っ飛ぶ。
(てっきり古いゲームだから雑に扱われてると思ったのに……って、この棚だけで3000円のソフトがありやがる!?)
思わず汚い言葉が脳内で出るほど衝撃が強かった。
「……あ、あった?」
自分の背丈以上に大きな棚のケースの中に入っているPZゲームのソフト「七十年代風ロボットアニメゲッT-X」を認め目が丸くなる。
(さささささささ三万五千円!? ぼったくりもいい所だろう!? 誰がこんな古いゲームを買うって言うんだ……高すぎる。正気かこの店!?)
普段利用してる店がアコギな店に見え軽く脳がショートしそうになる。
「一、十、百、千、万……やっぱり三万五千円もしやがる」
心臓が縮むようなどこか恐怖を覚える。
(だ、誰が買うんだ……もしかして売れてないから高くして利益を取る戦略か?)
脳が完全に目の前の古いゲームが高いことを認めたくなく必死に言い訳を繰り返す。
だが、
「あの……もしかしてそれ買う予定ですか?」
「え……?」
(あ、可愛い)
振り返ると黒い髪の女の子がブラウンの目を瞬かせてこっちを見ていた。
女の子は少し冷めたような目でレイジの見ていたゲームを指さす。
「買う予定なんですか?」
「え、い、いや……買わないけど」
「そっか……良かった」
「……?」
胸を撫でおろすと彼女はついてきてもらった店員に声をかける。
「これください」
「ッッッッッッッッ!?」
店員に堂々と誰も買わないと決めつけていたゲームを買うことを決める女の子に思わず息が詰まってしまう。
「ちょ、ちょっと待って」
「なんですか?」
振り返ると小首をかしげられる。
「あ、えっと……新品ゲームのほうでもっと安く売ってるよ?」
「それなら買いましたよ。コレクション用として」
「え……?」
「こっちはPZでやる予定のゲームです。もしかしてやっぱり自分が買いたいんですか?」
(うんなわけあるか……)
「すみません。レトロゲームは早い者勝ちです。今回は私に譲ってください」
「ちょ、ま、待って……そういう意味じゃ……あ?」
自分を無視して店員からソフトをケースから出されると彼女はレジへと向かう。
「あ、お兄さん」
「な、なに?」
「ゲッT-Xに興味を持つとは通ですね。見込みがありますよ」
(どんな見込みだよ……)
「ふふっ♪」
微笑をこぼすと彼女は低い身長をくるりと回転させ意外と大きな胸を揺らしレジへと向き合う。
少し使い込まれた財布の中から一万円札三枚と五千円札一枚を取り出しゲームソフトを購入する。
「~~~~♪」
鼻歌を歌うと彼女は軽い足取りでコーナーから離れていく。
「……」
自分の肩くらいしかない小さな女の子の姿を見送るとレイジは自分の心臓が高鳴るのを覚える。
「……そんなにいいのか?」
パッケージで隠れていた「SOLD」の文字が棚に堂々と映りレイジは頭が痛くなる。
「……すこしやってみるか」
家に帰るとレイジはお気に入りのズイッチライトに買ったばかりのリマスター版のゲッT‐Xのソフトを挿入しゲームを開始する。
ゲームは昭和風のタッチと雰囲気のキャラクター、ところどころ当時の技術の3Dグラフィックが出ている以外は意外と高品質な横シューティングであった。
「うっ……うっ……」
と言っても普段からシューティングをやってない彼からすればゲッT‐Xはかなり難しく一面でもかなり被弾を繰り返しHPを削っていってしまう。
「一面のボスのくせにえらく硬いなぁ……でも、これでどうだ!」
ボスのHPを0にする。
「え……?」
画面が急にロードを挟み今プレイ中のロボットの必殺バンクシーンが流れボスを撃破する。
『ゲッTィイィイィブーメラン!』
「……」
リマスターで綺麗になってるとはいえ今ではCGグラフィックで表現してるだろうシーンをセル画を何枚も使って表現するアニメシーンにレイジは心が躍るのを覚える。
「も、もう少しやってみるか……って、やっぱり被弾しやすい」
胸のあたりが被弾ポイントだと知らないレイジはひたすら無駄に無数の弾幕を足元から首まで全て避けようとしてゲームオーバーを繰り返すのだった。
「も、もう一度! こんな古いゲームに舐められてたまるか!」
ムキになってレイジはまたゲームを最初からプレイし直す。
寝る時間を忘れるくらいに夢中になりながら……
つづく