れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
「はぁ……はぁ……はぁ」
学校までの通学路を走りながらレイジは息を切らせている。
「あ、危うく電車を乗り越すところだった!」
後ろをついて行っている天愛も息を切らせて返事を返す。
「まさか先輩が電車に乗ってるのも忘れるくらいにゲームに夢中になるとは……」
走る足を速め横に並ぶ。
「そんなに楽しかったですか? レディアントマイロジー?」
「ま、まさかテイルズオブストーリーにあんなお祭りゲーがあったとは……」
遅刻寸前の時間を確認しまた走る。
息が切れるのも堪えながら走り続けると慣れ親しんだ学校の校門が見える。
「間に合った!」
「間に合いました!」
校門をくぐると二人とも体操選手のように両手を挙げる。
すぐに膝に手がかかる。
「ぶはぁ……はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……」
遅刻しそうだったプレッシャーから解放され二人とも息を必死に整える。
不快な声が二人の耳の中の鼓膜を打つ。
「やぁ、青空の下の清涼な空気の中、君のような百合の華よりもさらに綺麗で……」
「で、PZP(プレイゾーンポータブル)だけじゃないんだろう。持ってきたのは?」
「はい。PZPはサイコーのハードですがさらに上の素晴らしいハードがあるんです。昼休み紹介しますね」
横を通り過ぎる二人に不快な声の持ち主が慌てて回り込む。
一瞬イラッとした表情を浮かべるもすぐに気取った笑顔を浮かべる。
「鈴の鳴るような声の天愛。その声がボクを惑わせる。その声をもっと聞きたくボクと君は巡り合ったのだろう。もしこの幸福な時間か許すならボクの身体を君の教室まで送らせてく……」
「その上のハードってなんだ?」
「それは昼休みまでのお預けってことで。ガッカリはさせませんよ」
また横を通り過ぎる二人に不快な声が慌てて回り込んむ。
よくセットされた前髪をかき分ける。
「この世に一人しかいない氷室天愛という存在がボクの生きる悦びを与える。もし君が君のままなら君にとってもボクが唯一の存在で……」
「じゃあ先輩。お昼まで……」
「またな……」
天愛が校舎に入るとレイジの首が後ろを振り返る。
「さっさと教室に行かないと遅刻扱いになるぞ……」
「……このっ」
千早サクトの顔が真っ赤になる。
今まで受けたことのない屈辱にプライドの高いサクトと堪えられなかったんだろう。
サクトの小さな手がレイジの意外と幅の広い肩を掴む。
「ちょっと人のいないところまで来い!」
ガラの悪い声を出すサクトにレイジの顔がどこか嬉しそうになる。
「ようやくマトモに喋る気になったか」
つづく