れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
「あはははは♪」
アマハルの豪快な笑いがメイド喫茶の天井を叩く。
ついでにレイジの背中も叩く。
「まさかお前に彼女が出来ていたとはお兄ちゃん知らなかったぞ♪」
「誰が彼女だ!」
叩く背中を払い胸を張る。
せめての虚勢なのだろう。
「百歩譲ってこんな奴、悪友だ。悪友!」
「むっ……」
天愛の眉毛がピクッと動く。
「悪友とは酷いですね。せめて恋人未満にしません?」
「黙れ!」
有料の飲水を口に入れ、ひと息入れる。
キッと天愛を睨む。
「なんでお前、ここにいる?」
「なんでって……」
自分を指さして天愛も心外なとレイジを睨む。
「もう少し先輩をからかおうと教室に行ったんです。そしたら先輩達二人が宅楽楼に行こうって話を聞いたんです。だから私も客として来店することのしたんですよ。どうです? 偉いでしょう♪ えっへん♪」
「俺のストーカーになりたいのか?」
「失礼な」
レイジの頼んだ有料のただの水を奪い飲む。
「むしろ先輩がストーカーと言えば納得されるんじゃないですか?」
「それは言えてる」
アマハルが同意してしまう。
天愛とアマハルが同時にハハハッと笑い飛ばす。
「こいつらぁ……」
眉間を指で摘まみレイジは沸き起こる怒りを必死に抑える。
アマハルもひとしきり笑うとふと天愛の可愛い顔をジィと見る。
「な、なんですか?」
朗らかだった顔を強張らせ天愛の指がレイジのズボンをそっとつまむ。
アマハルの太い腕が腕組する。
「なんか君、にゃーちゃんに似てない?」
「……」
天愛の目が呆れたように冷たくなる。
アマハルも頼んでおいたメロンソーダを飲む。
「気のせいか♪ にゃーちゃんはもっと媚びた笑顔するし♪ なによりもここまで性格悪そうじゃないだろうしな……アハハハ♪」
「そ、それはどうも……」
額に青筋を立て天愛はアマハルが見えないようにテーブルの下でレイジの細い足をゲシゲシと蹴る。
レイジも痛みを堪えながらも笑いを堪えていた。
(性格が悪いのは事実だろう……)
足に痣が出来るのではと思うほど強く蹴られながらもレイジは笑い堪えていた。
すると……
「お待たせしました♡」
テーブルに天愛ほどではないがなかなかの美少女が接客に来てくれた。
「らぶらぶキュンキュン漬けの天津チャーハンです♡ 美味しくなる魔法をかけ……」
「あ、私がかけますからいいですよ」
「あ、にゃーちゃ……うむぅ!?」
メイドの口に無理やり天津チャーハンを掬ったスプーンの先を突き込む。
「黙っててください」
ギロッと睨まれメイドも口の中の天津チャーハンを飲み込む。
「わ、わかりました……あ、やっぱりうちの天津チャーハン絶品だわ」
ペコリと頭を下げるとメイドは去っていく。
アマハルが名残惜しそうに手を伸ばすも天愛の手がパシッと叩く。
「じゃあ二人共そこに並んでください。ついでにレイジ先輩は全身で味わってください」
「俺、ラブ注入いらない気分なんだけど?」
「……」
涙目で「殺すぞ」と圧をかけられる。
レイジも眉間を指で揉みながら情けなくなる。
「わかったから睨むな! 面倒臭い」
「じゃあ行きますね。まずは皐月アマハル先輩から……萌え萌えキュンキュン美味しくなぁれ♡ ずきゅん♡」
「ずきゅん!?」
アマハルの首がのけ反り動かなくなる。
「……」
レイジの指がアマハルの瞳孔をチェックする。
「氷室さんの媚び媚び笑顔に予想外のダメージを受けて失神したな……」
「むっふぅぅ♡」
天愛の顔が得意げに綻ぶ。
慣れた動きで手でハートマークを作る。
「じゃあ今度は先輩を失神させてあげますね。さぁ心臓を守ってください」
「お前の面倒臭さを知ってるから今更萌え死にしねぇよ……」
「じゃあ行きますよ♡ はい、PZvita♡」
「はい?」
手渡されたゲームハードを認め、レイジの目が点になる。
天愛の可愛い顔がニコッと微笑む。
「皐月先輩が失神しましたし、ここは粋(いき)にゲームでもしましょう♡」
ニコニコ顔の天愛にレイジは受け取った携帯ゲームハードの電源を入れる。
「どうしてもゲームさせたいんだな?」
「今回は恋愛ゲームのダークホース「フォトラブKiss」をやってもらいましょう♡」
「え……フォトラブ?」
昼間やったばかりだろうとレイジは小首をかしげるのだった。
つづく