れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
「アマハルめ……」
不貞腐れたようにレイジは舌打ちする。
「人を置き去りにして帰る奴があるか……」
暗くなった夜の道。
レイジは天愛を駅まで送りながら不満ダァだぁだった。
天愛の顔が呆れたようにはにかむ。
「アマハルさん、普通に何度も声をかけてましたよ。先輩が女の子のパンツを撮るのに夢中で聞いてなかっただけですよ」
「人聞きの悪いことを外で言うな」
「あそこ(メイド喫茶)、公共の場でしたけどね」
「黙れ」
電灯の光の下、天愛はそっと暗い空を指さす。
「先輩、月を見てなにか思いませんか?」
「うん?」
首が上を向く。
「月が綺麗だな?」
「……っ」
天愛の顔がしてやったりと赤くなる。
レイジの眉根が下がる。
「それがなにかあるのか?」
「ふふっ……」
顔を真っ赤にして天愛の顔が可愛く笑う。
その表情にレイジの顔がいぶしがる。
「またしょうもないことでも考えてるのか?」
「いえいえ……」
手のひらをひらひら振る。
「それよりも先輩はよく私なんかに付き合ってくれますね?」
「うん?」
天愛の顔が少しバツが悪そうに歪む。
「だって私、下手したらサクトさんよりもウザイですよ」
「まったくだ」
「否定してください」
「無理だ」
「……中学の時もそれで友達が減っていってある種の高校デビュー感覚で離れた学校を選んだんです。まぁしょうもないやつに絡まれて変なグループに入っちゃいましたけどね」
「嫌なら出ていけばいいんじゃないか。ああいう奴はひと言、言うだけで近づかなくなるぞ」
「あ、いえ……サクト先輩はうざいですけど悪い奴じゃないので……それにああいう勘違いタイプ、近くにいてもいいかなっと思って」
「お前が俺を気に入った理由がなんかわかった気がするよ」
レイジもため息をつく。
天愛もひと息入れる。
「改めてなんで先輩は私なんかと一緒にいてくれるんですか? ウザいと思うならひと言言って離れることも出来るでしょ?」
「……」
そっと天愛を指差す。
「さっきお前がサクトに言った言葉をそのまま返すよ。お前みたいな鬱陶しいやつが一人くらい近くにいてもいいかなって思ってる」
「……」
レイジと自分の胸を交互に見合う。
「へへ……」
「なに笑ってるんだ?」
「いえいえ」
軽い足取りでターンする。
「駅が見えましたね?」
レイジの大きな手にそっと触れる。
「どうですか先輩。今日も私の家に泊まるのは?」
「結構だ」
触れられた手を払う。
「またゲームして遅刻しそうになったら親に怒られる」
「えぇぇ……親のお叱りがお怖いんですか?」
「そりゃ学費出してもらってるんだ。頭は上がるまい」
「糞まじめぇ」
「お前はもうちょっと真面目になればいいんじゃないか?」
「まじめですよ」
ビシッと親指で自分の大きな胸を指す。
「自分の欲望にマジメです!」
「そうかそうか」
手のひらを振る。
「その考えは嫌いじゃないが人を巻き込むな」
「安心してください。先輩に飽きない限り先輩限定でマジメに巻き込みます」
「はやく飽きてくれ……」
駅のホームに辿り着く。
天愛はポケットから定期券を取り出す。
「じゃあ先輩、また明日……」
ホームを渡ろうとして振り返る。
「今度の休み、デートでもしませんか?」
「冗談として受け取っといてやるよ」
さっさと帰れと飽きるくらい手を振る。
「むぅ……」
天愛の顔が不満そうに歪む。
ふと思いついた顔を浮かべる。
「私からも言わせてもらいますね?」
「なにをだ……?」
天愛の細い指がまた暗い空を指差す。
レイジも不思議そうに首を上げる。
天愛の喉が少し震える。
「月が綺麗ですね」
「おもっくそ曇りなんだが?」
いつの間にか曇りになった夜の空に天愛はハハハと笑う。
ホームを抜けると手を振る。
「また明日♡」
「おう、また明日な」
お互い手を振り背中を向け合う。
ふとレイジの視線がまた空を見上げる。
「月が綺麗……」
また顔を出す月の光にレイジはボソッと口に出す。
つづく