れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
第二章「レトロゲーの女の子とデートしてみた」
「あぁあああぁあぁぁ……」
教室の机に突っ伏しながらレイジは唸り声を上げている。
「……」
その姿を見て、悪友のアマハルの目が呆れる。
「ぐったりしてるな。なにかあったのか?」
「……」
目線をアマハルに向ける。
「ただの寝不足だ。一晩中起きててな……」
アマハルの呆れた目がますます呆れる。
「どうせゲームでもしてんだろう。お前一度夢中になるととことんだよな?」
「……」
言葉を探し項垂れる。
(まさか一晩中、あの女(天愛)と電話してたとは言えないよな?)
机に突っ伏しながら頬を赤くする。
(話が途切れるタイミングでいちいち新しい話題を振りやがって)
今にも眠そうなレイジを認め、アマハルも思い出した顔をする。
「そろそろ夏休みだよな?」
「うん、そうだが?」
「はぁ……」
アマハルはどこかつまらなさそうに頭の後ろを掻く。
「実は天愛ちゃんにこの書類に名前を書いてほしいと言われたんだ」
机に一枚の書類を置く。
レイジの目がパチパチ瞬く。
「森林オリエンテーリング?」
アマハルも首を回しながら答える。
「毎年うちの学校でやってるキャンプらしい。去年もやってたみたいだが俺達、興味ないから気付いてなかったらしい」
「へぇ……」
青春だねと感心する。が、
「なんで俺がこれにサインなんかしないといけない?」
「さぁな」
手のひらを上に上げながら肩の上まで持ち上げる。
「お前に興味あるみたいだし一緒に参加したいんじゃない」
「断ったらどうなるだろう?」
「そりゃまぁ……」
興味なさそうにまた首を回す。
「チーム千早の一員だし強引に力技を使うんじゃないか。あいつら基本、力技大好きだし」
「チーム千早ねぇ……」
本人はチーム千早に入ってることが不快と思ってるみたいだがあの人の言うことを聞かず自分の意思が最優先する精神性はむしろピッタリじゃないかと思ってしまう。
「……」
少し考える。
「……」
頭の中で少しだけ天愛とオリエンテーリングをして楽しむ自分が思い浮かぶ。
「一日くらいいいか」
カバンからペンを取り出すと汚い字で書類に自分の名前を書く。
「……」
ペン習字でも通おうかなと思うくらいには汚い字だ。
「俺が出しといてやるよ」
名前の書かれた書類を受け取るとひらひら振る。
「そんなことしなくっても俺が出すぞ」
レイジの手が書類を取り戻そうと伸びる。
アマハルの手が引く。
「忘れられると俺が天愛ちゃんに叱られるんだ。絶対に提出させろって言われてるんだ」
「書くこと前提だったんだ?」
「自分勝手の権化である千早サクトの作ったチーム千早の一員だってよく分かるよな。入るべくして入ったチームなのかもな」
「……」
そう考えると他にあまり興味がない自分が他人の目を気にしすぎるサクトと相性があまり良くないのもなんとなくわかった。
(他人に興味がありすぎるサクトとどうでもいいと思ってる俺だから上手くギアが嚙み合わないんだな)
でも、個人的にはサクトのことは嫌いではないとレイジは思うのだった。
つづく