れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
「萌え萌えキュン♪」
「先輩……」
天愛の額に青筋が浮かぶ。
「私の方が帰りたくなりました」
「ははは♪ なにをバカなことを♪」
伝統的メイド衣装型メイド喫茶「アリス」で昼食を取るおレイジは顔をニヤけさせて微笑んでいる。
「まさかこんなゲームショップだけが並んだエリアに王道メイド服をウリにしたメイド喫茶があったなんて……水着風メイド喫茶「美黄似(ビキニ)」がデートコースから外れていたことは後で文句言いまくるが」
「誰もそこに連れていくとは言ってません。て、言うかなんでそんなにメイド喫茶が好きなんですか? メイドが見たいなら私が先輩専属の」
「さて……いらぬ寄り道でゲームショップにまだ行ってないがなにか欲しいモノがあるのか?」
「欲しいモノ?」
天愛も美味しくなる魔法をかけてもらったオムライスを食べる。
「そうですね? GTAの傑作ソフトが売ってる店があったら行きたいですね?」
「なんでいちいちゲームトイアドバンスソフトを推してるんだ?」
「サイコーのゲームソフトだらかですよ!」
「訳が分からん……」
コップの水を飲む。
天愛も自分の豊満な胸を張る。
「まぁいずれ先輩もこの良さがわかりません……うん?」
天愛の目が見開く。
「先輩、顔を伏せて!」
「え……うぉ!?」
テーブルに顔面を叩きつけられる。
「な、なにをする……」
「静かに!」
怒声に近い静かな声が飛ぶ。
「私達は今ステルスアクションの主人公並みに静かにしないといけません」
「いや、あれはあれで結構派手なことしまくってる気がするが……」
「1……2……3……」
レイジの頭をテーブルにつけたまま天愛の視線が喫茶店の外を向く。
「ふぅ……」
ため息を吐く。
「ようやく行ったみたいですね?」
「なにがだよ」
レイジも顔を上げる。
天愛の表情がムスッとなる。
「あの自己陶酔野郎(サクトさん)がこのゲーム街に現れたんですよ。なんですかあの勘違い男、こんな聖域にきて。空気が汚れます!」
「そ、そこまで言わなくっても……ていうか確かにあいつ雰囲気的にゲームとかやらなそうだもんな」
どっちかというとゲームで時間潰すよりも青春過ごそうぜと無駄に自転車を二人乗りして走ってそうな奴だが……
「でも参りましたね。今日はゲーム街で楽しむつもりでしたのに、あの男と鉢合わせると面倒臭くなります……」
「ならどうする?」
頬杖をついて目を伏せる。
「さっきと同じように別のコースを歩くか?」
「……せっかくここに来たのに店に寄らないのは悔しいですね」
ブツブツと独り言を口にしだす。
はぁとため息をつく。
「仕方ないですね、不本意ですが予定を変更しましょう」
「予定変更って……?」
「ゲーム街にいるとあのナルシスト男と鉢合わせる危険がありますからね。ゲーム街から離れて狐小路の本道のブックオフラインに行きましょう」
「ああ、あの古マンガ屋ね」
「今はある種のリサイクル店ですけどね……」
昔を懐かしむ顔をする。
レイジは今更になって鼻をつまむ。
「それよりもティッシュ持ってないか? 誰かさんのせいで鼻から赤いモノが出てるんだが?」
「先輩……いくら私に触られて貰えたくらいで鼻血ブーなんて今時、ギャグとして受けませんよ」
「お前がテーブルに顔面叩きつけたからだ!」
鼻を抑えながら食いかけのオムライスを食べる。
「鼻が詰まって美味しくなる魔法以外の味を感じない」
「……仕方ないですね」
「その手で作ったハートマークを崩せ。でないと俺はここで帰るぞ」
「ケッ……」
不貞腐れたように天愛も自分のオムライスを食べる。
「伝統的なのはメイド服だけじゃなくオムライスもかなり美味しいですね。いい素材使ってます」
「ああ、今度アマハルを連れて来るかな。あいつもここにメイド喫茶があるなんて知らないだろうし……」
「先輩、デート中に他の人の話をするのはマナー違反ですよ」
「男でもか!?」
さすがにちょっと理不尽じゃないかとレイジは驚くのだった。
つづく