れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
泣く泣く天愛はレイジを連れてゲーム街から出る。
レイジの手を引っ張り表通りに出る。
しばらく歩くと国内最大手の古マンガ屋「ブックオフライン」へとやってきていた。
もっとも最近のブックオフラインはほとんどの本に立ち読み防止用のフィルムが貼られているのでそうそう気軽に本を読める環境では無くなったが……
天愛はレイジの手を放し店の奥に陳列されたゲームソフトの棚に顔を埋める。
「……」
「……」
天愛の視線がレイジの存在を忘れ、棚に横並びされたギンテンドーDSのパッケージを一個一個丁寧に調べる。
スマホでSNSを観ながらレイジの声が天愛の耳を打つ。
「そんなに楽しいのか? 古いゲームを探すのって?」
棚のソフトを物色しながら無表情に応える。
「楽しいですよ」
手に持ったパッケージを棚に戻す。
「本当はゲームショップを見て回ってレア物を手に入れるつもりだったんですけど……あの自己陶酔男が!」
天愛の額に青筋が立つ。
スマホを観ながらレイジの口からため息がつく。
(嫌ってる割にはチームにはいるんだよなぁ……)
「……」
ジャンル別に並べられたソフトのパッケージをから一個一個丁寧に確かめる。
天愛の目がガッカリしたように曇る。
「どうやら今日は不作で……ッ!?」
天愛の小さな身体が突然、カートゥーンのように飛び跳ねる。
「ど、どうした!?」
いきなり跳びはねる天愛にレイジもスマホから目を離す。
天愛の手から一本のゲームパッケージを差し出される。
興奮したように声が上ずる。
「先輩、これを見てください!」
ドンッと差し出されるパッケージを見てレイジの目が瞬く。
「なんだそのロンドンで探偵やってそうな犬のキャラクターは?」
「先輩、古いアニメを知ってるんですね」
「むしろ古いアニメが好きなんだ」
「コホン」
天愛も咳払いし、慌ててレジへと向かう。
「説明は後です誰かに買われるよりも先に真っ先に買います! 他のゲームのチェックは後でも出来ますからね」
「お、おい……」
慌ててパッケージを持ってレジへと小走りする。
レイジも慌ててついていく。
「これください!」
「はい。少しお待ちください」
丁寧にパッケージを受け取ると店員は慣れた動きでバーコードを通す。
「7580円です」
(たっかぁ!?)
今買ってるギンテンドーDSのソフトって二十年以上前のゲームのはず。
それが万を超えないとはいえ七千円以上もする事実にレイジは軽く眩暈を覚える。
「へへ♪」
なのに天愛は一切迷うことなく財布から一万円取り出しレジの店員に渡す。
「あ、外のシュリンプ、剥がしてもらえますか?」
ちゃっかりゴミは出さないよう自分自身に配慮する天愛だった。
「で、結局そのまま帰ってきたけど……」
拠点とも言える氷室家に帰るとレイジは小声で怒鳴る。
「おぉ~~い! 人を振り回そうとした奴がなにを帰ってから黙々とゲームしてる?」
「あ、先輩……忘れてました」
「おい!」
ラフなタンクトップとホットパンツに着替えた天愛はレイジを無視してベッドでうつ伏せになる。
初期型のギンテンドーDSを操作する天愛にレイジは慎重に聞く。
「で、さっき買ったケモナーが喜びそうな犬と猫のキャラクターが堂々と描かれてたパッケージのゲームはなんなんだ?」
「あれ、話してませんでしたっけ?」
「してねぇよ! 帰りの列車の中、ずっとレトロゲー紹介動画を観ながらウキウキしてただろう。人を無視して……」
「もしかして拗ねてます?」
「いいから答えろ!」
「いいですよ」
置いてあったパッケージを取り出し目を輝かせる。
「これはDS後期に売られた幻の神ゲー「ソラトメカ」です!」
「ソラトメカ?」
「はい♡ 今も続く傑作ケモナーゲームです!」
不意にプレイしていたギンテンドーDSを差し出す。
「どうせだから先輩もやります? 私のデータの続きですが少しくらいならいいですよ♡」
「偉そうに……」
ギンテンドーDSを受け取るとレイジの目が瞬く。
「なんでこのゲーム画面が二つもあるんだ?」
「え……そこから言わないとダメなんですか? ハードが二十年前の物だと知ってるのに?」
「AIに売られてた年数だけ聞いたんだ。面倒臭いから詳しいこと調べてない」
「この現代っ子が……」
「お前もな」
ギンテンドーDSの画面を見て、レイジの目が鋭くなる。
つづく