れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
路地街のちょうど真ん中辺りの店に入るとレイジは言葉を紡ぐ。
(せ、狭い……)
自分の部屋よりも狭い空間にちょっと綺麗にフックに掛けられて並べられた裸の「ゲームトイソフト」の陳列棚に汗をかく。
「ふむふむ……やはりゲームトイソフトは見た目からして美しいですねぇ♡」
うっとり微笑む天愛だがレイジは店の狭さに汗をかく。
(カウンターと客の距離が数歩しかない……きゅ、窮屈なうえに店主の顔が近すぎて居心地が悪い)
興味なさそうに文庫本を読みふける店主を横目にレイジはなぜか声を押し殺してしまう。
「なぁ早く出ないか?」
「ちょっと待っててください。今一つ一つチェックしてますから……この店、たまにレア物が混ざってていいんですよ♡」
「あのねぇ……」
なぜか息を殺してしまうレイジに天愛は棚に並べられたソフトを一つ一つ丁寧に調べ続ける。
「うぅ~~ん……」
天愛の目が残念そうに細まる。
「今回は良さげなモノが無さそうですね」
「古いゲームなんだしゆっくり探してもいいんじゃないのか?」
「良さげなソフトはすぐに売り切れちゃうんです!」
「さいですか……」
「無いものはしょうがないですね。いったん店から出ましょう」
レイジの手を握る。
「店主さん、また来るから」
「はいよ……」
店主の目が一度だけ天愛と重なり手を振る。
天愛も手を振り店から出ていく。
どうやら常連らしい……
店から出ると天愛は大きな胸を張りながら伸びをする。
「うぅ〜〜ん♪」
ぷるんっと胸を揺らし、伸ばしていた手を下ろす。
「あそこ、店の雰囲気もいいんですけど何分(なにぶん)狭いんですよね……私の体格でも窮屈で窮屈で」
「そ、そう……」
(お前でもそう思うなら俺はもっと狭く感じたよ……)
天愛とレイジは一回りほど体格が違うのであった。
「さて、次の路地街に行きましょう」
「え……終わりじゃないの?」
天愛の手が腰に当たる。
「一つ店を渡ったくらいでなにをバカなことを! 昨日はサクトさんのせいでろくにゲーム巡りを堪能できなかったんですよ! な・に・よ・り♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
キャッとはにかんだ笑顔を浮かべる。
「この手の個人でやってるお店は掘り出し物が安く売ってる可能性があるんです♡ 店主の一部が相場を知らなかったり、逆に傷物って理由で安く売ってることもあるんです♡」
「はいはい……」
「はいは一度でいいですよ♪ じゃあ行きましょう♡」
「なんでいちいち手を握るんだ?」
「逃がさないためです!」
天愛の足が踊るように前を進み、レイジの手を乱暴に引っ張る。
ビシッと遠くを指差す。
「行きますよ! 私達のデートはこれからだ!」
「打ち切り感覚で帰っていいか?」
「ダメです♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
出口を出ようとスキップして出ていこうとする。
すると……
「ちょいそこの二人、お待ち……」
「はい?」
声をかけられ振り返る。
路地街の出口で居を構える占い師に天愛は目を瞬かせる。
「なんですか?」
「ふふっ……♪」
ローブを被った占い師の口元が微笑む。
「暇なら占いでもしないかい? あんた達、初々しいから初回はタダでいいよ」
「それは商売上手ですね……」
レイジの手を離す。
「ならこの性格の悪い男と可愛い私の相性を占ってください!」
「お前、俺のことをそんな風に思ってたのかよ!?」
「性格いいですか?」
「悪いけど……なんか悔しい」
「ふふっ……」
占い師の喉から笑い声が漏れる。
手に持ったタロットカードをシャッフルする。
「さて、どんな結果が出るやら」
占い師も面白いものを求めてニヤニヤする。
つづく