れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
赤くなった頬を撫で天愛の目に涙が溜まる。
「先輩、なにがあったんですか!? 言ってください! すぐに先生を……」
「あ、ああぁ……違う違う!」
頬を撫でる天愛の手をどける。
「お互いちょっとふざけ合ってな。たまたまサクのツッコミがクリーンヒットして」
「そんな訳ないでしょう!」
怒声が飛ぶ。
レイジも慌てて笑う。
「いやだからさ……」
「先輩、いい加減にしてください!」
また怒鳴り声が響く。
「先輩がなんでサクトさんを気に入ってるのかは知りませんけど、殴られてまで庇うん理由なんてあるんですか!?」
「いや落ち着け。こんな奴でも一応正義感で……」
「ふざけるな!」
天愛の小さな手がレイジの胸倉をつかむ。
「大事な人が殴られてそれを無かったことにしろって言うんですか!? 先輩こそ私をバカにしてるんですか!?」
後ろからサクトが声をかける。
「な、殴った側の痛みなんて気にはしてないでいいさ。優雅なる微笑の少女も怒りを露にする際は」
「黙っててください! もうイッパツ殴りますよ!」
「うっ……」
また怒鳴られサクトの心から傷つく。
サクトの心の中に今、天愛が言った「大事な人」が自分の事じゃないとようやく認めてしまう。
「先輩! 素直に言ってください! 私は先輩の味方です! サクトさんがこんなクズだとは思いませんでした! 途中からでしたが明らかにサクトさんが一方的に暴力を振るってました! 先生に言って処分を……」
「落ち着け! それに肝心な奴さん、逃げてるぞ」
「え……?」
振り返るとショックでふらふらと歩いて去っていくサクトの背中を認める。
天愛の顔がますます強張り怒りを強くする。
「待ちなさい! 人を殴っておめおめと……」
「まぁまぁ」
レイジの顔が必死に穏やかになれと冷や汗をかく。
「男同士殴り合うことくらいあるだろう? いったん落ち着いて……」
「ッ……」
天愛の顔がより険しくなる。
「先輩……もしかして私のことを信頼してないというか、興味ないんですか?」
「え……?」
いきなり話が飛躍して目が瞬く。
天愛の目からボロボロと涙が溢れる。
「さっき言いましたよね? 大事な人が殴られてそれを無かったこと……大したことない扱いできるほど私は」
「とりあえずお茶でも奢るからいったん落ち着け」
「もういいです!」
掴んでいた胸倉を放し、立ち上がる。
「先輩がその気ならこっちももういいです! 二度と逢いに来ません!」
「あ、おい……あ?」
涙を流し去っていく天愛にレイジも尻もちをついていた身体を立ちあがらせる。
「……うぅん」
自分のために怒ってくれていることはわかるが、レイジ自身もサクトに咎を負わせたくないんだよなと頭の後ろを掻く。
「あんなんでも俺は嫌いじゃないんだよな。サクのことは……でも」
少しだけ天愛に対する配慮に欠けていたと反省する。
「昼あたり謝りにでも行くかな……うん?」
腕を組む。
「もしかしてこれが占いの結果?」
微妙に掠ってる気がするがレイジの頭を悩ませる。
「まったくくだらない事で喧嘩したな……あ?」
ツゥと鼻血が出て、レイジは慌てて鼻を摘まむのだった。
つづく