れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
挨拶を済ませると天愛は当たり前のようにレイジの隣に座る。
「さて……本題に入りましょう」
「その前になんか君キャラ違くない? あの媚び媚びの笑顔はどこに行ったの?」
「媚び?」
自分を指さして小首をかしげる。
「ああ、仕事の話ですか? 逆に聞きますが普段からあんな媚びまくった女の子がいると思いますか?」
「……」
アマハルが聞いたらショックを受けるだろうなと嘆息する。
隣に座る天愛は用意していたカバンの中を探り出す。
「確か……この辺に」
「汚いカバンの中身だな……」
「ほっといてください……あった!」
天愛の声が蕩けて叫ぶ。
「GTポケットォ♪」
カバンの中から取り出す長方形のゲームデバイスを見てレイジは小首をかしげる。
「なんだよその棒ネコ型ロボットのような声の出し方は? それにその玩具……どこかで見たことがある気が?」
長方形の形に液晶とボタンが二つついたシンプルな筐体にレイジは左手の手のひらに右手の拳をトンッと置く。
「思い出した。俺の知り合いの女の子がレオブロックで作ってたやつだ!」
最近発売したばかりのパックで再販も続いてるんだと自慢されたっけ。
ゲーム機を見せびらかすと天愛もどこか得意げに鼻を鳴らす。
「じゃあプレイしてください」
「え……?」
「え、じゃありません。わざわざGTポケット持ってきてあげたんですからプレイしてください!」
「プレイ……これ本当にゲーム機なの?」
「はい。至上のゲームハード。ゲームトイポケット。ゲーマーを語るならこれを知らずにゲーマーを語っては欲しくないですね」
「ゲームトイ? ああ、ディーチューブでたまに見るな」
ゲーム機を受け取ると視線を下げる。
「意外と小さいな」
「これは後期モデルですからね。一番最初のは弁当箱よりも少し小さいくらいの大きさです、先輩」
「ちょっと待ってくれ」
手のひらを前に出す。
「さっきから君は俺を先輩先輩と呼ぶがなんで俺が君より上級生と分かるんだ?」
「簡単ですよ」
自分の首元のリボンを指さす。
レイジもハッとなって自分の首のネクタイを指さす。
「そうか……うちの学校、学年別でローテーション組んでネクタイの色を変えるんだっけ?」
「私は黄色なので一年。その前の年代は青で三年が赤です。ちなみにメイド喫茶では先輩のネクタイの色が青だったから先輩だとわかって呼んだんです」
「なるほど……当たり前すぎて気付かなかった」
「謎が一つ解けたのですし早くプレイしてください。休憩時間が終わります」
「あ、ああ……強引だな」
レイジはなにかを探すようにゲームトイをあっちこっち眺める。
天愛の小首も傾げる。
「なにしてるんですか?」
「スイッチどこ?」
「あ、ああ」
天愛も納得したように頷く。
「それなら上のレバーがあるでしょう? それをカチッとオンにしてください」
「これか……?」
本体の上部についているレバースイッチを見つけ、指をかける。
「なんだかボタン式じゃないのは珍しいな」
「むしろ昔はこれがデフォだったんですよ」
「なるほど」
カチッとスイッチをオンにする。
「うん?」
「どうしました?」
急に眉をひそめるレイジに天愛の首がコクリと傾く。
レイジはゲームトイの画面を見せて指を差す。
「モニターに映る上から下に落ちてくる文字が文字化けしてるんだが……これちゃんと動くの?」
「え……?」
レイジの手元のゲーム画面を見る。
「ああ、それ差し込みエラーですね。ちょっと貸してください」
「おっと……」
奪うようにゲーム機を取られる。
天愛は奪い取ったゲーム機のカセットを抜く。
「デカいソフトだな?」
「むしろ昔はこれでコンパクトだったんですよ」
「へぇ……」
そういうと天愛は抜いたカセットをまたゲーム機に挿入し直しスイッチをオンにする。
「っ……」
また画面が文字化けする。
天愛は不快感を露にソフトを抜く。そして挿す。
「……」
また文字化けを認めソフト抜く。そして挿す。
「……」
抜く。挿す。
抜く。挿す。
また文字化け。
「っ……」
天愛はまた無言でカセットを抜いて挿す。
「……」
何度もトライ&エラーを繰り返し天愛は綺麗な髪を無造作に掻きだす。
「あ、あのさぁ……」
露骨にイライラし始めている天愛にレイジは少しなだめるように声をかける。
「もしかして壊れてるんじゃ……」
「やった」
「痛ぁ……」
振り上げた天愛の拳がレイジの顎にクリーンヒットする。
「読み込みに成功しました! なにやってるんです?」
「いたた……壊れてなかったのか?」
「なに言ってるんですか。挿したソフトが読み込みエラーをするなんて普通ですよ。むしろドラゴンストーリークエストなんてこれのせいでセーブデータが消える危険だってあるんですよ」
「どんだけ恐ろしいんだよ……ていうかそんな不便なハードを俺にやらせるの?」
「不便なのは今の感覚に慣れてるからです」
ゲーム機を渡す。
「さぁやりますよ……「マリサランド」を♪」
「マ、マリサランド?」
世界的に有名なマリサブラザーズの名前を出されレイジは目を瞬かせる。
つづく