れとろげ!〜無趣味な男がレトロゲー好きの女に振り回される日々〜 作:スーサン
「ふぅぅ……」
膨れた腹を撫でる。
「久しぶりに人間の食事を食べた気がしました」
「人の弁当をまるまる食ったな」
「先輩のお母さんに美味しかったと伝えておいてください」
「はいはい……」
「あ、それよりも先輩? 頼んでいあったオリエンテーリングの書類出してくれました?」
「うん? ああ、たぶんアマハルが出してくれてるはずだ」
「それを聞いて安心しました。先輩は信頼がないですからね……」
「うるさい」
ハァとため息を吐く。
「そもそも、なんでインドア派の俺がわざわざオリエンテーリングに参加しないといけないんだ?」
「それはもちろん、私が先輩とキラキラした青春の一ページを刻むためですよ!」
「それ、チーム千早と同じ発想じゃないか。安っぽい青春を送りたいって……」
「せんぱぁ~~い♡ 今度、私をチーム千早と同じと言ったらその口、縫い付けてやります♡」
「わ、わかったから俺の首をガクガク振るな! 酔うからぁ……」
「まったく……私の考える青春とサクトさんの考える青春は違うんです!」
「なにが違うんだ?」
「まず私の青春に先輩は必要不可欠です。例え嫌がっても私の青春白書に先輩の名前を刻んでやります!」
「そこ自分の思い込みで他人を害するサクとなにが違うんだ?」
「私には可愛げがあります」
「どっこいどっこいだよ」
ギロッと睨まれるも無視することにする。
親に持たせてもらったお茶を飲み、喉を潤す。
「でもオリエンテーリングって。俺は家でゲームをやるかアニメを観たいんだがな」
「アニメですか……なにを見てるんですか?」
「そりゃまぁ……最近は元気一発ガンバリウスを観てるぞ!」
「……今度は私が頭に「?」を浮かべてます」
「知らなくってもいいよ。90年代のアニメは通が知ってればいいだけだしね」
「先輩も大概面倒臭いオタクですね……」
不意に思いついたように口を開く。
「そもそも先輩ってゲーム好きな割にゲーム詳しくないですよね? ゲーム好きなら多少知っていてもおかしくないゲームも知りませんし」
「そりゃ仕方ないだろう。ゲームにハマったのって今年に入ってから出し」
「はい?」
意味が理解出来ず天愛の目が瞬く。
レイジもそういえば言ってなかったなと納得する。
「俺、去年までは小遣いが千円しかなかったんだ」
「せ、千円?」
「それを今年から五千円に上げてくれてな」
「小学生の小遣い並しか貰えてなかったんですね」
「ちょうど親戚のオジサンがズイッチ2を買ったから古くなった旧型ズイッチを譲ってくれたんだ」
「オジサンナイスです!」
「だからそれまでは貰ってた小遣いはサブスク代に消えてたんだ。月千円でアニメ見放題だからな」
「な、なるほど……」
思ったよりもリアルな方向でショッキングな話だった。
「バ、バイトする気は無かったんですか?」
「特に困ってたわけじゃないしな」
「趣味のメイド喫茶は五千円じゃ楽しめませんよ!」
「メイド喫茶は貰ってるお年玉を崩して行ってるんだ」
「く、くだらない……」
「月五千円で楽しくやってるよ」
レイジも多少しょうもないと思ってるのかハハッと笑う。
「先輩!」
「な、なんだよ?」
肩をガシッと掴まれ顔を近づけられる。
「バイトしましょう♡ 私が働いてる宅楽楼、力仕事が出来る男性スタッフを募集してるんです! 時給は高いですし、なによりもシフトさえ合えば私とずっと一緒にいられますよ♡ いいことばかりでしょ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「……ふっ」
「せ、先輩♡」
「い・や・だ!!!!!!」
つづく