夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「今回の任務は紙谷町や展代市での魔人の一斉殲滅になるよ」
「あーあの付近ねえ、まあ魔人は他のとこと比べても多いってのは相沢家ネットワークで散々聞かされてたもんな」
シイナとセツナの件から2ヶ月後の夜、俺達がいたのは夜海家ではなく相沢家だった。
ユズの能力で移動が楽に出来るし、それでいて夜海家を極力血なまぐさい話に巻き込まないで済むならそれに越したことは無いしな。
「まず、シオリはダイナーPomegranateの従業員殲滅をお願い」
「はい」
「ユーナは紙谷製薬会社の会計士、片桐アラタと成田マオを」
「りょーかい!」
「アオイとユズは展代市にいる悪徳金融会社、平元商会を」
「よっしゃー!ぶっ倒してやりますか!」
「任せて、トワおねえちゃん」
「テンマは展代のガールズバーCallHeavenの従業員殲滅を」
「あいよー、任せとき」
「私は第五管区を牛耳るマフィア組織をやる」
今回は散らばっての魔人殲滅任務だ、この辺の情報は俺らでも集めたが相沢家とそこに取り込んだ俺が世話になってたヤクザ組織のネットワークでも集めた情報が元になっている。
ヤーさん達は相沢家の護衛のみならず、裏社会特有の繋がりを駆使して相沢家ネットワーク人海戦術の軸になっているのだから今や欠かせない人達だ。
瑞穂のマフィアやヤクザ組織と言うと大半は魔人や魔人化薬を絡めた事業に手を出しているが、あそこだけはずっと仁義や無意味な人殺しをしない事を重んじていたからな。その煽りを受けて危ない立ち位置にいたが、その分今は戦力的には魔人狩りが、社会的にも相沢家がバックに付いているのだから報われてると言っても過言ではない。
「それじゃ各員、殲滅したらまた」
「パパっと終わらせて来るわ」
ユズの移動能力……を使う前に部屋の外にいる警備員、まあつまりは顔見知りの元ヤーさん達に今から実行するのを伝えておく。
いくらあっちも能力を把握してるとはいえタイミングまでは分からないからな、無駄に仕事させると可哀想だし数分後には警備を終わって良いという業務連絡だ。
そんでそれとは別に1人には俺の任務に同行して貰う。
しっかしユズの移動能力は便利だな……場所を指定したらそこに繋がる『ドア』を用意してくれるんだから。
サッとそのドアを潜ると……なるほど、ここはガールズバーの裏口付近ってワケね。
「まあ良いや、そんじゃ行こうか」
「へい!テンマの兄貴!」
「だから兄貴呼びはやめろって、俺はヤクザ組織じゃないんだから」
「ですが兄貴は今我々が所属している相沢家の上司に値しますし」
「まったく……」
しかしこのヤーさん達、相沢家に入った辺りから俺の事を兄貴だのなんだのと持て囃してくるんだよな……俺はヤクザではなくあくまでも協力者ってだけなんだけど。
さてそれはさておき今回何故戦闘力はあるとはいえ一介の人間を連れてきたかと言うと、ターゲットがガールズバーだからだ。
いくら俺が力を持っていたとしても15歳、身長は姉さんを超えて170は軽くあるけどまだまだ成人と呼ぶには顔が若過ぎるからお付きにイカつい成人男性を連れてきたってワケだ。
「いらっしゃいませお兄さん方〜、本当はまだ開店前だけど格好良いから特別ですよ。どの子を指名しますか?」
店に入るとそこはかなり煌びやかな内装だった、かなり儲かっているらしいなこの感じ。更に噂には聞いていたが受け付けから黒服に至るまで全員女……正に客にとってはHeavenって事か。
ここは客そのものは普段金ヅルとして食うワケではないが、ツケが遅れた客を食っていると報告が上がっていた。それに裏じゃ魔人化薬の流通に一枚噛んでる上に魔人の従業員も複数抱えているらしいじゃないの。
しかし他に客がいない営業時間外を狙った癖にスムーズに通しやがったな……これは察されてはいるんだろうな。
「それじゃあ俺に指名させてくださいよ」
「おう良いぜ」
「あらあら、若そうなお兄さんね。それで、誰にするの?」
「俺が指名するのは……魔人」
「やっぱり、アンタら巷で噂の『魔人狩り』やね?」
「だとしたらどうする?」
「そりゃあもう……殺すしかない、でしょ?」
やっぱりな、動揺する事無く魔人狩りと見抜いたか。他のターゲットは別としてここは狡猾な事この上ないな……何人かが魔人化するのが見える。
「ひーふーみーよー……魔人は5人か、案外多いね」
「今更ビビったって逃がさないよ!!やれ!!」
ちなみにこの瞬間の音声と映像はユズにもリアルタイムラグ無しで中継されており、俺が『魔人』という単語を出した瞬間ヤーさんの背後にドアを用意して退避させる高等テクニックで安全を確保させる。
「兄貴、ご武運を!」
「あいよ!」
「男が消えただと!?1人でアタシら倒そうってかい?ナメられたもんだ!!」
「生憎とあっちは非戦闘員なもんでね!非合法組織は非合法組織同士殺し合おうじゃないのさ!」
魔人の能力は……なるほど、全員腕をカマにして戦う能力ね。
ただ能力も練度も高いには高いが俺の使用能力の中で低い方の『硬化』でも……
「き、効かない!?銃弾どころかカマの攻撃さえも!?こっちには強い魔人が何人も揃っているのに……たった1人の魔人にッ!」
「そりゃオメー、俺の方が強いからに決まってるじゃんよ」
まあ、相手の攻撃は一切通らなくなるわな。
そしてこの間に『毒生成』で事前に改造した弾丸を詰めた拳銃で魔人を撃ち抜く。
「あっ!?ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?」
1人は一発撃ち込んだだけで絶命したらしい、これじゃ硬化の魔人より弱いな。
「くっ、ふざけるなよ!!全員でかかれ!!」
ええ……攻撃通らない上に一発で致命傷なのに良く総攻撃仕掛けてくるよな。まあその方が俺は楽で良いけど、この後は蹂躙しか待ってないなあ……
「――で?まだやる気?」
「ひぃ……ば、バケモノが……!」
「そりゃアンタらとこで飼ってた魔人もそうでしょうに。あ、まあ全員喰っちまったけど」
「あれだけいた魔人が、なんでガキ如きに!」
「弱いからに決まってるでしょ」
案の定数分で魔人は全員喰い、人間も大半は殺害していた。倒したのは俺の能力の中でも硬化より低い『幻覚』。あんまり精度は高くないが試しに使ってみたら全員それに引っかかってあっという間に全滅していた。
残った中で唯一まだ喋れるくらい元気だったのはリーダー格の女、コイツはどうやら魔人ではないらしい。
腕は一本握り潰しているから本当に元気かは知らんが。
「さて、文句を言うのは勝手だが俺のインタビューに答えてもらおうか」
「ぐうぅ……!」
「勿論拒否権は無いけどね。お前、篠宮マナと蔵木エイジの名前に聞き覚えは?」
「し、篠宮と蔵木?」
「そ、あるの?無いの?」
「あ……あるには、ある。けどウチらに関わりは無い、実力はあっても末端組織のウチには目もくれなかった」
「ふーん」
取り敢えず欲しい情報は持って無さそうだな、それなら興味無いし後は始末するか魔人になってないからギリギリ生かしてやるかの二択だけど。
「で?これから魔人に関わらないならサツに突き出すだけでやめといてやるが」
「はッ!誰が信じるか!」
「じゃあ死ね」
やっぱこうなるか、首を180°回転させベキョリと嫌な音がしたと思った瞬間には女は絶命した。完全降伏してない相手に慈悲掛ける労力なんて面倒だしなあ……親父と母さんには魔人の話をしてるし世直しの為にやってると言ってギリギリ説得出来てるけど、こればっかりはさすがに後ろめたさがあるわ。
はぁ、と溜め息を吐き出しスマホのメールを見る。
『アタシ、良イ就職先決マッタンダ!セツナモ保護シテクレルミタイダシ余裕出来ルカモ!』
シイナからだった。あれからシイナとセツナは自宅が壊れた事もあって島を出て本土で侵略種ハンターのバイトをして生計を立てていたらしく度々こうして連絡があった。勿論だが本土に来たのは魔人狩りメンバーには伝えてある。
だが今回は『良い就職先が見つかった』と吉報を届けてくれた、きっとEXCEEDSに入ったのだろう。
「そうなると俺らとEXCEEDSが遭遇するのも時間の問題と。俺としては楽しみだけど、姉さん達にはあんまりよろしくないんだろうなあ……さてどうなるかねこれから」
空を見上げる。これから先の事に思いを馳せて。
「うん、何も見えねえわ」
あ、そういや今は夜でしたね……
CallHeaven
原作には無いテンマが殲滅を担当した闇組織
表稼業はガールズバーながら裏では金にならない客を食べたり闇組織と繋がりのある太客からエサになる人間や薬を提供されていた
末端組織ではあるが魔人の人数と強さはそこそこ以上だった