夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「くぁ〜、おーユズ、アオイもう起きてたか。おはよう」
「おはようございます、おにいさん。朝ごはんもう出来てますよ」
「おはよーにーやん!」
「んで姉さんもおはよ」
「おはよ、夜はお疲れ様」
「そりゃ姉さんもだろ。そういやユーナは?」
「ユーナなら美容院行ったよー」
「なるほど、りょーかい」
穏やかな朝だ、今朝も誰1人欠ける事無く無事を確認出来て尚且つ平和な1日を始められる事のなんと幸せな事か。
親父と母さんは普段ならいるんだがたまにいない時がある、こういう時は決まって依頼で出払っている。
「今日父さんと母さんはお昼頃には帰ってくるって」
「今日の料理当番はユズだっけ、昼なんか手伝うことある?」
「大丈夫です、そろそろわたし1人でも出来るようになってきましたし……その、お父さんとお母さんに私の料理……食べてもらいたいなって」
「うん、それならユズの心意気を尊重したい。俺は……どうしよ、やる事無いしその辺散歩してくるわ」
ユズは最初あまり感情を出さない……というよりも出せない子だった、実の両親にモルモットみたいに扱われるだけの人生だったから当然なんだが。
そして最初に覚えた、覚えてしまったのが俺らが助けたことによる『自分にも自由に生きる権利がある』事、そして『今までの人生が何もかも無駄』だと言う悲しみ、痛み、苦しみの自覚と反動の憎悪だった。
だから何としてでも穏やかな感情を覚えてもらう為に頑張ってきたが……こうやって親父と母さんへの感情を出してる姿を見ると感慨深くなってしまう。ユズは人として大切なものをちゃんと手に入れて幸せに生きられる、その権利を持っている。
勿論姉さんもアオイも、シオリやユーナだってそうだ。幸せに生きられるし生きないといけない、みんながどれだけ辛い目にあってきたと思ってんだよ、もしもみんなの幸せを害するような存在がいるのだとしたら俺は命を懸けられる。
――俺の命は安いもんだからな。
ちゃんと全てが終わったあとなら俺はいくらでもすぐに死んでも良いと思っている、最後まで死ねないとは思うが『最後』が来たら俺の役目はそこで終わるのだ。
「おにいさん?大丈夫ですか?その、私のお料理あんまり美味しくないですか?」
「え!?い、いや待て!!違う!!絶対違うからな!?ちょっと考え事してたんだ!本当だ!」
「まあにーやんはユズに料理熱血指導してたから嘘は言わないもんねー。それに考え事多いのも良くあるし。でもせっかくユズが大好きなにーやんの事考えて作った料理目の前にしてそれはちょっと無いんじゃないの〜?」
「だっだいしゅっ!?」
「……そ、そこまで顔真っ赤にされるとその、照れるな」
ただ、1つ思うのは。
「あ!アタシもにーやん大好きだけどね!」
「わわわっ私だって!だ、だい、だいしゅっ!……き、です……」
「勿論私だってテンマの事は大好きだよ――愛してる、まであるかもね」
「おーおー俺ってばめちゃくちゃ慕われてるねえほんと。あと姉さん?いつも言ってるけどそういうのはちゃんと好きな異性が出来てから言いなさい、完全にニュアンスが家族愛じゃない何かじゃないのさ。弟に言うもんじゃありませんよまったく」
「……まあ、今はそういう事にしといてあげる」
「だからやめなさいって」
「にーやん!アタシ達の事は!?女の子として見てくれてるー!?」
「お、おにいさん……ど、どうですかっ」
「ん?2人ともめっちゃ可愛いと思うよ?」
「あー……ダメだぁやっぱり妹分としてしか見られてない〜」
「あうぅ……」
「アオイとユズにしてももっと良い男はいるはずなんだから、お兄ちゃん離れしなさいとは言わないけどもう少しこう節度をだね……」
もしも俺がある日突然死んだら、ちょっとくらいは両親も、姉さんも、ユズ、アオイにシオリ、ユーナ、それにシイナやセツナも。
悲しんでくれたりするのかな、なんて。
「テンマってばほんと朴念仁だね」
「にーやんのぼくねんじーん」
「うぅ……おにいさん……」
「3人して俺の良心で俺を押し潰そうとするのやめてね?簡単に潰れるよ?」
自意識過剰か、何れみんな俺の事を忘れて自由に生きていくんだしな。きっと大丈夫だろ、きっと。
「あー……昨日結構寝たと思うんだけどなあ」
穏やかな太陽の下、散歩に出た俺はベンチに座って……座った瞬間1時間くらい時間が飛んでいた、飛んでいたというか普通に寝ていた。
昨夜魔人狩りの任務に行っていたのが原因かと問われれば半分そうで半分違うみたいな感じだろうか、魔人狩りはいつもの事だしいつも通りしていたらここまで眠くなることも無かったはずだ。
では何故こうなっているかと言うと、まあ慣れない能力を使ったのが十中八九の要因だろう。それも広範囲に幻覚を見せる能力という結構コントロールが必要なものだったからか想定以上の疲労が溜まったらしい。これからあの能力はかなり限定的な使用になりそうだな。
「ん?」
もう少しベンチでボーッとしていようかと思っていると、近くの通りから男の声と女の子の声が聞こえてきた。
「ママ……」
「むぅ、困ったな。俺様は天才超エリートとして名を馳せて来たが迷子の子どもの対応においてはズブの素人。更に言えばここ瑞穂の土地勘が無い……!!」
めちゃくちゃ癖の強い男だな、というのがまず目と耳に入ってきた第一情報だった。俺も魔人になれば金髪になるが今目に入ってきた男は素で金髪、それにオッドアイでここからでも分かるレベルのイケメン野郎だ。
それに一々の言動の癖が何よりも強い、ナルシストが服を着て歩いてるレベルのナルシストなのに分からない事は素直に口に出している、なんて奇妙な男なのだろうか。
迷子の女の子だろうか、その子にも何とか優しく語りかけようとしているが癖がありすぎて通用していない。
「仕方ないな」
「むっ!そこの男性よ!キミはここの土地勘はあるかい!?」
「この辺に住んでるからまあな。……って、迷子ってメグちゃんかよ」
「なにっ知り合いなのか!?」
「ああ、もしかしたら知り合いかもしれないとは思ったがまさか隣の家の子とは」
「あ!テンマおにーちゃん!」
「よっ、家までなら俺と一緒に行く?」
「うん!」
しかも迷子は隣の家の子だった。
この子は俺が夜海姓を貰った直前だか直後くらいに生まれた子で、ちょくちょく遊んであげてたら懐かれた。まだ4歳だから近所でも母親とはぐれてパニックで家が分からなくなったんだろう、送っていくとしよう。
「俺様では力になれなかったから助かったぞ!フハハ!」
「いや、アンタが根気強く話しかけようとしてくれてたお陰で俺が気が付けたんだよ、こっちこそありがとう。結構面倒見てる子だから」
「そうか!ではその礼は素直に受けとっておくとしよう!」
その後だがちゃんと家に送り届けた、母親からはお礼にと菓子折りをめちゃくちゃ渡されてしまったが当然の事をしただけだからちょっと気まずかった。
「なあアンタ」
「なんだい少年!」
「いや、そういや名前お互い名乗ってなかったと思ってな。まあ俺の方はメグちゃんに言われていたが」
「そういえばそうだな!」
帰り道、割と道中話して癖の強さ以外は真面目というか努力家そうな雰囲気を感じたり話が合ったりもして仲良くなったは良いがそういやお互い名乗ってすらいなかったなと苦笑いを浮かべる。
遅れてしまったとはいえ、もしかしたらまた会えるかもしれないし名乗っておくに越した事は無いな。
「俺様の名前は結城 光一!」
「コウイチね、俺は夜海テンマだ。良かったら連絡先交換しないか?」
「ヨルミ……?いやまさかな」
「どうかしたか?」
「いや、なんでもないぞ!連絡先か!是非とも交換しようじゃないか!この超天才エリートの俺様と連絡先を交換出来るなんてこの世の誉だと知っておくと良い!」
「そりゃ光栄な事で。ほい、それじゃまたいつか会えたら良いな」
「ああ!いつかまた!」
ガッチリと握手を交わし、お互いの道に戻って行った。
……だがなんだろうな、アイツとはなんかめちゃくちゃ変な場所で次は会いそうな気がする、何となくだけどな。
「聞いてくれなのはにフェイト、シイナにセツナよ!俺様は今日の休暇で現地の同性の友人を作ってきたぞ!素晴らしい有意義な休暇だった!」
「え!?光一くんのノリに着いていける人っていたんだ……わたしは着いて行けるけど……」
「凄いね光一!光一ならいつかちゃんとした男の友達作れると思ってたよ!」
「アハハ……良い人ではあるんだけどねぇ」
「でもほんとうにすっごくゴキゲンだね光一さん」
「ハーハッハッハ!」
結城光一
見て分かる通りのポジション
高町なのは&フェイト・テスタロッサ・ハラオウン
今作ようやくにして登場、リリカルなのはなのにこのふたりを出すまでに13話も掛かるとかマジかよ
メグちゃん
夜海家の隣に住んでる一般家庭の女の子、4歳
大体テンマが来た時前後に生まれていて付き合いが長いのでたまに遊んでいる