夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「……姉さん?今なんて?」
「うん、だから友達になったよ」
「だ、誰と?」
「シイナとセツナと」
「苗字は?」
「久瀬」
「おおう……」
コウイチと友人となって数日、この日の夜は姉さんから爆弾発言が飛び出してきたことで両親除く全員が絶句していた。
両親に関しては仕事の話は良く分からないから、分かる部分だけを切り取って話を聞いてるらしい。まあうっすら俺らが元人間の魔人や魔人と関わる人間を殺しているのは知っているんだろうが……それを止めないってのは子どもを信用し過ぎだと少し呆れてしまう。まあそれが優しさなんだろうけどな、その優しさに報いる為にせめて俺らがなるべく怪我せず帰ってきて両親を安心させないといけないだろう事も察している。
さて本題に戻るが、姉さんの爆弾発言に胃に穴が空きかけている俺を誰か助けてはくれないだろうか。
「トワおねえちゃん、2人に会ってみての感想とかありますか?」
「2人とも良い子だったよ。明るくて笑顔で、見ていると私まで癒される感じがして心が暖かくなる……あと、テンマの事も良く話していたかな。苗字ですぐテンマの姉だって分かったみたいで2人とも凄く嬉しそうに話してた」
「にーやんの話聞くだけでも好きになるの分かるもんな〜」
「うんうん、これは惚れられてるかもね」
「開幕でバレてるのか……俺の魔人の事については?」
「聞かれてない。かなりセンシティブな話だとあっちも理解してたんだと思うし、探るようなことも一切無かった。だから純粋に友達になろうって思えた。この感じなら誰かにテンマが魔人と言いふらしてる感じも無いって断言出来る。シイナとセツナはそんな事しない子」
「まあシイナとセツナに限ってそんなことするとは思わんが、にしても凄い信頼だな姉さん」
しかも開幕で姉弟とバレてるし。
アオイとユーナは気にしてないみたいだけどその辺良いのかよ、ユズはまだこっちを少し心配そうに見てくれてるから癒される。ユズはいつだって癒しになってくれるなほんと。
ちなみにシオリはいない、基本食事は自宅でしている。
「見ず知らずの私の事、勘違いとはいえ何の躊躇も無しに助けようとしてくれたからね。話してみてもそうだけど、2人を疑うならテンマでも容赦はしない」
「疑わないって、そもそもあの2人は俺も友達なんだから疑いたくもない」
「なら良いよ」
「難しい事は良く分からないけど、トワとテンマにそんな良いお友達がいるのは嬉しいわね」
「そうだな、是非とも俺達も挨拶したいくらいだ」
「まあ、いつか連れてこられたらその時は」
癒されたのにまた胃痛が始まってきた、頼むから対立が終わるまでは連れてこないでくれ絶対ややこしいことになるから。
いや仲良くしてくれる分には良いし俺だってそれを望んでるけど、タイミングってものが世の中にはある。今連れてこられたら割と最悪だからそれだけは勘弁願いたい、切実な願いとして本当に。
両親は純粋にシイナとセツナが気になってるようだ、どっちも気遣い出来て人間として出来すぎとまで言えるくらい出来すぎてるような子らだから全部終わったあとに紹介してくれる分には何一つ憂いが無い。だからこそ今は時期が悪すぎるんだって言ってるんだよ頼むからこの念が通じてくれ。
「まあそんだけ良い子なら、セツナって子も何の気兼ね無しに友達になれる存在だと良いけど」
「トワの友達と対立はあんましたくないもんねー」
ユーナとアオイには若干通じたらしい、まあ実際セツナが何者なのかは予告編までの知識の俺では全くもって分からない……何なら魔人という事さえ知らなかったんだから最悪の事態は常に想定していないといけないだろう。
何にせよ、平和に仲良くみんなで話せる日が来ることを願いたいもんだよ、本当にさ。
「次の目標地点は海外です」
食後にシオリに合流しての会議が始まる、やはり機密情報を扱うとあってその手の会議は相沢家の地下にある特設の会議室が向いているからだ。
密室、防音、セキュリティ万全。外にはいつものように警備員を数名立たせての強固なガードの中始めに声を上げたのは目標地点やターゲット特定担当のユズ。
どうやら今度の目標は海を越えるらしい。
「侵略種と人間の戦いで汚染されて、特級危険地区に指定されている場所。生物が生存出来ない死の大地ってされてますが、そこに魔人化薬生成プラントがあります。近くには強大な侵略種が二体いるので、そいつらの素材を材料として魔人化薬を加工しているみたいで……」
「材料が取り放題だし、普通の人間なら捜査も襲撃も出来ないか」
「移動は不便そうですが、ユズみたいな移動能力者を抱えている可能性が高そうね」
「にゃるほどねぇ、お相手さん厄介そ〜」
しかもターゲットは大物の侵略種か、コイツは腕が鳴るな。
恐らく世界で何体かいる侵略種の親玉の一角だろう、食う事が出来たら全員のパワーアップに繋がるはずだ。美味くは無いだろうが。
「さて、その生成プラントの親玉は誰かな?――十中八九篠宮か蔵木が絡んでるんだろうけど」
「おにいさんの予想通りです。この施設には篠宮も蔵木も出入りしています。地下には研究施設のような場所もあるらしくて。……ここが、もしかしたらトワおねえちゃんが過ごした施設の可能性も」
「魔人化薬の製造元で、トワの家族を危険に晒した奴らがいる……!」
「やっぱいるよなあ、連中」
「お手柄だよ、調査ありがとうユズ」
「えへへ……」
「ゲートの準備、お願い出来る?」
篠宮マナ、蔵木エイジは姉さんや俺らが倒すべき真の親玉だ。
姉さんが幼少期魔人に改造させられ散々苦しめられ、挙げ句の果てに大量の子どもを殺してきた施設のトップがこの2人だったとあの空港火災の後教えられた。
空港火災を望まず起こしてしまった魔人もそこの出身で、姉さんとは色々あったらしくだから遺体を見捨てられなかったとも聞いた。今墓は相沢家の片隅に安置されている、本来はウチにあったが更に安全な場所に移動させた方が良いだろうとなった為だった。
「それじゃあ提案通り手分けして探そう。取り敢えずテンマは今回私と行動してほしい、大丈夫?」
「OK、んじゃ2人×3チームってところか」
「そうなる。ユーナとシオリ、アオイとユズで組んでほしい」
「あいあいさー」
「まっかせといて!」
「分かりました」
「が、がんばる……」
作戦会議が終わったところで、部屋から出て『いつもの場所』へ向かう。これは作戦前にいつも行うルーティンで、全員が安全に帰って来れることを誓う為の儀式に近いものだった。
「……必ずまたここに帰ってくるね。行ってきます」
トワが一言そう語り掛け、全員で心の中で各々語り掛けてその場所……空港火災で亡くなった魔人の墓に帰還を誓う。
彼女は姉さん曰く、人を傷付けることに深く苦しむような優しい子だったと話す。だから彼女の前で、また帰ってきて安心させるようにと願掛けして誓うのだ。
……いつか姉さんや彼女を苦しめた篠宮と蔵木を殺して、それをみんな無事で報告出来る日が来ることを願って。
作戦開始と行こう。
「オイオイこんなとこになんで人が来るんだよバカじゃねえの!?」
この作戦は何事も無く完遂されると油断していたのが間違いだった、原種をターゲットにするなら何かしらストーリー進行があってもおかしくないと冷静に判断すべきだったと今更後悔する。
何者かが空から急接近してきていると報告が上がって咄嗟に姉さんと二手に別れてしまったが悪手だったか……?
「フハハハハハ!!俺様はEXCEEDSの者だ!!何者かは存じないが、ここは今から我々が侵略種駆除を行う故退避されたし!!繰り返す!!ここは今から我々が侵略種駆除を行う故、危険が伴う為退避勧告を行う!!」
様々な思考が交差する中、遂にEXCEEDS隊員と思われる声が聞こえ……聞こえ……?
いや、ちょっと待て、待て待て待て!?
リリカルなのはの現地調査員みたいなメインキャラにこんな癖の強い男はいなかったはずだぞ!?
それにあの声……どこかで聞き覚えが、いやどこかどころじゃないここ数日で聞いた声だそれも思い出さなくても嫌でも思い出すレベルの関係性の!!
そんなはずは無い、嘘だろと言う思いと今身を晒すのはあまりにも悪手だろうと言う理性を、だが奴の声が本物なのか知りたい知るべきだという本能に負ける。
俺は……身を晒して『声の正体』と対峙する。
そして――
「え」
「ん?あっ」
目が合った。
お互い、見た瞬間全てを察した。
と同時に数日前の記憶がフラッシュバックする。
「お、おまっ、嘘だろオイ!?」
「ふ、フハハ!ままままさかテンマがまじまじ魔人狩りだとはァ!?」
フラッシュバックして、同時に壊れた。
助けて、いやほんと。
どうすんのこれ。
新名アオイ
原作よりトワとの距離が近くなり気安く呼び捨てで呼べる関係になっている
感覚としては近所の慕ってるお姉ちゃんみたいな感じとはアオイの談