夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
ヒロインside3連続の理由は6話の話をなるべく後ろに持っていきたいからです、少しでも長く毎日投稿を続かせる為にも違和感無くタイミング良くここで投入と相成りました
「およ、ユズじゃーん!ゲームしよっ」
「分かった、何する?」
「んじゃあ〜、レースゲーム!前はユズに負けちゃったからね!今度は負けないぞ〜」
今のアタシは幸せか?と問われれば間違いなく幸せだって答えられる、でもその中で幸せだけしかないのか?と聞かれたらそれもまた違うと答えると思う。
ユズやにーやんは感覚的には妹や兄みたいに思っている、でもそれは本当の家族じゃない、本当の家族は別にいる。
アタシが魔人に関わる前、家族とは本当に仲が良くて家系もシオリ程じゃないにせよそこそこ恵まれていて、何一つ不満が無くて、悩みらしい悩みも無くて……1つの憂いも無い幸せな日々だったのを良く覚えている。
――あの日もこれからの自分や家族は変わらないままずっと幸せに暮らしていけるものだと信じて疑わなかった、確かに侵略種の話は聞いていたし遭遇することもあったけどハンターがいてくれたし油断していなきゃどうにでもなると。
みんながお休みの日に家族団欒で遠出をして、今日も楽しかったんだって言えるそんな何でもない普遍的な日常をすごして、明日を当たり前のように迎えるんだって……
その日常が、唐突に壊されるまでは。
「うっ……あぁ……」
「大丈夫、か……?アオイ……」
「あ、アタシは大丈夫……だけど、パパ、ママ……」
何が起きたのか分からなかった、運転してたパパが声を上げたと思ったら強い衝撃が来て気が付いたら車がひっくり返っていたとしか、いやそれさえも当時は混乱してて分からなかったんじゃないかな。
痛む身体で周りを見渡していると、声が聞こえた。家族じゃない、知らない男の人の声と女の人の声。
「おい大丈夫か!?生きてるか!?」
「だれ……?」
「私達はあなた達を助けに来た。でももう少しだけ待っててほしい、今外はあなたを狙う奴らに囲まれているから」
「囲まれている……?」
「簡単に言えば人型の侵略種だ!ちっ!なんでこんなにいるんだよ!おいシオリ!ユーナ!そっちは大丈夫か!?……一応何とかなってる?なら良いが、無理はするなよ!」
ゆっくりと耳をすませば、確かに外では異様な気配と唸り声みたいな何かが聞こえた。それが侵略種だと言っていたけれど、人型というのは聞いたことが無かった……人が侵略種になる?それとも人を模した侵略種?どちらにせよそんなのがいるんだとしたらなんで今まで私達は知らないでいたのか?分からない、分からないけれど……車の隙間から見たのは間違いなく何人もいる人の形をしたバケモノ。
その内数人はこっちを守っている、それが驚きだった。
「お前ら……私達の邪魔をするなァ……」
「やっとの思いで見つけた肉……肉ゥ……新鮮で美味い肉……渡さない……渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない!!!」
「寄越せェ……寄越せェ……!!お前ら諸共!!」
「やらせる訳ねーだろが!!姉さん、2人で誰かを守りながら3人相手はキツいだろうけど」
「それでもやるしかない。幸い引火やガス漏れしてるような匂いは無いから大丈夫かもしれないけど、万が一があるから早く助けないと」
「ほんっとどいつもこいつも弱い奴ばっか狙いやがって……狙うなら俺達にしろや!クソが!というかなんでこんなにいるんだよ!?」
アタシを守ってるバケモノの内数人は声を掛けてきてくれた2人だった、なんで同族っぽい連中が守ってくれてるのか分からないけどそれだけで少しだけ救われる気がした。
家族は脚を怪我してて動けないけれど、他の場所はあまり怪我をしてないみたいだし希望はある……怖いけどそんな風に思っていた。
「まずは1人……テンマ、もう1人は私が相手する」
「助かる!一応姉さんの方は手負いにしとくから!ああもう!人数多い癖に全員回復能力者かよしつこいなぁ!!」
「それでもこれで1人が1人ずつの対応に……!?待って、もう1人!?」
「は!?嘘だろマジかよ!!おいそこの!!何とかして逃げろ!!」
「え……?あっ」
でも隠れていたもう1人によって首元に何かを刺された、あの時は何が何だか分からなかったけどあれが魔人化薬だったんだろうね。身体が熱くて痛くなる感覚に襲われて気持ち悪くなったのを今でも覚えてる。
今振り返ると、それが助かる唯一のチャンスだったんだけどね。
「うっうああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!?痛い、いたいいたい熱い……!?」
「チッ、テメェら……!!」
「あは、あはははは!!魔人こそが最高級のご馳走なのはお前らも魔人なら知ってるだろう?私達は食事をしているだけ、それになんの罪も無い!!」
「そんな訳無い……!!魔人でも人間を食べずに過ごせている人達はいる!それにお前達は自分から力と快楽を得る為に魔人になったのを私は知っている!」
「おっとそれ以上近付かないでよ?近付いたらコイツら食っちゃうからね?」
痛いし熱いし怖いし何か良く分からないけれど、人質にされたということだけはハッキリ分かった。そしてこのままアタシが食われたら家族もみんな食べられてしまうというのも本能的に感じ取った、間違いない、このまま死ぬ訳にはいかない。
話を冷静に考えると、アタシを人質に取ってるコイツも、守ろうとしていたあの人達も『魔人』と言っていた。発言を思い出すと『同族喰い』が『魔人』の一番のご馳走らしい……何を打たれたのか分からなかったあの時のアタシでもここから推理した時、その自分自身が『魔人』になったのだと直感した。
「さあどうする?そこの2人の人間を差し出して私を逃がすか、抵抗して全員食われるか……選んで良いわよ?」
「つくづく外道な……」
守ってくれてた人達も手が出せない状況だって理解した、つまりこの状況動けるのは食糧扱いされてるアタシだけ。今までこんな環境にいたことがなくて怖くて身体が震えている、心臓もバクバク言ってる、これで失敗したら少なくともアタシも家族も死んでしまう、でもここで動けなかったらどちらにしても死んでしまうのは変わらない。
今でこそ何度も危ないことしてきて慣れたけど、あの頃は幸せしか知らなかった。侵略種が危ないってのは知っていたけれどそれ以上は何も知らないただの一般人だった。
急にこんなことになって泣きたいくらいで、でもそれ以上に死にたくない、生きたいと叫びたくて。
「うおりゃあ!!」
「がはっ!?……こ、コイツ!!食糧の癖にィ!!」
予備動作の少ない肘鉄、それを腹部に決めて脱出する。
足もガクガクになってるけどそれでも決めた、決め切った。
運動なんてあんまりしてこなかった自分とは思えないくらいの力が働いていたのを感じる、これが魔人の力なのかと。
「――キミ、勇気あるね」
「やるじゃねえか」
「このまま死ぬのなんて嫌だ!!死にたくない、だから全力で抵抗した……アタシ相手なら油断してるとお、思った、し……あ、脚に力入んない……」
「ここで休んでな。実質お前がアイツを倒したようなもんだからな、だから――胸を張れ、お前はバケモノじゃない。誰がなんと言おうと人間だ」
「私達が何があってもキミを救う、だから待ってて」
へたり込んだアタシにそう言って笑いかけてくれた男の人――にーやん、女の人――トワ。
あの日アタシは2人が憧れになった。
「わたしの勝ち」
「うへぇ〜また負けた〜」
あれからアタシには後輩も出来て、順風満帆に過ごしている。
でも本当の家族からはちょっと距離を置かれてしまった、まあ自分の家族がある日人間じゃないナニカになったと聞かされたらそうなるのは仕方ないし、救えただけ良かったと思ってる。
家族と距離を置くと決めた日、にーやんは何も言わずに一晩中抱きしめてくれた。救えただけ良かった、家族じゃないけどこれからは仲間がいる、それでも、それでも……家族は、家族に代わる存在はいなかった。あの日まで、何の憂いも亀裂も無く笑顔で仲良く過ごせていた家族は、もういない。お礼を言われた、さすがアオイだって言ってくれた、それでも、ほんの少しだけ手が震えていたパパの姿を、目を一瞬逸らしたママを、今でも鮮明に覚えている。
震える身体を、止まらない涙を、にーやんは抱きしめて受け止めてくれた。慰めの言葉も元気付ける言葉も何も言わずに。でもそれが、その優しさが心地良くて。更に泣いちゃったよね。
『あ!アタシもにーやん大好きだけどね!』
『にーやん!アタシ達の事は!?女の子として見てくれてるー!?』
ねえ、にーやん。
あの時言った言葉、本気なんだよ?
優しくてカッコよくて憧れで、本当のお兄ちゃんみたいに思って、そんでそれ以上に大好きな男の人として、大好きなんだよ。
きっとにーやんには伝わってないよね、そういう人だってアタシは良く知ってるからね。
「ただいま〜」
「あ!にーやんだ!」
「おにいさん、おかえりなさい」
「ようユズ、アオイただいま。今日はユズがカレー作ってくれてんだよな?楽しみだな〜」
「えへへ、きょ、今日は一番自信があるんですよ?」
「むぅ、アタシも料理覚えよっかなあ」
「良いじゃねえか、アオイも要領良いしすぐ覚えられるぞ」
「そうかな〜うーん……にーやんの為に覚えるのもアリかも?」
アタシね、仲間の為なら命張れるんだよ。
その中でもにーやんは特別。
にーやんが生きる為ならにーやんに殺されたって良いって思ってる、それで生き残ってくれるなら自分が死ぬくらい安いんだよ。
たとえアタシが報われなくても良い。
あの人が最後に笑っていてくれるなら、それで。
「大好きだよ、にーやん」
「アオイ?なんか言ったか?」
「ううん、なんでもなーい」
それで、良いんだよ。
新名アオイ
とんでもねえ激重感情と化した
もっと爽やかな恋をさせてあげたかったけど急に超激重感情で脳内で動き始めたから仕方ない
アオイ達を襲った魔人集団
10代後半〜20代前半の女不良集団から成る徒党
下手に組織を組んでいない為全員で人間を待ち伏せして襲うあまりにも野蛮で暴力的な方法で喰らっていた
普段から違法薬物に手を出していた流れで手を出して魔人になったので戦闘は素人同然だが全員が回復能力持ちという死ぬほど厄介な連中
当時のテンマ達
テンマが幻覚能力非所持だった為まだ理性が大分残ってた今回の連中にもまあまあ手こずっていた。シンプルな実力なら一瞬で決着が着くレベルで差があるが相手が肉壁として優秀過ぎた