夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「悪いな、無理言って」
「フハハ!!問題無い!!但し今日は丸1日の休暇ではなく半日!夕方には帰らねばならぬ!!そこは申し訳ないと思っている!!」
「それを言うなら半日でもせっかくの休日に急に呼び出した俺の方も申し訳ないと言いたいくらいだ、問題無いと言ってくれたのは分かってるがな」
「友人同士、その辺りは無礼講だ!!それよりもまずは腹ごしらえだ!!……本当ならパーッと店をハシゴして思う存分味わいたいのだが、今回テンマは『急に呼び出した』のだ。相応の話があるのだろう?俺様が誰にも言わず秘密で買い上げた地下室で話そうではないか。なに、長期居住する為の設備は整っているから心配は無い」
「用意が宜しいこって」
姉さんの話を聞いた翌日、俺はかなり無理を言ってしまったが何とかしてコウイチ……いや、光一と会っていた。
昨日その日の内に連絡を入れ、次の日夕方前まで休暇を取ってくれた光一には感謝しないといけない。ところでコウイチの名前をそれとなく聞いてみたがやっぱりカタカナではなく漢字の方だった、当たり前だが瑞穂の出身ではなかった。
そんな訳で今日は話し合いがメインになるので、EXCEEDSの面々にすら内緒で買い上げたという瑞穂某所の完全防音設備ありの地下室で話をすることとなった。
街中やスマホ越し、或いは個室でも誰がどこでどう話を盗聴しているか分かったもんじゃ無さすぎるからお互い察してるであろう転生者同士の話は勿論、EXCEEDS、魔人狩りの話も今まで出来ないでいたからな。
何日にも掛けて話したい事があるが今は時間が限られている、早く移動しよう。
「ここからは場所の特定を他者に防ぐ故、隠密と気配遮断の術式を掛けるぞ」
「助かる。生憎と俺にはそういう小手先の能力は無くてな」
「ふっ、そうだと思ったぞ。隠密能力はどの世界においても希少価値が高いからな」
《ATTACKRIDE INVISIBLE》
途中裏路地に入った時に姿を隠して移動する、さすがEXCEEDSにいるだけあって用意周到だ。
しかしINVISIBLEか、本当にディケイドやディエンドは便利な能力が多い……
「ここが正規入場口だ、他人に万が一にもバレないようにという裏社会特有の地下道ルートはロマンを感じるだろう?」
「まあそれはそうだが……ちゃんと魔人化薬とかに手を染めてない集団から買ったんだよな?」
「それは当たり前よ、テンマが雇い入れているような昔ながらの仁義と契約に重きを置いている組織だ。本来なら国連がそうした機関から何かを買ったり取り引きを行うのは御法度だろうが、身内にすら話せないシークレット故な」
「それなら良い、しっかしこういう物件ちゃんとあるもんなんだな」
裏路地を細かく曲がった先にあったのは大き目のマンホール、その下が下水道ではなく地下室に繋がる唯一の道になっているのだとか。
ちなみに物件ではあるが完全に地中に埋もれている建築基準法も何も無い違法物件なので存在がバレたら光一は謹慎処分以上にはなるだろうな、だからこそ完全単独の孤立してるような裏組織から買ったんだろうが。
地下道は薄暗く更に完全に壁に見立てられた隠し扉を複数個経由してようやく部屋に辿り着くため、俺ら男子からしてみればロマンの塊であった。
それに地下室の入口さえも一見するとただの壁なので最後までどこが地下室か分からず臨場感に溢れていた、なんて最高な空間なんだろうか。
「着いたぞ」
「ここが……」
「購入者にだけはどこにどう扉があるか検知出来る仕組みになっていてな。だがどうやって判別していたか全く分からないだろう?」
「いやあ何も分からなかった!」
「そう言う割にとても満足そうな顔をしているな。やはり『ロマン』だろう?」
「本当にとんでもなく楽しかったぞ」
盛り上がりながら入り、あらかじめ準備されていた食事をいただく。ひとまずお互い落ち着いたのを確認し、口を開いたのは俺の方だった。
「積もる話もあるだろうが、今回は簡潔な事実確認と状況確認、情報交換に留めておきたい。光一のこともあるが、俺は数日以内に海外に発つ予定があるからな」
「そうか、分かった。では俺様の質問にテンマが答え、俺様が答え返す方式で行こう」
「了解した」
お互い時間が無いのも確認した、あっちとしてもこんな急に呼び出してきた辺りから察しはついていたんだろう。
「では1つ目、テンマは『リリカルなのはの作品を知っている転生者』か?」
「肯定だ」
「俺様も同じだ。では2つ目『EXCEEDS Gun Blaze Vengeance』についてはどの程度の情報がある?」
「予告編のみ、1話直前で死んだ」
「むっ、なるほどそう来たか……俺様は7話まで見ていた。そこそこの情報はあるが結末までは分からない」
「だとしたら色々と助かるぜ。悪いが今何話時点の辺りにいるか教えてもらっても良いか?」
「6話だろうな。魔人狩りが海外に発つと言うのは『篠宮マナ』『蔵木エイジ』から身を隠す為だろう?」
「正解」
「その話は6話で挙がっていた、現状6話中盤付近だろう」
大きな情報が来た、光一は7話までの話を把握しているのと現状が6話中盤辺りであろうということだ。
リリカルなのはという作品は半分以降から話がとんでもない勢いで加速していく、終盤でなかったのは残念だが得られた情報は限りなく大きい、これを活かさない手は無い。
「6話の話はどういう感じになってた?」
「……聞く覚悟はあるか?6話、7話に関して」
だが急に光一の声のトーンが落ちる。
察した、つまりはこの6話と7話は今までの比にならない程の地獄みたいな展開があるのだと、それでも本当に聞く覚悟はあるか、その先で何を成すのかを決めろという決断を迫る顔付きと声だ。
……俺の答えは決まっていた。
「ああ、どんな内容だろうが聞かせてくれ。まずは6話からだ」
「その覚悟確と受け取った。6話は序盤が篠宮、蔵木の出会いから今までを描いている、そこはどうでも良い。中盤はシイナにトワが海外に発つという話をしたり、トワが助けた猫の飼い主家族と親交を深める日常パート。……そして終盤、同日に寄生型侵略種による大規模テロが篠宮、蔵木によって引き起こされる」
「はぁ……リリカルなのはらしいジェットコースター振りだな。……いや待てよ?同日?それって……」
「察しが良いな、『今日』だ」
「オイオイ……」
決まっていたが、まさかその騒乱が起きるのが今日とは思わないだろうが。
それも大規模テロ?篠宮と蔵木による?……ふざけるのも大概にしろよ、どれだけの人間が被害にあうと……被害?
「なぁ……まさかとは思うが、中盤で親交を深めていた猫の家族は……」
「…………そのテロに巻き込まれて死ぬ」
「クソがッ!!」
やっぱりかよ、この世界観は今までのリリカルなのはシリーズよりも格段に人が軽々しく死んでいくから嫌な予感がしたがクソッタレが。
姉さんとシイナが紡いだ絆が、人の笑顔が、命が、そんな簡単に壊されて良いはずが無いだろう。
しかし話が脱線してでももう1つだけ、どうしても聞きたい事が出来てしまった。
「……落ち着け、今はまだ起きていない。だから早朝に呼び出したのだ、テンマと俺様とでなら運命を変えられる……テンマは既に変えたのだろう?セツナと夜海家の運命を」
「そうか……ああ、そうだったのか……俺は……」
やはりだった。6話の話を光一から聞く限り違和感を覚えた、それは『セツナがいない』ということだ、つまり既にセツナが亡くなっている可能性があるのではないかと聞いてみたが案の定。それも『あの日』死んでいたとは……それに親父と母さんも、空港火災で死んでいたと聞かされてゾッとしない訳が無い。
今の幸せな暮らしからセツナと両親がいないなんて考えられない。
だが救った、変えたんだ、俺は、俺が、運命を。
だったら今度だって変えられるはずだ。
「俺様とテンマなら、変えられる。俺様もそこそこの運命を変えてきた自負はあるのでな」
「そうだな、俺と光一でなら……よし、早めに7話の情報をくれ。そしたらもう出よう、場所は分かるんだよな?」
「場所は東和記念公園だ、だが7話はその公園での爆弾テロは陽動と明かされ寄生型侵略種を大量に積み込んだ無人列車が暴走、そこでEXCEEDSが魔人狩りに協力要請を出す。がそこでシイナとトワがお互いの正体を知ってしまう。更に言えばそれそのものも恐らくは罠……騒動に乗じて夜海トワが指名手配される」
「チッ、次から次へと篠宮蔵木は本当に……!!」
気持ちを切り替えたのも束の間、7話時点で姉さんが指名手配されるとは……どこまで卑劣な奴らなんだよ。クソ、これが無差別に選出された指名手配ならまだしも意図されてるからこっちにターゲットを移すのは無茶がある。
「俺様が知ってるのは残念ながらここまでだ。そこから先はどうなっているのか予測不可能……しかし!!必ず!!何があっても!!俺様とテンマと、そして今いる仲間達を集結させれば!!きっとどんな運命も乗り越えられる!!そう信じている!!」
「ああ……ああ!!必ずだ!!」
だが、どんな無茶だって乗り越えてみせる。
光一だってきっと無茶苦茶な事をして苦難を乗り越えてきたんだろう、その目は全くもって死んでいない。
堅く、堅く、握手を交わすのだった。
-オマケ-
「そういやこの料理とか部屋の管理とか、誰がやってるんだ?さすがに1人じゃこの部屋の管理がここまで行き届いてるのは無理だから必要最低限の転生の秘密を話している協力者はいるんだろ?」
「ああ、それか。俺様の使い魔になったアリシアとリニスがやっている」
「……ごめん今なんて?」
「フハハハハハハ!!!そうであろうそうであろう!!その反応になるであろうな!!全てが解決したらまた詳細を話そうではないか!!簡潔に言えば俺様が救済した!!とだけ伝えておこう!!2人は俺様と一心同体、いつでもどこでも《KAMENRIDE》で呼び出せる!!時間が無いから今はしないがな!!」
「あまりにも話が飛躍し過ぎて脳みそが処理しきれないから一旦聞いた事をそのまま受け取るがお前神だよってことだけは伝えておく」
「俺様視点ではセツナと夜海夫妻がそれに値するがな!!お互い超ファインプレーだな!!ハーッハッハッハ!!!」
この話が開示されたということはそろそろ本編に追いつきかねないということでもある…毎日更新が終わるのが先か、アニメが終わるのが先か…