夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「よし、準備OK。対寄生侵略種カウンターセット……光一、INVISIBLEを」
「うむ、黒耀」
『Roger』
《ATTACKRIDE INVISIBLE》
あらかたの情報を整理した俺達は警報が鳴る前に準備をして東和記念公園に向かうということになった。
その中で俺が使う能力は、久々に使うことになった『侵略種完全使役』。何とかして寄生型侵略種を懐柔出来ないかこの数年試してみて絆を紡ぐことに成功した数体の寄生型侵略種を、この作戦に投入することにしたのだ。寧ろ今ここで使わずいつ使うのだというレベルで最適解の侵略種になる。
「サンキュ」
「構わん、しかし侵略種に心を芽生えさせ心を交わし合い使役するとは……魔導師や魔人では手が届かぬ場所や人手不足もこれで解決出来る可能性があるな」
「その為には光一みたいにストレートに理解して納得してもらう必要があるけどな。姉さんや両親はすぐに信じてくれたし、魔人狩りのメンバーにはこれに似た能力持ちがいるからすぐに納得してもらえたが」
混乱防止の為に光一のINVISIBLEでこの侵略種達を俺達以外に認識出来ないようにしてもらい、硬化も発動しておく。
さてこの寄生型侵略種達だが、人に取り付いても爆発しない。人に取り付くと既に取り付いている侵略種を弾き出しその人間を支点として防御結界を張る完全な人間を守る為の侵略種となっている。防御結界はそこまで大きくないがメインは寄生しないと爆発出来ないシステムを封殺する方だ。
ちなみに俺が使役出来るようになるとこうして人の害になる能力が反転したり、普通の食い物でも満足してくれるようになるのでデメリットが本当に存在しない。
「なるほどな。時空管理局のお上は知らぬがなのは、フェイト、はやて、それにシイナとセツナ、それに近しい局員達は間違いなくテンマを信じるだろう」
「平和になった世界でもコイツらが生きていけるような、そんな理解者がいてほしいもんだよ。――さて、向かうか」
「うむ。まだ昼前だから警報までには余裕があるはずだ、下劣なことに奴らは人が一番集まる昼頃を狙ってテロを引き起こしている……アニメでは圧倒的に情報も人手も足りていなかったから犠牲者が大量に生まれた。だが今ここには未来を知っている、実力もある、あの場に存在しなかったはずの『人手』が2人もいる」
「勿論、大切な人達を守りたいってのもあるが……原作知識あり転生者の使命だよな。俺はほぼ知らないけどもうこの直後の話は知ったしな。クソ野郎共に一泡噴かせてやる」
「必ず止めてみせようぞ」
全員を一旦俺に寄生させて走って東和記念公園まで向かう、車や自転車を使った方が全力疾走よりも速いがあれらは不測の事態になった時の小回りが効かないからな。
お互い長年の死線を潜り抜けてきた同士、フィジカルに自信があったのもあり予想より大分早く着くことができた。
現状人は確かに多いがピークというにはもう少しといった感覚か、ここで俺に寄生して張り付いていた侵略種達に寄生型の探索を指示する。侵略種は侵略種の匂いを嗅ぎ分けられる個体がいるのを利用して覚えさせておいたのだ。
「まだ一応は大丈夫なようだな」
「しかしそろそろピークが来る頃合いだ、他の探索はどうする?俺様の探知魔法を使うには瑞穂は少々魔力効率が悪過ぎるぞ」
「……本当なら見捨てる方がリスクは伴わないんだろうがな。俺のワガママだ、リニスとアリシアを使ってもらいたい。防御の方は防御結界特化の寄生型侵略種を宛てがう」
だがいくら手数が増えたところで数体しかいないのも変わらない、全ての爆発を止められるとは思えない……このままなら。
本当なら仕方ないと諦めてもおかしくはない、姉さんと仲良くなった家族を救って大半を止められれば上出来なんだから。
それでも俺は1つでも多く止めたい、1人でも多くの人達を救いたい、全ての可能性を強引にでもやってそれでもダメだったのなら堪えるしかないがそれをせずに後悔なんてしたくない。
せめてこの公園内だけでも死者0で乗り切りたい。
「仕方あるまい、防御結界の保険付きであることとテンマを信じる俺様自身の気持ちに正直になるとしよう。無断での使い魔召喚は規律違反になる可能性も高いが怒られる時は共に怒られよう。少しこの場を離れてから召喚して連れてくるぞ」
「ああ、怒られる時は俺もだ。ありがとう、頼んだ」
光一に何人彼女がいるかは分からないが、話を聞く限りアリシアとリニスには転生者であることを明かしている辺りはほぼ間違いなくそうであると推察出来る。
その2人を貸してほしいと頭を下げた、愛する人をテロが起きると分かっている場所へ派遣するなんていくら使い魔状態で恐らく大丈夫とはいえ普通は胸ぐら掴まれて殴られても何もおかしくない、それを知っていて俺は頼み込んだ。
「ほんと、アイツには頭上がんねーわ」
ふっと笑みがこぼれる。
「待たせたな」
「なるほど、ここでその……が起きるということですね」
「わたし達の力が必要なんだよね?」
それとほぼ同時に光一『達』が帰ってくる、アリシアとリニスはどうやら快諾してくれたようで心強さが増す。
「キミ達には危険なことを頼んでしまって、済まない」
「問題ありません。私達もEXCEEDSの隊員ですので、人々を守るのは当然の仕事です」
「それにコーイチのトモダチの暮らしてる世界だもん、仕事もそうだけど守りたい!って気持ちがたくさんあるよ」
「なので光一さんに頼られたのは非常に光栄なことなのです」
「では早速頼めるか?」
「それじゃそれぞれコイツらを肩に。これは俺が使役しているので安全な奴らで、防御結界が張れるようにしてある」
「助かります。……それではお任せを」
「ありがと!行ってくるね!」
危険だと分かっているのに笑顔で助太刀してくれるとは……感謝してもしきれないな。
「……後は『目』次第か」
ここから後何分あるかは分からないがほんの僅かでも心を落ち着ておく必要があるだろう、意識して深呼吸をする。『侵略種完全使役』は意識すれば各侵略種をカメラ代わりに現在位置を光景として見られる。
俺の使役している寄生型に弾かれた寄生型は次に寄生を行えるまでラグを生じさせられるように能力を成長させてある。つまり『目』と『ラグ』を駆使すれば他の人間に取り付く前に駆除出来る、対魔人の対策以外も揃い踏みってワケさ。
『目』を全ての使役侵略種と同期させもう一度深呼吸を終えた時、遂に街中にサイレンが鳴り響いた。
「ここから先は各自判断ってことで!」
「うむ!」
軽くグータッチを交わし光一は騒ぎのより大きい方へと向かった、そして俺は……
「ビンゴ!それも全員ほぼ同時かよ!」
同期していた『目』全員がほぼ同時に人間に取り付くのを確認、一番近いところから順に急行する。
「そこの警官達!ここはハンターの俺が引き受ける!住民の避難を優先させろ!」
「キミは……夜海君!?分かった、自分の半分くらいの年齢の人間に託すしかないのが心苦しいがここは任せるよ!」
「センパイ!?」
「彼は大型侵略種の駆除を何度も行ってるエリートだ、俺達より余程適任だ」
警官にも知り合いを作っておいて正解だったな、と「任せておけ」とサムズアップする。
「ロック……シュート!」
確実に、冷静にターゲットを撃ち抜く。
慌てて乱射して市民に当ててはいけない、ターゲットだけを迅速に撃ち抜かねばならない。
「2体目……3体目も!」
だが心の中には滾る炎を確実に宿らせ、着実に処理。
出来ることなら全員救うのが目標だが……どこだ、どこにいる、姉さんが見せてくれたあの猫と一緒にいる家族は。
あの人達を救えないなら俺に生きている資格は無い、絶望を希望に変える事が出来ないなら意味が無いんだ。
何体も何体も、目で確認出来なかったのも大量に撃ち抜いていく。数え切れないくらいの量をとにかく撃ち抜いて、撃ち抜いて、撃ち抜いて。
「あと1体か……!?」
頼む、いないなら出来ることなら逃げていてくれ、それか光一達に助けられていてくれ……そう願いながら残り1体の元へ向かう。
――そこには。
「ぱ、パパ……ママ……」
「せめて……せめて娘だけでも……!!」
「む、娘には手を出さないで!!」
「にゃあ……!!」
今にも再寄生しようとしている侵略種、そして……いた、件の家族。
……瞬間、俺の怒りのボルテージが一瞬でMAXまで上がる。
理解したのだ、あの侵略種は爆殺出来ないならと姉さんが大切に絆を育んだあの家族に寄生しようとしていることを。
「許す訳ねえだろ、それをよ」
これほどまでに怒っているのに、今までの中で一番冷静に撃ち抜いた。
俺はこの時、明確に心の中に芽生えたものがある。
話に聞いていた、魔人化薬に関わる所業だって見てきた、だから篠宮と蔵木には元々憎悪はあった。
だが……だが。
今目の前で行われようとしていたことは、それを遥かに凌駕する。
姉さんの大切なものを簡単に奪おうとした、姉さんの笑顔を奪おうとした、それを目の前にして……
『誰の手でも無い、俺の手で殺す』
篠宮と蔵木を必ず殺してやると、自分の中で何かが黒く染まっていく感覚を覚えながら誓うのだった。
夜海テンマ
緊急事態だったので噛み締められてはいないが今話のアリシア、リニスが初の漫画版EXCEEDS及びEXCEEDS Gun Blaze Vengeance以外での原作キャラとの会話になる