夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「お、おにいちゃん!たすけてくれてありがとう!」
「……あ、ああ!怪我、無いか?」
自分の脳内がドス黒く染まって行く……という中で助けた女の子から声を掛けられてハッと我に返る。今はこんなことをしている場合じゃない、助けられたんだから避難させないといけない。
「だいじょうぶだよ!」
「助けていただいて、なんとお礼をすれば良いか……」
「礼は良い!それよりここは危険だから早くその子を連れて避難しろ!」
「分かりました!本当にありがとうございます!」
「このお礼は必ず……!!」
「おにいちゃん、がんばってね!」
「おう、任せとけ!警察が誘導してるはずだからそっちに行けば安全だ!」
今のところ同期させた目による他の侵略種発見及び目視の発見は無い、油断は出来ないがかなりの数を殲滅させられたはずだと達成したことをわずかながらに噛み締める。
ふぅ、と軽く息を入れると視界にあの親子と姉さんがすれ違うのが見えた。
「テンマ!大丈夫!?」
「俺は問題無い、だけど多分俺がいなかったらかなりまずいことになってただろうな……今のところ少なくとも五箇所以上での寄生型侵略種を発見してる」
「じゃあ……テンマがいなかったらあの人達は……」
「正直かなりギリギリで助けたから、まあ言葉を濁さず言えば相当危なかっただろうな」
「……ありがとう、テンマ。みんなを、あの人達を助けてくれて」
「気にすんな。それよりまだ公園内にいるかもしれないから探すぞ。……外にはまだまだいるのはほぼ確定だが。あと協力者もいるからそこも把握よろしく」
「分かった」
何はともあれ一旦姉さんの笑顔を守れたならヨシとしよう。
まずは光一と合流してから公園内をどうするか決めないとな。
「テンマ!強引にサーチと探索をしてみたが公園内に今のところ侵略種はいない!」
「目視なのであまり対応出来ませんでしたが、対処しきれたみたいですね」
「それじゃ次は公園の外で、だね!」
光一組も帰ってきたようだ、それにサーチを掛けてくれたみたいで助かった……瑞穂は魔力効率が悪いと言っていたのにもかかわらずそこまでしてくれたことに感謝が尽きない。
「テンマ、この人達が?」
「ああ。……EXCEEDSだが組織には無断で俺と動いてくれたんだ」
「EXCEEDS……いや、今はそれを気にしてる暇は無いね」
「うむ、テンマの姉上。だが俺様達にもEXCEEDSから緊急連絡が来た故ここから先の侵略種対処は『国連機関・EXCEEDSとしての仕事』となる。あまり顔を合わせない方がお互いの為であろう」
「そうだな、それじゃお互いこのテロを止める為に!」
「うむ!また会おう!」
しかしやはりと言うべきか連絡は入っていたようで、ここから先共闘という形はあまり取れなさそうだった。
この直後にEXCEEDSから魔人狩りに対する協力要請が入るから、再び合流するのはその時だろう。
本来ならこのまま向かうところだが、1つ聞いておきたいことがあったのを思い出して相変わらず『目』でサーチしつつ話しかける。
「……姉さん、1つ良い?」
「なに?」
「このテロさ、もしかしたら……もしかしなくても、篠宮と蔵木が姉さんを釣り出す為の罠の可能性が高いと思ってる。政府が裏社会と繋がってる以上、このテロの情報をマスコミや公安に操作させて姉さんが指名手配されるルートも考えてる。正直それを分かってて姉さんを突っ込ませるのは俺的にはあんまりしてほしくないと思ってるんだけど……その辺どう?」
「全部覚悟の上だよ、こうなった以上逃げられる前に捕まえようって魂胆なのはこっちとしても予測してるからね。……みんなには辛い思いさせるかもしれない、それでも父さん、母さん、私達が……暮らしてきたこの場所を守りたい」
「しゃーね、そんじゃ姉さんだけ引いてくれなんて無理強いは出来ないな。他の子らは知らないが俺は一蓮托生だ、どこまでも着いていくよ」
光一は全てを語る時間がないからと端的な情報を言っていたが、そこから精査とこれまでの政府のムーブなんかを考えると十中八九マスメディアや公安が裏社会と繋がっているのは間違いない。
つまり姉さんが行動すればするほど指名手配されるリスクが上がる、だがそれを『覚悟の上』と言い切った。
だったら止められるはずもない、俺はその覚悟を聞いたのなら後は一蓮托生、共に地獄へ舞い降りる決意を固めようじゃないか。
……そのまま地獄に居続けるのは俺だけだがな。
「テンマこそ、私を単独行動させて安全に対処してても良かったのに」
「バーカんなこと出来るかよ、血の繋がりが無くても俺ら姉弟だろうが。だからユズがもしそう言ってきても俺は止められない、だが今姉さんの状況と覚悟をどっちも把握してんのは俺だけだ。なら一蓮托生で共に地獄への招待状を受け取るのは俺の役目だ」
「……分かった。でもお互い生きて帰ろう」
「あたぼうよ。っと、どうやら俺の使役してる連中が今結構な数を見つけたっぽい!行くぞ姉さん!」
「うん」
お互い覚悟は決めた、生きて帰ろうと言ってはいるし親父、母さんとの約束を違えたくはないと思っている。
それでも、もしかしたら篠宮と蔵木と、直接対峙する可能性があるかもしれないならば……相応の『万が一』はケースとして考えておかないといけない。
使役していた連中からの情報を元に辿り着いた先の、大量にいる寄生している奴らを潰しながら思考する。
『トワ!テンマ!聞こえますか?臨時ニュースでEXCEEDSから私達への協力要請が出ています』
そうして使役しながら爆発しないように安全に人から侵略種を引き剥がして殲滅していると通信用の蜘蛛からシオリの声が聞こえてくる、タイミングが確かならそろそろってところだったしここからは共同戦線組もうやってところか。
「……あの時の子かな」
「どうするよ姉さん、俺はEXCEEDSの事はあんま知らないけど」
「信用しきれる訳じゃない、でもこの惨状を放っておくのは本末転倒。ユズ、メッセージを送ってもらえる?」
『問題ありません』
「『こちらは元凶を探して潰します』と」
『はい!』
「テンマ、みんな、こっちは魔人狩りメインで行くよ。勿論侵略種を潰しながらだけど、そっちはEXCEEDSがメインで動くはずだから見えてる敵だけ集中で」
『了解しました』
「ま、ここでEXCEEDSのことすら疑心暗鬼になってるようじゃ先には進めないからな。取り敢えずは託してみますかね」
本当はめちゃくちゃ信頼しているが、ここでそれを言えばどこでどうやって情報を掴んだのか分からなくていくら姉さん達と言えど怪しまれるのがオチだ。
仕方ないがここは光一達を信じて俺達は俺達で篠宮と蔵木を探し出すことに全力を注ぐしかあるまい。
「くっ……遅かったか」
だがさすがにこの量の侵略種、全員を救える訳ではない。
駅構内の地下道に侵入したという速報を聞いて姉さんと別れて駆け付けたものの、大量に倒れている人の山に既に何名かは死亡。これが現実だというのは分かっているし悔やんでる暇があるなら動くしかないが、何も出来なかったという無念が嫌でも込み上げてくる。
「許されるものかよ、こんな事がよ」
使役してた連中を全員引っ込めて、この惨状を作り上げた侵略種達に躊躇なく銃弾を叩き込む。
「俺はこの人達に一度も会った事はない、あっちだって同じだろう。でもな、これだけは分かる。どんな人だって必死に生きてきたんだ、それを踏み躙る行為は……決して許されると思うな」
侵略種に語ったところで通じる訳が無いのは知っている、それは『完全使役能力』を持っているからこそ痛いほど良く分かる。使役していない侵略種と使役して反転無害化させた侵略種の二種類を間近で見てきたから。
だからこれは、侵略種ではなく『どこかで見ているだろう篠宮と蔵木に向けて』発言している。俺はお前らに牙を剥くぞと、絶対に噛み付いて噛みちぎってやるという意志だ。
「潰してやるよ、必ずな。お前らがどこへ向かおうと何をしようと、2人とも俺が殺す。俺が地獄への水先案内人だ」
俺が地獄へ落ちるのが確定しているのなら、引きずり込むまで。
どうせ全部終わってもみんなの前から姿を消すなら、綺麗に死んだ方が良い、その方がみんなも寂しがらないはずだ。
俺の口は、弧を描いていた。
夜海テンマ
完全使役して人類の敵ではなく心を通わせて共存関係を築かせている侵略種を新しい名称で呼びたいと思っている
「いやだってさあ、もう侵略しないし心も持ち合わせた連中なんだからアレらと同じにされたくはないだろ、なあ?」