夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
時間は少し遡ってテンマのテロ対処中の裏
そういえばトワのアニメでのムーブ見てると実年齢よりかなり幼いのかなと思ったりしてるんですよね、夜海夫妻に拾われるまで人間らしい感情多分ほぼ何も無かっただろうし
それを考えて今作を見ると、夫妻生き残ってて尚且つ『弟と妹を持つ姉』という立場になったから急激に情緒が育ったのかなーと自己分析してる次第
あとそれとは別件になりますが、もしかしたら明日の更新が無いかもしれないです、あっても数日内に毎日更新途切れます
理由は視聴分に追い付いて書けなくなるからです、その時が来たら不定期更新になるのでのんびりお待ちください
「……ふーむ、上手い事してやられたか」
「どしたのエイジくん?トワちゃんの事釣り出せた?」
「いや、それが珍しい事に作戦失敗した。コイツを見てみろ」
「んんー?誰この子?あたし見た覚え無いけど」
「夜海トワの弟夜海テンマ、どうやらこっちの動きがアイツには読めていたらしい」
「へー、そのテンマくん?も魔人?」
「ああ。魔人狩りのナンバー2で夜海トワに引けを取らない実力と結構色んな能力を溜め込んでるらしいぞ。当初の予定からは狂ったがコイツを指名手配するしかないだろうな」
侵略種や魔人、魔人化薬の製造や流通、裏社会に蔓延る様々なそうした犯罪はいつだって俺達が一枚噛んできた。10年前ただの社畜だった俺がこの篠宮マナと出会い、薄汚れていた視界は薔薇色に広がっていった、こんなにも面白い事がこの世の中にはあるのかと、こんなにも思い通りに全て上手くいくものがあるのかと俺の目は生気を取り戻しずっと成功を続けてきた、ただの一度の失敗も無かった。
だと言うのに今回初めて計算が狂った。夜海トワ、魔人狩りのメンバーにして俺達の研究施設にいたガキの1人を指名手配しておびき寄せる作戦だったが思わぬ邪魔が入った。それが夜海トワの弟『夜海テンマ』。
奴の情報は少ない。いや、正確に言うなら『ここ4年の表向きの情報は腐るほどある』という表現が正解か、職業は学生兼ハンターで瑞穂じゃ名が知れている上に奴を英雄視する声も少なくない。
夜海家には養子として引き取られたがそれが4年前、それ以前の情報はまるで霧散しているかのように探す難易度が跳ね上がる。
実の両親が魔人化薬の販売と自ら手を出していたのは把握している、それで気が付いたら死んでいたのも把握している。だがそれだけだ、死因も明確に断定されていなければ1人息子であったコイツがその後引き取られるまで何をしていたのかの情報も見つからなかった。
コイツにだけ、俺は何となく手玉に取られているように感じて仕方なかった。
「まあトワちゃんと同じくらい強いならいっかー、力を付けられるならなんだっていーよ。エイジくんのコトは信用してるからね」
「代用品としては十二分だろう。だがまさかこんな形で失敗するとはな……」
「意外だった?」
「今まで成功し続けてきたからな。それがここで失敗したらいくらフォローが効くと言っても気にはなるさ。それにコイツは夜海家に引き取られた4年前からの情報は山ほどあるがそれ以前の情報は奇妙なくらい無い、ここまで興味をそそられたのは初めてなくらいだ」
「へ〜、エイジくんがこんなにヒトに興味持つなんて確かに珍しいカモ。あたしも会ってみたくなっちゃったかも」
「まあ待て、今指名手配を掛けさせる」
「やったー!楽しみだな〜」
……更に言えば、マナは忘れているだろうが何年か前の空港火災を引き起こした事件、引いては使えなくなった実験体の炎の魔人を使い捨てるためにさせた自爆テロでも夜海テンマはいた。
あれは別にどうなろうが捨てられた時点で成功の話だからどうという話は無いが、アイツは侵略種を使いこなしていた。それも普通の魔人が使いこなすような使役の仕方ではない、まるで心を通わせ合ったかのように、侵略種側に明確な意志があるかのような動きをしながら使役していたのが記憶にある。
「他のどの能力も別に何一つ気になりはしなかっただが……あの能力だけは見た覚えが無い、どうにかして手に入れられないものだろうか……あの能力があれば今よりも格段に仕事が楽になるはずだ、人型侵略種の改良に役立つ」
楽しみと言いつつまだまだ時間が掛かると分かるや否やすぐに菓子を取りに行ったきり返ってこなくなったマナにいつも通りのマイペースすぎるヤツだと溜め息を吐き出しながら呟く。
マナはもしかしたら躊躇なく殺して食べようとするんだろうが、能力が気になってしまった以上すぐ食べられてしまうとこの好奇心を満たせなくなってしまうのがネックになる。だがだからと言って止められる力は俺には無い、俺を信じてくれているという事を利用して何とか説得してみようか。
そう思うくらいにはあの能力、侵略種を完全に意のまま操り心通わせるような固有能力が気になって仕方ない。
「アイツに食わせるにしても満足行く強さではある、どちらにせよ興味を無くす事は無いと思うが」
下手にお預けしてしまえば興味を無くすかもしれない、それはそれで不都合が多くなるのが悩みのタネと言ったところか。
ま、どちらにせよ指名手配を掛けた時どう動いてくれるか……それ次第だろう、お手並み拝見だな。
「エイジくん、どう?あの子の様子は」
「いや、どうやら俺が奴を買い被り過ぎただけだったかもしれん。思った以上にバカだった」
「へぇ、そーなの?」
「夜海トワを釣り出す為の罠だと知って止めていながら自分は仲間の静止も振り切って自首に向かっているらしい。そこまで分かっていながら自分はノコノコと餌になりに来るとはな」
「そーなんだ、ま良いやバカである分には。どっちにせよあたしが食べるんだから賢くてもバカでもどっちでも気にならないしー?」
「お前はそうだろうな」
あれから少し時間が経ち、マナがもう一度様子を見に来た頃には興味を持っていた夜海テンマへの関心は少し薄れつつあった。夜海トワを釣り出す為の罠というところまでは読めても、マナを強くする為だったらそれに見合う強さの魔人であれば誰でも良かったというところまでは気が付かなかったらしい。俺の頭の回転に比肩或いはもしかすると超えてくる天才だったのではと興味を惹いたのだが、この程度であるなら買い被り過ぎだったという結論に収まるレベルでしかないだろう。少しは手応えがあると思ったんだがな。
……まさか自首を選ぶとは。奴のこれまでの動きを鑑みるなら仲間内で結託してこっちに乗り込んでくるまでは予想していた、そもそもEXCEEDSの連中とつるんでいたにもかかわらずつるんでいた奴の力も半端に使わなかったりと不自然な行動も目立つ。
「……本当に買い被りなだけか?」
「ん?なんか言ったー?」
「いや、ただの独り言だ。それよりも警察からの連絡が来たぞ、自首してきたからこっちに運んでくるらしい」
「ほんと!?やったー!やっと会えるね〜あたしの新しい……ふふふ」
「すぐに食ったりすんなよ、こっちもこっちで調べたい事があるんだ」
「はいはい、分かってるよー。キョーミシンシンだったもんね」
しかし考えれば考えるだけ、本当にただ奴がバカだっただけなのかという疑問が少しずつ湧いてくる。普段の言動を記録映像で見た限り頭はキレる方だ、この俺が見る目を誤ったとは思えないのもあるが見限るにはまだ惜しくはあるな。
それにマナもこっちの意図を理解してくれていたみたいで助かる、恐らく魔人化薬の素材という意味合いでも貴重だからこちらに譲歩してくれたと見るがなんだっていい、俺が見定める時間があるのであれば。
『お迎えに上がりました』
「ああ。夜海テンマは?」
『問題ありません。ラボの方に移送して拘束、対魔人鎮静剤を打ち込んであるので身動きも能力も封じてあります』
「分かった、マナを向かわせる」
『はっ!』
無事に対面出来る準備も整ったみたいだな。
直接顔を合わせなくたって良い、マナ越しの中継だろうがなんだろうがこの目で見定められるなら手段は問わない。
「警察からだ、夜海テンマのラボへの移送が完了したそうだ。迎えも来ているから行ってこい」
「はーい!ふんふふーん、楽しみだな〜」
「興奮し過ぎて擬態が解ける、なんて事にはならんようにな。お前の事情を知らん奴も多いんだからな」
「ダイジョーブ!その辺はちゃんとしてるから!」
鼻歌を歌いながらスキップして出ていくマナを見送る。果たしてあの男はマナを目の前にして何を感じ、何を話すのだろうか。そしてどのような最期を迎えるのだろう。
「精々失望させないでくれよ……マナ以外で久々に興味が湧いたんだからな」