夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「トワ……絶対にテンマを取り戻そう、そして一緒に説教してやろう!こんなにも大切にされてるのになんで気が付かないんだって、トワを泣かせた罪は大きいんだぞってね!」
重たくなる空気を切り裂いたのは他でもないあたしだった。ポロポロと涙を零して静かに泣いているトワの肩を優しく掴んで抱き寄せて、抱き締めて、そう堅く決意する。
「シイナ……」
「そうだよトワちゃん!おにーちゃんが辛いのはすっごく分かった!でもそれで自分1人で抱え込んで、危ないことして、トワちゃんを泣かせるのは絶対にダメだよ!わたしも何か隠されてるんだろうなって思ってたけど……そういう事ならなおさらだよ!」
「セツナも……ありがとう」
セツナもギュッとトワの手を握って援護してくれる、そっかそうだよね、セツナはテンマのこと大好きだもんね……兄としてってちょっと前までは思ってたけどセツナのそれが違う感情だってテンマの過去の話を聞いて、トワの涙を見て分かったから。
――自分の気持ちにもね。
「ちなみに、アタシとユズもにーやんには泣かされてるからね。ぜーったい取り返したら文句言ってやるんだから!」
「おにいさんが一緒に地獄に来ないように優しさで遠ざけたのは分かるけど、泣かされたのは事実だし」
「……お2人さん、年齢は?」
「アタシが14で」
「わたしが13」
「うっわーテンマってば年下の子も泣かせたの?それにユズちゃんは……」
「はい、血の繋がりは無いけど兄と妹の関係です」
「妹泣かせたのはもっとダメだよおにーちゃん……」
ただ、それはそれとしてテンマにそういう事する前に数時間と言わず一日お説教が必要かもしれない。トワを泣かせただけでも重罪なのに、テンマより年下の女の子それも血縁関係は無いけど妹まで泣かせてるのは擁護出来る要素が何も無い、何ならあたしも数時間じゃなくて一日コースの説教に付き合いたいくらい。
それだけあの人はやらかしたって事、絶対に取り戻してそれを自覚させてやらないとね。
「ウチの子が迷惑を掛けてしまったみたいで、EXCEEDSの皆様にはどうお詫びをしたら良いか……それにこんな話を聞かされて、何もテンマに言えず終いというのは私達も本意では無いです」
「俺達にはどうする事も出来ない、だから……EXCEEDSの皆さん、それにトワ、ユズ、アオイちゃん、シオリちゃん、ユーナちゃん……息子のことを、テンマのことをどうか頼む」
「任せて父さん、母さん。必ず取り返してくるから」
「わたしは前線で戦えないと思うけど……お父さん、お母さん、わたしも必ず力になってくるから」
「テンマは大切な仲間ですから。安心してください」
「勝手にいなくなるなんて絶対許さないし」
「あんな形でサヨナラなんて絶対イヤ、最後に見たにーやんの顔があんな苦しそうで、喧嘩別れみたいな感じで、何もかも後悔しか残ってないのはイヤ!何がなんでもアタシの前に引きずり出して告白するんだから!」
テンマ達のお父さんとお母さんも頭を下げていて、どれだけあの人が今の家族や仲間に大切にされているかを身をもって理解した。だからこそ尚更、あの人の取った行動が許せない。みんなを置いて1人だけ地獄に落ちようだなんて、まるであたし達の感情が優先されてないじゃん!そういうところで変に鈍感になるなってーの!
……それは良いんだけど今、アオイちゃんなんか爆弾発言しなかった?
えーと?聞き間違いじゃなければ『アタシの前に引きずり出して告白する』って?
「……あの?アオイちゃん?だっけ?」
「なに?」
「聞き間違いじゃなければ……なんだけど、今『告白する』って聞こえてきたと思うんですけど……」
「うん、そだよ?アタシにーやんの事異性として大好きだし」
「だ、だったら……わたしも、アオイに負けてられない」
「え!?ユズちゃんも!?」
「……私もそうだよ?」
「トワも!?」
「しーちゃん……多分気が付いてなかったのしーちゃんだけだよ」
「セツナは気が付いてたの!?」
「うん、まあ。何となくだけど」
え?知らなかったのあたしだけなのこれ。ご両親も満足そうに頷いてるし一体テンマはみんなにどういうムーブをしてきたの……まああたしも惚れちゃった訳だから何となくあの人がどういう言動してきたのかは分かっちゃうんだけど。それにしてもセツナとあたし含めて5人も落とすなんて、15歳にして罪な男だよテンマは。
「あはは……ちなみに私とフェイトちゃんも分かってたかも……」
「ニュアンスでそうなのかな〜……くらいでしたけど」
「ええ……」
「わたしだっておにーちゃんのこと好きだから、アオイちゃん達と一緒に告白するよ。しーちゃんは……どうする?」
「むぅ……こうなったらあたしだって負けないんだから!その、恋心自覚したのは本当にさっきだけど、その前から好きだったみたい……だし」
「ふふ、抜け駆けは無しだね」
こうなったらあたし1人だけ置いていかれるのは絶対にイヤ、誰が勝つにせよ置いていかれて告白出来ないのだけは後悔するもん、せめて負けるにしても告白してからが良い。
「テンマよ……なんと罪作りな男だ……」
「それ光一くんが言っちゃダメだからね?」
「そうだよ光一、作った罪に関しては光一の方が多いからね?」
「うむ!否定出来ないな!」
……あ、そっか光一くんはなのちゃん達とお付き合いしてるんだっけ。あれ?彼女何人いるってのはそういえば聞いてないよね?知ってるだけでシアちゃん、リニスさん、なのちゃん、フェイちゃんの4人だけど……フェイちゃんの発言的にはもっといるって事だよね?一体何人落としたんだ光一くん……
それにちょっと総督も目が泳いでるような……光一くん?もしかして総督も落としてるとか無いよね?
「しかしそれにしてもだ!テンマの行動を見ているとまるでなのは、俺様と初めて出会った時のフェイトを思い出すな!」
「言われてみればそうかも。もう4年前だよね、懐かしいな〜」
「ちょ、2人ともやめて……否定出来ないから……!」
「そういえばなのちゃん達の昔話って聞いた事無かったよね?」
「そーだねしーちゃん、ちょっと聞いてみたいかも?」
「テンマを取り返して全てが終わったら話そうじゃないか!」
思えばEXCEEDSのみんなってどこでどう出会ったとか全く聞いた事無かったんだよね、こんだけ仲が良いからこそ出会った当初どういう感じだったのかとか聞いてみたい。あと初期フェイちゃんが今のテンマみたいなムーブしてたってのもめちゃくちゃ気になる、こんなにも穏やかでしっかり者のフェイちゃんが昔何をしてたのか……その為にもまずはテンマを取り返さないとね。
「絶対に取り返そう……テンマを、みんなで」
「アタシとシオリだってテンマの事は大切だからね!蔵木と篠宮ぶっ飛ばして、もう一度みんなで平和に暮らすんだから!」
「私達が笑っている時、いつも中心にはテンマがいました。それに私もテンマに助けられています……まだ恩返ししきれていない。いいえ、一生掛かっても返しきれないんです」
「その気持ち確かに受け取りました。作戦を実行に移す時やね」
「もう出来ているとは、流石はやてだな!」
「実のところ最初からほとんど形は作れていましたから。ルーク支局長」
『はい』
流石総督、もうとっくに作戦出来てたなんて凄いなあ。
なんかちょっと光一くんに褒められて嬉しそうにしてたけど。
「今回の事件について、マスコミと警察に連絡を。マスコミには夜海テンマ氏の協力者5名を保護した事、警察には――」
『事件の情報共有と、夜海テンマ氏との面会希望ですね』
「はい。面会希望は元々出してましたが」
『しっかり圧を掛けておきます』
「お願いします。希望が通り次第トワさん達と一緒に第1管区の留置所に向かいます」
……そんな簡単に警察が面会させてくれるとは思えないのだけちょっと不穏だけど、出来なくても何か手掛かりがあるかもしれない。総督、頼みましたよ。
「面会出来ない?それはまたなんで?」
「夜海容疑者が暴れたようで、安全の為別の留置所に移送したのです」
「どちらの留置所です?」
「……お答え出来かねます。おい!勝手な事をするな!」
「お答え出来ません、では帰れませんね。それに国連職員と善意の一般市民相手にその態度は……大丈夫ですか?」
やっぱりそう簡単には情報を見せてくれないよね。でも何か手掛かりがあるはず……絶対に。テンマが何も残さないはずがない。
「あ、これ!にーやんの……」
「薬師寄生種……」
「これなら……!」
あった、いた、テンマの残した最後の手掛かり。これがあればまだ希望は繋がるはず。
「にーやんのこの子達は、一度召喚してそのまま放置するとにーやんが死んじゃうと一緒に死んじゃうの。だから……」
「おにいさんは、生きてる……!」
「希望は繋がった、テンマを取り返す為の」
3人の心強い発言で更に勇気が湧いてきた。テンマは生きている、それだけでカチコミを入れるには充分だ。
「待っててね、テンマ」
全てを終わらせよう。