夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「もしも自分がリリカルなのはの世界に転生したらどうしたいか?」
「そーそ、俺らの人生ってまあ中の下で良くもないけど悪くもないって感じで、大きな波も無ければ微妙に下り坂辿ってる程度のおっさんなワケじゃん?」
「おうやめろや」
思えば俺は、この世界に……リリカルなのはの世界に転生したら何をしたかったんだっけか。思い返すのは生まれた時から転生前までなんだかんだ縁の途切れなかった幼馴染で親友との会話だった。
アイツもリリカルなのはの世界が大好きで、そういう意味でも意気投合をしていたのを覚えている。
「まあだからさ、こんな酒の席でくらい『もしも好きな作品の世界に入れたら何したいか』とかさ、話してみないか?」
「良いけど。んじゃお前からな」
「おー俺からか、俺はやっぱり無双!ハーレム!みたいな?時空管理局なんてブラック企業だし無双ハーレムでもしてないとストレスで絶対ハゲるわ。しかも時空管理局にいないとメインとは絡めないし、強制的にブラック企業務め確定なのはちょっとアレだからこうでもしないとやってらんねー」
「そんでも時空管理局務めはするんだな」
「当たり前だろ!俺はティアナとスバルに会いたいんだから!」
そういや親友はティアナとスバルが推しだったか……こっちの劇場版時空で果たしてその2人がいるのか知らないが、俺が生きて2人に出会う未来があったらきっと羨ましがるだろうななんて事も考えられたんだろうか。
「で、お前はどうなんだ?」
どちらにせよ、この後の俺の答えでその未来は無いんだが。
「俺かぁ……俺はまあ、原作で救えなかったキャラ達を救いたいかな」
「……やー俺も考えたわそれ、でもちょっとそこまで運命を変えられるくらいすげー奴になれるかって言われるとな。難しいところがあるからなあ……俺にそこまでの覚悟があるかどうか。無双して偶然助けたくらいなら良いんだけどね」
「俺はそんでも救いたいってハッキリ言える、どうせ平坦な生き方しかしてこなかったんだからどんだけ重いもんでも背負って良いと思う。俺はあの世界に、リリカルなのはに救われたんだからな」
「言うじゃないのさ、じゃあもしも自分の命と引き換えにしないと変えられなさそうな運命が目の前にあったらどうする?」
「勿論、引き換えにしてでも守る。妄言と捉えられても良いけど俺は本気だ。命を捨てられる」
「わぉ、まあ俺はお前のこと否定しないよ。そういう奴だったもんなあ昔から……どんな話だって真剣過ぎるくらいに捉えて考えて、ほんで結論を出す。こういうところが好きなんだよ」
「そりゃどうも。でもオメーも充分真剣に考えてたと思うぞ?やっぱこういう話をする時はお前に限るわ」
「同感だな、はは!」
命を捨てられる……それは前世からの考えだった。元より平凡な生き方をしてきた俺は、自分の価値観上自分の命はあまり重いとは考えてこなかった。他人に押し付ける事は無かったから他人の命の価値云々は無かったが、捨てようと思えばきっといつでも捨てられたんだろう。
ま、死ぬ理由が無かったのと『リリカルなのはを見る』っていう明確な生きていても良いと思える理由があったから捨てなかったが……死ぬんだとしたら『命に変えてでもキミを守る』なんてクサいセリフくらい言ってみたかったよ。
残念ながら地獄に落ちるべき理由が出来ちまったから命を捨てる事になったよ、悪いな親友。
死んだ後多分天寿を全うしたお前とは会えないだろうな、天国にいるお前と違って俺は地獄行きが決まっているからな。
あーあ、死んだ時土産話の1つでもしてやりたかったよ。羨ましがる顔見ながら……あの時みたいに酒でも飲みたかったよ、全くさ。
「ほらほらどうしたのォ?さっきまでの威勢が嘘みたいに逃げ回っちゃってさ、やっぱ一度戦ってみて実力差あり過ぎて怖くなっちゃったかな〜?」
「ふざけろ!誰が怖気付いたってーの!チッ!」
「最初の時のが戦ってて楽しかったんだけどなあ、ちょっとは手応えあったしアタシにダメージも与えてくれちゃったもんねぇ?あれは本当にちょっと痛かったんだよ?なのにこんな逃げ回るなんて、キミには失望しちゃったなあ」
「お前に期待されたくもねーわ!」
戦闘開始……と共に今度は先程までのぶつかり合う戦闘スタイルではなく『硬化』それに今まで使ってこなかった能力『高速移動』を使う。元来俺の戦闘スタイルはぶつかり合うもの、もしくは毒による不意打ちに硬化による保険でそもそもとして高速移動を使うような場面が無かった。
魔人はあっちから向かってきて逃げないし、逃げるような相手はそもそも魔人じゃないから使うまでもない。便利な能力ではあるんだろうが持て余している、という状況だった。
しかし今は違う、間違いなく。
勝てるか勝てないかの話ではなく今はさっきの布石が芽吹くまで耐える事が最優先、ともなればバカ正直にぶつかり合いに行くなんて愚策は取らない。
あの瞬間まで能力としての『毒生成』を直接視認させなかったのが効いている。発動はせどそれを使ったのは銃弾にのみ、相手は驕っているから能力は見えてるもの以外は見向きもしないその盤面を大いに活かした形になる。
「えーつまんなーい!エイジくんからは縛り付けとくだけだって言われちゃったしキミはすばしっこく逃げるし、これじゃ楽しめないじゃーん!」
「楽しませてないようなら俺の意図した通りだから寧ろ願ったり叶ったりだがな!」
「ちぇ、良いもん良いもん!ちょっと乱暴にしても五体満足に生かしておけばエイジくん許してくれるもん!だーかーらー……そろそろ止まって、ね!」
「ちょ、どわっ!?ふざけんなよクソが!このバケモンめ!」
「本気を出せばキミなんてすぐ止められるんだから、もうそろそろキミの事もう一度倒してあげる」
しかしコイツの本気は桁違いに強くて呆れてしまう。この世界ですら結局は準最強ですら無い俺が搦手無しに勝とうだなんて無謀が過ぎるぜ全く。
だが……
「それはどうだろうな」
「ふーん?まだ奥の手があるのかな?だったら早く見せてみてよ、アタシを楽しませてみて?」
「悪いがそれは無理な相談だなぁ?」
「はー?なんでー?アタシの事倒したいんじゃないのー?」
「ああ、倒したいさ。死んででもな」
「じゃあ――あ、あれ?」
ぐらり、篠宮の身体が若干フラつく。
ようやくだ、ようやくこの時が来た。原種にすら若干程度は効いたこの準チート能力『毒生成』これが篠宮に通らないはずがない、当たりさえすれば、体内に取り込みさえすればその毒は必ずどんな侵略種や魔人であっても蝕んでいく。
……まあ同じく毒入り銃弾飲み込んでる俺も時期に蝕まれる、というか今でさえ視界が少しずつボヤけて頭も痛くて吐き気もするからバッチリ効いてるんだろうさ。この先どれくらいの地獄を見るか考えるだけで笑いが込み上げてくるくらいだ。
そんな訳で俺レベルの上位魔人でもここまで致命傷レベルのダメージを受けられるのだからいくら篠宮と言えど影響が何も無いなんてそんな道理が通るはずが無い。
「おっとっと……?あれ?あれれ?なんかちょっとフラフラする?」
「――これが奥の手だからな」
「な、何を……あの時の銃弾?」
「教えてやるかよ、わざわざ奥の手を。でもやっと、ようやく見れたな――お前の余裕の剥がれた顔ってやつをさ」
困惑する篠宮を見つめ、冷や汗を流しながらもニヤリと笑ってみせる。篠宮がしていたように、相手に対して挑発するような、余裕のある笑みを。実際のところ余裕なんて無い、俺に遺された時間もあまり無いはずだ、それでもアイツの笑顔が崩れた、ここが最大のチャンスだ。
「まあ、それくらいじゃアタシは止められないけどね!」
「ここからは一方的な蹂躙じゃない、殺し合いを楽しもうぜェ?なあ、篠宮マナああああああああぁぁぁ!!!!」
再び怪力、麻痺を発動させてぶつかり合う。この先は篠宮マナによる一方的な蹂躙劇ではない、お互い命を削りながらの殺し合いだ。どちらかが殺し、どちらかが死ぬ、タイムリミットまで存分に殺り合う、俺がようやくステージに上がってきた証の死合だ。
確実に俺の命も大きく削られているのを感じながら、もう一度ぶつかり合った。
なんかヤバそうな薬
エイジくんが作り出した激ヤバ薬
人格が完全に吹き飛ぶレベルの劇薬だがその分色んなものが超強化される、いざと言う時の為に作っていたがこれを使ってテンマを手篭めにしようとしている
勿論だがこんなもの原作には無い、露骨な敵強化アイテム