夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「またなんか増えたんだけど!鬱陶しいなあもう〜!」
「光一、状況は!?」
「正直言うが芳しくはない!俺様はなのはやフェイト達とは違って近接戦がメイン故このような触手だらけの相手だと中々な!」
「くっ、俺のミスがここに来てこんなに響くとは……」
「心配、無用ッ!俺様は元より時間稼ぎの為だったからな!」
目の前に対峙するは自分に薬を投与して強化され、最早人間の原型を無くしつつある篠宮マナ。肌の色は変色し目も人間とは大きくかけ離れ、身体の至るところから触手を伸ばしてきている。
正直今の俺が加勢したところでどうにかなるような敵じゃないのは明白だ、だがだからと言って立ち止まって良い相手でもない。
不甲斐無く倒せず、あまつさえ自分1人死にかけて本来巻き込む予定の無かった友達や家族を巻き込んだのだからその責任くらいまずは取らないとならない。
「じ、時間稼ぎ?」
「このような相手をメインにするのは……シイナ!セツナ!」
「待ってました!そう来なくっちゃ!テンマやみんなの悲しむ姿なんてもう見たくないもん!」
『……わたしにとっても、あの人には因縁があるからね』
「え、ちょ、話が見えないが!?」
「はぁ!?まーた増えたの!?ほんっと面倒臭いなあ!!みんな!!やっちゃって!!目の前のコイツらぶっ殺しちゃってよ!!」
「それならそれで、私達にも見せ場があるということで良いですよね?」
「お、あたしら空気にならずに済むって?そんじゃやるしかないよね!」
「にーやん!シイナ!セツナ!……トワ!こっちはアタシ達でやるから!」
「わたしも持ってきた戦車がありますから。広範囲攻撃は任せてください」
「ふむ!では俺様もそっちの殲滅に加わるとしよう!テンマ!夜海姉!シイナ!セツナ!お前達であれば倒せると確信している!!往くぞ黒曜!」
『《KAMENRIDE Alicia Linith》』
「呼ばれると思ったよ!さあやろっかコーイチ!」
「これだけの量を相手取るのは久々ですね。腕がなります」
……あの、責任くらい俺に取らせてくださいって言いましたよね?
なんでみんなしてやる気になってるの?侵略種無限湧きみたいな事になってるのにやる気にしか満ち溢れてなくて怖いよ?しかも急に呼び出したはずのアリシアとリニスは平然としてるし。
そんでなんで俺はシイナと姉さんに両隣を明け渡してるんだ?なんなのこれ?
「テンマー?だから言ったよね?ふざけないでって」
「いや待て、俺はふざけてなんて」
「ううん、ふざけてるね。私達の言葉も想いも知ったはずなのにまた1人で何もかもやろうとしてる。やっぱりお説教するしかない」
『おにーちゃん……さすがのわたしも擁護できないよ。告白までしたのにその気持ちを無視するのは男の人としてどうかと思う』
「うぐっ……わ、分かった!分かったから!一旦アイツをどうにかしよう!説教は後でいくらでも聞くから!」
「言ったね?」
「言ったね」
『約束だよ、おにーちゃん』
しかも怖いってこの3人!俺はふざけてなんて無いって!至極真面目に考えてやっただけなのにどうしてこうなるんだよ!セツナも顔見えてないのに絶対怖い顔してるの分かるような声のトーンしてるし、俺何も悪いことしてないのになんで追い詰められちゃってるんですかねえ!?
「あれ?あれれ?その声聞き覚えがある……何も覚えてないはずなのに……」
心の中でツッコミを入れてると篠宮がこちらに反応を示してきた……いや、眼中に入れてるのは1人だけだ。俺でも姉さんでもない、シイナにだ。
「ああ……ああ、そっか、そうか、そうなんだ、思い出した!思い出した思い出した思い出した!!記憶が無くても!!アタシの魂にこびり付いてる『因縁』が!!『屈辱』が!!『運命』が!!『アタシ』を思い出させてくれた!! 」
『……やっぱり、思い出しちゃったんだね』
いや、シイナじゃない。これはシイナと融合しているセツナの魂だけを見て話し掛けている。そうか、セツナは元々記憶喪失の魔人だって話してたからこういうケース……原種由来の魔人である可能性があるのか。
主要キャラで尚且つ既に亡くなっていた……あの感じまだ1話か2話だろう時点だと推定出来るからラスボスの何かしらのキーだとは推測していたがまさかここまで直接的な関わりがあるとはな。
しかも記憶なんてトんで全部忘れたはずの篠宮が思い出すレベルかよ。
「生きてたんだァセツナァ……やっぱり殺せてなかった、ああそうだよねそりゃあれくらいで死ぬはず無いもんねえ、やっと会えた……でもなんでかなあ、声はするのに姿が見えないのは」
『わたしはもう魔人じゃなくなったからね。能力はしーちゃんにあげたの、しーちゃんならこの力でみんなを笑顔に出来るから。わたしはそのお手伝いをしてるくらい』
「はぁ?アタシとの決着つけないままノコノコと他人に力をあげたァ?とことんバカなんじゃないの?その力があればなんだって出来るのに、だからアタシはアンタが嫌いなんだよねぇセツナァ!」
記憶を中途半端にセツナのところだけ思い出したせいか、それとも元々そこまで執着していたからなのかは知らないがあの何されても飄々としていた篠宮が激情を向けている。何がそこまで篠宮を駆り立てるのか、激情を発露させているのかは分からないが何はともあれ無視されるのは気に食わん。さっきまで殺し合いしてた癖に薬物1つで全部忘れて、眼中にも入りませんなんて許すはずがない。
どれだけ俺の事コケにしてたと思ってんだお前、身勝手に忘れて身勝手に無視なんてふざけんのも大概にしろや。
「嫌いと言えば、俺もお前の事は死ぬほど嫌いだな」
「なに?……うーん?どこかで会った事ある?」
「あー……ほんっとうに覚えてねえのか、イライラするな。俺はアンタにめちゃくちゃコケにされて侮辱されて殺されかけて、さっきまで地べた這いつくばってたってのに……」
「そっかそっか、キミは覚えててアタシは覚えてない何かがあるんだ〜。でもさ、思い出せないものは仕方なくなーい?セツナの事は思い出せてキミの事を思い出せないって事はつまりその程度の存在でしか無かったって話じゃん?それになんの価値があるの?」
「ああそうかよ、それがお前の答えか。分かった、俺は今猛烈にやる気があるんだ今すぐテメェをぶっ殺してやる、俺の手で」
「ちょっと!だーかーら!『俺』じゃないでしょ」
「うん、私、シイナ、セツナも含めた『俺達』だよ」
『もうちょっとわたしたちを信じて!みんな一緒なら倒せるから!』
「へいへい、そうだったな!正直俺の力だけじゃどうしようもない!シイナ、セツナ、姉さん!力を貸してくれ!」
っとと、ここでまた3人を省いたら今度こそ全部終わったあと逃げる間もなく捕まりそうだからな。一応ちゃんと言っておかないとな、そうじゃなくともそろそろ否定ばっかりするのも疲れるし……俺だって好きでやってるんじゃないって何回も言ってるんだ、否定しなくても良いならそうするに決まってる。
「やっと言ってくれたね、もう。言われなくてもやったりますよ!」
「姉の威厳を見せる時」
『い、妹の威厳を見せる時……?』
「いや姉さんは今そこで自信満々にボケる時じゃないしセツナも乗らんでよろしい」
いや何やってんだこの人達、特に姉さんそこはボケるところじゃないぞ。姉さんはほんと昔から真面目なのに妙なところでボケるから気が抜けてしまう、天然なんだろうけど……いや可愛いけどさそういうの。でも姉さんは姉だってーの。
あとセツナもなんで乗っかってきた?一番まともな子のはずなんだが……俺は一体何を見せられてるんだ?
はぁ、ツッコんでたらキリ無いな。
「ねえ!?アタシ無視するのやめない!?」
「さっきまでテメェがやってた事だろうが!」
「まあまあ、とりあえず戦う場所変えよっか。という訳で……そぉい!!」
「ぐえぇっ!?」
とりあえずでシイナにかち上げられて施設の天井に穴を開けて空に舞い上がる篠宮、俺が前の状態ですら苦戦した篠宮相手になんて軽々しくダメージ与えてるんですかねあの人は。なんかこう、今までの比じゃないくらいのドン引きしてるけどこれ今からラストバトルなんだよな。
うんもう、1回忘れよう。
多分きっとそれが良いんだろうと俺達も空に向かっていった。