夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
「テンマ〜お帰りなさい」
「ただいま」
「学校どうだった?」
「可もなく不可もなく。社会性や社交性を学ぶ場としては適切だと思うけどそれ以上も以下もないかな」
「そう?まあ不満が無いのなら安心だけど、何かあったらちゃんと言ってね」
「俺にとっての不都合は現状食いっぱぐれる事だからそれが無ければ別に不都合は無いと同じだと思うけどな。勉強は出来ない訳じゃないし」
俺が夜海家に来てまあまあな時間が経った。割と色々な手続きがあった為か少し遅れていた小学校編入だが、結構学力が必要と言われたその学校の編入試験は俺にとっては余裕であった。
前世で俺は頭はかなり良い方だった、と言っても知識を知識としてインプットしているのはそんなに無い。ほぼ全て記憶力だけで覚えたものだ。一度見聞きしたものは大抵全部思い出せるし、元の頭も悪くはないからそこから応用したりして解いていた。
まあそんな訳で記憶力の容量がデカい俺はちょっと引き出しを開ければ難関小学校の編入テストくらいチュートリアルだった。
小学校そのものにはやっぱり慣れないけど、いやだって前世立派なおっさんのまま死んで今一応小学生で精神もそこそこ引っ張られてるとはいえ厳しい世界で生き長らえてしまって割と育っているからなあ……
「それなら良いのだけれど……」
「あ、ちょうど良いや。今話せる?」
「今?トウヤもいるから良いけどどうしたの?」
「どうせなら2人揃ってから話したくてな」
それはさておき、今日は編入も終わった訳で色々動いていたトウヤとエマは一段落付けるタイミングだろうからここで話しておきたいことを話しておく。ちなみに魔人の話とかではない、そういうのは話すだけ面倒だから今は話さない。
リビングに向かうとトウヤが待っていた。
「おう、お帰りテンマ」
「ただいま。今話良い?」
「お、なんだなんだ?何でも話してみろ」
2人揃って快諾してくれるからスムーズに進行出来て良いな。まだ親とは微塵も思えないが悪くない関係性を築けているとは思えてきている、これならこの先親と思えなくても養子縁組の関係を続けるのにデメリットは無いだろう。
「実は俺もハンターやりたくてな」
「ハンターを?またどうして?」
エマの疑問は尤もだ、11歳の身で数年間危険と隣り合わせで生きてきて、やっと危険なことからおさらば出来てのんびり平和に過ごせるのだからそれを享受したって許される。トウヤとエマだってそれを許している、なのに何故自らそれを捨てようとするのか?そう思うのは自然なことだろう。
「俺はハンターをやれるだけの力を持ってる。『個性』を使わなくても戦力になれる、間違いなく。夜海家はトワ含めみんなハンターだ、だとしたら俺だけ何もしないなんて非効率的な話はちょっと都合が良過ぎる。せっかく拾ってもらえたんだから使える力は使わないと、ただでさえ瑞穂は苦しい実態なんだから尚更『働かざる者食うべからず』の精神でギブアンドテイクをしていきたい、これじゃダメか?」
「いーや、良く言ったと褒めてやりたいくらいだ。本当ならあんま子ども働かせるのは良くないんだろうが、自分でやれる役割を探して志願するなんて立派じゃないか。俺はその心意気を買いたい」
「私も、本人がしたいと思うことをなるべくやらせてあげたいと思っているから。今後ちゃんとライフルが使えるか次第だけど今のところは賛成ね」
「ありがとう。良い理解者を保護者として持てたみたいで何よりだよ」
この世界は侵略種や魔人によってかなり危機的状況に置かれている。多分4年後にはなのは達がやってきてなんやかんやあるけど最終的には解決していくんだろうけど、勿論だが旧主人公達や新主人公のシイナ、セツナでは救えない命もあるだろう。
良い例がアリシア・テスタロッサだ。原作時系列前に起きた事件はどうしてもどうしようも無い。そんな時に一応前作までの『リリカルなのは』を知っている俺が予想しながらある程度自由に動くためにはこうするのが一番良い。
勿論表向きの理由も十二分に理由として持っている、3人共にハンターなら力を持ってる俺が1人悠々自適に家で過ごすなんて甘えがあってはいけない。ただでさえギリギリの治安なのだから働ける奴が働く、当たり前だ。
「そんじゃあライフルは俺が調達しておく。やるからにはみっちり指導するからな〜」
「問題ないさ、俺の才能とトウヤ、エマの指導があればすぐにでも1人前になれる」
「あらあら頼もしいわね」
それに家族で一緒に動ける時間が増えるなら、この2人にあるかもしれない死亡フラグをへし折る事だって出来る。こうして世話になってる以上、さすがに見捨てるのはちょっと心情的に嫌だしやれる事はやりたい。
「……貴方もハンターやるの?」
「お、トワいたんだ。そそ、俺もやる。その力が俺にはあるからな、この情勢なんだし働ける奴が働くのは当たり前だろ?」
「まあ、そうかもね」
それにトワの事を見ていたいのもある。
誤解ではないが眼福だから見ていたいというのはついでだ、確かにリリカルなのは世界の美少女ということで見たいのはそれはそうだが、共に魔人であり一応はお互いに魔人というのを認識し合ったのもあるから多少なり同族として気になるという話だ。
何にせよこれからの俺は夜海家を軸として共に動いていくプランになるはずだ、ついでにこれならハンターとして単独活動してる間にこっそりヤーさん達とも接触出来るはずだし。
魔人はこれからも狩るには狩るさ、保護者の目を盗むという行為はせざるを得ないが。これからの魔人狩りは腹を満たすのをメインとするよりかは夜海家に害が及ぶ可能性があるから狩るという方向にシフトするだろうが。
「さあ、そろそろご飯にするわよ」
「りょーかい」
とりあえず腹減ったから考えるのは後にしよう。
-数ヶ月後-
「テンマ!そっちにちょいデカめの蜥蜴と翼竜が行ったぞ!」
「りょーかい!すばしっこいが直線的な動きだから読みやすいな……っと、ほいどっちも討伐討伐。これくらいなら軽いね」
「テンマを見てると本当にもうハンター歴10年以上のベテランみたいに見えるわ。本当に凄いわね」
「俺は拾われる前から実戦経験あるからな。感覚的なものは染み付いてる」
「にしたってだよ。大したもんだ、確かに才能は俺達より断然上だ。トワくらいあるかもな。な、トワ?」
「悪くはないと思う」
「そりゃどうも」
俺がハンターデビューしてからというもの、どうやら夜海家の侵略種討伐数は大幅に向上したらしい。大型種の討伐もやりやすくなったらしく、稼ぎも格段に増えたとか。
魔人狩りして暮らしてた俺からすれば戦闘の感覚は十二分にある上に魔人未満の知能と出力の侵略種は大抵が脅威ではない、というのもあるが思ったよりハンターとしての銃の扱いも馴染んだ。
それに少しずつだがトワの表情も人間らしく柔らかいものが見えてくる時があって、中々に充実した暮らしをさせてもらえているのが実感出来る。
「今日の討伐はこれで終わりだな」
「そうね、依頼されていた侵略種の数は倒せているし今のところ気配も無い」
「帰る?」
「ああ、そうだなトワ。帰って美味いメシ食うぞ!」
「うん」
「やっぱひと仕事終えた後のメシは良いもんだよ」
「お、分かってるなあテンマは」
それと、なんというか。
幸せ、なのかもしれないと思ってきた部分もある。今世の親はさておき前世の親はこんな出来た人格者じゃなかったが人の親として良い思い出を作ってくれたのも事実だった。3人と過ごしているとふと前世を思い出してしまうくらいには家族を感じているのかもしれない。
結局前世じゃ親より先に死んじまった親不孝者だ、もしもトウヤとエマを父親と母親と思えて、トワを姉と思えたなら……その時は後悔しないようにちゃんとそう呼ぼう。
……今世の実親みたいな『言えなかった』なんて事だけは何があっても無いように。
「働いた後は肉に限るぜ」
「ははっ!やっぱりテンマは俺に似るのかもな!」
「……私もお肉」
こんな平和な時が続けば良い、そう空に想うのは……野暮だろうか。今日も笑顔で夕陽を見上げるのだった。
・夜海テンマ
喰った魔人の特殊能力も使えるが、大抵は取るに足らない能力なので固有能力の勘定には入れてないし使う気も更々無いし中には馴染まないものもある
現状持ってる固有能力は『怪力』『毒生成』『???』、一応1話で喰った『硬化』
テンマ「硬化ねぇ、なんか使う時が来そうな気がするんだよなこれ。普段使いするには俺は防御型の魔人じゃないから他のモブ能力と同ランクなんだけど」