夜海家長男はフラグをへし折り続ける 作:吉田正鷹
一足先に激戦を繰り広げ始めたシイナを追い掛けて、俺と姉さんは俺が
まあそもそも逃げる予定ではあるが。
「この子……あの時の」
「あの空港火災の時に召喚した奴だな、あんま出す機会は無かったがここで出す事になるとは」
「そっか。……あの時は父さんと母さんを助けてくれてありがとう」
「はは、コイツもちょっと照れてるぞ。んじゃ行きますか」
「そうだね。全部終わったらまた話せば良いよね」
しかし姉さんは大層コイツを気に入ったらしい、あの時……本来親父と母さんが死んでしまう未来だった空港火災で戦闘中待避させてやれたのはコイツがいたからだからな。
命の恩人と言えばそうなるのかもな。
さて、やっと追い付いたところで思考を切り替える。
「おい無茶すんじゃねえぞシイナ!あとセツナも!」
「ご、ごめんごめん!」
『も〜!だから言ったんだよしーちゃん!1人で先行したら怒られるよって』
「ひぃ〜ん!セツナもごめんって〜!」
「なぁに、もう追いついてきたの?ほんっとしつこいよねえ誰なのか知らないけど」
「打ち上げられたのはテメェの方だろボケ!」
「まあなんでも良いけど、その減らず口を閉じさせてあげるよ!」
「やれるもんならやってみやがれ!行くぞ姉さん!」
「うん」
俺が言えた口じゃないが、散々説教してきた癖に先行されたら堪ったもんじゃないからな。しっかりと釘を刺しといて3人でやろうじゃないのさ。
「取り敢えず一番面倒そうな『セツナ』からやっちゃおっか〜」
「アタシらを、無視すんな!」
『もうわたし1人じゃないんだよ』
「おっと怖い怖ーい……ってうわわ!?も〜4対1とか卑怯なんですけどー!」
「卑怯もラッキョも大好物だ!」
「援護は私達に任せて!吸収だって無理そうならこっちに渡してくれれば良いからね!」
「ありがと、助かる!」
しっかしいくらなんでもずっとセツナしか見てないの、記憶無いって言っても固執し過ぎだなこりゃ。俺が篠宮に固執していたように、篠宮がセツナに固執しているんだとするとまあ何とも滑稽な話だ……俺も篠宮もな、どっちも感情に突き動かされたままそいつを打倒しようと一直線に向かってくる。
俺は弱くて篠宮は強かったが……ま、皮肉な事に俺には捨てたはずの仲間がいてくれちゃうもんでな。今のお前とは違うんだよ、篠宮。
「1人じゃ無理なら2人で!」
「……2人じゃ無理なら3人で、ね」
『3人でも無理ならわたしだってがんばるもん!』
「テンマ、トワ、セツナ……そうだね、そうだよね。今のアタシにはみんながいる。1人じゃない。だったら……なんだって、出来ーーる!!」
「ぐべっ……ほんっとデタラメなんだから……それでも返してもらわないといけないからね!アタシの生命力と……セツナの能力」
『もうわたしの能力じゃないけどね!』
「そうですー!もう私の能力ですー!」
「あーもう一々ツッコミ入れないでよウザいなあ!!魔人も侵略種もアタシのおやつなの!強くなる為の道具なんだからね!大人しくアタシのお腹に収まってよね!」
……にしても、つぐつぐ俺は主人公になれないんだなとシイナを見て思ってしまう。俺なんかと違ってどこまでも真っ直ぐで、カッコよくて、見蕩れてしまうくらい。
それに、フラグをへし折るだなんて言っときながら実際フラグをへし折られたのは俺の死亡フラグで、それもシイナを起点として動いてそうなってる。
俺に無いもの全部持ってるし、俺のダメなとこは全部叩いてくるし、はあーあ、ほんと嫉妬しちまうよ。
「テンマ!トワ!ちょっとだけ2人の『力』貸して!」
「ったく、ほんと無茶するんだよなお前はよ。怪力麻痺毒生成とありったけのパワー貸してやるよ!」
「……私も。シイナに全部託す。だから……やっちゃえ!」
嫉妬しちまうからこそ、それ以上に託したくなる。
この世界を救うのは俺じゃない、篠宮を倒せるのも俺じゃない、ちっぽけなちっぽけなただ1人の魔人でしかない。だけど、だから、俺の想いを託せるだけ託して。
「ガン、セットォ!!!」
『見ててね、おにーちゃん、トワちゃん。これが私達の、みんなの想いの力』
少し離れた場所からでも熱気を感じる、これがシイナとセツナのフルパワー……いや、俺達の熱い想いも乗ったフルパワーを超えたフルパワーってところか。
的確に捉えた緋色の弾丸が次々と篠宮へと命中していく。
「ヤバっ、ちょっほんとにヤバいって嘘でしょ嘘でしょ嘘でしょ!?このままじゃほんとにまずい!?……ぐぅ!?」
それに追随するかの如く烈火の炎を身に纏ったシイナが巨大な弾丸のように篠宮に突っ込んでいく。やれやれ、俺が一矢報いるのに命を削ったのにこんな事されちゃ笑うしかないじゃないか。
「行けェ、シイナぁ!!」
「撃ち抜け!!」
「うおおおおおおおおお!!!」
『やあああああああああ!!!』
烈火の弾丸が、撃ち抜き――爆ぜた。
「うへぇあっちぃ……って!シイナは!?」
「……いた、融合解除もされてないみたいだけど……っ!?」
爆風が止み、何とか視界が開ける。なんか力も勝手に戻ってきたみたいだし終わったんだろうが……いた、気絶してるシイナに……はっ、まだ生きてやがったかあのクズ。
『……まだ、行ける……!』
『今なら……奪える……!』
「あー、殺ってきちゃって良いよ姉さん。一応宿敵っしょ」
「うん。そうさせてもらう」
しかしもうほぼ限界なのか残っていたのは触手一本とギリ胴体だっただろう一部、それを必死にほふく前進でシイナへと向かっていく。まだ今なら力を奪って回復が可能だろうからなあ。
ま、それはさせないけどな。
大型種から姉さんが飛び降りてそのまま篠宮だった何かを踏んずける……あれがこの世界をぐちゃぐちゃにして俺の家族もめちゃくちゃにした奴の最期かよ、そう思うと呆気なさすぎて笑いも出てこねえわ。
『あっ……』
劇的な最期なんてものは用意されてません、か。
篠宮の末路は触手一本になったところを姉さんのなんでもない攻撃1つで消し飛ばされるという、あまりにも拍子抜けなものであった。
「だから無茶すんなって言ったのにさあ……」
終わったのを見届けて俺も降りてシイナの頭を撫でる、力を貸したのは俺らだけどちょっと無茶しやがったな……セツナも。
いつぶりか、心の底から安堵を――
「篠宮は……まだ」
『うん。まだ、生きてる』
だが、目を覚ました2人から放たれたその発言で、まだまだ安心するには早い事を思い知らされるのだった。
「痛い……痛いぃ……傷が治らないし、多分溜め込んでたと思う力も全部奪われちゃった……うぐっ」
セツナ……アイツを殺すまではアタシは終われない、終わりになんて出来ない。こんなところで終わったら、アタシは……あれ?セツナを殺す以外になんかあったっけ?いや、無いはず、アタシの目的は邪魔してきたアイツを殺す事、それ以上も以下もない。
「とにかく……今は力を取り戻さなきゃ……もう一度、次こそは殺せるように、力を溜めて……」
なんかもう1つの養殖株の方は狙われてるけど、こっちは……本体はまだ気付かれてない。記憶は無くなってるけどアタシなら大切に育ててきたはず。だったらこの子なら、きっと力を貸してくれるはず。
「鉢植えちゃん……またアタシに力をちょーだい!」
触手を差し込む、するとみるみるうちに力が戻ってくるのが分かるくらい一気に身体に力が戻ってくる。そう、これこれこれだよ!この子がいればまだアタシは戦える!
「う〜!!キタキタキタァ!!傷も全快!気分そうか〜い!セツナの力を手に入れて、アイツらも全部食べて、アタシの夢は終わらない!!」
「種の調整?くっだらなーい!まだまだもっと強くなって!……あれ?……吸収、出来ない?」
順調にいっていたはずの力の供給が急に止まる、おかしいこの子はこれくらい吸ったところで屁でもないはずなのに。
「え?は?」
次の瞬間、今度はアタシの力が逆に吸収されている事に気が付いた。ドンドン力が抜けていく、嫌だ、嫌だこんなはずじゃ。
「なんで吸収されてるの!?ぐっうぅ……止まらない!?ヤダヤダ!!能力まで!!これじゃ逆にアタシが0号に……」
あれ……でも、なんでだろう。
「……えーじ……くん……?」
忘れていたはずの親友の事を思い出した、なんで忘れてたかも、今までエイジくんと何をしてきたかの思い出も、全部全部思い出した。
……あ、じゃあかえらないと。えーじくんのところに……かえらないと……
「えー……じ、くん……かえ、らなきゃ……か、えらな……」
ラストバトル、あっさりし過ぎなのではと言われてもアニメでも呆気なく吹き飛ばされてたしなあ篠宮…