引き取った従弟を世界一のストライカーにするというだけの投資兼暇つぶし 作:らら
最初はサッカー要素、ほとんどないです。
「ねぇ、玖月兄さん。オレが兄さんみたいにすごいお金持ちになるには、どんなものになったらいいかな?」
夕陽を受けて、黄昏色に染まっているはるか先の空。
そんな光景を公園のベンチに座ってボーッと眺めていれば、隣に座っている従弟であり唯一の身内である
正直な結論を言ってしまうんだったら、天才になればお金持ちになれるとしか言いようがないがけれど……そんな生々しいことを言って、子どもの夢を壊すのは気が引けるね。
「んー…世界規模である程度の需要があって、十数年はその需要が持続されるようなナニカの日本一とか世界一になればお金持ちになれるんじゃないかな?」
そうしたら大会の賞金とかでお金が少なからずもらえるだろうし、話題性もある程度の期間は確保できると思うからYo○Tuberとかにもなれるよね。
「ふーん…。それじゃあ玖月兄さんもそういうので一番になって、お金持ちになったの?」
「んー⋯その通りとは言い切れないかな。僕も芸術系のコンクールで日本一とか世界一を何度も取って、それを収入源の一つにしてるけど⋯。でも僕がお金持ちなのはそれだけが理由じゃないんだよね。今の紫音にはちょっと難しいお話になっちゃうかな?」
宇宙猫顔を浮かべている紫音に、僕は苦笑してその頭をくしゃくしゃと撫でる。
「よく分からないけど、とりあえず玖月兄さんがすごいってことだけは分かったよ!!」
「ふふっ。紫音は将来、生粋の天然人たらしになりそうだね。」
キラキラと瞳を輝かせてそう言った紫音に、僕は無自覚で人に好かれそうだなぁと内心でつぶやいた。
「じゃあ…⋯オレは世界一のサッカー選手になるよ!!」
それは現実を知らない子どもの大半が言うであろう、夢という名の戯れ言だろう。
だが、紫音の希望に溢れた夢をどうしようもない現実で否定する気にもなれず、その次の日に僕は紫音を近所のサッカークラブへと入れさせてあげたのである。
これが日本サッカーが大きく変革を遂げることになった日から、遡ること六年ほど昔の記憶。
僕…
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つい先日まで行われていたサッカーのワールドカップ。
日本は今回もベスト十六を打ち破ることなく敗退した。
今回こそはベストエイトへたどり着けるという夢のある予想を誰かが語ってはいたが、やっぱり無理だったね。
だって、日本のサッカーは少しも変わることがないから。
ずっと昔から何も変わっていないのに、前回より上に行けるはずがない。
至極当然、当たり前のことだろう?
僕としても、日本フットボール連合の上層部としても、ある程度は儲かっているから別に良いというのが個人的な意見だけど。
が、僕の感情は紫音に日本のサッカーが頂点に立つ姿を見せてやれと言っている。
でもそうするための方法がねぇ…。
あんまり倫理観のある良い方法とは言えないんだ。
僕が代表になるって選択肢もあるけど、この国の代表になる価値も感じないしそもそもワールドカップに出てる時間が作れない。
ゆえに、この国を背負ってくれる愛国心のあるサッカーの天才が現れるのを待つしかない。
と、五分ほど前の僕は考えていた。
「うん。良いね、実に良い案じゃないか…ブルーロックプロジェクト。僕は賛成させてもらうよ。」
日本フットボール連合。
その本部にある会議室の一つで、僕はそう告げた。
まさか僕と同じような結論に至った人がいて、それを実行しようとするとは…。
なかなかいい胆力だね。
「これが成功すればワールドカップ優勝もはっきりと見えてくるんだろう?それならメリットは十分じゃないか。むしろ多すぎるくらいだ。もし失敗したら、やろうと言った君たちの首が飛ぶだけ。デメリットも僕らにはほとんどない。反対するか理由がないと思うけど…
名前はたしか…帝襟さんだったかな?
彼女の首が切られたら、僕のとこで雇ってもいいかもしれない。
その熱意がサッカーの他にも向けられるんだったら、いろいろと革新的なものを生み出してくれるだろうし。
「スポンサーの瀬古さんがそう言うのなら……私たちとしても反対する気はないですね。君たちもそうだろう?」
良かった良かった、不乱蔦会長たちも賛成なようだ。
もしこれで反対なんてされてたら……上層部の首をすげ替えてたかもしれない。
そんなことにならなくて、ほんとに良かったよ。
「それじゃあ決まりだ。せいぜい頑張って、ベスト十六の壁は超えてね。じゃないと……若人たちの未来が無駄に壊れることになっちゃうからさ。」
そんな警告を告げて、僕は会議室から去っていくのであった。