引き取った従弟を世界一のストライカーにするというだけの投資兼暇つぶし 作:らら
紫音がブルーロックに行ってしまって、すでに一カ月以上もの時が経っていた。
六年もたったの二人で生活してきたがゆえに、紫音がいない日常は僕に思っていた数倍も大きな喪失感を与えてくれる。
いまだ家に帰ってきていないってことは二次選考も生き残ったってことだから、すごく嬉しいことなんだけど⋯嬉しさ以上に悲しさが大きかったね。
「あー、暇だなぁ。紫音がいないとやっぱ、すごく退屈だよ。」
「貴方がつまらないと思うのは別に構わないけれど、久しぶりに大好きな婚約者と会えたんだから、少しは楽しそうにしてくれないかしら?」
「それはそうだけどさぁ……つまらないんだもん。だからしょうがないじゃん?」
「美形が可愛く、甘えたように言えば私がなんでも許してくれると思ってるの?」
「なんでもというわけではないけど、大半のことは許してくれるよね。」
「…………その通りよ。私のことをよく分かっているじゃない。」
耳を赤く染めながらも、拗ねたようにそっぽを向いてしまう僕の婚約者こと
先ほどまでの話のいったいどこに耳を赤くするような要素があったのか。
紫音の次に長い付き合いを持っている人だけど、やっぱり彩姫の情緒はよく分からないね。
「ふふっ。拗ねた彩姫もかわいいね。君のそういうところも、僕は大好きだよ。」
「でも、私のほうが玖月のことを好きよ。私の玖月へ向ける愛の大きさは世界一だから。」
三年以上も前から婚約しているが、いつものように付き合いたてのバカップルみたいな会話をする。
なんか近くの席にいる人たちが、みんなブラックコーヒーを飲んでるんだけど……。
「相変わらず角砂糖みたいなクソ甘い空気を振りまいてんな、アンタらは。そろそろその付き合いたてみたいな会話すんのをやめろ。聞かされるこっちの身にもなれ、アホ。」
ハッ、この不機嫌さを隠さない暴言はまさか……!!
「思ったよりも早い到着だったね、冴くん。あと一時間くらいは待つことになると思ってたんだけど。」
「アンタの部下がなぜか家の前で待ち構えてたんだよ…。あんなことをされなくとも、逃げはしないってのに。」
そうぼやきながら現れたのは、僕の1歳下であり目下のまつ毛が特徴的な青年…糸師冴。
彼は新世代世界11傑にも選ばれた、日本が世界に誇る天才MFだ。
まぁ自分のパスを受けられるストライカーが一人もいないらしいから、日本ではほとんどプレイしてないけど。
「今良いところだったから、ちょっと待っててくれないかしら…糸師くん。」
「アンタらのバカップルよりもひどい会話をすぐ近くで聞かされるこっちの気持ちを考えろ、アホ。」
「最終学歴が中卒の人にアホとは言われたくないわね。私は今女子大生よ?崇め奉りなさい。」
「あ?喧嘩売ってんのか、カス。お前みたいのは、死んでも崇めねぇよ。」
この二人はいつになったら、対面しても喧嘩しないようになるんだろうか?
こんなのもう、目と目が合ったらバトルするっていう流儀が存在する異世界の民族と大差ないよ。
こんなどうしようもない現実を嘆くことしか、僕にはできないのであった。
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「で……俺はなんで呼び出されたんだ?」
ようやく本題に入れたよ。
しかし二人の言い争いを落ち着かせるのに、二十分以上も時間がかかるとは思わなかった…。
っと、冴くんがこっちを見てるし、質問に答えよう。
「冴くんにお願いしたいことがあってね。」
「お願い?アンタが俺に?」
「そう。僕が冴くんに。」
間髪入れずに返された僕の言葉。
それを聞き、冴くんはあごに手を当てて沈黙する。
なにか考えてるみたいだけど、さっさと言わせてもらおうかな。
考えた末に、嫌だって言われるわけにもいかないし。
「冴くん⋯たしか来月の最初の日曜日だっけ?U-20日本代表と組んで、ブルーロックと試合するでしょ?僕もその中に混ざりたいから、日本代表の人たちに口添えしてくれない?入ることは力ずくでもできるんだけど、そうしたら少なからず反感を買っちゃうだろうし。」
「だからそれを限りなく減らすために、俺を使うってことか…。」
「そうだよ。たしか、ブルーロックからも一人もらってたでしょ?それがもう一度行われるだけ。どこにも問題はないんだよ。」
「上にいる連中は納得するのか?」
「してもらう必要ってあるかな?最悪は⋯⋯そうだね。スポンサー離脱を少しチラつかせて、許可を出させれば良いだけだよ。」
サッカーで勝つために国から選ばれたにも関わらず、金儲けのほうが大事と考えているような人たちだ。
彼ら⋯とくに不乱蔦会長の金儲けへの執着度合いは、超一流と言っても過言じゃない。
試合に出す許可をくれないのならお金を出さないと言ってあげれば、すぐに手のひらを返してくれるだろうね。
「………分かった。アンタと…才能の権化である玖月さんとサッカーができるのなら、それは確実にプラスの経験になるだろうし、俺は反対しない。だが一つだけ聞かせろ。」
「うん?なんだい?」
「どうして今さらサッカーをやる?サッカーをやらなきゃ手に入らないような、アンタにとって特別なナニカがあるのか?」
「今さらやるんじゃなくて、今だからやるんだよ。実はさ、ブルーロックに紫音も行っちゃっててね⋯⋯もう一月も会えてないのさ。だから、久しぶりに話すために代表に入ろうと思ったわけだよ。」
勝っても負けてもこの試合が終わったら、また会うことになるんだけど⋯ほら、ブルーロックでどれくらい成長したのかを見てみたいじゃん?
「思ってた以上に気色悪ぃな、ブラコン野郎。」
いやひどくない!?
まぁたしかにブラコンっぽいかもしれない⋯しれないけどぉ!!
そこまで言う必要はないじゃんないなぁ!?
「まぁいい。U-20のヤツらには口添えしてやる。」
なら良かった。
さっきの発言に関しては、まったくもって良くないけどね。
瀬古玖月。
U-20日本代表VS
糸師冴の呼び方は迷ったんですよね。
冴くんにさん呼びされるほどの才能マンってことにすれば風格出るかなぁと思ったのでこうしました!