直径700メートル、この世界風に言えば700メドルといった大きさの船である学区。
3層の巨大な円盤といった形の船であるフリングホルニの船底に設置されている大型な浮力発生装置は500基もあるが、それをもう少し小型化できないかという研究も行われており、浮力発生装置の研究の副産物で、空を飛ぶとまではいかないが水上を浮きながら歩ける浮遊靴というものも開発されていた。
小型化された浮力発生装置が靴底に3基設置されている浮遊靴は、独特の浮遊感があり、慣れない内は上手く水上を歩けなかったりはするが、使いこなせるようになれば、船という足場が無くても水上での戦闘が可能となる浮遊靴は、海で怪物と戦うこともある学区ではかなり役立つ道具であるだろう。
教師と生徒を含めて浮遊靴を1番使いこなせていたのは私で、水上を浮遊靴で走れる位に慣れていた私以外だと、浮遊靴で水上をゆっくりと歩くことしかできていない学区の面々。
学区の船が海上で水棲の怪物と遭遇して戦う時は、浮遊靴を使いこなしている私が1番に駆り出されるようになり、海上を浮遊靴で浮いて走りながら怪物を倒していく私。
学区の教師として働く傍らで、戦闘任務で派遣されたヴァーデンベルク先生や生徒達を見送り、海上で怪物を退治していたある日、遠目でも巨大に見える海竜のような怪物を発見することになった。
真っ直ぐに此方を目指して近付いてきている巨大な海竜が学区に直撃すれば、学区に甚大な被害があるのは間違いない。
学区の図書館には様々な怪物が描かれた図鑑も存在するが、それに載っていた海の覇王リヴァイアサンにそっくりな外見をしている海竜。
ダンジョンが怪物を生み出しているなら、新たにリヴァイアサンを生み出してもおかしくはないが、もしリヴァイアサンが再び生み出されていたとすれば、このリヴァイアサンは港町メレンがある方角から来ていた筈だ。
この海竜は、メレンの港町がある場所とは正反対の方角から此方に近付いてきている。
メレンに存在するダンジョンと海に繋がるロログ湖の大穴は、リヴァイアサンのドロップアイテムと白剛石で作られた大蓋で塞がれていて、それが破られたとするなら学区にも情報が伝わってくるのは間違いなかった。
なんら事前情報もなく現れた海竜という存在について考えられるとするなら、リヴァイアサンは元々1体ではなかったか、もしくはリヴァイアサンが何らかの方法で復活したかのどちらかになりそうだが、そのどちらであろうとも、あの海竜は倒しておく必要があるだろう。
世界で1番オリハルコンを精製している学区の錬金学科の協力もあり、外装にオリハルコンが使用された戦闘用浮遊靴は、そう簡単には壊れることはなく、私が全力で海上を走ろうと耐えられる強度を持つ。
最大戦力のヴァーデンベルク先生が居ない学区で迎え撃つのではなく、単独で戦うことを選んだ私は、戦闘用浮遊靴で海上を疾走し、素早く海竜に近付いていくと黒刀による斬撃を叩き込んだ。
流桜を用いて放った斬撃は海竜の鱗と外皮を裂いて、裂傷を刻んだが、巨大な海竜からするとほんの僅かな傷でしかない。
かなり巨大な海竜は、攻撃を行った此方を敵と見なしたようで、移動を止めると様々な攻撃を繰り出してくる。
その中でも脅威的なのは、幾千もの光閃を放ってくる遠距離攻撃と、巨体を活かした突撃であり、どちらも学区へ当たらないように防がなくてはいけない攻撃だった。
瞬時に放たれる幾千もの光閃を1本の黒刀で掻き消していき、海竜の巨体での突撃を振り下ろした黒刀で海へと叩き落とす。
【強化念系】で強化系の念によるオーラと【斬術呼吸】で全集中の呼吸が使えていなければ、巨大な海竜を打ち落とすには力が足りていなかったが、なんとか1振りで打ち落とすことができた海竜の巨体。
世界最大の船フリングホルニが小舟に思えるような巨体を持つ海竜が放つ絶波の海撃。
荒波が小波に思える程の大渦を巻く荒れ狂う海流が、此方に迫る。
全てを粉砕する海水のミキサーが直撃すれば、身体は跡形もなく粉々になりそうだが、それなら此方に当たる前に斬るだけだ。
「斬の呼吸、弐ノ型」
構えた黒刀を用いて繰り出すのは、雷の呼吸伍ノ型熱界雷を元にした斬の呼吸の弐ノ型。
「綴雷電」
下から上に斬り上げて斬撃を飛ばす熱界雷と同じく斬撃を飛ばしていく技である綴雷電によって飛ばした斬撃は、普段使う飛ぶ斬撃の強化版となり、海竜の海撃を大きく両断して真っ二つに裂いていく。
海撃を防がれた海竜が、その巨体を用いて再び行ってきた突撃。
それを黒刀で再度打ち落とそうとした瞬間、海竜の頭部から繰り出された強力な超音波が、私の身体を一時的に麻痺させた。
一時的な麻痺とはいってもほんの僅かな一瞬、身体が動かなくなっただけではあったが、その一瞬を海竜という怪物は容赦なく突いてきて、此方に喰らいついてきた海竜。
【強化念系】で使用可能なオーラによる纏と練の応用技術である堅で全身を覆っていた私の防御を破った海竜の牙。
長大な牙が私の身体に食い込み、肉を裂いた海竜の牙が生え揃う顎は、このまま私を噛み砕こうと力を強めていく。
しかし流した流桜によって硬化されて、更に強度を増した私の身体を噛み砕けない海竜の顎を、渾身の力を込めて強引に開かせた私は、海竜の噛みつきから脱出。
「【血止めの止血、毒抜き解毒、薬で癒すは、数多の傷】【癒す薬をご用意しましょう】」
着用していた着流しは海竜の歯形の形に大きく破れ、私の血液も付着している為、後で処分しておいた方が良さそうではあるな、と考えながら行う詠唱。
「【クスリバコ】」
唱えた治療魔法により、海竜の牙で負っていた外傷を癒すことには成功し、再び海竜との戦闘を開始した私は、海竜の頭部には近付かずに攻撃を行っていく。
「斬の呼吸、弐ノ型、綴雷電八連」
戦闘用浮遊靴を用いて海竜の周囲を移動しながら特大の飛ぶ斬撃の八連撃を繰り出し、怯ませた海竜の横腹に回り込んでから黒刀による連撃を叩き込み、ひっくり返した海竜の身体に飛び乗った私。
海上で仰向けとなり魔石がある胸部を晒した海竜の魔石の正確な位置を確かめる為に、スキル【透明世界】を用いて使用可能な透き通る世界を使い、海竜の身体の内側がどうなっているか視認できるようになった私は、魔石が何処にあるのか見付け出すと黒刀を鞘に納め、居合いの構えを取る。
「斬の呼吸、壱ノ型、白雷六連」
鞘走り、幾度も閃いた黒刀による斬閃が、海竜の分厚い胸部を斬り開いていき、繰り返した連撃によって剥き出しとなった魔石へと黒刀を突き立てて破壊すると、灰と化していく海竜の巨体。
ドロップアイテムとして残り、海上に浮かんでいたのは複数の海竜の牙と蒼い鰭位ではあったが、それはしっかりと回収しておき、浮遊靴で海上を駆けて学区に戻った私は、大歓声で迎えられることになった。
遠目でも見える巨大な海竜を相手に、単独で戦って倒した私を讃える生徒達は多く、全員が大興奮していたのは確かだ。
私が持ち帰ったドロップアイテムにも興味津々な学生達は多数存在したが、まずは神々と教師達で確認することになった海竜のドロップアイテム。
海竜が残したドロップアイテムについて様々な検査を行った結果、海の覇王リヴァイアサンのドロップアイテムに酷似しているということが判明し、私が討伐した海竜はリヴァイアサンオルタと命名されることになったようだ。
各種ドロップアイテムの所有権は海竜を単独で討伐した私にあるということになったが、とりあえず複数の牙だけは私が所有することにして、海竜の鰭などは学区に提供することにしておく。
ちなみに海竜の単独討伐は偉業だと判定されていたようで、主神のバルドル様に恩恵を確認してもらうとLv7にランクアップすることが可能になっていた私は、全てのステイタスがSの999となっていたので、Lv7にランクアップさせてもらうことにした。
サミダレ・時雨
Lv7
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
耐異常:C
剣士:D
拳打:E
治療:F
覇撃:G
閃斬:I
《魔法》
【クスリバコ】
《スキル》
【生来痣者】
【和国流桜】
【強化念系】
【斬術呼吸】
【透明世界】
ついにLv7となりヴァーデンベルク先生と同じLvにはなったが、これからも鍛練は欠かさないようにしておくとしよう。
リヴァイアサンオルタは、リヴァイアサンのドロップアイテムを食した水棲モンスターが、完全にドロップアイテムに取り込まれる形で変化していって生まれたモンスターであり、元になった水棲モンスターが使えた超音波攻撃も可能になっていました