私が巨大な海竜であるリヴァイアサンオルタを倒して、Lv7になってからしばらくは、ちょっとしたお祭り騒ぎになっていた学区。
規格外の怪物を倒してLv7になった私を讃えていた生徒達は数多く存在し、学区のいたるところで祝いの宴が開かれて賑わっていたりもした。
3週間ほど続いたお祝いは結構長かったかもしれないが、その間に戦闘任務から帰ってきたヴァーデンベルク先生は、リヴァイアサンオルタと私の戦いを見れなかったことを悔しそうにしていたのは確かだ。
学区は教育機関であると同時にオラリオに支援される世界勢力の1つで、義勇軍や傭兵としての側面も持っている学区は、立ち寄った国や街に依頼された際、教師や生徒を戦闘任務の名で派遣する。
怪物による被害、自然災害、時には地域紛争にさえ介入していく学区という勢力。
今回ヴァーデンベルク先生や生徒達が戦闘任務で派遣された理由は、竜の谷から降りてきた竜による被害を食い止める為であったらしい。
Lv7のヴァーデンベルク先生なら倒せた竜を倒し、生徒達には住民の避難や木っ端の竜の相手を任せ、戦闘任務を遂行したヴァーデンベルク先生。
よほど気になっていたのか珍しくヴァーデンベルク先生に頼まれたので、海竜と私の戦いがどんなものであったかをヴァーデンベルク先生に詳しく教えたが、海竜が超音波攻撃を行ってきたことを知ったヴァーデンベルク先生は「リヴァイアサンにそんな攻撃方法は無かった筈だ。新たに得たのか、それとも」と様々なことを想像していたみたいだ。
リヴァイアサンを実際に見たことがあるヴァーデンベルク先生から貴重な情報を聞き、私が倒したリヴァイアサンオルタがリヴァイアサンが持っていなかった攻撃手段を持っていたことについて、深く考えていた学区の研究者達。
そこでリヴァイアサンオルタのドロップアイテムである蒼鰭の一部を用いて、様々な実験を研究者達が行って検証した結果、判明したのは、リヴァイアサンオルタのドロップアイテムを食べさせた水棲モンスターの姿形が、リヴァイアサンに似た姿に変化していったということだ。
完全にリヴァイアサンの姿になる前に水棲モンスターは殺害して解剖を行ってから処分したようだが、解剖により身体の内側には水棲モンスターの特徴も残しながら、ほぼ全ての部位を別種のモンスターに変化させていたことも確かめることができたとも言っていた研究者達。
この実験結果から考えてリヴァイアサンオルタとは、海の覇王リヴァイアサンのドロップアイテムを食した水棲モンスターが、リヴァイアサンのドロップアイテムに取り込まれ、完全に海竜の姿に変化したものだったのではないか、と想定された。
この想定が正しいとすると、この世界にリヴァイアサンのドロップアイテムが存在する限り、他の水棲モンスターの身体を乗っ取ったリヴァイアサンが、再びオルタとして復活する可能性は零ではない。
ヴァーデンベルク先生が持つ剣のように、ドロップアイテムを完全に加工してしまえば、流石に復活するようなことはない筈だが、リヴァイアサン級の怪物が残すドロップアイテムは、完全なる加工に凄まじい手間と費用がかかるようである。
ヴァーデンベルク先生の大長剣である覇竜の大壊剣には、リヴァイアサンの蒼牙が素材に使われており、加工には魔法大国の魔改精霊炉が使用され、剣を作成した鍛冶師は椿・コルブランドという最上級鍛冶師。
素材となるリヴァイアサンの蒼牙は学区側から提供されたものであり、実費は椿さんと精霊炉の稼働費だけだが、それだけでも13億ヴァリスという費用が、蒼牙を剣に加工する為に使われたようだ。
そんな覇竜の大壊剣の作成費用は、ヴァーデンベルク先生に惚れている他国の姫などが援助したようで、学区とは別勢力からの援助と投資が山盛りで作られたヴァーデンベルク先生の剣には、様々な因縁が生まれている。
そんな因縁を結構気にしているヴァーデンベルク先生は、許されるなら覇竜の大壊剣を手放したいと考えているみたいだった。
覇竜の大壊剣を一例とすると、リヴァイアサン級のドロップアイテムを完全に加工するには、最上級鍛冶師並みの鍛冶の腕、魔改精霊炉という炉、それらを動かす為の多額なヴァリスが必要になるということになるな。
ドロップアイテムをそのままの形で使用する分には、そこまで費用はかからないようで、学区の学園層の外縁部を取り巻くように設置されたリヴァイアサンの蒼鰭などは、加工されずにそのままの形で調光器として使用されていた。
ちょっとやそっとでは破損しないリヴァイアサンのドロップアイテムは、フリングホルニ本体よりも頑丈ではあるので、並みのモンスターでは破壊できない。
故に学区で調光器に使われている蒼鰭が、新たなリヴァイアサンオルタを生み出すことは、今のところはないだろう。
しかし、私が倒したリヴァイアサンオルタのような規格外の怪物が居ないとは限らない為、出来る限りはリヴァイアサンの蒼鰭が破損しないように行動すると決めた学区の面々。
私が所持するリヴァイアサンオルタの蒼牙も厳重に保管するようにとバルドル様から命じられ、錬金学科と鍛冶学科が協力して作成した外側が白剛石で内側がアダマンタイト製の保管箱まで渡されたので、それに複数の蒼牙を入れて保管しておく。
リヴァイアサンの蒼牙1本の加工に13億ヴァリスもかかるとなると、この4本のリヴァイアサンオルタの蒼牙を全て加工するには、最低でも52億ヴァリスという凄まじい金額が必要になりそうだ。
個人でそれだけ稼ぐのは、学区の給料だけでは絶対に無理だな。
オラリオで冒険者として稼いだとしても、52億ヴァリスを1回のダンジョン探索で稼ぐのは不可能な筈であるし、幸運に幸運を重ねてレアモンスターと遭遇しまくったり、宝石樹を発見したとしても、52億ヴァリスを稼ぐのは楽な道のりではない。
2振りの黒刀がある私は武器には困っていないが、蒼牙が優れた素材であるのは確かであり、眠らせておくには惜しい素材でもあった。
まあ、今のところは加工費用を用意することができないので、リヴァイアサンオルタの蒼牙は、保管しておくしかないだろう。
後は盗難防止用に表面が白剛石で内側がアダマンタイト製の保管箱に、同じくアダマンタイト製の鎖を巻いた上で、更にアダマンタイト製の南京錠を使って鍵をかけておき、簡単には外せないようにしておいたので、私の部屋に侵入者が入ったとしても蒼牙を取り出すには苦労する筈だ。
少なくとも第1級冒険者でなければ、この特製の箱を強引に破壊するのは不可能である。
Lv5以上で、よほどの力自慢でなければ破壊できない強度を持つ特製の保管箱。
表面の白剛石と内部のアダマンタイトによる2重構造は、そう簡単には破れないし、巻いてある鎖もアダマンタイト製で、壊すにはかなりの力が必要だ。
鎖を繋いでいる南京錠も中々の大きさであり、こちらも楽には壊せない強度を持つ。
鎖と南京錠や保管箱を学区内で壊せそうな存在は、私以外だとヴァーデンベルク先生しか居ないが、ヴァーデンベルク先生はリヴァイアサンオルタの蒼牙を必要としていないので、態々壊して奪いに来ることもない筈だ。
リヴァイアサンオルタのドロップアイテムを欲するのは学区外の存在となる可能性が高いが、使用用途を明確に明かして完全に加工することを約束してくれるなら、学区外の存在に蒼牙を譲っても構わないとは思っている。
しかしリヴァイアサンオルタの蒼牙を悪用しようとしている存在には、渡さないようにしなければいけない。
という訳で学区内の警備を更に厳重にすることが学区の神々と教師達により決定し、警備に役立ちそうな魔道具の数々も開発が決まったようで、様々な学科が協力して開発されていく多数の魔道具。
たとえ透明になっていようが熱や音を感知する魔道具を用いれば、発見することは可能になるだろう。
侵入者の基準がヘルメス・ファミリアになっているのは、以前透明化して学区にヘルメス・ファミリアが侵入してきたからになるが、懲りないヘルメス様は、いずれまた侵入してくるかもしれないな。
ちなみにリヴァイアサンオルタの蒼鰭を水棲モンスターに食べさせる実験をする為、サミダレ先生が黒刀で頑丈な蒼鰭を削ったりして協力したりもしたようです