商業学科の面々が出店している店の中でジャガ丸くんを扱っている店は幾つかあるが、どの店のジャガ丸くんが1番美味しいのかを生徒達は知りたいと思ったようで、多数の生徒達が商業学科の教師達に頼んでみた結果、ジャガ丸くん品評会という催しが開催されることが決まったそうだ。
店を出している訳ではなくても、商業学科の生徒なら誰でも参加可能なジャガ丸くん品評会に、かなりの数の料理自慢な商業学科の生徒達が参加を決めたようで、それぞれが試作したジャガ丸くんを友人に試食してもらったりしながら、品評会に向けて努力を続けている。
商業学科以外の教師達も生徒達を手伝う為に、大量に必要になりそうなジャガイモや、他の食材などを補給しに出かけたりもして、山のようなジャガイモや他の食材を持ち帰り、食材保管庫にしまっていく教師達。
そして品評会が行われる当日、学区の学園層にある公園に仮設されたジャガ丸くんの屋台が立ち並び、まずは品評会の予選が行われることになった。
屋台の客となる生徒達は水晶で作られたカードを3枚だけ所持し、美味しいジャガ丸くんだと思った屋台を3つまで選んで、カードを1枚ずつそれぞれの屋台の箱に入れていき、最終的なカードの数によって、上位5名までが品評会本選に参加が可能となる。
様々なジャガ丸くんの屋台が競い合う最中、甘い系のジャガ丸くんが女生徒達に人気であったり、全く甘くないジャガ丸くんの屋台に男生徒達が集まったりもして、食の好みが分かれていたりもした生徒達。
相変わらず呪文のようなジャガ丸くんを頼む女生徒は少なくはないので、容器に入ったシロップやクリームが本体じゃないか、と思えるようなジャガ丸くんが結構な人気だった。
教師達はジャガ丸くん品評会の本選での審査を任されている為、今のところは生徒達を見守るだけが仕事ではあるが、私が審査で甘い系のジャガ丸くんを食べなくてはいけない可能性は非常に高い。
これもまた教師としての仕事であるなら仕方がないことかもしれないが、上位5名となる全員が甘い系のジャガ丸くんを売り出す屋台ではないことを祈っておくとしよう。
そんな祈りが何かに通じたのか、上位5名となった内3名が甘くないジャガ丸くんを売り出していた屋台であったので、心の中だけでガッツポーズをした私は、品評会本選で審査するジャガ丸くんが、全部甘いものにならなかったことを喜んだ。
それから公園から場所を変えて、普段は戦技学科が授業で使用している場所に移動し、白剛石で作られた観客席があるアリーナで開催されるジャガ丸くん品評会本選。
アリーナ内に設置された調理場で、ジャガ丸くんを作成していくのは、生徒達によって選ばれた上位の5名。
その内の4名は商業学科でも売り上げランキングが上位に食い込む面々だったが、残り1名は商業学科に入学したばかりな生徒で、まさか上位5名に含まれて本選に出場するとは思われておらず、完全にダークホース扱いであった。
審査をする教師達全員分のジャガ丸くんを、用意できた生徒から順に審査をしていき、教師達には1枚だけ渡されている水晶のカードを、1番美味しいと思ったジャガ丸くんを作った生徒に渡していって、生徒が得た水晶のカードの数で、最終的な順位が決定となる品評会。
「うちの店で1番人気な、ジャガ丸くんグランデチョコレートチップエクストラコーヒーノンファットミルクキャラメルプラペチーノウィズチョコレートソース味です」
そう言いながら教師達に水晶の器に入ったシロップとクリームにぶちこまれたジャガ丸を提供していた女生徒。
一緒に渡されたスプーンでシロップとクリームにジャガ丸くんを掬い、一口食べてみると中々の甘味が口内に広がり、ジャガ丸くん自体も甘く味付けされている為、倍増した甘味に口内がどんどん侵略されているような気がした。
甘いなこれは、と思いながらも完食し、まだ甘い口内を水でも飲んで洗い流していきながら、次のジャガ丸くんを待つ。
「ジャガ丸くん黒蜜きな粉小豆味になります」
極東出身らしい商業学科の女生徒は、和風な甘味のジャガ丸を私達教師に渡してきた。
呪文と言うほどには長くはないが、また甘めなジャガ丸くんが来たな、と考えたりしながら、水晶の器に入ったジャガ丸くんをスプーンで食べていく。
先程のジャガ丸くんほど甘過ぎたりはせず、黒蜜ときな粉と小豆という相性がいい組み合わせが、上手く組み合わさっていて、優しくしつこくない甘さが口の中を満たす。
あっさりと完食できた黒蜜きな粉小豆味は、素直に美味しいと思えたジャガ丸くんではあったが、他にも審査するジャガ丸くんは残っているので、水晶のカードを渡す生徒を誰にするかは、全てのジャガ丸くんを食べてからにしておかなければいけない。
「ジャガ丸くんスパイシーカレー味っす」
体格がいい男生徒が、商品名を言って教師達に渡すのは、カレーの匂いを漂わせた茶色のジャガ丸くん。
水晶の器ではなく紙袋に入れられたジャガ丸くんを食べると、スパイシーなカレー味が口内を刺激してきたが、辛さの中にしっかりと旨味がある。
食欲を増進するカレーの匂いにより、あっという間にスパイシーカレー味のジャガ丸くんを食べ終えた教師も少なくはなく、確かにこのジャガ丸くんも美味しいと思えた。
3人目まで出揃うと悩み始める教師達も増えてきて、どの生徒に水晶のカードを渡せばいいのかで、頭を悩ませていた教師達。
「ジャガ丸くん醤油バター味」
次の4人目となった男生徒も極東出身者のようで、醤油とバターの組み合わせというジャガイモとの相性抜群な味を、教師達に渡してくる。
水晶の器に入ったジャガ丸くんに醤油とバターが適量かけられている為、醤油とバターの塩気と香りが揚げたてのジャガ丸くんに絡み、一口食べると醤油を追加したジャガバターのような味わいが口の中に一杯に広がって、これも美味しいと思える味だ。
醤油バター味を食べて、どれを1番にするか更に迷うことになっていた教師達に、最後に残った女子生徒が渡してきたのは、薄切りのパンに挟まれたジャガ丸くん。
「ジャガ丸くんサンドです」
商業学科の新入生である女子生徒が作成したジャガ丸くんサンドを、かじった教師達が全員驚愕の表情となっていた為、遅れて私もジャガ丸くんサンドを食べてみた。
茹でてから潰し、丁寧に裏ごしされたジャガイモを使用して作られたジャガ丸くんには、果物と野菜の酸味と旨味が溶け込んだ黒いソースがかけられた状態でパンに挟まれており、ソースコロッケサンドのようではあるが、旨味が段違いに凝縮されていて、とてつもなく美味い。
パンに挟まれているジャガ丸くん自体が格段に美味く、ソースがかかっている以外ではシンプルなプレーンのジャガ丸くんである筈だが、これまで食べてきたジャガ丸くんとは格が明らかに違っている。
そんな凄まじく美味いジャガ丸くんサンドを作れた商業学科の新入生が何者なのか気になった教師も少なくはなかったようで、女子生徒に幾つか質問をしていた教師達。
その質問により判明したのは、オラリオで初めてジャガ丸くんを作った人の子孫がこの女子生徒だったようで、代々受け継がれてきたジャガ丸くんのレシピで作ったジャガ丸くんと、女子生徒が開発した特製ソースを組み合わせてパンに挟むと美味しいと思った自分が正しいか証明する為に、ジャガ丸くん品評会に挑戦してみたらしい。
品評会で生徒達が作ったジャガ丸くんを審査していたほぼ全員が、ジャガ丸くんサンドを作った女子生徒に水晶のカードを渡し、ぶっちぎりで1位となった商業学科の新入生。
入学して早々に品評会で優勝した女子生徒は、学区に伝説を残したのかもしれないな。