卒業が決まった工芸学科の生徒達は、卒業製作として何かしらのものを作成し、学区に残していっているが、これまでの工芸学科の生徒達が卒業製作で作ったものは、意匠を凝らした魔石街灯や建物に美しいアーチだけではなく、女神様の彫像等々と様々なものが作られていた。
工芸学科で進路が決まり、卒業することになった今期の生徒達も、学区で卒業製作を行ってから卒業することにしたようで、生徒達それぞれが協力したり、あえて単独で製作に励んでいた卒業製作の作品。
建物などの建造物の作成は流石に単独では難しく、複数人で協力しながら新たな建造物を作っていく工芸学科の生徒達。
神々から恩恵を授かっている生徒達はLv1だとしても常人では持てないような重さがある物を持てるので、手分けして建造物の建設を行っていく生徒達はテキパキと作業を進めていき、僅か1日で形となった建物には手抜きはなく、そう簡単には壊れない強度があった。
学区に新たな建造物が増えた日、それぞれ単独で卒業製作の作品を作成していた工芸学科の生徒数名は、新たな魔石街灯の意匠をどんなものにするか考えていたり、どの女神様の彫像を作成するかで頭を悩ませていたりもしたようだ。
数日後に決まった魔石街灯の意匠は、カボチャのランタンのような形になったみたいで、橙色でカボチャの形をした魔石街灯は明らかに目立っており、灯りが点くと更に目立つ街灯となっていたな。
他の工芸学科の生徒が卒業製作で作成する女神様の彫像はアルテミス様に決定したようで、雪花石膏を用いて作成された彫像は、女神であるアルテミスが勇ましく見えるように弓を構えた姿となっていた。
実際にアルテミス様と行動したことがある私から見ても、よくできていると感じたアルテミス様の彫像。
それぞれの卒業製作を見ていると、今期の工芸学科で卒業が決まった生徒達が優秀であるのは間違いなく、彼等なら卒業後の進路でもきっと頑張っていけるだろう。
学区から巣立っていった工芸学科の卒業者達を見送り、船旅に戻った学区では、商業学科や工芸学科などの他科が中心となる催しが多かったことを不満に思った教養学科の生徒達からの希望によって、教養学科が主導となる催しが近日開催されることが決まったらしい。
どんな催しとなるかは他科の生徒達にはまだ明かされておらず、他科の教師達にも大会を行うとしか教えられていないが「様々な生徒が楽しめるような大会となるように頑張りますが、手伝ってもらうこともあるかもしれません」と教養学科の先生達は言っていたな。
以前ジャガ丸くん品評会でも使われたアリーナでは、教養学科の教師と生徒達によって様々な準備がされていたりもして、明日には大会の準備が完了となるそうだ。
翌日、教養学科主催の大会に参加を希望する生徒達が学区のアリーナに集まり、それぞれの学科ごとにグループ分けされてから開始されたのはクイズ大会であったが、出された様々な問題に解答していく生徒達。
司会を務める教養学科の監督生が音声を拡大可能な魔石製品を、マイクのように用いて出していくクイズの問題。
「それではここで第4問!オラリオのダンジョン18階層では採取可能な果実がありますが、売ると最も高額なのはどれ?1番、雲菓子、2番、肉果実、3番、水晶飴」
この中では雲菓子が1番安価で、肉果実が2番目に高額であり、水晶飴が最も値段が高いので、正解は水晶飴で間違いない。
クイズの解答者達には頑丈な卓上ベルが渡されており、早くベルを押して鳴らした生徒に解答権があるが、今回の問題にいち早く反応して卓上ベルを鳴らした戦技学科の生徒。
「2番、肉果実!」
自信満々な顔で答えた戦技学科の生徒に「残念、違います」と言った司会の監督生。
「3番の水晶飴」
2番目に解答したのは教養学科の生徒だったが「正解!教養学科に10点」と正解した教養学科の生徒達に点数を与えたクイズ大会の司会。
クイズに答えて正解すると点が貰えて、合計点数が200点となった学科が勝利となる今回のクイズ大会で優勝すると、神々が用意した景品などが貰えたりするようだ。
それからも様々なクイズ問題が出されていたりもしたが、他科の教師達にも協力を頼んできた教養学科の先生達。
司会をしている教養学科の監督生に「戦技学科のサミダレ先生!協力お願いします!」と名指しで呼ばれた私は、教師達に用意されていた席から移動して監督生の隣に立っておく。
「次の第12問は、特別な問題となりますよ!準備をお願いします!」
司会の監督生の言葉に従うように現れた生徒達によって用意されたのは、真っ直ぐ立つように固定された1本の金属製の棒と、鞘に納められた1本の刀であり、金属製の棒はオリハルコンで作られていた。
「第12問は、サミダレ先生が鍛冶学科の学生が作った白剛石の刀で、錬金学科が精製したオリハルコンの棒を切断できるかどうかが問題となっています!切断できるかできないか、どちらかの2択を選んでください!」
司会の監督生のその言葉に従って答えを選択した生徒達は、大半の生徒達が切断できないを選んでいたが、しかし私が授業を教えている戦技学科の生徒達は全員が迷うことなく切断できるを選んでいたようだ。
教え子達にそこまで信じてもらえているなら、戦技学科の先生として、大人げなく本気を出してみるのも悪くはない。
「戦技学科以外は切断できないを選びましたが、切断できるを選んだ戦技学科の生徒達には動揺はありませんね。それではサミダレ先生、お願いします!」
そう言い放った司会の監督生から渡された鞘に納まった刀を持ち、居合いの構えを取った私は、流桜を刀に流すと瞬時に鞘から抜いた白刃を閃かせる。
斬るべきものだけを斬る居合い斬りで、強度ではオリハルコンに遥かに劣る白剛石の刃を用いて、私はオリハルコン製の棒を完全に切断。
斬り落とされたオリハルコンに驚愕する他科の生徒達とは違って、戦技学科の生徒達は当然だと言わんばかりな顔で頷いており、とても落ち着いていたな。
「正解は切断できるでした!戦技学科の生徒達はおめでとう!貴方達には10点が追加されます!そしてサミダレ先生は協力ありがとうございました!」
今回の正解で戦技学科が10点を得ることになり、クイズ大会はその後も続いていったが、20問目の問題になったところで「今回の20問目はレオン先生とサミダレ先生に協力をお願いします!来てくださいお2人とも!」とヴァーデンベルク先生と私が呼び出されることになった。
「サミダレ先生は2回目になりますね」
「そうなりますね。また何かやらされそうな気がしますが、今回はヴァーデンベルク先生も道連れです」
「それは怖いな」
そんな会話をヴァーデンベルク先生としながら移動していき、司会の監督生の近くに立っておいた私とヴァーデンベルク先生。
「あれ持ってきて!」
司会の監督生のその言葉に従うように生徒達が数人がかりで持ってきたのはオリハルコン製の台であり、左右に肘を乗せるような窪みがあったが、腕相撲をするのにちょうどよさそうな台ではある。
「それではこれからレオン先生とサミダレ先生には腕相撲をしてもらって、どちらが勝つかが20問目のクイズになります!レオン先生とサミダレ先生のどちらが勝つかを解答者達は選んでください!」
司会のその言葉でクイズ大会に参加していた生徒達の解答が2つに割れたが、女生徒達の大半はヴァーデンベルク先生が勝つと選び、男生徒達の大半は私が勝つと選んでいた。
しかし戦技学科で第8小隊に所属するシノブノさんにサンジョウノさんとテントウさんにマシマさんだけは、私が勝つことを選んでいたみたいだ。
「相変わらず女生徒達にモテモテですねヴァーデンベルク先生」
「そちらこそ男生徒達から随分と慕われて信頼されているようですねサミダレ先生」
「まあ、全ての生徒達に負けると思われていなくて良かったとは思っていますよ。今回は腕相撲ですが」
「ドワーフとしては力比べで負けたくないので、腕相撲でも本気でいきますよサミダレ先生」
「失礼のないように私も本気でいきますよヴァーデンベルク先生」
「それは楽しみだ」
ヴァーデンベルク先生と会話しながらオリハルコン製の台に腕を置き、肘を台の窪みに入れて、ヴァーデンベルク先生と私は互いの掌を掴み、腕相撲をいつでも開始できる体勢になった。
「それでは、始めっ!」
司会の監督生が言った開始の合図で、始まった私とヴァーデンベルク先生の腕相撲。
「そんな女子人気が高い教師なんてやっちまえでござるよサミダレ先生!」
「サミダレ先生のとんでもねー力を見せてください!」
「おばあちゃんが言っていた。競うな、持ち味を活かせ!」
「サミダレちゃんならそないな騎士かぶれなんぞ一捻りやで!」
腕相撲が始まってからは、そんな外野の声、というか第8小隊の面々からの声援が聞こえたりもしたが、元々私は負けるつもりはない。
互いにLv7で、力を強化可能なスキル持ちな私とヴァーデンベルク先生の腕力によってオリハルコン製の台が凄まじく軋んだりもしていたが、お互いにスキルの使用は禁止していなかった為、決着は早めに訪れて、圧倒的に優勢だった私の勝利で終わる。
「勝ったのはめっちゃ強かったサミダレ先生!正解はサミダレ先生の勝ちとなります!正解者には20点が追加されますよ!レオン先生とサミダレ先生お手伝いありがとうございました!」
クイズ大会の司会を行う教養学科の監督生は、ずっとテンション高めなままで、次のクイズ問題を出していた。
「やはり貴方は強い。それでこそサミダレ先生だ」
とても嬉しそうなヴァーデンベルク先生に、そんなことを言われたりもしながら教師達に用意された席に戻った私。
それからはクイズ大会を終わりまで見守ったが、流石に2回も呼ばれた私が更に呼び出されることはなく、他の学科の先生も司会に呼び出されてクイズに協力させられたりもしたが、平和に終わったクイズ大会。
教養学科主催のクイズ大会は、他の学科の生徒達も楽しめた催しだったと言えるだろう。