学区は大きく分けて、制御層、居住層、学園層に分かれており、巨大な円盤が3つ重なったような構造をしている。
底部の制御層には大量の大型魔石装置である浮力発生装置が備わっていて、船の心臓部とも言える機関部や研究室なども存在していた。
真ん中の居住層には、生徒や教師などの居住区が設けられており、1万人以上の人々が使用する居住空間となっている居住層。
3段もある層の1番上にある学園層には、沢山の校舎や演習場などの授業を行う為の施設が集まっており、教育機関としては最も重要な場所であるかもしれない。
学区こと超巨大船フリングホルニが世界を旅し続ける上で、各層に役割を持たせておくという構造が必要なことであったらしく、乗組数が1万人を超えているこの船の区画は、大きく3層に分かれていることで綺麗に整理されているようだった。
巨大な3つの層が重なった壮観を持つ超巨大船フリングホルニは、3段重なったパンケーキや長針が飛び出した時計などと呼ばれることもあるそうで、それを聞いた学区の神様達は「言い得て妙」とも言っていたな。
3段重なった層の最上部である学園層だけでも街1つが入る位には巨大で、通りも沢山ある為、学区に入学したばかりの新入生だと、学園層で迷ってしまうこともよくあることだ。
そんな学園層には、生徒達が開く売店なども存在していて、場所によって様々な商品が売られている。
商業学科で一定の単位を取って資格試験に合格すれば、誰でも店を経営可能な学区。
学園層には学生が経営する多種多様な店が存在しているが、これもまた授業の一環で、商業系のファミリアや経営関係の仕事を進路にしている生徒達に、学区内で予行練習をさせて、市場の空気というものを知ってもらうことが重要だと、商業学科の先生達は言っていた。
月間の売り上げ順位なども計測されており、上位の店には神様達から景品も渡されるようで、商業学科の生徒達はいつも張り切っており、新しい商品が毎月登場する学区の店。
買い物が好きな学区の生徒達からは、毎月新しい商品が見れて楽しいと好評であるようだ。
料理系の店が多めではあるが、服飾や雑貨などを売っている店も存在し、生徒達が作った商品が並ぶ学園層の店舗。
オラリオ発祥のジャガ丸くんも学区の店では売られており、かなり人気ではあったが、学区のジャガ丸くんは奇妙な進化を遂げていて、ジャガ丸くんグランデチョコレートチップエクストラコーヒーノンファットミルクキャラメルプラペチーノウィズチョコレートソース味という呪文詠唱かな、と思うような名前のジャガ丸くんが売られていたりする。
ちなみにジャガ丸くんグランデチョコレートチップエクストラコーヒーノンファットミルクキャラメルプラペチーノウィズチョコレートソース味を頼むと、水晶の容器に詰まったシロップたっぷりのクリームと、その中に突っ込まれたジャガ丸くんという状態なものを渡されるが、もはやシロップとクリームの方が本体と言えるものになっていたのは確かだ。
甘いものが嫌いな訳ではないが、ジャガ丸くんをシロップとクリームにぶち込んだものを食べたい訳ではない私は、学区でジャガ丸くんを注文する時は、無難な、ほうじ茶ペッパー味しか頼むことはない。
学生が経営している店でジャガ丸くんを買う場合は学区紙幣で支払う必要があるが、ラグナーと呼ばれる紙幣が学区の基本通貨となっており、ヴァリス金貨と学区紙幣のラグナーは学生銀行で換金することが可能である。
生徒を含め、学区内から出て学区外で行動する時は、事前に学区紙幣をヴァリス金貨に換金してから学区外に移動することを推奨されており、問題児な生徒達であっても換金を忘れることはなかった。
オラリオで実習を行う際は、学生銀行に生徒達が押し寄せて、銀行の職員と商業学科の生徒達が忙しく働くことになっていたな。
ちなみに生徒が自主経営している店などは有料だが、学区の職員や神様達が直営している学食は、基本的に無料となっている為、金欠な学生であっても、飢えて死ぬようなことはない。
無料な学食の中でも青空食堂と呼ばれるスカイ・ラウンジは、学生達に大人気な学食であったりするようで、限定50食だけしか作られていないが、いつも満員であるそうだ。
神様が腕を振るって料理を作っている青空食堂の料理は、どれも美味しいと評判で、特に宝石のような魚卵が乗ったパスタはかなりの人気があった。
やはり海上を移動する船である学区は、海で獲れる海鮮系の料理が美味しい場所であるのかもしれない。
学区では食料調達の為に漁を行うこともあり、基本的には学区の職員達が網や、学生が開発した装置などを用いて魚などを捕獲していたりもするが、希望者の学生も漁に参加することもあって、漁に参加した学生は数匹程度なら魚を持ち帰ることも許可されている。
商業学科の学生が魚を使った新商品開発の為に、漁に参加することも多々あり、並みの漁師よりも漁業に詳しくなった学生も存在していて、そんな学生は学生でなくなってからも学区に残り、漁を行う職員として学区で働いていることもあるみたいだ。
学区を学生として卒業しても、職員や教師として学区に残ることを選んだ元生徒も少なくはない。
私が担当する戦技学科以外にも、鍛冶学科や商業学科などの他の学科が幾つか存在している学区。
戦技学科では武学と野外調査に戦闘任務が必修科目であるが、野外調査を含めた実習系科目は、ダンジョンで行う特別実習に切り替わることもあり、無事にダンジョンでの実習を終えてレポートも提出した第8小隊の単位は、しっかりと保証されている。
全ての小隊が無事にダンジョンでの実習を終え、オラリオに向かった卒業生達も見送り、新たな新入生達も迎えて、フリングホルニの破損部位などの改修も完了し、メレンの港町から出港することになった学区は、オラリオや陸地にも別れを告げて、再び船旅を始めた。
学区の職員達が大農地を有するデメテル・ファミリアなどから大量に購入した野菜や果実は、魔石製品の冷蔵保管庫にしまわれていて、航海の旅で不足しがちなビタミンなども補給できるように、職員が働く無料学食などに使われていた野菜や果実。
魔法による治療ではどうにもならない壊血病になることがないように、新鮮な野菜や果実などを切らすことなく、定期的に補給は行っている学区の職員達。
数週間から数ヵ月間ビタミンCを摂取しておらず、ビタミンC欠乏状態となると発症する壊血病は死に至る病であるが、新鮮な野菜や果実を食べていれば防げる病気ではある。
生徒達の栄養面なども考えて作成されている無料学食は、学区で働く職員達の努力が窺えるもので、栄養バランスがいい食事が用意されていた。
学区には学生用の学食以外にも、教師や職員用の食堂も数は少ないが存在し、そちらでは裏メニューで酒なども提供されていて、特に酒が好きな訳ではない私は頼んだことはないが、酒好きなドワーフの教師や職員が、裏メニューを頼んでいるところは見たことがある。
学区に酒造所などは存在しないが、食料品の補給を行う際に、嗜好品の補給も同時に行われているようで、酒なども密かに確保しているそうだ。
船上では娯楽と言えるものが限られており、せめて酒位はたまに飲みたいというのが酒好きな面々の言い分で、それを神様達も認めているからこそ、酒が裏メニューとして置かれているのだろう。
まあ、浴びるように飲まずに、軽く嗜む程度なら問題はないのかもしれない。