今回は過去編ですね
生まれ変わりを複数回も経験していた私は、今生では生まれてから直ぐに捨て子となることになった。
捨てられた理由としては、生まれつき顔に痣があることに加えて体温が高いことから、何らかの病であるのではないか、と判断されたようで、長生きできないと思われたことも関係しているかもしれない。
鬼が居た大正時代の日本に生まれ変わった時と同じく、今生も生まれつきの痣者で体温や身体能力が高くとも、赤子の状態では可能なことも限られていて、これからどうするかと考えていると降り出す雨。
雨で身体をくるむ布が濡れて、体温が奪われる前に移動しようと思った私の前に、和風な傘を持った女性が現れ、此方の身体を抱き上げる。
「捨て子か、ふむ顔に焔のような痣があるが、そんな赤子が焔を扱い鉄を打つ妾と出会うとはのう。これも何かの縁かもしれぬな。妾がお主を育ててやるとしよう」
そう言った女性は、赤子である私を抱えたまま家に戻ると、雨で濡れていた私の身体を清潔な布で拭いてくれた。
鍛冶場のある大きな家には女性以外にも住んでいる者達が居るようであり、赤子の私を連れ帰った女性は「カナヤゴ様」と呼ばれていて、敬われる立場であるようだ。
「お主の名前は、出会った時に雨が降っておったことにちなんで、サミダレ・時雨と名付けておくとするかのう」
サミダレ・時雨という今生の名を授けられたその日から、カナヤゴ様に育てられることになった私は、充分な栄養を与えられて順調に育ったが、直ぐに立って歩けるようになったことには驚かれたな。
私が生まれたこの国が極東と呼ばれていることを知ったり、怪物が存在する世界であることや、カナヤゴ様が製鉄の神であることを知ったりもしながら、経過していく月日。
製鉄の神であるカナヤゴ様は鍛冶師達を指導する立場であったが、カナヤゴ様はその神血を用いて鍛冶師達に恩恵を授けているようで、神の恩恵を授かっている鍛冶師は、良い武器を作れるようになっていた。
私が7歳になった頃、カナヤゴ様から神の恩恵を授かることになり、剥き出しの背を晒した私へとカナヤゴ様の神血で刻まれた恩恵。
初めて恩恵を刻まれた時は誰でもLv1から始まるが、最初から魔法やスキルを発現していることもあり、私にも魔法とスキルが発現していたみたいだ。
サミダレ・時雨
Lv1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《魔法》
【クスリバコ】
・治療魔法
・外傷治療、止血、解毒効果
・詠唱式【血止めの止血、毒抜き解毒、薬で癒すは、数多の傷】【癒す薬をご用意しましょう】
《スキル》
【生来痣者】
・寿命を削ることなく痣者としての恩恵を授かることができる
その名の通りに薬箱のような魔法と、生まれつきの痣者であったことがスキルとして反映された【生来痣者】のスキル。
神の恩恵を刻まれたことで、これまで以上に動けるようになった私だが、カナヤゴ様から恩恵を授かった鍛冶師達が試し切りついでに怪物退治をしていることを知り、怪我をして帰ってきた鍛冶師達を【クスリバコ】の魔法で治療していくとステイタスの魔力だけが伸びていく日々。
【クスリバコ】を使用する為の魔法の詠唱にも慣れて、魔力だけがDの542まで上がっていた頃、怪物退治に出掛けた鍛冶師達が怪我人ばかりになって戻ってきたが、帰ってきていないのが何人か居たので、手早く怪我人達を治療した私は、まだ戻ってきていない鍛冶師達を迎えにいく。
2本の角を生やして血のように真っ赤な体毛が全身を覆っている怪物を相手に、必死に戦っていた鍛冶師の背後には気絶した怪我人が数名存在していたが、鬼のように角を生やした怪物には敵わなかった鍛冶師が殴り飛ばされる姿が見えた。
怪物に殴られて吹き飛んで地を転がってからは、動かなくなった鍛冶師は気絶しており、あのままなら怪物に喰われてしまいそうだな、と判断した私は、近くに落ちていた石を投擲し、赤い怪物の眼球へと直撃させる。
常人であれば目が石で潰れる威力はあったが、怪物は眼球も頑丈なようで、動きを僅かに止める程度の効果しかなかった投石。
その僅かな時間の間に、地面に刺さっていた脇差しを引き抜いた私は、赤い体毛を持つ怪物と対峙し、脇差しを構えたまま距離を詰めていく。
ワノ国で学んだ流桜も、ハンターという職業がある世界で教わった念も、鬼が居た大正時代の日本で身に付けた呼吸すらも今の私は使えない。
それでもこれまで戦ってきた数多の戦闘経験は消えることなく私に残っている。
更には様々な世界で学んだ武術や剣術に、痣者としての身体能力と、神の恩恵という新たな力が今の私にはある為、全くの無力という訳ではなかった。
目の前の怪物は、今の私よりも頑丈で力も間違いなく強いが、技というものまでは身に付けていないようだ。
故に、攻撃も身体能力に任せた荒々しいものであり、速さはあるが、見切れない程ではない手足を使った攻撃。
豪腕を振るう怪物の攻撃を避け様に、脇差しによる斬撃を繰り出すが、頑丈な皮膚と筋肉を持つ怪物を断ち斬るのは、そう簡単ではない。
肉質を確かめるように脇差しを振るい続けていき、刃筋を目の前の怪物に合わせて、斬り落とした怪物の片腕。
片腕が落ち、戦力が半減した怪物へと追撃を叩き込もうとしたところで、口を開いた怪物が舌を超高速で伸ばす。
此方が反応できない超高速で伸ばされた舌は、槍の如く私の脇腹を抉ったが、それだけでは終わらずに伸縮を繰り返した舌。
先端が尖った舌による連続攻撃を放ってくる怪物により、傷付いていく私の身体。
「【血止めの止血、毒抜き解毒、薬で癒すは、数多の傷】【癒す薬をご用意しましょう】」
そんな最中であろうと痛みに怯むことなく詠唱を開始した私は、傷を癒す魔法を唱える。
「【クスリバコ】」
魔法名を唱えたところで発動した治療魔法が傷付いた身体を癒していく中で、怪物の舌が再び伸ばされた。
超高速で迫りくる舌の狙いは此方の眉間であり、命中すれば即死で間違いない一撃。
それを瞬時に首を横に傾けることで回避した私は言う。
「初見では避けられませんでしたが、何度も喰らえば流石に慣れますよ」
怪物へそう言いながら、怪物から放たれていく舌による連続攻撃を避けて進む私は、舌が伸びきった瞬間に脇差しを振り下ろし、怪物の舌を断ち斬った。
怪物の攻撃手段をまた1つ奪い、残る片腕で殴りかかろうとしてきた怪物へと踏み込んだ私は、空気を薙ぎ払うような豪腕を避け、真一文字を描くように怪物の首を斬り飛ばす。
その後は怪我人達を【クスリバコ】で治療し、カナヤゴ様の家に戻ったが、かなり怒られた後に、鍛冶師達を助けたことに感謝された。
ちなみに怪物と戦ったことでステイタスが結構伸びていたようで、ランクアップも可能になっていたが、まだランクアップすることはない。
翌日から怪物退治をする鍛冶師達の手伝いを続けていくと、1年後には全てのステイタスがSの999でカンストしていた私は、ようやくランクアップすることに決める。
サミダレ・時雨
Lv2
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
耐異常:I
《魔法》
【クスリバコ】
《スキル》
【生来痣者】
【和国流桜】
・流桜の使用を可能とする
ランクアップしたことでスキルが増えていたが、ワノ国で学んだ流桜の使用が可能となるスキルは、とても嬉しいものであった。
流桜が使えるようになったなら、いずれ刀を黒刀にすることも可能かもしれないな。
主人公が倒したのは、極東では赤鬼という異名を持つ強化種のバーバリアンでした