これで過去編は終わりになりますね
半年間の念の鍛練によって、なんとか常にオーラを身体に纏う纏の状態でいることができるようになった私は、オーラによって防御力が格段に向上しており、ある程度の威力までならダメージを負うことも無くなった。
纏うオーラの量を増大させる練、身体の一部にオーラを集める凝、オーラを消して気配を薄める絶、それらの基本も修行していかなければ使用可能にはならない念。
しっかりと念の修行を行いながらも、アルテミス様とその眷族達の手伝いをしていった私は、仮の眷族だとしてもアルテミス様を敬うことを忘れることはない。
怪物を狩りながら旅をしているアルテミス・ファミリアに同行し、私も様々な怪物を狩っていく。
ある日、エルソスの遺跡とやらに封印されているアンタレスという名の怪物を確認しにいくことになったアルテミス・ファミリアに同行していた私は、遺跡から湧き出す黒い蠍の怪物の群れと戦うことになった。
1体1体は大したことがない強さの怪物であるが、大量に湧き出てくる蠍の怪物は、倒しても倒しても切りがない。
アルテミス様が言うには、恐らくこの怪物達は、アンタレス本体が生み出した分身のようなもので「本体は別に居る筈だ」とのことだ。
アンタレス本体を倒さなければ、無限に分身が湧き出てくる可能性があり、早めにアンタレス本体を倒さなければ、先にアルテミス・ファミリアの体力に限界が来るだろう。
アルテミス様を中央にして、眷族達で囲うような陣形のまま、アンタレスの分身を蹴散らしていき、エルソスの遺跡内へと侵入していく私達。
蠍で埋め尽くされた遺跡内部を進んでいき、百を越える蠍の怪物を倒して進んでいくと、明らかに段違いに強いと感じる大きな蠍の怪物を発見したが、あれがアンタレス本体で間違いなさそうだ。
アンタレス本体に通用しそうな攻撃が放てるのは、この場には私だけであり、飛ぶ斬撃を繰り出してみたが、その程度ではヒビも入らない強度を持つアンタレスの黒い甲殻には、金属が混ざっているようにも見える。
「こいつから精霊の力を感じるが、この気配は地精霊。もしや地精霊を喰らって力と身体の強度を増しているのかっ!?」
アルテミス様が本体のアンタレスを見ながらそんなことを言っていたが、どうやらアンタレスという怪物は精霊を取り込むことも可能であるらしい。
そして取り込めるのは精霊だけに限らないのか、アルテミス様のことも狙い始めたアンタレス。
迫り来るアンタレスを迎撃する為、2刀流となって、アンタレスの両腕の鋏と尾による攻撃を防いでいった私は、流桜を纏わせた反撃の斬撃を放つが、強度が凄まじく高い甲殻に防がれてしまった此方の攻撃。
地精霊の力まで加わり、強度を増したアンタレスの甲殻は、流桜を纏わせた黒刀でさえ簡単には破壊できない。
苛烈さを増すアンタレスからの攻撃を私だけで防いでいく最中、アルテミス様を護っていたアルテミス・ファミリアの面々の1人が体勢を崩し、アンタレスの分身による攻撃が急所に直撃する寸前となっていたのが感じ取れた私は迷わず振り向いて飛ぶ斬撃を放ち、アンタレスの分身を斬り裂いておく。
ほんの僅かな一瞬だけ生まれた此方の隙を、アンタレスは逃さず突いてきて、此方の腹部に突き刺さったのは、毒を持つアンタレスという蠍の尾。
「【血止めの止血、毒抜き解毒、薬で癒すは、数多の傷】【癒す薬をご用意しましょう】」
素早く尾は引き抜いたが、僅かな時間で注入されていた劇毒を解毒する為、毒により鈍る身体をなんとか動かして、アンタレスからの攻撃による致命傷は避けながら唱えた詠唱。
「【クスリバコ】」
腹部の刺傷という外傷とアンタレスの毒を毒抜きして解毒した【クスリバコ】という治療魔法。
完治した外傷、体外に抜かれて解毒された劇毒、それでも状況は此方が不利なままだった。
片手で極大の飛ぶ斬撃を連発して、アンタレスの身体が斬れないとしても押し返していき、此方との距離を取らせることに成功したところで、空いている片手を用いて着用していた上着を瞬時に脱ぎ去り、背中を晒した私はアルテミス様に「恩恵を、今更新してもらえませんか?」と提案をする。
「この状況でかっ!?正気か時雨!?」
驚愕を隠せていないアルテミス様は、此方の正気まで疑ってきたが、正気を失ってこんな提案をしている訳ではなく、恩恵の更新がアンタレスに勝つ為に必要なことであると思ったからだ。
「私は正気ですよ。勝って全員で生きて帰る為に必要なことであると冷静に判断しました」
此方が正気で冷静であることが理解できたアルテミス様は「時雨は無茶苦茶だなっ!?ええい、こうなればやけだ!?恩恵の更新を始めるぞっ!?」と若干ヤケクソになっていたが、私の恩恵を更新してくれるようになった。
迫り来るアンタレスの攻撃を黒刀で防いでいき、アルテミス様を狙うアンタレスの激烈な攻めを、身を盾にして完全に防御した私は傷だらけになっていたが、アルテミス様にはかすり傷1つも付けさせない。
真正面からアンタレスの攻撃を受け止めて防ぎ続けた私は、背中の恩恵を更新するアルテミス様の邪魔にならないように、両腕以外は動かすことはなく、不動なままで立ち続ける。
ついに更新が完了した神の恩恵で、新たなスキルが発現していた私は、望んでいたスキルを得ることができたようだ。
サミダレ・時雨
Lv5
力:D574
耐久:B786
器用:B775
敏捷:C668
魔力:B743
耐異常:D
剣士:E
拳打:F
治療:G
《魔法》
【クスリバコ】
《スキル》
【生来痣者】
【和国流桜】
【強化念系】
【斬術呼吸】
・斬の呼吸と全集中の呼吸の使用が可能となる
新たなスキル【斬術呼吸】により使用可能となった斬の呼吸と全集中の呼吸により、更に身体能力が向上したが、現在使える斬の呼吸は壱ノ型だけだと理解できた。
使える技がそれだけでも今の私には充分であり、黒刀を鞘に納めた私は、居合いの構えを取る。
斬の呼吸は、雷の呼吸と炎の呼吸に岩の呼吸を組み合わせ、私が独自に編み出した呼吸だ。
故に雷の呼吸に似た技も斬の呼吸には含まれており、雷の呼吸壱ノ型霹靂一閃と似ている居合いの技も存在する斬の呼吸。
【和国流桜】で黒刀に纏わせた流桜、スキル【強化念系】を用いて念を使用し、練によって増強したオーラを、纏の応用技術である周で黒刀の刃に纏わせていくが、応用技な念の方は数秒しか持たないだろう。
だが、その数秒があれば充分だ。
「斬の呼吸壱ノ型」
居合いの構えのまま、地を蹴りと踏み込んだ私は、アンタレスへと接近し、鞘に納めた黒刀を閃かせた。
「白雷」
白き雷の如き居合いの一閃により、強固な甲殻を持つアンタレスを両断し、討伐した私に、歓声を上げたアルテミス様とアルテミス・ファミリアの面々。
本体のアンタレスを私が倒してからは、残るアンタレスの分身達を掃討し、エルソスの遺跡を後にした私達だったが、アンタレスを倒したことでランクアップが可能になっていた私は、とりあえずステイタスがSになるまでランクアップは保留にしておく。
それから更に半年が過ぎて、私が17歳になった頃、Lv6にランクアップさせてもらってから、神の恩恵を改宗可能な状態にしてもらって、アルテミスと別れた私は1人旅をしていったが、世界を巡る旅の最中に学区という教育機関と出会うことになった。
そして、教師として働いてみないかと学区の神様からスカウトされることになった私は、学区の教師となる道を選ぶことになる。
複数回の人生の中で教える立場になったことが全くない訳ではないが、学生に指導する教師になるのは初めての経験かもしれない。
まあ、やれるだけは頑張ってみるとしよう。
地精霊を取り込んだアンタレスは、弱体化することなく、凄まじく強化されていました