学区の教育体系は他国や他の都市に設置されているどの教育機関とも異なっていて、通常の学院や学園では決められた時期に在校生が卒業して入れ替わるように新入生が入学してくるが、学区には明確な区切りというものがない。
世界を巡る旅をする中で、希望する生徒が所属先を決めたなら、あっさりと船から下ろし、卒業させてしまう学区という教育機関を「自由すぎて無責任」や「放任主義」だと揶揄する声もある。
しかし学区の目的となるのは、富や名誉に権威ではなく、まだ進む道を知らぬ子ども達に様々な可能性を提示し、彼らが歩み出していくのを助けることだ。
その為に存在している学区は、様々なことを教える世界最大の学舎であると共に、子ども達に目標を与える場所でもあった。
神々と教師達が問題ないと認めれば、生徒達はいつでも卒業が可能である学区という教育機関。
最速在学期間3ヶ月という者も存在した学区でも、問題児と呼ばれる面々だと、中々卒業するのは難しかったりするようで、明確な目標を持っていたとしても、今の状態では卒業させる訳にはいかないと、神々や教師達に判断される学区の問題児達。
その中でも特に女子生徒達から嫌われていた2人の問題児が、熱く巨乳について語っているところを目撃することになる。
「大きなおっぱいには夢が詰まっているでござるよ!」
「その通りだシノブノ、大きなおっぱいにはいっぱいの夢が沢山詰まっているんだ!」
セクハラシノブノと呼ばれている問題児なシノブノさんは女子でありながら、同性の女子生徒にセクハラをすることから嫌われており、そんなシノブノさんと巨乳について熱く語る牛人の大柄な男子生徒は、校則を破りまくるバーダインという問題児の1人で間違いない。
好きなものは巨乳、愛しているのは爆乳と堂々と言い放つバーダインくんも女子生徒達からは白い目で見られている生徒だったが、言動がセクハラでも、触れるようなセクハラはしないバーダインくんは、変態だが紳士とも言われるようになっていたそうだ。
「ちっぱいにはちっぱいの良さがあるのでござる!競わず持ち味を活かすのが重要でござるな!」
「大きいおっぱいは素晴らしいが、小さいおっぱいもまた愛することが必要ということか、深いな」
今度は小さいおっぱいについても熱く語り続けるシノブノさんとバーダインくんは、とても楽しそうではあったので、邪魔しないでそっとしておこうと思った私は、2人に話しかけることなく立ち去っておく。
それから翌日、正座させられていたシノブノさんを囲う女子生徒達が鬼のような形相をしていたが、シノブノさんの顔はジャガイモのようにデコボコになっていたので、既に制裁された後みたいだった。
シノブノさんを囲う女子生徒の中には、サンジョウノさんとテントウさんにマシマさんも居て、その3人だけは無表情でシノブノさんを見ていたが、どうやらシノブノさんは他の第8小隊の面々に袋叩きにされたようである。
シノブノさんが何かしら仕出かしたのは間違いないが、男性教員である私が聞いても問題ないことであるかの判断ができなかったので、とりあえず女性教員と女神であるイズン様に、何があったのか聞いてもらうことにした私。
女子生徒達から何があったか聞いた女性教員はゴミを見るような目をシノブノさんに向け、いつも笑顔なイズン様は真顔で「悔い改めなさい」とシノブノさんに言っていたな。
一応私が聞いても問題はないということで、詳細を聞かされることになったが、最近になってシノブノさんに発現した魔法は様々な姿に変身可能な変身魔法であり、その【ヘンゲンジザイ】という魔法を用いてヴァーデンベルク先生に変身したシノブノさんは、その状態で女子生徒達にセクハラをしたらしい。
女子生徒達に大人気なヴァーデンベルク先生の容姿を悪用し、ヴァーデンベルク先生のファンクラブに入っていた乙女の恋心まで弄んだシノブノさんにブチ切れた女子生徒達が、シノブノさん以外の第8小隊の面々に依頼して、制裁を決行。
同格のLv4が3人がかりとなると、シノブノさんにも勝ち目はなく、顔面がぼこぼこになるまで容赦なくブチのめされたシノブノさん。
シノブノさんが何をしたのか聞いてみて思ったのは、どう考えても明らかにシノブノさんが悪いとしか言いようがないということで、流石にこれはシノブノさんに反省してもらわなければいけない。
このようなことは2度としないと、シノブノさんには神様の前で誓ってもらい、それが嘘ではないかも確認してもらう必要があるだろう。
という訳でイズン様の前でシノブノさんに誓ってもらうことになったが、また同じことをしようと思っていたらしいシノブノさんは、嘘を言ったとイズン様に見抜かれていた。
しかし、イズン様が何かをシノブノさんの耳元で囁くと「確かに拙者が悪いことをしたでござる!もうしないでござるよ!」と言ったシノブノさんは、今度は嘘をついてはいなかったようである。
イズン様がシノブノさんに何を言ったのかまでは、教えてもらえなかったが、シノブノさんを見てから私のことを見たイズン様が「アオハルね!」と言っていたのは確かだ。
イズン様がシノブノさんを悔い改めさせた言葉には、私も関係していたのかもしれない。
そんなことがあったりもしたが、バルドル・クラスの学生であるレフィーヤさんから選択していない科目であった杖術を教わりたいと頼まれることになったので、授業時間外の放課後の時間を使ってレフィーヤさんに杖術を教えていく。
魔法を使う後衛魔導士だとしても、杖術は覚えておいて損はない技術であり、問題児なバーダインに連れられて戦うことが多いレフィーヤさんは、魔法以外の自衛手段が必要だと思って、杖術を学ぶことを選んだようだった。
突けば槍、払えば薙刀、持たば太刀とも言われるように、突き、払い、打ち、と千変万化な攻撃手段がある杖術。
しかし使用する杖によっては強度的な問題で、使うことができない攻撃手段もある為、杖術を使えないこともある。
レフィーヤさんが持っている杖は、杖術の使用には適していない杖であった為、杖術の教導用に用意されているセイントアイアン製の杖を、鍛冶学科の工房から1本譲り受けて、レフィーヤさんに渡しておいた。
10歳になったばかりなレフィーヤさんには、あまり長いと振るい難いと判断し、長杖ではなく通常の杖を使ってもらい、教えていった杖術の技。
真面目な優等生として有名なレフィーヤさんは毎日少しずつ杖術を学んで、杖を武器として扱うことも可能になっていたが、まだまだ未熟ではあるので、教えることは多い。
魔導士の杖の素材として使われるセイントアイアンこと聖銅は、重すぎずある程度振り回しても簡単には壊れない強度がある為、杖術の使用には適した杖の素材である。
それからも毎日杖術を学んだことで、金属製の杖を武器として用いて怪物を撲殺することも可能になっていたレフィーヤさんは、杖術の基本を身に付けることができていたようだ。
妖精の優等生以外にも撲殺妖精という渾名で呼ばれるようになっていたレフィーヤさんが、近接戦闘でもある程度戦えるようになっていたのは確かだろう。
ちなみにレフィーヤさん本人的には撲殺妖精という渾名は不本意であるようで、そう呼ばれる度に顔をひきつらせていたが、レフィーヤさんと同じ小隊のバーダインくんは「撲殺妖精か、強そうでいいなレフィーヤ」とサムズアップして喜んでいた為、レフィーヤさんの杖で小突かれたりもしていた。
そんなバーダインくんがシノブノさんと熱く語りあっているところもたまに目撃されているが、基本的に男子生徒達は近付くことはない。
以前不用意に近付いた男子生徒が、熱く語るバーダインくんとシノブノさんに話題を振られて思わず答えてしまい、巻き込まれる形で女子生徒達にシバかれることになってから、熱く語るバーダインくんとシノブノさんには近付かない方がいいと男子生徒達には判断されたみたいだった。
まあ、シノブノさんとバーダインくんが熱く語るような話題は限られているので、事前に危険を察知して避けておくのも必要なことかもしれないな。
イズン様は「サミダレ先生に変身で化けた相手が貴女に愛を囁いてきたとしたら、その相手を貴女は許せるのかしら」とシノブノさんに囁いていたようです