悠翔が地霊殿で暮らし始めてから3日が経った。地霊殿での生活は、これといった変わったことは何もなく、至って平和な日々だった。
悠翔「まぁ普通じゃないことがあったかと言えばあるんだけどね……。」
??「うにゅ?それって私のことー?」
悠翔「確かに『お空』もその1つだけどね……。多分、ここに来る前には見なかったであろう光景だし……。」
悠翔の隣にいる少女、『霊鳥路空(れいうじうつほ)』。さとりのペットの1人であり、旧灼熱地獄の温度を調節する仕事をしている『地獄鴉』だ。
お空「そうかなー?もしかしたら『ゆう』は記憶がないだけで元々幻想郷にいたのかもよー?」
悠翔「……実際どうなんだろうな?」
悠翔は記憶喪失なため、どこから来たのかも分からない。元からこの幻想郷に住んでいた可能性も0ではなかった(ちなみに幻想郷についてはさとりからどのような場所なのか教わっている)。ちなみに、お空の言った『ゆう』というのは、悠翔のあだ名である。お空は鳥頭で物覚えが悪いため、覚えやすい名前で呼んでもらっているのだ。と、
お燐「あ、いたいた。悠翔、さとり様が呼んでるよ。」
悠翔「さとりさんが?分かった。」
こちらにお燐が駆け寄ってきて、さとりが悠翔のことを呼んでいることを伝えてくれた。それを聞いた悠翔は、2人と別れてさとりの部屋に向かう。そして部屋に入ると、さとりはいつものように椅子に座って本を読んでいた。
さとり「悠翔さん、来てくださってありがとうございます。」
悠翔「別にどうってことないよ。それで、どうして俺を呼んだの?」
さとり「悠翔さんもここでの生活に慣れてきたでしょうし、そろそろ外に出ても問題ないよう、戦い方を教えようと思いまして。」
悠翔「本当に!?(やった!)」
悠翔は自衛するための力がなかったため、この3日間地霊殿の外に出ることができていなかった。そこに、さとりから戦い方を伝授するという申し出があり、悠翔の顔がパッと輝いた。
さとり「(あっ、可愛い……。……じゃなくて!)……ですが、私もそこまで強いというわけでもありません。ですから、戦いを生業としてる人に聞きに行きます。」
悠翔「戦いを生業に……?(何その戦闘狂みたいな人……。)」
さとり「別にあの人は戦闘狂ではないと……思いますよ?」
悠翔「じゃあ今の間は何!?というかなんで疑問系!?」
悠翔の喜ぶ姿を見て、一瞬悠翔のことを可愛いと思うが、すぐにその気持ちを振り払って話を戻す。ただ、戦い方はさとりが教えるのではなく、他の人に教えてもらことにしたようだ。その人が戦うことを仕事にしていることを言うと、悠翔はその人が戦闘狂なのではないかと疑う。さとりはそれがあながち間違ってないかもしれないと曖昧な答えを返す。もちろんその答え方について、悠翔にツッコまれた。
さとり「その人は、この幻想郷で最強とも言われる『博麗の巫女』なのですよ。(流石に異変でなければ多少請け負ってくださると思いますが……。)」
悠翔「最強……!っていうか巫女って……神社で働いてるあの巫女さん?」
さとり「その解釈で大丈夫です。……多分。」
悠翔「多分!?なんで!?」
さとり「これはうわさなんですが……本人はあまり努力をしない人で、神社の巫女としての修行も怠って、参拝客もあまりいないらしいんです……。」
悠翔「えぇ……?」
これから戦い方を教わりに行く(予定)の人物が、この幻想郷で最強という人物だということで、テンションが上がる悠翔。そして巫女というのが神社で働いている巫女であるかさとりに聞くが、さとりは歯切れの悪い答えを返してくる。その理由を聞いた悠翔はそう怪訝な声を上げる。
悠翔「その人本当に最強なの……?」
さとり「実力は間違いないです。実際、様々な異変を解決し、妖怪退治をしているらしいですしね。」
悠翔「なるほど……。」
一瞬その巫女の実力を疑った悠翔だったが、さとりの補足を聞いて安心する(ちなみに悠翔は、異変についてや、悪意を持つ妖怪が幻想郷には存在していることについて把握している)。
悠翔「(じゃあ、その人のところに……って言っても、地上と地底のどっちに住んでるんだ?その人が地底に住んでいるならともかく、地上に住んでたら空でも飛ばないと無理)「空を飛ぶんですよ?」そっかそれなら安心……ってええぇぇぇぇ!?」
さとり「そういえばまだ言ってませんでしたね。幻想郷に住む人や妖怪のほとんどは空を飛ぶことができるんです。もちろん人間の中には飛べない人もいますが……少なくとも妖怪の中で飛べない人はいないと思います。」
悠翔「じゃあ俺飛べるか分かんないじゃん……。さとりさんじゃあ男の俺を持ち上げて飛ぶのは難しいと思うし……。(絶対そんなことはさせられないな……。さとりさんの腕が死んじゃう……。)」
さとり「(……やっぱり優しいな……。)」
早速その巫女のもとに向かおうとした悠翔だったが、その人が住んでいる場所が地上だった場合、空を飛ばなければいけないと考えた時、心を読んださとりの補足に驚いて叫んでしまう。そしてさとりから、幻想郷に住む人や妖怪には、空を飛べる人たちがいるらしい。悠翔はさとりに持ち上げてもらうのは、彼女に負担がかかってしまうので絶対にさせられないと思い、再び心の中を読んでその気持ちを知ったさとりは、なんかほっこりしていた。
さとり「では、悠翔さんが飛べるかどうか試してみましょうか。ダメだったら諦めて私に運ばれてくださいね。」
悠翔「絶対飛んでみせる……!(本音言うと、飛んでる間さとりさんと密着とか洒落にならない!さとりさんはそんなの絶対嫌だと思う!)」
さとり「(はっ!?それは考えてなかった!?でも悠翔さんは変なことしないだろうし……いや別にされても……って何考えてるの///!?)」
心の中で悠翔が言った本音を知り、さとりは変な妄想をして顔を赤らめる。
悠翔「(なんで顔が赤いんだ……?まぁいいか。)それでさとりさん、どうやったら空を飛べるの?」
さとり「それはですね……『霊力』という力を使うんですよ。」
悠翔「霊力?」
さとり「えぇ。私たち妖怪は『妖力』を持っていますが、人間は大抵霊力を持っています。霊力を使って作る『弾幕』は妖怪などと戦う主な手段になります。そして今回はその力を使って空を飛んでみる、ということです。」
悠翔「……コツとかってあります?」
さとり「う〜ん……体を浮かすイメージをするのが一番いいんじゃないですかね。」
悠翔は目をつぶって全身に力を入れ、さとりに言われた通りに体を浮かすイメージをした。すると、悠翔の体がふわふわと浮き始める。
さとり「おぉ……!飛べてますね!これなら地上に出れますよ!」
悠翔「うわぁ……こんな感じなんだ!……とりあえず良かった……。(これでさとりさんに迷惑をかける心配は無くなったな……。)」
さとり「(……別に迷惑でもないんですが……。私は悠翔さんを運べるのはむしろ嬉しいし……ってまた私は何を考えてるんですか///!?)」
悠翔「(なんで、また顔が赤くなってるんだ?俺変なこと考えてたかな……。)」
さとり「(違います勝手に想像しちゃっただけなんです気にしないでください……!)」
再び顔を赤らめたさとりを見て、悠翔は自分がさとりを恥ずかしがらせるようなことを考えてしまったかと、自分の発言を振り返っているが、さとりは自分が勝手になっているだけなので気にしないでいいと心の中で訴える。が、心の中で言っても伝わらないため、さとりはなんとか気持ちを切り替える。
さとり「では、地上へ向かいましょうか。……と言っても、まずは地上に出れる穴まで向かわないといけませんが。」
悠翔「何はともあれ、遂に外に出られるのか……!どんな世界が広がってるんだろう……!」
悠翔はワクワクしながら、さとりと共に地霊殿を出たのだった__。
悠翔「へぇ〜!地底ってこんな感じなんだ!結構賑やかなんだね?」
さとり「そうですね。ここは地底の妖怪たちが住んでいるので、地底の中で一番賑やかな場所なんです。(……やっぱりここは人が多いので心の声がすごく聞こえてきますね……。それと……やはり悠翔さんに視線を向ける人が多いですね……。悠翔さんは気づいていないようですが……。)」
旧都の方までやってきた悠翔は、その賑やかっぷりを見て目をキラキラさせる。……自分に向けられている周りの視線に気づかずに。すると、
??「おっ、さとり……と、誰だそいつ?」
さとり「『勇儀』さん、こんにちは。この人は最近ここに迷い込んできた人間の悠翔さんですよ。」
悠翔「星月悠翔です。」
勇儀「私は『星熊勇儀』。簡単に言えば……『鬼』さ。」
悠翔「鬼……だから額に角があるのか……。(刀で首を斬ったらどうなるんだ……ってまた何言ってんだ俺?)」
悠翔とさとりに近づいてきた1人の女性。額には角があり、手首に枷が付いている。極め付けに、手に大きな盃を持っている。……そして悠翔がまた自分でも意味の分からないことを考えていた。
勇儀「そういうことだ。にしてもさとり……急に人間を保護するなんて、正直驚いたよ。どうしてだい?」
さとり「悠翔さんは記憶喪失なんです。外に出ていると危険かもしれないので、私が保護することにしていたんです。ですが、そろそろ戦い方を教えた方がいいかと思いましてね。今から教えてくれそうな方のいる地上に向かうところなんです。」
勇儀「……お前が地上に?(あんま行きたがらないのに……?)さとりが教えればいいだろ?」
さとり「……私はあまり強くないので。」
勇儀「(地底の管理者やってる身でよく言うよ……。ほんと自分を過小評価するよな……。)……それなら、私が教えてやろうか?」
さとり「悠翔さんが勇儀さんについていけるとは思えません。」
悠翔「(なんかサラッと貶された!?)」
戦い方をさとりが教えればいいという勇儀の意見に対し、さとりは自分は強くないからという理由で反対する。勇儀はそれが過小評価だと思うが、今に始まったことではないので諦め、自分が戦い方を教えると提案するが、これもさとりに反対されてしまった。……そしてサラッと悠翔が貶されていた。
勇儀「……まぁいいか。じゃあ、気をつけて行くんだよ。」
さとり「ありがとうございます。行きましょう、悠翔さん。」
悠翔「あ、あぁ……。(なんか勇儀さん、あんまり納得してない様な気がする……。)」
こちらを訝しむような視線を向けてくる勇儀に別れを告げ、さとりと悠翔は旧都にある橋までやってきた。そこには、金髪のショートボブに、エルフの様に尖った耳をした女性が立っている。
さとり「『パルスィ』さん、お疲れ様です。」
パルスィ「あら、さとりじゃない。それと隣のは……人間?」
さとり「地底に迷い込んできて、今地霊殿で保護している悠翔さんです。」
悠翔「星月悠翔です。」
パルスィ「『水橋パルスィ』よ。それにしてもあなた、地霊殿でお世話になってるのね……。妬ましいわ……。」
悠翔「(え、何?俺嫉妬されてるの?)」
さとり「パルスィさんはこの橋を守っている『橋姫』で、嫉妬心を操る力を持っているんです。それが原因なのかは分かりませんが……パルスィさん自身、結構嫉妬深いんです。」
悠翔「な、なるほど……。」
パルスィに何故か嫉妬されていることに、困惑する悠翔。さとりの説明でなんとなく理解はするが、まだちょっと納得いかないらしく、首を捻っていた。
さとり「さてとパルスィさん。私たちはこれから地上に行ってくるので、通ってもいいですか?」
パルスィ「構わないけど……わざわざ地上に出る必要があるのかしら?」
さとり「どうしても地上に行かなければいけない用がありまして……。
パルスィ「……そう。まぁ良いけど、地上から誰かを連れてくるとかはやめなさいよ?
さとり「そこは大丈夫ですよ。では、また帰ってきた時に。」
パルスィ「えぇ。」
パルスィと別れたさとりと悠翔はさらに歩みを進め、地上に繋がる穴までやってきた。
??「あ!さとり……と、誰?人間?」
??「みたいだね……。(この人の首、もらってもいいのかな?)」
悠翔「(なんだろう……桶に入ってる子から獲物を狙うような目を向けられてるんだけど……。)」
さとり「『ヤマメ』さんに『キスメ』さんでしたか。この人は悠翔さん。今地霊殿で保護してる人なんです。」
悠翔「星月悠翔です。よろしく。」
ヤマメ「私は『黒谷ヤマメ』!土蜘蛛だよ!」
キスメ「わ、私は『キスメ』。えっと、『
悠翔「つ、釣瓶落とし?」
ヤマメとキスメの自己紹介を聞いた悠翔だったが、キスメの種族が聞いたことないものだったため、それを聞いて首をかしげる。
キスメ「分かりやすく言うなら……夜に道を歩いていると真上から落ちてきて、頭に桶をぶつけてくる妖怪ってところかな。」
悠翔「……うん、大体分かったよ。」
さとり・ヤマメ「「(分かってなさそう……。)」」
キスメに釣瓶落としについて説明されるが、いまいち分からず曖昧な答えを返す悠翔。その答えを聞いたさとりとヤマメは、悠翔が釣瓶落としについて理解できていないことを察していた。
ヤマメ「それで、どうしてここに?」
さとり「とある用事で、地上に向かうんですよ。」
キスメ「地上に!?……そっか。気をつけてね、さとり。それと悠翔さんも。」
ヤマメ「しばらく地上に出てないから、どんな光景が広がっているか分からないしね。(まぁ、進んで出ようとは思わないけど……。)」
悠翔「ありがとう2人とも。またね。」
自分たちがやってきた方へ向かうヤマメとキスメを見送った後、さとりと悠翔は地上に繋がる穴を見上げる。
悠翔「この上が地上なのか……。」
さとり「えぇ、そうです。準備はいいですか?」
悠翔「うん、できてるよ。」
さとり「それでは行きましょうか。」
そしてさとりと悠翔は空を飛び、地上へと向かっていった__。
??『楽しそうだな〜。私もついていこっと♪』
穴を登って行くこと十数分。穴がかなり長かったのと、悠翔がまだ飛行に慣れていないことから、かなりの時間がかかってしまったが、2人はついに地上に到着した。
悠翔「地上だ!って眩しい!?(そっか、ずっと地下にいたから太陽の光に目が慣れてないんだ……。)」
さとり「私もこの光はかなりこたえますね……。」
地上に出た瞬間、2人のことを太陽の強い光が襲った。2人は地底にいたため、太陽くらい強い光を浴びていなかったため、目がその光に慣れていなかったのである。それでもなんとか目が慣れてきたところで、 2人は地面に降りる。
悠翔「それで、ここからまた飛んでいくんだよね?」
さとり「えぇ、そうなんですが……確かその場所はまだまだ遠いんです……。」
悠翔「……それってつまり?」
さとり「……もう数十分ほど飛ばなければなりません。」
悠翔「ウソダドンドコドーン‼︎(もう体力がキツいんだけど!?)」
さとり「今なんて言いました?(心の声は読めましたけど……。体力がキツいのは私も同じです……。)」
目的地が自分たちのいる場所からまだまだ遠いらしい。悠翔は体力の限界が近いのにまだ飛ばなければならないことで滑舌が悪くなってしまい、さとりにも聞き取れない言語を発してしまった。なお、心の声は普通だった。
悠翔「でもさとりさんに迷惑はかけられない!根性で飛ぶしかない!」
さとり「そんな無理はしないでくださいよ!?」
悠翔「だからってそこ以外の当てがあるの?」
さとり「うっ……。……ないですね。」
悠翔「ならゆっくりでもいいから飛ぶしかないよ。」
さとり「……分かりました。ですが、疲れたらすぐに行ってくださいね?その……私も疲れたらちゃんと言うので。」
悠翔「分かった。それじゃあ行こう、さとりさん。」
そうして、悠翔とさとりは再び空へ飛び立つ。途中で休んだりしながらも、どうにか目的地に到着したのだった。
悠翔・さとり「「つ、着いた……。」」グデー
悠翔「ここが……目的地の……?」
さとり「はい……『博麗神社』です……。」
目的地である博麗神社に到着した2人は、満身創痍の状態で階段に座り込む。息も絶え絶えで、会話のテンポが遅くなっている。なんとか息を整え、2人は神社の境内に入る。
悠翔「(なんというか……寂しいところだな……。)」
さとり「それ、巫女さん本人には言わないでくださいね?」
悠翔「わ、分かった。」
そうして2人は神社の社殿に近寄る。そこに賽銭箱が置いてあった。
悠翔「賽銭箱だ……。お賽銭した方がいいかな?(って言ってもお金持ってないけど……。)」
さとり「お賽銭はしておいた方がいいと思います。お金はあげますから。」
悠翔「ありがとう、さとりさん。」
さとりからお金を受け取り、賽銭箱に投げ入れる。チャリーンと小気味よい音が響き、2人はお参りを済ませようとした。その時、
悠翔「あれ?なんか足音が聞こえるようn「お賽銭の音!」うわびっくりした!?」
社殿の方からドタドタという足音が聞こえたかと思うと、紅白の巫女服を着た、頭に大きなリボンをつけた少女が、賽銭箱に飛びつき、中身を調べ始めたのである。
悠翔「(さ、さとりさん。この人が……?)」
さとり「……えぇ、この人が博麗の巫女こと、『博麗霊夢』さんです。」
悠翔は巫女服の少女……霊夢に聞こえないよう、さとりの力を活用して心の中で問いかける。さとりは小声で、霊夢が博麗の巫女であることを教えてくれた。
霊夢「やった!2銭も入ってるじゃない!……っと、あなたたちがお賽銭を……?」
霊夢がそう聞きながらこちらを見ると、さとりの姿を見て表情を険しいものに変えた。
霊夢「あら、覚妖怪なんて珍しいお客様ね。なんの用かしら?」
さとり「古明地さとりと言います。今日はあなたにお願いがあってここに来たんです、博麗霊夢さん。」
霊夢「私に?それは……そこの子に関係してることなの?」
さとり「はい、そうです。この人は最近、地底に迷い込んできた人間の悠翔さんです。」
悠翔「星月悠翔です。よろしくお願いします、霊夢さん。」
悠翔は霊夢に自己紹介をして頭を下げる。
霊夢「よろしく。……さとりだったわよね。この子は外来人なの?」
さとり「おそらくそうですが、絶対とは言い切れません。実は、悠翔さんは記憶喪失なんです。」
霊夢「つまり外来人か、元々幻想郷に住んでいたか分からないし、外の世界に帰そうにもどこに住んでたか分からないと……。」
さとり「そういうことです。」
霊夢「それで?お願いって、この子をうちの神社で保護しろってことなのかしら?」
さとり「いえ、そうではなく……悠翔さんに戦い方を教えて欲しいんです。」
霊夢「なんで私に頼むのよ。あんたが鍛えてあげればいいじゃない。」
さとり「私は強くないので、この幻想郷の中でも強者な霊夢さんに頼みたいんです。」
さとりは霊夢の言葉に、勇儀に言ったのと同じ理由で返す。霊夢はそんなさとりをしばらく見つめていたが、やがて1つため息をつき、
霊夢「……お賽銭の恩もあるし、やってあげるわよ。」
さとり・悠翔「「ありがとうございます。」」
霊夢「まぁ、ここでやっても神社のどこかが壊れるかもしれないし、ちょっと移動するわよ。」
そうして3人は、近くにある草原まで飛んで移動した。ちなみに、空を飛んだ悠翔を見て、霊夢は少しだけ驚いていた__。
霊夢「戦い方について、何か知ってることはある?」
悠翔「えっと、霊力を使って、弾幕というのを作るっていうのは知ってるよ。」
霊夢「ここ(幻想郷)じゃ弾幕で勝負するのは基本なのよ。まず弾幕っていうのは……。」
そう言いながら、霊夢はスッと手を近くの岩に向けてかざす。すると、手のひらに何やらエネルギーでできた球体のようなものが現れた。そして霊夢がそれを岩に向かって放つ。球体が岩に命中すると、その瞬間に岩は木っ端微塵になってしまった。
霊夢「ふぅ……こういうものよ。」
悠翔「いや攻撃力高いな!?岩が跡形もなくなってるんだけど!?」
霊夢「そういうものなの。」
悠翔「とんでもないな幻想郷……。(今更)」
霊夢が放った弾幕の威力を見て、悠翔は今更ながら、幻想郷がとんでもないところであることを認識した。
霊夢「そういや悠翔、あなたは『スペルカードルール』について知ってるの?」
悠翔「そもそも『スペルカード』?っていうやつも知らないよ……。」
霊夢「……さとり、それくらいは教えておきなさいよ……。」
さとり「それに関してはすみません……。」
スペルカードやそれを使った戦いのルールをさとりが教えていなかったことに、霊夢が呆れのため息をつき、さとりは素直に頭を下げた。
霊夢「『スペルカード』っていうのは、いわゆる必殺技みたいなものよ。あらかじめ考えていた技と技名をカードに記したものって感じかしら。例えば……。」
霊夢は懐からお札を一枚取り出す。
霊夢「霊符『夢想封印』!」
霊夢がスペルカードを使用すると、霊夢の周りに色とりどりの弾幕が出現し、遠くの地面に着弾して爆発を起こした。
悠翔「これがスペルカード……!?これ、当たったらひとたまりもないんじゃ……?」
霊夢「まぁそうね。でも、避ければ問題ないわよ。」
悠翔「(そんな簡単に言われても無理だからね!?)」
霊夢のスペルカードを見て、改めて弾幕の威力の高さを実感する悠翔。ただ、霊夢がその弾幕を避ければ問題ないと言い、悠翔は心の中で簡単ではないとツッコんでいた。
霊夢「で、このスペルカードと弾幕で戦うっていうのが『スペルカードルール』なの。人間と妖怪じゃ、体力とか色んな面で人間が劣っちゃうけど、このルールで戦えば人間と妖怪が互角に戦えるようになるのよ。」
悠翔「……つまりそのルールが無かったら……?」
霊夢「まぁ、妖怪に殺されるかもしれないわね。」
悠翔「(ひえぇ……。)」
改めて妖怪が人間より強いことを認識する悠翔。スペルカードルールがなかった時のことを考えて、体を震えさせていた。
霊夢「それともう1つ、『能力』についても説明しておいた方がいいわね。」
悠翔「能力?」
霊夢「えぇ。幻想郷に住む人間とか妖怪が持っていることがある力よ。私は『空を飛ぶ程度の能力』っていう能力があるわ。」
悠翔「……なんか普通じゃない?」
霊夢「そう思われるかもしれないけど、そうでも無いのよ。まぁ説明が面倒臭いからそこは置いといて。」
悠翔「(えぇ……。)」
自分の能力の説明が大雑把すぎることに困惑する悠翔。その後は、霊夢に加えさとりにも手を貸してもらいながら、弾幕を出す練習を続けた。やはり慣れないことをしているためか習得には時間がかかってしまったが、なんとかある程度戦えるくらいの弾幕を出せるようになった。
悠翔「つ、疲れた……。」グデー
霊夢「ま、初めてでここまでできたら上出来でしょ。」
さとり「ですが満身創痍ですね……これでは帰れるかどうか……。」
霊夢「うちに泊まってけばいいじゃない。手伝いとかはしてもらうけど、1日くらいならいいわ。」
さとり「……では、お言葉に甘えます。ありがとうございます、霊夢さん。」
そうしてさとりと悠翔は、博麗神社に泊まることにした。寝る前に、悠翔は気になったことがあったので、それを霊夢に聴くことにした。
悠翔「霊夢さん、俺に能力ってあるのかな?」
霊夢「さぁ?私には分からないわ。でも、いつか目覚める可能性はあるわね。まぁ目覚めたら分かるわよ。」
悠翔「またそんな適当な……。まぁいいか、教えてくれてありがとう。」
霊夢「いいわよこのくらい。それと、私のことは霊夢って呼んで。『さん』なんてつける必要ないわよ。」
悠翔「そう?分かったよ、霊夢。」
そうして霊夢と別れた悠翔は、与えられた部屋の布団に入り、一夜を明かした。そして翌日__。
悠翔「ん……。んん〜!よく寝た〜。今何時なんだろ?」
体を上に伸ばしながら、悠翔は外を見に部屋を出る。だが、外の様子は思っていたものとは完全にかけ離れていた。
悠翔「ど、どうなってるんだこれ……!?」
悠翔の視線の先では、空が赤く染まっていた__。
続く
お金の単位は適当()
というわけで、地底の主要キャラ+霊夢を出しました。次回もキャラがいっぱい出てきます(誰が出てくるかは検討がついてると思いますが)。
さとり様は原作みたいな自信家ではなく、控えめでちょっとネガティブな感じです。
キスメが悠翔の首を狙ってたのは、釣瓶落としが首を食べる妖怪らしいからです。
設定解説
パルスィが言っていた不可侵条約とは、
地上の妖怪は地底に入ることができない。代わりに、地底の妖怪(というか鬼)は地底の怨霊を封じることを約束する。
というものです。そもそも鬼たちは遠い昔に人間に卑劣な手段で狩られていたため、それを考えて地上にはそうそう出ようとはしません。また、地上で嫌われた妖怪たちも鬼が地底に招き入れていました(それが原因で不可侵条約が結ばれていました)。
勇儀が悠翔に訝しみの視線を向けていたのは、上記のような過去が理由でした。