今回は題名の通り2話構成……と言うよりは、前半と後半で話が変わるだけで物語自体は繋がってます。後半がちょっとシリアスになるのかな。
第6話 地底での決闘/無意識の心
【地底での決闘】
紅霧異変(魔理沙命名)及び紅魔館でのお泊まり会が終わって数日が経った頃、悠翔たちは地霊殿で昼食を食べていた。
悠翔「そういえばさ、ちゃんと地底の人たちに挨拶したことなかったよね。」
さとり「急にどうしたんですか?」
食事中、そんなことを言い出した悠翔に、さとりが怪訝な顔を向ける。
こいし「この前の異変の時に挨拶してたよね〜?」
悠翔「それはそうなんだけど……あの時はほんとに名前を言ったくらいで、ちゃんと話したりしてなかったなって。ヤマメさんとかキスメさんとはちょっと話したと思うけど。」
さとり「言われてみればそうですね……。今日は悠翔さんに任せたい仕事とかは特にありませんし、行ってみてはどうですか?」
悠翔「あれ?さとりは来ないの?」
さとり「私は色々と仕事があるので……。」
悠翔「……そっか。」
さとりが来れないと知った悠翔は残念そうな顔をする。それを見たお燐はニヤッと笑うと、
お燐「さとり様も行ってきてもいいんですよ〜?ほら、悠翔が一緒に行きたそうな顔してますし。」
さとり「え?いやでも……「悠翔もさとり様にきてほしいよね?」ちょっとお燐?」
悠翔「そうだな……まだ不安なこともあるし、一緒にきてほしくはあるかな。」
さとり「そ、そうですか……///。(悠翔さんが私を求めてくれてる……!)」
お燐「あれ?どうしたんですかさとり様?顔が真っ赤ですよ?」
さとり「ふぇっ///!?」
お空「熱でも出てるんですか?」
こいし「お空、そういうことじゃないよ〜。」ニヤニヤ
ルネ《……さとりさんかわいそう……。》
お燐の言葉に答えようとしたさとりだが、それを遮って今度は悠翔に質問を投げかける。悠翔の答えに、さとりは頬を赤く染め、お燐とこいしにいじられ、それを見たルネはさとりを気の毒に思っていた。……お空はどうしてなのか分かっていなかったが。
さとり「と、とにかく!私はこの地底の管理者として頑張らないといけないんです!……ですからすみません、今日は悠翔さんと一緒には行けないです。」
悠翔「そっか……分かった。じゃあ1人で行ってくるよ。」
さとり「気をつけてくださいね。いくら能力が目覚めたと言っても、あなたはまだ戦いに慣れてないんですから……。」
悠翔「危なくなったら逃げるよ。じゃあ、ちょっと準備してくる。」
悠翔は部屋に戻って身支度を済ませ、地霊殿の玄関に向かう。そこでさとりが待っていた。
悠翔「あれ?待っててくれたの?」
さとり「さすがに見送りをしないのはどうかと思ったので。(……本当は、もうちょっとだけ悠翔さんと話してたいだけなんですけどね。)」
悠翔「あはは、ありがとう。」
さとりの真意には気づかず、微笑みながらお礼を言う悠翔。それを見て再び頬を赤く染めるさとり。少し顔を逸らしながら、
さとり「……もう一度言いますが、地底の妖怪は交戦的な人たちが多いです。危険だと思ったらすぐに逃げてくださいね。」
ルネ《いざとなったら私がどうにかするけどね。》
悠翔「(ありがとう、ルネ。)分かった。じゃあ、行ってくるよ。」
さとり「行ってらっしゃい。」
さとりに見送られて、悠翔は地霊殿を出て旧都の方へ向かった__。
悠翔「相変わらずここは賑やかだなぁ……。え〜っと、この辺りで会ったのは……勇儀さんだったな。」
旧都に到着した悠翔は、紅霧異変(レミリアたちが起こした異変の名前)の時に出会った勇儀のことを探していた。だが、その姿は見当たらない。
悠翔「いないな……。まぁいつもここにいるわけじゃないだろうし、先にパルスィさんやヤマメさんたちのところに行くか。」
そう言って、悠翔はパルスィのいる橋の方へ向かう。しばらく歩いていくと、その目的地の橋が見えてきた。そこにはパルスィの姿だけでなく、ヤマメとキスメの姿もあった。
悠翔「お〜い!」
ヤマメ「ん?この声は確か……悠翔だったかな?」
パルスィ「あら、ほんとね。元気そうで妬ましいわ……。」
キスメ「パルスィはいつも通りだね……。」
3人がそう話してる間に、悠翔がその3人に合流した。
悠翔「久しぶり、みんな。その……ごめん、しばらく会いに行けなくて。」
ヤマメ「大丈夫だよそれくらい!それより聞いたよ!異変を解決したんだよね!」
悠翔「あれ?知ってたの?」
キスメ「地底でうわさになってるよ。急に現れた人間が異変を解決したって。」
パルスィ「人気者で妬ましいわね……。」
悠翔「あはは……相変わらずだねパルスィさん。」
パルスィの平常運行に苦笑いを浮かべる悠翔。その後も悠翔は地上であった出来事を3人に話していく。みんなが色々反応してくれたので、悠翔も楽しんで話していた。
ヤマメ「へぇ〜!こいしちゃん、帰ってきてたんだ。」
悠翔「あ、やっぱりこいしの姿は見えないんだ?」
パルスィ「あの子の能力のせいでね……。あぁ妬ましいわ。」
悠翔「もはや妬ましいの基準が分からないんだけど……。」
キスメ「あはは……まぁそれがパルスィだから……。」
パルスィの『妬ましい』がどういう基準なのか分からなくなってきた悠翔を見て、キスメが苦笑いしながらそう言う。
パルスィ「そういえば悠翔、あなたは勇儀には会ったのかしら?」
悠翔「勇儀さん?探したけど、旧都の方にはいなくてさ……。」
ヤマメ「またどこかで飲んでるんじゃない?」
悠翔「飲んでるってことは……飲み屋みたいなところにいるのか……。俺そういうところ入りたくないし、そうなると声をかけづらいかもな……。」
??『おっと、その必要はないぞ。』
悠翔「え?……ゆ、勇儀さん!?」
勇儀「よっ、星月悠翔。」
勇儀に会うためには飲み屋に入らなければならないのかと悩んでいた悠翔の後ろからそんな声が聞こえ、振り向くとそこには勇儀が立っていた。ヤマメの予想通りお酒を飲んでいたのか、お酒の匂いがこちらに漂ってきていた。
悠翔「どうしてここに?パルスィさんたちに呼ばれてたんですか?」
勇儀「いや、違うよ。もしも旧都にお前が来たら私に言うように鬼たちに頼んでおいたんだ。」
パルスィ「なんでそんなこと頼んでたのよ?」
勇儀「そんなの簡単さ。……お前と戦うためだ、悠翔。」
悠翔「はい!?」
勇儀が悠翔を探していた目的が自分と戦うためだと知り、素っ頓狂な声をあげる悠翔。
悠翔「……弾幕で戦うんですよね?」
勇儀「何言ってんだ?
悠翔「いや無理ですって!?さとりから聞きましたけど、勇儀さんって鬼の中でも最強格の人なんですよね!?そんな人に喧嘩で勝てと!?」
勇儀「安心しろ、手加減はしてやるから。そうだな……この盃に入った酒がこぼれないように戦うってのはどうだ?」
そう言いながら、勇儀は自身が持っている盃に酒を注ぐ。
悠翔「……確かにそれなら戦えるかもしれないですね……。」
ルネ《だとしても、勇儀さんに勝つのは難しいと思うよ。》
悠翔「(だよな……。)」
勇儀が提示したハンデの内容を聞いても、苦戦は避けられないと感じる悠翔とルネ。
ヤマメ「……止めてあげたいけど、今の姐さんの目が獲物を狩る目になってるし……。」
キスメ「逃げられないだろうね……。」
勇儀「さぁ、どうするんだ?」
悠翔「(目がすごくギラギラしてる……。……やるしかないか。)分かりました、やります。ただ、時間制限だけ設けてもらってもいいですか?やっぱりまだ不安なので。」
勇儀「……しょうがないな、5分だ。」
悠翔「ありがとうございます。」
自分の出した追加ハンデの案を勇儀が受け入れてくれたので、少し安心した悠翔は深呼吸をして構える。それを見てニヤッと笑い、勇儀も構える__が、
パルスィ「ここで始めようとするなっ!!」
勇儀・悠翔「「ごめんなさいっ!?」」
……パルスィに怒られ、なんとも微妙な空気が流れるのだった__。
勇儀「さて……この辺りならいいだろ。」
ヤマメ「ヤバくなったらちゃんと降参するんだよ。」
悠翔「うん。ありがとうヤマメさん。」
パルスィの橋からかなり移動し、開けた場所にやってきた悠翔たち。手をパキパキッと鳴らしながら構える勇儀に対し、悠翔はヤマメからの注意を聞いて、改めて構える。
勇儀「先手は譲ってあげるよ。」
悠翔「……ありがとうございます。(だったら……筋力を増強して一発で決める……!)」
悠翔は能力を使って筋力を作り出し、勇儀にパンチを一発叩き込む。……しかし、勇儀はそれを片手で受け止めてしまう。
悠翔「なっ……!?」
勇儀「いいパワーだな。でも、私にはその程度の力じゃ勝てないぞ?ハッ!!」
悠翔「ぐふっ!?」
勇儀は足で悠翔の腹を蹴る。だいぶ手加減していたようだが、それでもかなりの威力があり、悠翔は吹き飛んでいく。
悠翔「ゲホッゲホッ!?(想定してた以上のパワー……これで手加減してるって言うんだからとんでもないな……。)」
勇儀「どうしたんだよ?もう終わりとか言わないよな?」
悠翔「はい……!」
そして悠翔は能力を駆使して、先ほどより筋力を上げたり、ガントレットのようなものを装着して攻撃したりして勇儀にダメージを与えようとするが、全て受け止められて反撃をくらう。
悠翔「パワーでダメなら……スピードだ!」
今度は高速で移動し、勇儀が反撃できないように動く。……最初の方こそうまくいっていたが、だんだん勇儀も慣れてきてしまったようで、避けられるようになってきてしまった。
悠翔「くっ!?このぉ!!」
勇儀「動きが単調になってるぞ?」ガシッ
悠翔「やべっ「オラァ!!」かはっ……!?」
苛立って単調な攻撃をしてしまった結果、勇儀に腕を掴まれ、そのまま地面に投げ出されてしまう。
勇儀「もうおしまいか?吸血鬼を倒したって聞いてたんだが、こんなものだったのか……。」
ルネ《悠翔!武器を作って戦えばいいんじゃないの!?》
悠翔「(それは難しいよ……!剣とかで戦ったところで掴まれて終わりだ……!)」
ルネの武器を作ろうというアドバイスを、悠翔はリスクを考えて却下する。
悠翔「(でも……1つ方法がある。それにはルネの力が必要だ。)」
ルネ《私の力が?》
悠翔「(あぁ。ルネの『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を利用して、勇儀に対抗できるくらいのパワーに変換する。あとは俺の能力で瞬間移動の能力を作る。)」
ルネ《それで近づいて、攻撃を叩き込むってこと?》
悠翔「(そういうこと。……いける?)」
ルネ《もちろん!任せてよ!》
ルネとの会話を終わらせ、悠翔は数秒間目を瞑り、そしてゆっくりと開く。すると、悠翔の片目が真っ赤に輝いていた。
勇儀「ッ……!?(雰囲気が変わった……楽しめそうだな!!)」
悠翔・ルネ「《本当の戦いはここからだっ!!》」
息を合わせて叫んだ悠翔とルネは、まず瞬間移動で勇儀の背後に移動する。
勇儀「なっ!?(まずい……!)」
悠翔・ルネ「《はぁぁぁぁぁぁ!!》」
そして、悠翔はルネの破壊の力をパワーに変換し、最初の時とは比べものにならない力を勇儀に叩き込む。
勇儀「ぐはっ……!?(こいつ……さっきとはパワーもスピードもまるで違う!?)」
悠翔「大切なものを守るために……俺が負けるわけにはいかない!!はぁぁぁぁぁぁ!!」
勇儀「くっ……なめるなっ!!」
悠翔「ごふっ……!?」
再び殴りかかってくる悠翔に対し、勇儀も加減していたパワーを出して本気で反撃する。先ほどとは比べ物にならない一撃を受け、悠翔は吹っ飛んでいってしまう。
パルスィ「ちょっと勇儀!?あんた何本気出してるのよ!?」
ヤマメ「悠翔が吹っ飛んじゃった!?」
キスメ「……やめといた方がいいって言った方がよかったかな……。」
勇儀「しまった……。あいつ大丈夫か……?」
地面に転がり、ピクリとも動かない悠翔。もはやこれまでかと思われ、パルスィが駆け寄ろうとしたその時、
悠翔「……あきら……めるかぁ……!!」
フラフラと悠翔が立ち上がる。先ほどの攻撃のせいで血まみれになっているため、その姿は異様な雰囲気を漂わせていた。
悠翔「(まだ威力が足りない!さっきの一撃に……俺の霊力も込める……!!)うおおおおぉぉぉぉ!!」
勇儀「ッ……!?さらにパワーが上がった!?」
悠翔「行くぞ!!破符『ラグナレイドクラッシャー』!!」
勇儀「(あれを普通に受けたらただじゃ済まない!!)はあぁぁぁぁぁぁ!!」
悠翔はスペルカードを発動し、すさまじい霊力を纏った拳で勇儀に殴りかかる。それを受ければただでは済まなくなると考えた勇儀は再び本気の力で対抗する。そして2人の拳がぶつかり合い、拮抗する。
パルスィ「本気の勇儀と互角……!?」
ヤマメ「あんなに血まみれなのに……!?」
ヤマメ「悠翔って何者……!?」
観戦者の3人がそう驚愕している間にも、悠翔と勇儀の2人はお互いに相手を倒そうと力をさらに入れる。しかし、だんだんと悠翔が押し込み始める。
勇儀「なっ!?(本気の私の力が負けているだと!?)」
悠翔「人間の可能性は……無限大だ!!はあぁぁぁぁぁ!!」
勇儀「ぐぅぅぅぅ!?ぐはぁぁぁぁっ!!」
驚愕する勇儀に対し、悠翔は頭の中に浮かんできた言葉を言うのと共に、力を振り絞る。そしてついに、勇儀の拳を押し切り、そのまま一撃を入れることに成功した。先ほどの悠翔のように、今度は勇儀が吹っ飛ばされ……それと同時に悠翔は地面に倒れてしまう。
パルスィ「勇儀!!悠翔!!」
ヤマメ「わ、私姐さんを助けてくる〜!!」
キスメ「私も行く!」
ヤマメとキスメは吹っ飛んでいった勇儀の様子を確認しに駆け出す。一方のパルスィは倒れた悠翔を介抱する。
パルスィ「ここじゃ治療はできないわね……地霊殿に連れていかなきゃ……!」
パルスィは悠翔の腕を肩に掛け、地霊殿まで運んでいくのだった__。
悠翔「うっ……。……ここは……地霊殿か……?」
痛む頭を抑えながら寝ていたベッドから体を起こす悠翔。目覚めた場所は、見慣れた地霊殿だった。
悠翔「誰かが運んでくれたのかな……。ってて……頭が痛い……。」
ルネ《あ!悠翔起きたんだね!良かった……。》
悠翔「(……心配かけてごめん、ルネ。)」
ルネ《大丈夫!それと、悠翔を地霊殿まで運んでくれたのはパルスィだよ!》
悠翔「(パルスィさんが……後でお礼を言っとかないとな……。)」
誰かが自分を運んでくれたのかと考えていると、ルネがパルスィが自分を運んでくれたのだと教えてくれた。後でお礼を言わなければと考えていた時、コンコンと部屋のドアがノックされる。
さとり『……悠翔さん、入りますよ……。』
元気のない声が聞こえたのと共に、部屋にさとりが入ってきた。ずっと泣いていたのだろう、さとりの瞼は泣き跡が分かるくらいに腫れぼったくなっていた。そして部屋に入ったさとりは起き上がった悠翔を見て体を硬直させた。
悠翔「さとり!?目がとんでもないことn「悠翔さんのバカッ!!」いいっ……!?」
さとり「気をつけてって言ったのに……危険だって思ったら逃げてって言ったのに……どうしてこんなに大怪我して帰ってくるんですかぁ!!」
ずっと我慢していた思いを悠翔にぶちまけたさとりは、そのまま泣き崩れてしまう。悠翔はそれを見てベッドから降りると……さとりをギュッと抱きしめた。
さとり「ぁ……。」
悠翔「……ごめん、さとりに言われたこと、守れなくて……。」
さとり「……本当ですよ……死んでしまったんじゃないかって……ずっと思ってたんですからぁ……!!」
悠翔「……ごめん、本当に……。」
それから悠翔は、さとりが泣き止むまでさとりを抱きしめ続けたのだった__。
さとり「すみません悠翔さん……怪我してるのにこんなことしてもらって……。」
悠翔「俺が心配させたのが悪いからさ。気にしなくていいよ。……ねぇさとり。俺ってどれくらい気絶してたの?」
さとり「……3日です。」
悠翔「……へ!?」
自分が思ったよりも長い時間気絶していたことを知り、素っ頓狂な声を上げる悠翔。
さとり「無理をしすぎたんですよ。ハンデ有りとはいえ、勇儀さんと戦うのは本当に大変なんですから……。」
悠翔「うん、本当に強かったよ……。」
さとり「……そもそも、あれだけの傷が3日で治っていることに驚きなんですが……何かしましたか?」
悠翔「いや、特に何もしてないと思うけど……もしかしたら、無意識に能力で傷を治してたのかも。」
さとり「相変わらず万能な能力ですね……。」
悠翔「あはは……そうだね。」
改めて悠翔の能力が規格外であることを認識し、悠翔とさとりはお互いに苦笑いする。
さとり「それと何があったか知りませんが、パルスィが勇儀さんに対して凄く怒ってたんですよね……。」
悠翔「……多分本気出しちゃったからじゃないかな……。(勇儀さん、殺されないよう頑張ってください……。)」
パルスィが怒っていたことを聞き、悠翔はまた苦笑いしながら勇儀を心の中で応援する。
……ちなみに、パルスィが怒っていた理由はもう1つある。勇儀は本気を出せないよう盃から酒をこぼさないというハンデをつけていたのだが、途中からそのハンデを無視していたのである。また、悠翔が提案した、5分間だけ戦うという制限時間も無視していた。気づいてなかった悠翔も悪いが、悠翔はそもそも被害者ということで、パルスィの怒りの矛先は勇儀にのみ向いたのである。
悠翔「……そういえば他のみんなは?」
さとり「お燐とお空は仕事中ですね。こいしはペットたちの世話をしているはずです。」
悠翔「そっか、みんなにもあとで謝らないとな……。とりあえず、先にこいしのところにいk「私はここにいるよ〜。」うわびっくりした!?」
地霊殿の他のメンバーにも謝った方がいいかと思い、まずはこいしのところに向かおうとした時、突然部屋の中にこいしが姿を現した。……しかも悠翔の背後にである。
悠翔「いつからそこにいたの……?」
こいし「悠翔がお姉ちゃんを慰めてた時かな〜。」
さとり「ふぇっ///!?あ、あれを見てたの///!?」
こいし「見てたよ〜。」
こいしの無邪気なカミングアウトに、さとりは顔を真っ赤に染める。
こいし「それにしても良かったね!無事に目が覚めて!」
さとり「えぇ……!」
2人がそう話している中、悠翔はある違和感を感じていた。
悠翔「(こいしも俺を心配していたはず……でも、さとりみたいに泣いていた感じがない。それどころか、悲しんでた感じが一切しないような気がする……。……まさか……?)」
そう、どう見てもこいしの様子が、いつもと変わっていなかったのだ。そこから悠翔はある仮説を立てる。
こいし「じゃあ私はペットたちの様子を見てくるね!」
慌ただしく部屋を出ていくこいしを見送り、悠翔はさとりに声をかける。
悠翔「……さとり、聞きたいことがあるんだけど。」
さとり「え?なんですか?」
悠翔「こいしのことなんだけどさ……もしかしてこいしって、感情が薄いの?」
さとり「…………!?気づいたんですか……!?でもどうして……!?」
悠翔「……俺が大怪我をして意識がなかった時に、こいしだって悲しんでいるはずだって思ってた。でも、さっきのこいしにはそんな様子がなかった。……それでもしかしたらって思って……。」
しばらく、沈黙が続く。
さとり「……悠翔さんに、話さないといけませんね。どうして、こいしの感情が薄くなってしまったのか__。」
そしてさとりは語り出す。こいしの感情が薄くなってしまった原因となる過去の出来事を……。
【無意識の心】
さとり「悠翔さんも知っている通り、私とこいしは覚妖怪で、心の中で考えていることを読めてしまいます。それが原因で、覚妖怪は人間から嫌われていました……ただ1人を除いて。」
悠翔「ただ1人……それって。」
さとり「はい、こいしです。こいしは自分が覚妖怪だということを伝えず、人間たちと仲良くしていました。あの子は心を読んでも、それをどうこうするという気持ちは無かったので。ですが……。」
そこでさとりは言葉を切る。
さとり「ある日、こいしが覚妖怪だということが知られていたんです。その結果、こいしは仲良くしていた人間たちから避けられ、悪ければ物を投げつけられる始末でした。」
悠翔「ッ……。」
ルネ《そんな……こいしちゃんが……。》
それを聞いた悠翔は、無意識に拳を強く握りしめていた。ルネも驚愕に目を見開いている。
さとり「そこでこいしは気づきました……自分の心を読む能力があるから、周りから嫌われてしまうのだと。……そしてこいしは自身のサードアイを閉じ、能力を封印しました。その時、自身の心も封じてしまったんです。今のこいしの感情はいわゆる仮初めのもの……笑っていたとしても、そう見えるだけなんです。
……私がこいしの心の声を読めないのは、こいしが心を封じているからなんです。そして、こいしは心を読む能力の代わりに『無意識を操る程度の能力』に目覚めました。」
悠翔「……人間のせいで……こいしの心が……。」
さとり「……ですが、これは仕方ないことだったのかもしれません。悠翔さんのように、覚妖怪を受け入れる人間が珍しいんです。こいしが人間たちに嫌われてしまったのも「違う。」……え?」
話の途中で割り込んだ悠翔の否定の言葉に、さとりは呆然として視線を悠翔に向ける。
悠翔「仕方なかったことじゃない……一緒に過ごす道だってあったはずだ。こいしだって、心を読む能力を悪いことに使ってたわけじゃない。ずっと一緒に過ごしてたなら、こいしが覚妖怪だろうが、受け入れることはできたはずだ……!」
さとり「悠翔さん……。」
ルネ《悠翔……。》
悠翔「……ちょっとこいしのところに行ってくる。」
そう言って、悠翔は立ち上がってドアの方に歩いて行く。
さとり「へっ!?な、何をするつもりですか!?」
悠翔「あの時誓ったんだ……自分の能力のせいで苦しんでいる人を救うって!」
そう言い残して、悠翔は部屋を出て行った__。
悠翔「こいし!」
こいし「あれ?どうしたの悠翔?」
地霊殿を走り回り、こいしを見つけた悠翔はこいしを呼びながら駆け寄る。
悠翔「……怒らないできいてほしいんだ。……さとりから、こいしの過去について聞いた。」
こいし「……なんで?」
悠翔「さっき話した時にさ、こいしは感情が薄いんじゃないかなって思って……さとりに聞いてみたんだ。」
こいし「そっか。じゃあ、なんで私のところに来たの?」
悠翔「……こいしの感情を……心を取り戻すため、かな。」
こいし「心を取り戻すって……別に私は困ってないよ?昔のことだって、もうどうでもいいし……「そんなわけない!」…………。」
悠翔「今もこいしは……色んな人たちと仲良くしたいって思ってるんじゃないのか!?」
こいし「……悠翔には分からないよ。」
こいしはそう、無表情で呟く。……本来なら怒りか、悲しみの感情が出てくるはずだが、やはり感情が薄いせいでそうはならないようだ。
こいし「私の能力のせいで、私は人間から嫌われた。……ずっと仲良くしていた人からも。私にはもう心を読む力はないけど、感情も……心も無くなっちゃった。だから、もういいの。人間とは仲良くなれない。……悠翔とは、仲良くなれたけどね。」
悠翔「…………。」
こいし「だから大丈夫だよ、私のことは気にしないでいい。」
……静寂が、その場を支配する。何も言わない悠翔を見て、こいしはこの場を去ろうとする。……その時だった。
悠翔「じゃあ……なんでこいしは泣いてるの?」
こいし「……え……?」
悠翔にそう言われて、こいしは自分の頬を何かがつたっていることに気づく。指でそれに触れると、指先には水滴がついていた。
こいし「なん……で……。」
悠翔「きっと……こいしの本心が、感情を呼び起こしたんだ。紅魔館の時も、こいしの心からの願いが、少しだけこいしの能力を掻き消した。……確かにこいしの心は閉ざされてる。……でも、決して無くなったわけじゃない。本当は少しだけ、心が目覚めてたんだ。……さとりのことに対して、こいしは少しだけ感情が出てきてたはずだしね。」
そこでこいしはハッとする。さとりと一緒に過ごしていた時、さとりがピンチで、助けてほしいと願った時、確かにこいしには感情があった。……無意識で、出ていたのだ。
悠翔「こいしなら大丈夫だよ。今はさとりに対してしか心を開けなくても、いつかはきっと、どんな人にでも心を開けるようになるから!」
悠翔のその言葉を聞いた瞬間、こいしは封じたはずの自分の心が目覚めるような感覚がした。それと同時にに、何かが込み上げてくる。
こいし「わた……しは……もっと……みんなと……仲良くしたいっ!!」
本当の思いを告げ、ついにこいしは感情を取り戻した。止まらない涙を拭い続けるこいしを見て、悠翔はこいしをそっと抱きしめる。
悠翔「……泣き止むまでこうしてるよ。だから……ね?」
こいし「うん……ありがとう……。」
そのままこいしは、先ほどのさとり以上に泣き喚くのだった__。
こいし「……ありがとう、悠翔。」
悠翔「こいしが感情を取り戻せて良かったよ。」
こいし「っ……///!?」
そう言う悠翔の顔を見た瞬間、こいしは先ほどとは別の感情を抱き、顔を真っ赤に染める。
こいし「(胸が……ドキドキしてる……!これってもしかして……!?)」
悠翔「……こいし?大丈夫?」
こいし「ご、ごめん悠翔!私お姉ちゃんのところに行ってくるから〜!!」
悠翔「えっちょっ、こいし!?」
ルネ《(……ほんと鈍感だなぁ……。)》
突然駆け出したこいしを、悠翔は状況を飲み込めずに動揺しながら見送るのだった__。
〈こいしside〉
私は今、地霊殿の廊下を走っていた。さっきまで私は悠翔と話していた。……私の過去についてだ。悠翔は、私のことを救いたいって言った。私にはもう感情が無かったからなんとも思って無かった……いや、思って無かったはずだった……。
私は、ずっと自分がもう人間とは仲良くなれないって思い込んでた。でも、悠翔はそれが本心じゃないってことに気づいてた。……私ですら、気づけなかったのに。
悠翔は、私のことを励ましてくれた。悠翔の言葉を聞いた瞬間、閉じていた心が開いた感覚がして……そして大泣きしてしまった。悠翔は私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。
……そうやってずっと抱きしめられてたのもあるんだろうけど……改めて悠翔の顔を見た時、かっこよくてびっくりした。……それと同時に、心臓がバクバクし始めて……私は思わず駆け出してしまった。
そして私は今、お姉ちゃんの部屋に向かっている。部屋の前に、オロオロとしているお姉ちゃんがいた。
こいし「お姉ちゃん!」
さとり「こいし!?」
お姉ちゃんは走ってきた私に驚いてたみたいだけど、私は気にせず勢いよくお姉ちゃんに抱きついた。お姉ちゃんはフラつきながらなんとか私を受け止めてくれた。
さとり「ど、どうしたの?というか悠翔さんと話してたんじゃ……?」
こいし「そ、そうなんだけど……。」
それどころじゃ無くなったっていうか……。
さとり「…………!?(それどころじゃ無くなったって……というかこいしの心が読める!?)も、もしかしてこいし……心が開いたの……!?」
こいし「う、うん……。」
それを聞いた瞬間、お姉ちゃんがギュッと私を抱きしめてきた。涙声で「良かった……!」と言っているから、本当に心配してくれていたみたい。……この状況で言うのもどうかと思うけど……覚悟を決めよう!
こいし「お、お姉ちゃん……その、大事な話があって……。」
さとり「な、何かしら?」
お姉ちゃんの気持ちは知ってるから、本当は言いたくないけど……言わなきゃ。
こいし「その……私ね?……悠翔のこと、好きになっちゃったみたい……。」
さとり「…………。」
私の言葉を聞いた瞬間、お姉ちゃんが固まった。あれ?と私が思ったその時だった。
さとり「ええええええぇぇぇぇぇぇ!?」
こいし「ちょ!?お姉ちゃんうるさい!悠翔が来ちゃったらどうするの!?」
私絶対に顔を合わせられないのに!!
さとり「そ、そっか……こいしもかぁ……。」
こいし「うん……お姉ちゃんも好きなのに……。」
さとり「……私の気持ちにも気づいてたのね……。」
それはもう色んな人が気づいてたと思うよ?「え!?」
びっくりしてるお姉ちゃんは放っておくとして、「ちょっとこいし!?」これからどう悠翔と接すればいいのかを考える。
さとり「どう接すればいいかって……別にいつも通りでいいんじゃないの?」
こいし「……お姉ちゃん、それじゃあ悠翔は振り向いてくれないよ?」
さとり「うっ……。でも悠翔さん鈍感だし……。」
こいし「そうなんだよね……。」
悠翔って本当に鈍感だよね。お姉ちゃんが頑張ってアピールしても好意に気づいてないみたいだし……。
さとり「……もしかして、私のこと好きじゃないのかな……。」
こいし「お姉ちゃん!そんな弱気になるんだったら、私が悠翔のこともらっちゃうからね!」
さとり「そ、それは……ダメ……。悠翔さんは私の……///。」
えっかわっ……。
モジモジしながら何かを呟くお姉ちゃんを見ていた私は、気がついたらお姉ちゃんにまた抱きいていた。
心が開いたからかな……なんか変な気持ちになってきた……。……でもしょうがないよね。おねえちゃんがかわいすぎるのがいけないもん。
こいし「おねえちゃんかわいい。」
さとり「えっ……ちょっ、こいし///?」
こいし「ほんとうにかわいい……だいすき。」
さとり「……ぐふっ……!」
こいし「…………ハッ!?お、お姉ちゃん!?」
さとり「我が生涯に……一片の悔い無し……。」
こいし「お姉ちゃあぁぁぁぁん!?」
一瞬我を忘れていた私は、目の前で鼻血を吹いて倒れるお姉ちゃんを見て叫んでしまった。そんな間にも血溜まりは広がり続けていた。
ど、どうしよう……。お燐もお空も仕事中だし……頼れる人が悠翔しかいない……。……でもお姉ちゃんを放って置けない!
そう考えた私は息を思いっきり吸い、
こいし「悠翔ー!!助けてぇぇぇぇ!!」
と叫んだ。その数分後には悠翔が駆け寄ってきて、倒れたお姉ちゃんを部屋に運んでくれた。お姉ちゃんを軽々とお姫様抱っこする姿はやっぱりかっこよかった。
本当にありがとう、悠翔。……大好きだよ。
私は心の中で、そう悠翔に思いを告げた__。
オマケ
悠翔「とりあえずさとりを回復させないと……。」
なぜか鼻血を吹いて倒れていたさとりを彼女の部屋に運んだ悠翔は、とりあえず血を補給させようとさとりの血を増やす力を能力で作る。すると、
悠翔「(ピリッ)……ん?なんだ……?(能力を使ったら体がピリッとした……?)」
そんな感触がしたのだが、その後は問題なく能力が使えたため、
悠翔「……気のせいかな……。」
そう割り切ってしまうのだった__。
続く
こいしが3人目のヒロインになります。こいしの設定って色々ある(個人の意見)のでどんな設定にすればいいか悩みました。そしてこいしの基本設定(心を閉ざし、感情が薄くなる)を改変し、こいしが心を取り戻し、感情を出せるようになりました。さとりもこいしの心が読めるようになりました。ただ、能力は『無意識を操る程度の能力』のままです。
しれっと命を燃やしてる悠翔がいましたがそれは置いておいて……オマケが何やら不穏でしたね?これが後々関係してきます。どうして能力を使ったら体がピリッとしたのか、考えてみてください。
あ、言い忘れてましたが……古明地姉妹とスカーレット姉妹は全員がシスコンです()