「えっと、この人がおじさんが召喚した人です。はい」
ミリアがそう言いながら指す方には和服に長刀を指す侍風の男がいた。
「お初にお目にかかる。拙者名乗る程の名も無い農民だが何やら切羽詰まった声が聞こえ他の者が向かった様子も無かったので何か助けになればと思い来たしだいだ」
「貴方、英霊じゃないんですか?」
「うむ、説明が難しいのだが私の英霊としての名前は佐々木小次郎だ」
シェリーの質問に小次郎はそう答えると少女達はかなりの好印象を受ける。
「佐々木小次郎!!宮本武蔵との巌流島との戦いは凄く有名な方ですわ!!」
「う、うん!!あんまり勉強が得意じゃない僕でも知ってる人だ」
「凄い凄い!!とてつもない有名人です!!サイン下さい!!」
「ハッハッハ、期待させて申し訳無いが私は佐々木小次郎本人では無いのだ」
その言葉に少女達は首を傾げる。
「そもそも諸君の知る佐々木小次郎は幾人もの剣豪の逸話が合わさった物だ、確かに佐々木小次郎と言う剣士は居たのだろうが、その者は名前を残しただけだ」
「じゃあアンタは…………」
「フッ、佐々木小次郎の秘剣、燕返しを再現出来る。その一点のみで佐々木小次郎として召喚されたただの農民だ」
(((((それはそれで凄いことだと思う!?)))))
佐々木小次郎の言葉に少女達の心が一つになった。
結局佐々木小次郎に脱出に繋がる様な力が無いと分かり少女達は何時も通り規律に沿って行動する日々に戻った。
そんなある日、ミリアは夜の散歩に出ているとそこには塀の上に立つ佐々木小次郎の姿があった。
「そんな所で何してるの?」
「…………月を見ていた」
「月?」
ミリアが空を見上げるとそこには綺麗な満月が浮かんでいた。
「確かに、綺麗だね」
「ああ、まるでそなたの髪の様だ」
「そうかな?」
「ああ、そなたに最初に呼び出された時、私は月の精に呼び出されたのかと思った程だ」
「あ、アハハ、それはちょっと言い過ぎじゃないかな……」
その言葉にミリアは顔を赤くし俯く。
「そ、そう言えば貴方は燕返しが出来るんだよね?」
「ああ、それだけの為に佐々木小次郎として呼ばれたからな」
「み、見てみたいな〜なんて……アハハ、やっぱり駄目だよね」
「構わぬぞ」
「え?」
佐々木小次郎はそう言うと長刀を抜きスッと構える。
ヒラヒラと木の葉が舞い目をカッと開くと足を踏み出し剣を振るう。
(凄い、全く同時に3回も……)
「コレが私の燕返しだ、暇潰しに燕でも切ろうと思ったのだが、奴らは存外素早くてな、一太刀の刃では簡単にすり抜けられる。ならば二太刀・三太刀浴びせれば良いと斬りまくっている内にほぼ同時に切れる様になっていた」
(いや、アレは完全に同時だった様な……)
「そっか、おじさんにはとても真似出来ないな」
「真似る必要はあるまい、自分が本当にやりたいと思った事をやれば良かろう、誰に遠慮する事も無くな」
「ッ!!……………それが出来ない人も世の中には居るよ」
「そうかも知れぬな」
2人の何気ない会話を月の光が優しく包み込んだ。