ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら 作:りんごりら
ルーデウス視点
俺が2歳になった頃、妹が産まれた。
名前はトマというらしい。
まぁあれだけ夜にギシギシアンアンやってりゃそりゃできる。しかしこれで俺もお兄ちゃんか…前世では弟はいても妹はいなかったからな、エロゲーでしか妹は知らん。
接し方は全くわからんが、「お兄ちゃん大好き♡」なんて言われる兄を目指そう。
3歳になった。
両親の名前をやっと知り、自分の名前も分かった。
俺の名前はルーデウス・グレイラット。
グレイラット家の長男であり、既に魔法というスタートダッシュを切っているナイスガイ……ナイスボーイだ。
トマはまだまだ夜泣き、朝泣き、腹減り泣きの赤ん坊だ。
しかしこの年齢でも美幼女の面影を感じる気がする。それに瞳が綺麗なオッドアイだ。
左目が青で右目が灰色。青色の瞳はゼニスから受け継いだものだろう。灰色の瞳にはどこかぐるぐるとした模様がある。
それはそれとして、今日も秘密の魔術特訓を行う。
バレた。
メイド(リーリャさんというらしい)の進言により俺は午前中は魔術を学んで、午後から剣を学ぶことになり、加えて家庭教師を一人雇う事になった。
その家庭教師がなんとびっくりロリっこ魔術師!てっきり髭の蓄えた老人がやってくると考えていたもんだから驚いた。
名前はロキシー。
魔術師っぽい格好に身を包み、水色の三つ編みを携えたジト目少女だ。
今の俺の魔術はどれくらいのレベルなのだろうか、ゼニスは俺を天才だというが、あれは単なる親バカという可能性もある。
しかし俺は決めたのだ。
俺はこの世界で本気で生きていく。
もう、二度と後悔はしないように。
全力で。
4ヶ月ほど経った。
中級までの魔術が使えるようになった。また、夜の授業が追加され(ただの座学)魔術以外も学ぶことになった。
ロキシーの授業はわかりやすく、面白い。
俺はこの世界の諸々やスペルド族などについて学んだ。
この頃、トマが歩き始めた。
ほんの少し前に初めてトマが立ったときは「立った立った!ク○ラが立った!」という気持ちであったのにもう歩くとは…恐るべし妹。
さらにはゼニスのことをかーさま、パウロのことをとーさま、リーリャのことをりーりゃと言い始めた。
ちなみに俺のことはにーさまと言ってる。にーさまと言っている!!!
またロキシー曰く、トマの右目は魔眼の可能性があるらしい。
その事実に両親は大喜び!になると思ったのだが、トマのことを心配していた。どうやら魔眼は負担がかかるものが多いらしく、魔眼持ちは眼帯をする者も多いそうだ。
一年ほど経った。
全ての系統で上級の魔術まで扱えるようになった。無詠唱で。
その一方ロキシーは麦畑に雨を降らせるなどし、村人から大絶賛を受けた。
それ以外にも村の人からの依頼を受けて見事魔術で解決している。らしい、俺は家にいたので全てパウロから聞いた話だ。
ロキシーに師匠と呼んだ方がいいかと聞いたら嫌な顔をされた。実力が伴わない師弟関係は不快なだけだそうだ。
そんなわけで、俺は表面上は先生呼びのままだが心の中では師匠と呼ぶことに決めた。
ロキシーは俺にちゃんと向き合って教えてくれる。尊敬できる人だ。
トマは2歳になった。
さすがに魔術の練習はしていないみたいだが、人の顔を見てぼーっとする癖があるらしい。
なんというか、心ここにあらずというか、
俺のことはにーさまからにいさま呼びになりつつある。
にーさまでもいいのよ。
ロキシーの授業を受けているとトマがやってきた。
青と灰のオッドアイを煌めかせ、太陽で輝く金髪をたなびかせながら俺の
ここいらで兄貴の威厳、見せちゃおっかな。
岩砲弾を維持しながら
トマはさらに目をキラキラさせながら近づいてきた。
「わたしもやる!」
「トマにはまだ早いと思うぞ」
「やる!やるの!」
トマは見よう見まねで両手を前に出したが、当然何も出ない。ゼニスの英才教育のお陰かトマは文字が読めるが、魔術の本は読んだことがないようだ。
俺でも詠唱してからじゃないと無詠唱で発動できないのに、2歳の妹がやり始めたらショックを受ける、すごく。
「ルディ?どうしたんですか水弾を出して?」
「あっ!えぇと…トマが来たんですよ。いいとこ見せたくて…」
「あぁそれで……トマさん、危ないからお家に入ってくださいねー」
「でない……でないよ……」
トマはロキシーに連れられて家に帰ってった。
しっかしこの年から魔術に興味を持つのか……転生というチートがある俺とは違って、トマは本物の天才かもしれない。いやだなぁ妹に負ける兄は。今のうちに媚び売っといて養って貰おうかな。
いや何を考えているんだ。俺はこの世界で本気を出すと決めたんだ。
5歳になった。
誕生日にはささやかなパーティーが開かれた。
この国には誕生日を祝うという文化は無く、しかし一定の年齢のときは家族が何かを送るのが通例なのだそうだ。
俺はパウロから2本の剣を。ゼニスから植物園辞典を。ロキシーからロッドをもらった。
トマは庭の花をプレゼントに選んだらしい。
「にいさま、おめでとーございます。にいさまはいつもすごい魔術をしていてすごいです。」だそうだ。
トマは家の窓や庭から俺が魔術を使うのを見るのが好きなようで、度々近づきすぎては窓から落ちゼニスにヒーリングを受けている。
これはもう尊敬されるお兄ちゃんとして完全に成ったのではないか。というふうに浮かれているとロキシーから明日卒業試験行うと言われた。
俺はこの世界に来てから外に出たことがない。怖いのだ。外が。1歩出たらこの夢も覚めてしまうのではないかと。いや、これは夢じゃない。夢じゃないんだ現実だ、と自分に言い聞かせても、足が竦む。
そんな俺を、ロキシーは外に連れ出した。あっさりと。馬に乗せられて。
初めは怖かった。村人のジロジロとした目線が、なに考えてるかわからない顔が、俺を否応なしに剥き出しで評価する外の世界が。
けど、違った。村人の目線はロキシーに向かい、そして会釈した。ロキシーはこの数年で村の中に立場を築いたのだ。この国ではまだ魔族の風当たりが強いというのに。背中の彼女がとたんに頼もしく感じられた。次第に体から緊張が抜けて、真っ直ぐと顔を向けられるようになった。
「まだ怖いですか?」
「いえ、もう大丈夫です」
「ほら、大丈夫だったでしょう?」
転生してから5年、俺は家から出ずに何を恐れていたのだろうか。
地平線まで広がる草原の中、ポツンと立った木に馬の手綱を結び、卒業試験が始まった。
ロキシーの水聖級攻撃魔術
ロキシーが馬を結んだ木に雷を当ててしまうハプニングがあったが、次は俺の番。ロキシーが唱えた詠唱を真似して……「雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の王子よ!我が願いを叶え、凶暴なる恵みをもたらし、矮小なる存在に力を見せつけよ!神なる金槌を金床に打ち付けて畏怖を示し、大地を水で埋め尽くせ!ああ、雨よ! 全てを押し流し、あらゆるものを駆逐せよ!キュムロニンバス!」
モクモクと雲ができた。それと同時に俺は
ロキシーは驚いてドームを飛び出した。そこには、俺の創りだした、際限なく大きくなっていく積乱雲があった。
ロキシーは俺の作った雲について色々考察していたが、振り返ってこう言った。「ルディ。合格です。」こうして俺は卒業試験を合格した。
ロキシーは旅装を整え、ゼニスやパウロ、特にトマから引き留めようされながらもこの家を出ていった。その折ロキシーは卒業祝いにペンダント俺に送ってくれた。
ありがとう。ロキシー。俺を外に連れ出してくれて、トラウマを治してくれて。
あの小さな少女を尊敬しよう。手元には、ロキシーにもらった杖とペンダントそして数々の知識だけが残った。
と、思ったら、数ヶ月前に盗んだロキシーの染み付きパンツが自室にありました。
ご、ごめんなさい。
その数日後、俺は庭で異形の鼠を発見した。