ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら 作:りんごりら
トマ視点
にいさま10歳のお祝いの翌日、朝早くにわたしは執事の人に聞いてにいさまの部屋へ来ていた。
昨日はいつの間にか寝てしまっていた。
ノックは……しなくていっか!
勢いよく扉を開ける。
「おはよー!にいさま!」
「うわああああ!トマ!?ちょ、ちょっと待て!」
にいさまは瞬時にベットに入り下半身を隠した。
どうしたんだろう?
着替え中だったのかな?
それにちょっと変な臭いがするような……?
「なんで焦ってるの?」
「いや焦ってなんか無いぞ!それよりトマご飯食べに行った方がいいんじゃないか!?」
「んー、や、にいさまと一緒にいたいな」
にいさまは何故か非常に焦っている。
汗はダラダラ目線はウロウロ、大袈裟な身振り手振りで話すのに下半身はベットに縛り付けられたように動かさない。
「じゃ、じゃあ着替えるから部屋から出ていってくれないか?」
「えー前は一緒に着替えてたじゃん」
「あーえっとその、そっそうだ!ここの家は着替えているところを人に見られてはいけないっていうルールがあるんだ!だから1人で着替えなくちゃならないんだ!」
「ふーんわかった。」
納得いかないけど、そこまで言うなら出ていってあげよう。
部屋から出ていくと籠を持ったメイドさんが歩いて来た。
「あっメイドさん!おはようございます!」
「おはようございます、ルーデウス様の洗濯物を回収しに来ました」
「にいさまなら今部屋にいます!」
扉の先から漏れでた声が聞こえる。
(お願い……トマをごまか……ください!あとエリス……は黙っていて…………でしょうか!)
(ふふ、承知……ました。)
内容はよくわからない。
メイドさんが出てきた。
「ルーデウス様は秘密の魔術を使っていたようですよ。そのためトマ様に気付かれたくなかったのでしょう。」
「えぇ!秘密の魔術!いーなー見たいなー!」
「その前に、お食事はどうでしょうか?ルーデウス様も朝ごはんは大事だと私達に教えてくれましたよ。」
「そっか、じゃあ食べます!」
食堂の美味しいご飯を食べ終わったので、にいさまを探す。
ここにどれくらい居られるのかがわからない。
たぶん3日くらいじゃないだろうか。
それまでにお土産を買わないとね、にいさまにおすすめを教えて貰おう。
と、噂をすれば……
にいさまとギレーヌ、そしてエリスさんが廊下を歩いている。
トテテっと小走りで近づく。
「にいさまどこ行くの?」
「ギレーヌとの約束で聖級水魔術をやるんだ。トマもついてくるか?」
にいさまの魔術!3年間ぶりだ!
「絶対行く!」
---
わたし、にいさま、ギレーヌ、エリスさんで馬車で城塞都市ロアの郊外の丘へ向かっている。
目的はにいさまの聖級水魔術!上級の1つ上の魔術だ。
ちなみに王級帝級神級は国とかが保管してるらしいからそうそう覚えることが出来ない。
わたしの無為転変は何級何魔術なんだろう?
オリジナルの
「ルーデウス、トマには敬語使わないのね。」
「ええ、家族相手には砕けた口調を使いますよ。」
にいさまとエリスさんが並んで座っていて。その向かいにわたしとギレーヌだ。
丘へ行くにあたって、わたしはとおさまから貰った大剣と3匹の改造犬を持っている。
大剣はにいさまへ成長した剣術を見せるため、改造犬、つまりアサルトドッグは無為転変の練習と手慰みに持ってきた(ターミネートボアを剣にしたついでに手に入れたのだ)。
と、考えていたら隣を座っているギレーヌが話しかけてきた。
「その剣はお前が使うのか?」
「はい、とおさまから貰いました。」
「流派はなんだ?」
「剣神流と北神流です!」
ギレーヌは剣神流っぽいなー。
性格的に。
「トマの剣術は僕より強いんですよ。初めて10分くらいで負けましたね……。」
そうだね……にいさま魔術はすごいけど剣術は弱い。
「ほお、お前何級だ?」
「とおさまによると、どっちも上級です。」
「なっ嘘でしょ!こんなやつが!?」
こんなやつって言われた。
村の外は理不尽だ……。
シル姉に会いたい。
「まじか…………あ、着きましたよ。」
結構広々とした草原だ。
見晴らしがよくて魔術がよく見えそう。
にいさまが『
わたし達は並んで地面に座って待つ。
最初は
「おお、でかい」
水弾を小さくしたり大きくしたりして杖の性能を確かめている。
あ、杖忘れた。
まぁ剣もってるからどのみち持ってこれなかったかな。
「ど、どう?」
「調整が難しいけど、すごいですねこれは」
にいさまですら難しいとは。
それほど杖の性能がいいのだろう。
「よし、それじゃあ、皆様お待ちかね。ルーデウス・グレイラットの最強最大の奥義をお見せしましょう」
「わー!」
「待ってましたー!」
いよいよにいさまの魔術が見られる!
3年ぶりだな……にいさま。
「フハハハハ! 集えよ魔力!雄大なる水の精霊にして、天に上がりし……あれ?」
「む?」
「なによあれ!?」
「ん?」
いいところだったのに!
紫と緑が混ざったような色が空へ広がっていく。
にいさまなら散らせられるかな。
「にいさまあれ散らしてよー。」
「いやいや、あれが何なのかもわからないんだから無理だ!」
「あれは凄まじい魔力だ。」
あ、ギレーヌが右目の眼帯を外している。
「ね、ねぇもう家に帰りましょう?」
「いやだめだ、むしろ町から離れた方がいい。町に近づくほど魔力が濃くなっている。」
あのエリスが不安がっている。
ギレーヌも尻尾が揺れなくなって、にいさまも不安そうだ。
あれ、これ不味い?
でもにいさまなら……
わたしがそう思ってにいさまの方を横目でちらりと見た。
「では私が戻っ……ルーデウス! 伏せろ!」
「うぇ!」
急なギレーヌの警告にわたしもビビってしゃがんだ。
しかしそんな感情は次の瞬間に消えた。
にいさまの後ろに誰か立っている。
金髪にカッチリとした前留めの白い服、キツネのような黄色い仮面、そして右手には、大振りのダガー。
……は?
もしかして、にいさまに攻撃した?
鞘から抜刀しようとした時、仮面の男の顔が光った。
まぶし!
「ガァッ!」
ギレーヌの吠え声が聞こえる。
医療魔術で目を直す。
見えた景色はギレーヌと仮面の男が戦っているところだった。
もう確信した。
敵だ。
右手に大剣、左手に改造犬を。
そして命令を下す。
「仮面の男を殺せ。」
小さくした改造犬はみるみるうちに膨れ上がり異形と化した。
急激に魂を弄ったのでもって10分の命だろう。
わたしは強化した足で地面を強く踏み込む。
そして───
「なっ!」
「なんだこれは!?」
風切り音すら残さない無音の太刀を仮面の男は容易く避けた。
まだだ!
改造犬が仮面の男に飛びかかる。
わたしは改造犬の進路方向とズレて駆ける。
どうせ避けるのだろう。
しかし縦横無尽に避けられるのか?
挟み撃ちだ。
「ギャぇあヴ!」
「しっ!」
再び地を踏み込み、死ね!無音の太刀!
「調子に乗るなよ!」
仮面の男はわたしの方へ一瞬で近づき、ダガーでわたしの右腕を切り落とした。
「トマ!」
ギレーヌが仮面の男とわたしの間に入り込む。
仮面の男は一瞬で距離を取る。
速すぎじゃないか。
「大丈夫、右手は……あそこか。」
男の近くにある。
取りに行くのはリスクが高いな。
無為転変で手を作ろう。
魂の形を強く保っているためグニャリと、粘土細工のように切られた先を作ることが出来た。
よし。
「なんだお前は……」
何故か仮面の男に引かれているし、ついでに改造犬も殺されている。
強いな……ターミネートボアとは比べ物にもならない。
「貴様。何者だ。グレイラット家に敵対する者か!」
「光輝のアルマンフィ。それが我が名」
こうきのアルマンフィ、覚えたぞお前。
「アルマンフィ?」
「この異変を止めに参上した。それがペルギウス様の命……」
「気をつけてギレーヌ、文献によるとそいつは光の速度で動くそうです」
にいさまもいつの間にか復活していた。
あと無為転変は見られてないようだ。
まぁもうサプライズどころじゃないけど。
「ルーデウス、お前はお嬢様を連れて下がっていろ」
「……わたしは?」
「共に戦ってくれ。」
「わかった。」
流し目でちらりとにいさまの方を見る。
エリスさんを庇うような形でわたし達の邪魔にならず援護もできる絶妙な位置に下がった。
さすが!
「女。どけ。その小僧か小娘を殺せば異変が止まるやもしれん」
殺すのはこっちだ。
無為転変で右肘からブレードを出す。
無いよりはマシだろう。
「なっトマ!?」
後ろのにいさまが驚いてる。
ちょっとだけサプライズ成功かな。
「あたしは剣王ギレーヌ・デドルディアだ。あれとあたしらは関係ない。引け!」
「信じられるか。証拠を見せろ」
「見よ! 剣神七本剣が一つ『平宗ヒラムネ』だ!剣王とこの剣の名において、まだ信じられんか!?」
横のギレーヌが剣を握ったまま拳を突き出して、アルマンフィに見せる。
「こいつ殺すんじゃないの?」
「違う。」
ギレーヌがチラリとにいさまとエリスさんの方を向く。
あ、確かに。
わたしたちを無視してあっちを攻撃されたら終わりだ。
「師と一族に誓え」
「我が師、剣神ガル・ファリオンとデドルディアが一族の名誉に誓う!」
「よかろう。無実でなかった場合、後日ペルギウス様が沙汰を下す」
「構わん」
仮面の男……アルマンフィはダガーを納めた。
…………わたしとしてはにいさまを殺そうとしたコイツは気に入らないが、コイツに攻撃したら誓ったギレーヌの名誉を汚す気がする。
「お前たちでないのなら、いい」
「……唐突に襲ってきて謝罪もなしか?」
「そうだそうだ!」
「こんな場所で怪しいことをしている方が悪い、それに……お前は何なんだ?報告せねばな……」
いそいそと大剣を拾う。
まったくなんでこんな目に……
「あ」
?どうしたのにいさま。
うわっ、なんか後ろがめっちゃ光ってる気がする。
なに?
そう思い振り向くと、白い光の奔流があらゆるものをかき消しながら津波のように迫っていた。
それを目にした瞬間、わたしは理解が追い付かず固まってしまった。
最後に聞こえたのはエリスさんの手を取りわたしの名前を叫ぶにいさまの声だった。