ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら   作:りんごりら

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第11話 赤竜

トマ視点

 

 

 

 10体の改造人間を手に入れてから10日経った。

 未だに現在地すらわかってないため、ただ真っ直ぐ歩く。

 いや、歩くと言うには語弊がある。

 1体の改造人間を馬車役、2体を馬役として変形させ割と快適な移動をしている。

 森の中なので馬車と言うより籠みたいな形だ。

 

 食料は問題ない。

 まだ蛮族が持っていた食料は残っているし、森の中に食べられそうな果物や野菜が生えている。

 まずは改造人間に毒味させ、それから解毒魔術をかけながら食べる。今までこれでお腹を壊したことはない。

 川に魚もいた。捌けないから丸焼きだ。

 骨が残って食べにくい。

 

 蛮族…おそらく盗賊なのだろう、も問題ない。

 斥候に改造人間3体を出している。

 馬車の前方に2体、後方に1体。

 あと荷物持ちで馬車の後ろに2体

 これで不意打ちはされないし、実際この10日襲われていない。

 たまに斥候が叫び声で人を見つけたことを知らせてくれるのだけど、大抵逃げてるっぽい。

 んー襲ってこないのはいいんだけどこれでポケットにあるのはあと2体だけ。

 んーちょっと心配だなぁ。

 人でも魔獣でも動物でもいいからストックを補充したい。

 

 この森について。

 初めは鬱蒼とした森、というイメージだったんだけどそうでもないようだ。

 この10日でいくつか川や小山を確認した。

 さらに小さな小屋?砦みたいなのもあったけどその時はスルーしてしまった。

 あの盗賊の件で人に話しかけるのが嫌になったときがあったのだ。

 それに加え、何故かわたしは初めて受けたはずの人の悪意に既(・)視(・)感(・)を覚えた。それが不気味で……

 ……次に見つけたら声をかけよう。

 悪い人ばっかじゃないって、わかってる。 

 

 「はぁ、にいさまに会いたいな……。」

 

 ロアの町へ向かう馬車よりは快適な改造人間馬車の中で、頬杖をつき、ため息を吐いた。

 

 

---

 

 

 10体の改造人間を手に入れてから30日が経った。

 馬役の改造人間が死んだので、手持ちの2体と交換した。

 道中で魔物に会ったのでストックはあと3体だ。

 そろそろ馬車や荷物持ちも死にかけてきている。

 ちょっとは歩くか……。

 

 森の中を歩いていると、大勢の人の怒号に魔術の詠唱、そして悶え苦しむ人々の悲鳴が聞こえた。

 未だ何の成果もなくもどかしさを募らせていたわたしは、ちょっとだけ覗いてみることにしたのだ。

 

「わー……あんま強くないなぁ……。」

 

 広々とした草原で戦っている。

 50人対60人くらいの接戦だ。

 数人の魔術師が後衛に居座り、詠唱を唱えて戦場を破壊している。

 使っているのは土魔術、水魔術が大半で、火と風はあんまり使ってないっぽい。風は見えていないだけかなー?

 戦場の中央で戦うのは軽く鎧を身につけた兵士?達。

 全身をガチガチに固めるのではなく、機動力特化の軽装備だ。森の中で敵味方の判断をしやすいようにしている?

 茂みに隠れながら勉強させてもらおう。

 

 

 

 両陣営順当に削れていってる。

 と思ったら、1人の魔術師が岩砲弾(ストーンキャノン)を主力集団へ命中させた。

 原型すら無くなってるじゃん。

 あ、岩砲弾(ストーンキャノン)を食らった方の陣営が撤退し始めている。

 ………もう壊滅状態だ。がら空きの背中に兵士の斬撃を食らいまくっている。

 戦争ってこんな感じかぁ。 

 ……………………ん?

 え?

 嘘。

 こっちに逃げて来てる!?

 あわわわわ。

 

「ひっひぃ撤退!てったーい!!!」

「撤退!撤退!!!」

 

 マズいマズい見つかってしまう!

 

「追えーっ!!逃がすなー!!!」

「殺せー!!」

 

 もし見つかったら…………あれ?

 別に見つかっても問題ないのか。 

 全員殺せるし。

 

「えっ子供!?」

「こんにちは……」

 

 若い男は、わたしを見ると目を見開き驚いたがそのまま隣を走り去って行った。

 挨拶は小声で。必死に逃げてるのに驚かせちゃったらよくないよね。

 その後も数人が近くを走り去って行った。

 勝った陣営の人達も来た。

 

「あ……ガキ……?」

「こんにちは。」

 

 努めて笑顔を作り、敵意がないことをアピールする。

 困惑した顔で髭の男は質問してきた。

 

「お前、どこの国のやつだ?」

「アスラ王国フィットア領のブエナ村です。」

「フィットア領……?嘘つけここからどれだけ離れてると思ってやがる。」

「っ!ここがどこかわかるんですか?教えてください!」

「あ?あぁ…嬢ちゃんに分かりやすく言うと、中央大陸の紛争地帯ってところだ。付け加えると、赤竜山脈に近い未開の森だな。ここじゃ村も国もない。」

「紛争地帯……。」

 

 訳が分からない。

 ロアの町からいきなり紛争地帯?

 わたしの頭の中のぼんやりとした世界地図に照らし合わせてみても、一瞬で移動できる距離じゃないことは簡単に分かる。

 しかし原因は間違いない。

 あの光だ。

 あれに巻き込まれてわたしはこんな所へ飛ばされたのだ。

 

 心の中に、行き場のない怒りとやるせなさが澱のよう溜まっていく。

 なんで…………はぁ……。

 なんでこんなことに……。

 

 がっくりとうなだれてしまったわたしを気遣うような声で髭の男は言った。

  

「……なんで嬢ちゃんがこんなところにいるのかは知らねぇが、俺達は先を急がなくちゃならん。だから、助けられん。」

 

 髭の男は少しだけ眉がハの字に下がり、憐れみと同情の目を向けている。

 しかし言葉から察するに、なにかの任務の最中のようだ。

 任務最優先なのは優秀な兵士っぽい。

 

「……はい、場所を教えて頂けただけでも十分です。ありがとうございました。」

 

 髭の男はさらに暗い顔になった。魂も揺らいでいる。

 そして懐からいくつかのナッツ類、食料を手に取り渡してきた。

 

「……やるよ。」 

「え…いいの?」 

「……こういうの、よくは無いんだがな……。」

 

 髭の男の手からナッツを取り、ポケットに入れた。

 ここに飛ばされてから初めての親切な、いい人に出会えた。

 それにわたしの心はじんわりと温かくなった。

 ちょっとお礼したいな。

 

「あの、わたし治癒魔術使えます。お礼にかけましょうか?」

「嬢ちゃんが?そりゃあできるならありがたいが…。」

 

 よし!

 まずはこの人にかけよう。

 髭の男、というかここにいる兵士は皆軽装備だから細かな裂傷が体に刻まれている。

 無言で手をかざしてヒーリングを使う。

 

「お?おぉ!まじか嬢ちゃん!こりゃありがてぇ!」

「こんなに小さな子が……」

「あっあの!俺にもかけてもらっていいっスか?」

 

 わらわらと他の兵士も集まってきた。

 なんだかこういうの久しぶりだ。

 心がポカポカする。

 

「いいですよー!じゃあ次の方ー!」

 

 そうしてわたしは次々と兵士達を治していった。

 治した兵士達は各々わたしにお礼だと言って食料や布などをくれた。

 全員を治して少しだけお話したあと、兵士達は森の中へ消えていった。

 

「いい人達だったな……。」

 

 わたしは兵士達を見送ったあと、改造魔物の1体を乗りやすい四足獣ように弄って跨がった。

 もう1体を荷物持ちにして、赤竜山脈目指して走り出した。 

 

 

---

 

 

 10体の改造人間を手に入れてから40日経った。

 今は赤竜山脈へ向かっている。

 結構近くまで来ていると思う。

 赤竜山脈へ到達した後、その山沿いに進んでいけば赤竜の下顎にたどり着くはずだ。

 そこには街道があるはずなので、それに沿って行けばアスラ王国!

 

 紛争地帯を突っ切るより安全だろう。

 魔獣相手にはまず負けないし、人の方が危険だ。

 ギレーヌやとおさまのような強さの人に遭遇したら怖い。

 死にはしないが。

 

 赤竜山脈へ向かうにつれ魔獣に多く遭遇するようになってきた。

 というより、改造人間馬車をやめたら生き物とよく会うようになった。

 怖がられてたかも?

 んー創作の才能ないのかな。

 あれは実用性重視だから見た目に気を使わなかったけど、みんなに見せるときはもっとオシャレにしよう。

 ちなみにポケットのストックは8体。

 全部魔物だ。

 

 改造魔物に乗りながらそんなことをボンヤリと考えていると、空に1匹の巨大な赤い魔物が飛んでいた。

 赤い鱗に背骨に沿って生える黒い角、前腕がそのまま大きな皮膜の翼と一体化している。

 本で見たことがある。

 あれは、赤竜(レッドドラゴン)だ。

 

  

 わたしの脳内にビリビリが走る。

 赤竜を改造したら空を飛べる。

 そしたら?今の改造魔物よりずっと早く家に帰れるかもしれない!

 よし!殺そう!

 あっ殺しちゃダメだった。

 

 

 

 

 

 

「んーこの距離じゃ届かないな……。」

 

 はぐれ赤竜は空を悠々と飛んでいている。

 あの赤竜は飛行が下手なのか、竜が飛ぶにはちょっと低い位置にいる気がする。

 

 どうにかして落としたいが、真空波(ソニックブーム)でも無為転変で弄った体でも無理そうだ。

 特に無為転変の方は変形すればするほど強度が落ちる。

 魔力がもったいないだけだね。

 うーむ、このままはぐれ赤竜についていって降りたときに攻撃を仕掛けるしかないか。

 

 …………………………ん?

 

 なにかが頭に引っ掛かってる。

 なにか、この状況を打開できそうなものが。

 

 んーむむむむむ…………うーん………………

 

「あっ!多重魂(たじゅうこん)!!!」

 

 思い出した!多重魂だ!

 庭でやったらすごい勢いで飛び出して証拠隠滅に苦労したやつ!

 あれを洗練した形で再現できれば…… 

 空の王者を打ち落とせる!!!

 

 ストックは乗ってたやつ含め10体、絶対に成功させる…!

 1秒でも早く家に帰りたい!

 にいさまに、家族に、シル姉に、友達に会いたい!!!

 

 戦術を練る。

 護衛として改造魔獣2体をわたしのそばへ、さらに追跡に3体は欲しい。

 ならば多重魂に使えるのは5体だけか。

 あの赤竜相手に出し惜しみをする余裕はない。

 5体の多重魂に失敗したら、すごすごと逃げて次の機会を伺おう。

 

 赤竜を追跡し開けた草原にたどり着く。

 ここが決戦の場だ。

 体(・)に(・)刻(・)ま(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)な(・)に(・)か(・)と全身に魔力を流す。

 そして、5体の改造魔獣を掌に収める。

 右目で魂を見て、無為転変で少しずつ、少しずつ魂同士を圧縮、融合していく。

 

 …………抵抗が強まる。

 

 体に刻まれているなにかと全身にさらに魔力を流す。

 魂を無理矢理融合させることにより発生する拒絶反応、それを活かして攻撃する。

 よって、無理矢理融合させるほどその技の威力は強まる。 

 わたしは、魂同士の拒絶反応が苛烈になればなるほど、わたし自身に魔力を流す。

 

 ぽたり、ぽたりと汗が落ち、奥歯を強く噛み締める。

 もう体(・)に(・)刻(・)ま(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)な(・)に(・)か(・)は熱を帯び、焼かれているような感覚すらある。

  

 それでも!

 

 おどろおどろしいエネルギーが掌から溢れ出す。

 擦り潰された断末魔の叫び声みたいな音が、わたしの鼓膜を刺激する。

  

 必ず落とす。逃がしはしない!!!!!

 

「多重魂(たじゅうこん)・撥体(ばったい)!!!!!」

 

 瞬間、わたしを後方へぶっ飛ばしたと(・)て(・)も(・)巨(・)大(・)な(・)そ(・)れ(・)は、バン!と大地を揺るがす轟音を出しながら赤竜の右翼を容易に根元からえぐり取り、そのまま赤竜山脈へ突き刺さった。

 

 後方にぶっ飛ばされたわたしは直ぐに立ち上がろうとしたが、自らの手を見てあの技の代償を思い知らされた。

 

(右手全部……それと左手の小指と薬指が吹っ飛んでる…。)

 

 体が重い。

 魔力も体調もバッチリだったのに。

 現在の魔力は6割程度。

 

「無為転変、おまえ達!赤竜へ攻撃しろ!」

 

 体を治し、改造魔物に命令を下す。

 わたしも地を蹴り墜落した赤竜へ接近する。

 ワンタッチ、ワンタッチでいい。

 まずはそれで動けないようにしてから、じっくり魂を弄る。

 

 確実に触れるために左腕を盾のように変形、これで1発は凌いで右手で触れられる! 

 そんなわたしに対し赤竜は……………………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

 ……………………………動かない。

 

「え……?」

 

 死んだ?

 

 いやまさか

 

 右目で赤竜に魂があるか確かめる。

 あるよね!?ね!?

 …弱々しい魂だ。

 けれど、しっかりと存在している。

 よかったぁーあった…。

 これで殺してたらジョークにもならないよ。 

 でももう元気ないな。

 

「無為転変」

 

 脳を弄りわたしの命令に従うようにする。

 翼を再生させ出血を止める。

 背中に乗りやすいよう椅子を作る。

 最後に解毒魔術で病気対策を施せば……

 完成!

 わたし専用改造竜!!!

 

「やったーーー!!!やった、やった、わたしの竜だー!」

 

 嬉しい。

 とても嬉しい。

 竜に跨がって空を飛ぶなんて夢みたいだ。

 にいさまに自慢したいなー♪

 シル姉は怖がっちゃうかな?

 とおさまかあさまはきっと褒めてくれる!

 むふふ、むふふふふ。

 

 

 

 荷物を背中に乗せ、改造魔物を紐のようにして巻き付ける。

 私自身も改造竜へ跨がって準備万端!

 

「改造竜、赤竜山脈沿いに飛んで。あんま高く飛びすぎないでね。」

「グぎゃア」

 

 本来赤竜は飛行能力が低いが、魂を色々弄って飛行能力とスタミナ特化にした。

 翼を2対、つまり腕を4本にして体全体を小さくしたのだ。

 わたしと荷物を乗せるだけだからそんな大きさ要らないんだよね。

 従って地上戦には弱くなってそう。

 

 改造竜がバッサバッサと翼をはためかせ、だんだん宙へ浮いてくる。

 

「おぉ!おーーー!!!いけーー!!!」

「ギャああアアぉおす!」

 

 今までの改造馬車や改造魔物と比べ物にならないスピードで空を飛んでいる。

 森の中でないというだけでこんなにも違うものか!木という障害物が1つもない!

 それにもし落ちても今回は改造魔物がクッションや羽代わりになってくれる。事故対策も完璧だ。

 

「んふふー!いっけー頑張れ改造竜ー!」

 

 

--- 

 

  

「今日はここで寝よ。」

 

 日が落ちてきたので適当な場所へ降りる。

 火をつけご飯を食べる。

 ベットを作る、無為転変で。

 竜は休ませエサを与える。(長持ちするよ!)

 水弾(ウォーターボール)の水に兵士達がくれた布を浸して体を拭く。

 

「見張りやっといて」

 

 改造魔物に見張りの命令を下し、外敵の侵入を防ぐ。

 

「ふんふん、今日は久しぶりにいい夢見れそう!」

 

 わたしはルンルン気分で目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

  

 

「やあ、初めまして。こんにちは。トマ・グレイラット君」




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