ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら   作:りんごりら

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第12話 ヒトガミと■■

トマ視点

 

 

 

 気付けばわたしは真っ白い空間にいた。

 どこまでも広がっているが、なんにもない。

 妙な感覚だ。

 懐かしい、何十年もここにいたような、けれどなにかが違うような。

 もしかして、家に帰りたいっていう思いがこの夢を見せたのかな。

 

 ふと自分の体を見る。

 素っ裸だ。

 …………はだか?

 

「ひゃん!」

 

 びっくりした。

 夢とはいえいきなり裸はないでしょ。

 顔を赤くしながらも、わたしは体の違和感と、いつもと違う髪色に気がついた。

 

 全身にツギハギが走り金髪はくすんだ水色に変わっている。

 ペタペタと頭を触ってみた感じ、顔は変わってない。体格も一緒のままだ。

 それに、()()()()()()()()()()()が、いつもより深く感じられる。

 どうしてだろう?

 

「聞こえてるかい?」

 

 わっ!びっくりした。

 振り返ってみると、白い人がいた。

 気さくに手を振っている。

 わたしも手を振る。

 なんだかこの人安心するな。

 

 ……んん?

 

 あれ?右目で魂が見えない。けれど、なぜか()()()()()()()()()()()によって、魂を感じ取れる。

 強化された?

 

「僕はヒトガミ、神様さ。」

 

 神様?

 

「そう、そして君に助言を授ける者!」

 

 神様が助言をくれるんですか!

 ありがとうございます!

 わたしはペコリとお辞儀をした。

 

「んふふ、素直なのはいいことだよ。あぁ、でもね、助言を授ける前に君について少し教えて欲しいんだ。」

 

 わたしのこと……ですか?

 

「そうさ、その右目のこと、そのツギハギのこととかね。」

 

 えっと、この右目は相手の魂を見ることができます!このツギハギは……わかんないです!

 

「なるほど…………魂ね。でも、ただの魔眼か。ならあの力は───」

 

 ヒトガミ様は小声でブツブツ呟いてる。

 その姿は警戒してたものが拍子抜けの下らないものだったような、気の抜けた安心感を纏っている。

 

 あ、わたしからも聞きたいことがあって……

 

「ん?なんだい?」

 

 わたし、なんで裸なんですか?

 あと、魔眼が使えないです。

 

「それはね、それが君の精神体だからさ。魔眼が使えないのも同じ理由だね。」

 

 精神体……だから裸なのか。

 その言葉には納得できたけれど、この姿には精神体というだけじゃ説明がつかない、特別なものがあるように感じる。

 

 この姿が、

 この姿こそ、

 わたしの精神。

 わたしの心。

 わたしの()、その()()()()()()だ。

 

 そう思わせるだけの実感が、わたしの()()()()()()()()()()()の馴染み具合によって引き起こされる。

 

 いや、おかしい。

 体に刻まれているのなら、今の精神体だけの状態でなぜ感じられる?

 この力は、肉体だけじゃなく精神にも刻まれている?

 それとも……魂にも刻まれているの?

 

 んー……わからない、本当のところはわからないけどとにかく、わたしは今、無為転変を使える……気がする。

 

「無為転変?それは人や魔物を変形させていたあの力のことかな?」

 

 あっごめんなさい考え込んじゃって。

 その、肉体を変形させているってのはちょっと語弊があって、無為転変の本質は、魂を弄ることのできる力です。

 

「………………それを、今使えると?」

 

 ヒトガミ様のにこやかな雰囲気が一変した。

 ヒトガミ様の魂が揺らいでるような気がする。

 なんでだろう?

 ま、いいや。

 実践しましょうか?

 

「そうだね、君の体でやってもらえないかな?」

 

 わかりました。

 よし

  

 無為転変

 

 右腕を巨大化させ捻る、そのままキュルキュルと先端を小さくしていくと、肘の先が黒い槍のようになった。

 ヒトガミ様へ向かってペタペタ歩く。

 どうですかーヒトガミさっあべっ!!!

 

「…大丈夫かい?」

 

 うへー転んじゃった。

 右腕を槍にしたせいでバランス感覚が……

 起き上がるために左の掌を地面に押し付ける。

 

 ん?

 あれ?

 弄れる? 

 この地面、いや、この白い空間すべて、魂に限りなく近い組成でできている?

 試してみよう。

 

 無為転変……。

 

 白い地面がボコボコと膨張する。

 まるで肉のような質感になったそれの中がグジュッと蠢いた。

 そこから押し破るように目玉が、紫と緑が組み合わさった液体と共に飛び出した。

 

「はぁ!?何やってるんだ!?おい!!やめろ!!!」

 

 あぅ…ごめんなさい。

 大人しく弄った所を戻す。

 肉の山のようだったところは渦を巻きながら元の白い地面になった。

 

「くそ…もうさっさと助言を授けるから!ちゃんと聞けよ!?」

 

 ヒトガミ様は焦った様子を隠すこともなく、矢継ぎ早しに助言を授けてくれる。

 

「トマ・グレイラットよ、来た道を引き返し、再び竜を倒すのです。さすれば、君はブエナ村の情報を得ることができるでしょう。わかったね!」

 

 わかりました!ヒトガッ────

 

 返事をしようと声をあげたとき、わたしの頭に強い衝撃と誰かの記憶が蘇ってきた。

 それは唐突で、強い痛みを伴うものだった。

 

 ───狡猾にいこう ■■らしく人間らしく

 

 あがっ!?ぐっ頭が……痛!? 

 

 ────助けてあげようか ■■

 

 痛い痛い痛いぃああああああ!!!!!

 

 ───の若造りも台無しにしてやるよ!!

 

 あああぁぁあああぐぅ…ああああああ!!!!!

 

 その記憶は途切れ途切れに、まるで警告かのように、わたしの頭に叩きつけられた。

 

 

---

 

 

「あぇ……?あ……?」

 

 体がぬるりと汗で濡れている。

 顔も、涙となんやら(秘密)でびしゃびしゃだ。

 下も……………………。

 力なく、のそりとベットから起き上がる。

 

水弾(ウォーターボール)…。」

 

 コップにバシャバシャと、ほとんど溢れ出るくらいの水を入れていく。調整なんて、今は無理。

 コップの水をゴクゴクと飲み干す。

 

「んっんっん……ぷはぁーあぁ…………はぁ。」

 

 さっきのは、夢?

 最後の衝撃が強すぎて、助言の内容もあんま覚えていない。

 それに、

 

 ───助けてあげようか ■■

 

 助けてくれる人が、いい人とは限らない。

 少なくとも、この記憶の人は、変な前髪の人に騙されたみたいだ。

 

 あ。 

 そうだ。

 この記憶の人だ。

 この人は、無為転変を使っていた。

 この人とわたしの力は同じものなのか?

 

 …………ほぼほぼ同じっぽい。

 途切れ途切れかつ、ぼやけたこの人記憶を漁ってみても、やってることは魂の形状操作。

 加えて、わたしが知らない技も使っていた。

 あれは、なんだろう?

 

 ……思いだそうとしてみても、やっぱりダメだ。

 けれど、この記憶からわかったことをいくつかまとめてみよう。

 

 1、体に刻まれているなにかは、恐らく術式と呼ばれるもの。実際本当にそうなのかは知らないけど、仮称としていいと思う。

 

 2、記憶にある技の数々。改造人間の強化版?や、いきなり手ばっかりの世界に引きずり込む技などがあった。分裂とかあれどうやってるんだろう。普通に死ぬよね。

 できるところだけ参考にしよう。

 

 3、わたしの、魂の形。

 あの白い空間で見たツギハギとくすんだ水色髪が、わたしの本当の魂の形なんだろう。

 それは、記憶の人と同じ特徴を持っている。

 それがなんの意味を持つのかはわからない。

 だが、わたしは、トマ・グレイラットだ。

 

 …考えてるとお腹が空いたな。

 とりあえず、ご飯にしよう。

 いや、その前に水浴びしよ……。

 

 

 

 今日の朝ごはんは、干し肉(兵士がくれた)と魚(無為転変で長持ちさせた)のスープだ。

 まず、盗賊が持っていた鍋に水弾で水を入れる

 そこに塩、香辛料(盗賊及び兵士産)をいれ、一煮立ちさせる。

 煮立った鍋の中に、内臓を取ってぶつ切りにした魚を入れる。この魚はすでに無為転変で鱗がないので調理が簡単なのだ。

 火が通ったら完成!

 トマ特製魚スープと干し肉の朝ごはん!

 

 むふふ、では一口。

 スプーンで琥珀色に輝くスープをズズッと飲む。

 美味しい!そこそこ!

 魚の生臭さはあまり感じず、香辛料がごまかしてくれている。

 

 パクパクパクパク

 

 特に魚の切り身が美味しい。

 身がギュっと引き締まってる。

 まぁ無為転変で物理的に引き締めてたんだけどね

 

 ムシャムシャムシャ

 

 干し肉をスープにいれ、ふやかして食べる。

 そのままだとしょっぱいし固いしゴツいしでいいところがない。

 これもスープにすれば美味しいのだけど、今日は魚のスープが飲みたかったから仕方ない。

 

 そうして、最後の一口を飲み込んだ。

 

 

 

 

「どうしよっかなー……。」

 

 椅子(魔物)に座って考える。

 ご飯を食べ終えていざ出発!といきたい所なんだけど、ヒトガミ様の助言通りに戻ってなんかするのか、そのまま赤竜山脈沿いに進むのか。

 

 感情的には赤竜山脈沿いに進みたい。

 あの記憶と、揺らいでいたヒトガミ様の魂のせいで。

 あの神様は安心する雰囲気を纏っているけど、本当に信頼できるのか?

 それに加え、わたしが助言の内容をうろ覚えっていうのがマズい。

 しょうがないじゃん。

 あんな痛み初めて受けたんだから。

 ……ん?痛み?わたしが?

 …………今は考えなくていいか。

 

「はあーーー…………。」

 

 こんなときでも空は青くて広々としている。

 森のざわめきが耳を打つ。

 なんだか、無常観。

 

 んーーー……………………いっか。

 

 うん!決めた!このままいっちゃえ!

 助言の内容覚えてないし!

 ごめんなさい!ヒトガミ様!

 

「行くよ!竜!」

「グぎャ!」

 

 改造竜に跨がり飛んで行く。

 目指すは赤竜の下顎だ。

 

 

---

 

 

 改造人間を手に入れてから50日後、日が落ちた頃、わたしは無為転変の練習を行っていた。

 あと8歳になってた。

 今回試しているのは改造人間の……改造魔物の強化版だ。

 あれは多重魂で作っていた。

 普通に魂を融合させようとすると反発するので、それをどうにかしないと強化改造魔物は作れない。

 

 練習用に10匹魔物を捕まえてきた。

 もうこれ冒険者でしょ。

 平和を守れるし無為転変の練習もできるしWin-Winだね。

 

 魔物の魂を右目でよく見る。

 そしてすべての組み合わせの多重魂をして、反発しないものを探す。

 事前に色分けしているので試した組み合わせは分かりやすい。

 まずは1個目!

 赤と青。

 ()()に魔力を流して、

 

多重魂(たじゅうこん)

 

 それらは悲鳴を上げながら反発した。

 ダメか。

 なら今度は赤と緑で─────

 

 

 

「これもダメか。」

 

 最後の組み合わせ、ピンクと青。

 どうせダメだろうと思いつつ、やってみる。

 

「たじゅーこん」

 

 それらは悲鳴を上げず融合し、歪な1つの魂となった。

 

「え……成功した?」

 

 掌に収まる肉の塊を観察する。

 うん……1つになってる...。

 やった!

 成功した!

 むふふー!じゃ!さっそく実験を!

 

「無為転変、幾魂異性体(きこんいせいたい)!」

 

 パッと見四足獣に見えるそれは、顔に歯茎むき出しの人間の口のみが存在する異形である。

 2つの魂を燃やしつくし、魔力を全て身体強化へ当てさせた幾魂異性体は、上級剣士なみのスピードで木へ向かって走りだし容易に大木を噛み砕いた。

 

「おー!2つだけでこんなに!普通の改造魔物とは比べ物にならないじゃん!」

 

 バシッと喜びと称賛を込めて幾魂異性体を叩く。

 叩いたとこがへこんだ。

 あれ?

 よわ……。

 

「んーむ、防御は弱くなってるのか。それとスタミナもかな?使いどころを見極めないとね。」

 

 記憶の人も苦労してたんだなと思った。

 あの人親近感あるんだよね。

 

 

---

 

  

 改造人間10体を手に入れてから60日後、もうすぐわたしは赤竜の下顎へ到着する。

 赤竜の下顎はただ一本道が続く渓谷でそこを抜ければアスラ王国である。

 ちなみにヒトガミ様はあれから夢に出てこない。

 やっぱり怒らせちゃったかな?

 もうあの白い空間で勝手に無為転変しないって謝りたい。

 

 お、遠目に赤竜の下顎が見えた。

 うーん、このまま改造竜でその横を通っていいものか。

 もし赤竜に見つかったら集団で追い回されるかもしれないし、冒険者が誤解して攻撃してくる可能性もある。

 上空から人の交通量と魔物の様子を窺ってから決めるか。

 

「よし、ゆっくり目に飛べ。」

「グぐぅ」

 

 わたし達は慎重に赤竜の下顎へ近づいて行く。

 ん?

 1人、歩いてる人がいるなぁ。

 誤解させないために、一度話してみようかな。

 

「ゆっくり着陸して」

「ガァぁ」

 

 改造竜は高度を下げ、段々地面が近くなってくる。

 誤解させないよう笑顔で顔を上げる。

 あれ?さっきいた人は?

 

 辺りを見回すと、赤竜の下顎へ猛ダッシュしている人がいた。 

 あー逃げちゃってる。

 追いかけよう。

 

 

---

 

 

■■■■・■■■■■■視点

 

 

 

「うぇ!何ですかあれは!?」

 

 フィットア領ブエナ村へ向かうため、シーローン王国からはるばる旅をしている時のこと。

 赤竜の下顎へ着く頃、上空に4つの翼を持つ紫の竜が近づいてきました。

 明らかに強そう!

 あわわわわ!

 どうしましょう!

 刺激しない方がいいでしょうか!?

 

 杖を構え、すぐ魔術が使えるように。

 紫の竜は明らかに私を見ている。

 まずい……これは、まずいですよ……!!!

 

 しかし紫の竜は高度を落とし、そのまま着陸しようとしている。

 これは、少なくとも赤竜には見られない行動だ。

 

 (なぜ…?空中から攻撃すればいいものを。)

 

 でもこれはチャンス!

 私は体の向きを素早く反転させ、赤竜の下顎へ駆け込みました。




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