ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら   作:りんごりら

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第13話 安心

トマ視点

 

 

 

 改造竜から降りて体に魔力を流す。

 よぉし追い付くぞ!

 地を強く蹴り逃げていった人に追いかける。

 フッと息を吐くと白かった。ここら辺は寒い。

 標高が高いからかな?若干雪が積もってる。

 

 雪上に小さな足跡を残しながら、ぐんぐんと距離は縮め、その人の格好が見えてきた。

 大きい帽子に青い髪、小さめの身長にあの見覚えのある杖……え?

 

「ロキシー……先生?」

 

 彼女は一瞬で固まり、ギギキ…と聞こえてきそうなほどぎこちなく、驚いた顔でこちらを向いた。

 

「……トマ……さん?」

「ロキシー先生……ロキシーせんせぇー!!!!!」

 

 わたしは全力で飛び掛かる。

 

「ロキシーせんせぇ!せんせぇ!わたし!わたしね!知らないところでね!いきなり1人で!」

 

 涙で前が見えない。

 ああ、わたし、こんなに寂しかったんだ。

 

「トマさん……本当に、良かったです。無事でいてくれて。」

 

 ロキシー先生の腕がわたしの背中にまわる。

 あったかい…それに、ロキシー先生の匂いだ。

 血や金属、獣の臭いばっかだったから、すごく安心感がある。 

 そのまま2人で抱き締めあっていると、突然彼女が跳び跳ねた。

 

「あっ!忘れてました!トマさん!近くに紫色の竜がいるんです!早く逃げないと!」

 

 紫色の竜?あー改造竜のことか。

 涙に濡れた顔で、ロキシー先生を安心させるように話す。

 

「あれは、大丈夫。わたしの命令に従うように、脳を弄ってあるから。」

「え…?」

 

 ロキシー先生は理解できていなさそうな、呆然とした表情で固まった。

 どうしたんだろう?

 いや、そっか。

 ロキシー先生……というか、あの謎の光の近くにいたメンバー以外には無為転変のこと見せてないのか。

 この先も危険な道中になるかもしれないし、サプライズとかなしに詳しく説明しよう。

 

「ロキシー先生は魂と肉体、どっちが先だと思う?」

「え、急になんの話ですか?」

「竜の説明のためにも大事なことだよ。どっちだと思う?」

「肉体……ですか?」

「ぶー、正解は、魂……かも?」

 

 にいさまの魂なんか変なんだよなーでもにいさま以外は普通だし……やっぱりにいさまは特別なのかな?

 実際に見せて上げよう。

 ポケットに入ってる小さく固めた魔獣を取り出す。

 

「いくよ、無為転変(むいてんぺん)。」

 

 術式に魔力を流して、右目でよく見て、魂の形状を変形させる

 小さい干し肉のようだったそれは、ボコボコと膨らみ元の魔獣の形へと戻っていった。

 

「肉体の形は、魂に引っ張られるの。

 わたしは右目で魂を見て、術式に魔力を流して、掌で相手に触れることで魂を弄ることができる。」

 

 むふふと広角を上げてドヤ顔で披露する。

 ロキシー先生のかわいいお顔は一筋の汗が流れ落ち、ぐっと眉間が狭まっている。

 分かりづらかったかな?

 自分の体でもやってみるか。

 

「みてみてー」

「トマさん!?」

 

 右腕をうにょうにょ鞭みたいにしならせる。

 今度はそれを回転させながら鱗と爪をつくり、赤竜を彷彿とさせる右腕に変形させた。

 

「どう?」

 

 ロキシー先生は深く考え込むような険しい表情をしていた。

 そして、少しの間沈黙がこの場を支配していたが、彼女は口を開いた。

 

「トマさん、貴女は…神子ですね?」

「うん?神子ってなんですか?」

「…簡単に説明すると、神子というのは、特別な力を持った人のことです。」

「へー。」

 

 みこ………神子か。

 薄々気づいていたけれど、これは魔術じゃなさそうだ。

 しかし、特別な力かー。

 ……正直、ちょっとテンションあがる。

 むふふ、うれしいな。

 

「笑い事ではありません、神子は大抵名前を取り上げられて国のために働かされるそうです。」

「え?えー!!!嫌なんだけど!名前取られたくないよ!」

「私としても、トマさんがそうなるのは望みません。」

 

 神子最悪じゃん。

 なんかの罰ゲーム?

 絶対捕まりたくない!!!

 やだ!

 捕まったらその国の偉い人、全員改造人間にしちゃおう。

 

「ですから、この先その力はなるべく隠していきましょう。」

「えーでも……うー…………はい。」

 

 なんかの魔術って嘘つけばよくないかな?

 しかも、隠すってことは改造竜捨てないといけないじゃん。

 それは、嫌だな。

 むー……ん?この先?

 

「あれ?この先ってどこ行くの?わたしは自分の家に帰ろうと思ってるんだけど。」

「同じですよ。私も、ブエナ村へ向かっています。」

「そうなの?」

 

 ロキシー先生が一緒に来てくれるなら心強い。

 あと、それ以上に安心する。

 

「あっ!そうだ!そもそも何故トマさんがこんなところにいるんですか?」

「わかんない。にいさまの所、つまりロアの町から見えた謎の光に包まれたと思ったら、紛争地帯の上空にいきなり飛ばされたの。」

「そんなことが!?怪我はありませんか!?治しますよ!」

「怪我は大丈夫だよ。」

「それなら、いいんですが……。」

 

 にいさまやギレーヌは無事だろう。

 なんたってにいさまだし、ギレーヌは強いし。

 エリスさんは……どうだろう。

 無事だといいけど。

 というか、飛ばされたのはわたしたちだけなのか?

 もしかしたら、ロアの町ごとどこかへ飛ばされたって可能性がある。

 ……町ごとなんて、そんなこと、できるのか?

 わからない。

 けど、一番心配すべきは 

 

「ロキシー先生……ブエナ村は、家族と友達は、無事だよね?」

 

 ロキシー先生は眉を下げ、伏せがちな目でわたしを見つめる。

 

「きっと、無事ですよ。家族も、友達も、ブエナ村も。」

「…………そっか、そうだよね。ロキシー先生が言うんだもん。」

 

 ……………………………………本当に?

 

 

---

 

 

「やっぱり、ダメ?」

「ダーメーでーす!」

「なんかの魔術だってごまかせないのー?」

「誤魔化せませんよ!こんな竜を操る魔術なんて…………あ。」

 

 固まった。

 なにか思い付いたのかな?

 

「召喚魔術なら、誤魔化せる…かもしれません。」

「じゃあそうしよ!その召喚魔術ってやつで出した竜ってことにしよう!」

「でも、竜を呼び出すほどの召喚術なんて……問い詰められたらバレちゃいますよ。」

 

 む、痛い所を突いてくる。

 

「んーその時は……逃げよう!」

 

 よし!

 そうしよう!

 ジトーっとした目で見られている気がするが、気にしない!

 

「はぁ、分かりましたよ…しかし、赤竜の下顎では、その大きさの竜は通れませんよ。」

「ご心配なく!策があるので!」

 

 タタっと走って改造竜に右掌で触れる。

 ポケットに入るくらいには小さくしたい。

 死なせないように、長持ちさせるため時間をかけて魂を変形させる。

 ん?

 元の大きさが大きさなだけにこれ以上小さく出来ないな。したら死んじゃう。

 んー私が乗れるくらいの大きさになった。

 これはこれでちょうどいいか。

 

「これでいい?ロキシー先生?」

「まぁ、その大きさならいいでしょう。」

 

 先生のお墨付きだ。

 やったね竜ちゃん、寿命が延びるよ。

 

 

 

 

 

 わたしたちは赤竜の下顎、一本道が続く渓谷を並んで歩いている。

 主な荷物は改造竜に乗せているので、身に付けているのは大剣とブカブカの服、数体のストック、カチューシャだ。

 ロキシー先生は杖とバック。

 

「ロキシー先生はブエナ村を出ていってからどこへ行ってたんですか?」

 

 無言の時間が続くのも落ち着いて悪くないけど、この2ヶ月ずっと1人だったせいか、話したくてしかたない。

 

「シーローン王国という所です。そこで、王子の家庭教師をしていました。」

 

 ロキシー先生は目線を合わさず話してくれた。

 目はずっと道の先を見ている。

 警戒心が高いな。

 わたしはずっと改造魔物頼りの索敵だ。

 

「先生って人に教えるの上手だもんね。ぴったりなお仕事だ。」

「あまり、いい職場ではありませんでした……王子が私の胸ばかり触ってきて………それに、権力を振りかざすことを覚えてからは、真面目に授業も受けませんでしたし。」

「へー……。」

 

 遠い目をしている。

 思い返してみると、その人よりにいさまの方が酷いかも。パンツとか。

 いや、しかしあれは信仰であってそんな邪な思いは………………あるか。

 でもにいさまは真面目に魔術の授業受けてたから……。

 

「でも、良いこともありました。そこにあったある魔術を習得したことによって、水王級魔術師になったんです!」

「水王級!?それって上から3番目の魔術じゃん!ロキシー先生すごい!」

「それほどでもありませんよ、ふふ」

 

 本当にすごい。

 まだわたしは中級までしか使えないのさに。

 水王級なんていったら、世界でも片手で数えられるくらいしかいなさそうだ。

 

「トマさんはどうなんですか?」

「どうって、んー大したことしてないよ。魔術の特訓して、礼儀作法の勉強をして、剣を振って、鼠を弄ってた。」

「8歳でそれは素晴らしいですよ。魔術も剣も……え?鼠?」

「うん。無為転変の練習。」

「その力は何時から使えてたんですか…。」

「3歳くらい?家族には内緒にしてて、にいさまが家庭教師から帰ってきたら御披露目しようと思ってた。」

 

 けれど、こんな所へ飛ばされてしまった。

 

「また、家族に会えた時に、それを伝えればいいですよ。」

「……そうだよね。」

 

 ロキシー先生の言う通りだ。

 会えたときに話せばいい。

 会えたときに……。

 

「そういえば、その竜はどうやって捕まえたんですか?無為転変を使うにしても、触れる必要がありますよね?」

 

 あ、そっか。

 無為転変についてざっくりと説明しても、応用した技について何も話してないな。

 剣術や魔術の腕前が上達し始めたのも、ロキシー先生がいなくなってからだし。

 

「竜は多重魂からの撥体で倒したよ。一匹でフラフラ飛んでたはぐれ竜だったから、それでなんとかなった。」

多重魂(たじゅうこん)撥体(ばったい)?それも神子の力ですか?」

「そう、多重魂は複数の魂を無理やり融合させる技、撥体は多重魂で発生した拒絶反応を利用して相手に向け解き放つ技。」

 

 撥体は正直オーバーキルな技だ。

 溜めすぎると自傷するほどの威力になるけど、こんなの人に向けたら塵も残らない。

 

「使いこなしてるんですね。」

「練習した。人と魔物で。」

 

 ロキシー先生の足が止まった。

 動揺しながらわたしを見た。

 

「えっと、人を、弄ったんですか?」

「襲われたし、殴られたから。」

「襲われた!?怪我は…無いって言ってましたね。」

「ん、無為転変で治した。自分の魂の形を強く保つことで、術式発動中ならだいたい死なない。全身を一気に消し飛ばされたり、頭を一瞬で潰されたりしない限りね。」

 

 わたしにそこまでのダメージを負わせられる人いるのかな?

 

「術式発動中なら……その言い様なら、術式は常に発動できる訳では無い、ということですか?」

「や、ずっと使える。自分には。

 無為転変を人や魔物に使いすぎると、頭が焼ききれそうになるんだけど、わたしの身体を変形、つまり治すだけなら、魔力消費が自己補完の範疇だから。」

 

 常時上の方の治癒魔術を使われているようなものだ。

 紛争地帯で騙され、殴られて以降ずっと使いっぱなし。

  

「なるほど、そうやって紛争地帯を生き延びてきたんですね。」

 

 めちゃくちゃ頑張ったのだ。

 しみじみと紛争地帯の出来事を思い出していると、ロキシー先生がまた抱き締めくれた。

 

「本当に、頑張りましたね。」

 

 頭をよしよしと撫でてくれる。

 とおさまのワシャワシャとは違う。

 かあさまの撫でかたに似ている。

 わたしを、愛してくれてる撫で方だ。

 

「ロキシー先生……ロキシー、さま。いや、神様……?」

 

 信仰心が沸いてくる。

 こんな気持ち、シル姉以来だ。

 

「様づけも神様も止めてください。何時も通りロキシー先生と読んでください。」

 

 ロキシー先生は困ったように、ふふっと笑いながら、そう答えた。

 

 

---

 

 

 夜になったので、焚き火を囲んで休む。

 パチパチと音を立てて弾ける薪を眺めながら、ロキシー先生にもたれ掛かる。

 

「寝ないの?」

「警戒しながら体を休めています。町に入ったら宿でぐっすり寝られますが、こういった所では……。」

 

 それじゃ体力回復しないよ。

 心配だ。

 

「わたしが見張りを作るから一緒に寝よ?」

「見張り、ですか。」

「うん」

 

 ポケットから改造魔獣を取り出す。

 

「無為転変」

 

 何時も通りスタミナと声量に特化した形に変える。

 今回は見た目に力を入れよう。

 改造魔物が怖がられちゃったらロキシー先生にも悪い評判がついてしまう。

 ベースは四足獣、色はこの環境に紛れやすいよう灰色と白を細かく混ぜる。

 マズルを長くし、牙と爪を獣の範囲内の長さに。

 最終的に、狼のような見た目へと変わった。

 もう1個作ろ。

 

「この2体が見張りするから、休も?ちゃんと休まないとこの先辛いよ。」

「ですが、私には貴女を無事にブエナ村へ送り届ける責任が……」

「大丈夫だって。わたしは死なない。むしろ、ロキシー先生の方が危ないよ。」

 

 本当にそうなのだ。

 無為転変で大抵死なないわたしと違ってロキシー先生は普通の体の人だ。

 紛争地帯で初めに会った人くらいの盗賊が不意打ちしてきたら、やられてしまうかもしれない。

 もちろん、そんなことにならないように、見張りや護衛をつけるつもりだが、集中力を切らさないよう、しっかりと寝てほしい。

 

「確かに…そうですね。」

 

 苦笑して、観念したようにロキシー先生は言った。

 

「!うん!だから一緒に寝よ!」

「分かりました。ではここの平らなところで……」

「無為転変」

 

 改造魔獣でベット作った。

 

「これで一緒に寝よ!」

 

 あれ? 

 ロキシー先生が困ってる。

 なんで?

 

「トマさん……こんなところでベットに寝てる人がいたらどう思いますか?」

 

……………………あ。

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