ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら   作:りんごりら

16 / 16
第15話 依頼・ミルボッツ領

トマ視点

 

 

 

 ウィシル領を馬車で進む。

 車輪が踏む地面は、既に石畳から草原へと転じている。

 それでもガタガタと揺れて乗り心地が悪い。

 竜ならこんなことにはならなかったのにな。

 わたしは無為転変でお尻が痛くなることはないが、ロキシー先生が心配だ。 

 わたしが椅子になったほうがいいだろう。

 四つん這いになり、背中に布を被せる。

 

「ロキシー先生、わたしに座って。」

「何を言ってるんですか?」

 

 口は半開きになり、眉間が縮まっている。

 要は、引かれている。

 いや心配されているのだ。

 わたしの膂力を舐めないで貰いたい。

 今こそ、剣神流及び北神流上級の力を見せる時だ。

 さぁ!

 遠慮無く乗ってください!

 

「そんな目で見られても困ります……普通に座ってください。」

 

 断られてしまった。

 お尻は平気なのだろうか。 

 もしや定期的に治癒魔術をかけているんじゃなかろうか。

 それなら断るのも納得だ。

 いそいそと元の位置へ戻る。

 

「おほん、もうすぐウィシル領から離れ、ミルボッツ領へ向かいます。」

「おおー、ミルボッツ領を越えたら次はどこなの?」

「それこそフィットア領です。もうすぐですよ、トマさん。」

 

 わたしを安心させるように、柔らかな口調で話す。

 いつの間にか近くまで来ていたらしい。

 1人で家へ向かうよりもずっと、導いてくれる人がいた方が、迅速かつ安全になってそうだ。

 

「さて、今日も日が暮れたら魔術の授業ですよ!今のうちに休んどいてくださいね。」

 

 そうなのだ。

 この旅に慣れて余裕ができてから、ロキシー先生は魔術について教えてくれるようになったのだ。

 実技は少なめだけど、知らない魔術を教えてくれるのはありがたい。

 わたしの実力は、飛ばされてたから全く変化せず、初級マスターの中級が風と水だけ行ける感じ。

 無詠唱で。

 詠唱すれば火と土も出来なくはない。

 治癒も解毒も前と変わらず。

 ここ最近成長したのは無為転変だけ。

 ほのぼのとした日々は心を癒してくれるけど、実力は上がらないなぁ。

 それでもいいか。

 敵が来ない限りは。

 

 

 

 

 

 

 

 夜。

 ウィシル領とミルボッツ領の間の地域で野営中。

 馬車から降りて、草原に魔術で簡易的なテントを作り、疲れを癒している。

 毎日ロキシー先生にくっついて寝てるけど、その度にかあさまを思い出す。

 ……いや、家じゃもう1人で寝てましたけど?もう8歳なので。

 けどこの旅の間だけでも添い寝したい。

 1人ぼっちは、好きじゃないのだ。 

 そう目を閉じたとき、見張りの声が聞こえた。

 

「ワおオーーーーーん。」

「っ!敵?」

「ん?何の音ですか……?」

 

 飛び起きて大剣を取る。

 ロキシー先生も、もぞもぞと出てきて杖を掴んだ。

 見張りは4匹に増やしていて、東西南北全てに配置しているため、外敵は必ず見逃さない。

 今回は、北か。

 

 盗賊か魔物のどっちかかな。

 上から見るか。

 

「改造竜!」

「ギゃグァ」

 

 少し竜を大きくしてから跨がって、空中へ飛び立ち敵を探す。

 視点は高い方が遠くまでよく見える。

 

 どこだ?

 どこにいる?

 弱い火弾を作り上から降らせる。

 風の抵抗で地面に着く前に消えるだろう。

 

 多少明るくなったため、北の方角になにかがいることがわかった。

 目を凝らすと、白いヒトガタがこちらへ向かってきている。

 あれは、スケルトンだ。

 

「ロキシー先生ー!スケルトンだった!全部で8体くらい!」

「分かりましたー!神撃魔術で倒します!」

 

 スケルトンは不死身の魔物で、燃やしても燃えたまま動きまわり、燃え尽きても灰から復活する。

 そのため神撃魔術で倒す必要があるのだ。

 

 さて、ロキシー先生に近づける前に行動不能にさせよう。腕と足を折っておけば脅威にならない。

 

 術式と体に魔力を流し、背中に身長の2倍はある長さの腕を作る。

 そして腕に隅々まで黒い鱗を生やし、翼膜を広げる。

 

「いくか。」

 

 改造竜からタッと飛び降りる。

 下から吹き抜ける風が髪を激しく揺らすが、恐怖はない。

 ぐんぐん逆風が増していく、しかし、今回のわたしはここからが違う。

 背中の両腕から衝撃波(エアバースト)を出し、身体強化した体で耐えられる速度ギリギリまで減速、ポケットから取り出した改造魔獣を、トゲ付き巨大棍棒へと変え振り下ろす。

 これならスケルトンのなかに流が使えるやつがいても問題ない。

 ぶっ壊れろ。

 

 ドガン!と大地を揺るがした一撃は、スケルトンを1体残らず粉砕し、残るは骨の欠片だけだった。

 ふう。

 これでよし!

 

 魔術は最終的に腕から発動する。

 これはわたしの術式と魔術の研究の成果だ。

 そして無為転変で腕を増やせば、魔術の発射口を好きなだけ増加させられる。

 その事を知ってから思いついた戦術だが、うまくいってよかった。

 ロキシー先生に怪我を負わせるような事態には、絶対にさせない。

 

 後方へ振り返ると、ロキシー先生が走ってきていた。

 そっか、ここで全部潰したからこっちに来るハメになっちゃったのか。

 怪我をさせないためとはいえ、なんか申し訳ない。

 

「トーマーさーん!夜とはいえ、目立ちすぎです!普通に戦ってください!」

「えーと、ごめんなさい。ちょっと試したいことがあって。」

「もう!その力はちゃんと隠してください!」

 

 叱られてしまった。

 確かにやり過ぎかもしれない。

 こんな夜中な爆音を出してしまったし、スケルトンがいた草むらは円形にへこんでいる。

 けれど、ロキシー先生が傷付くくらいなら、これくらいいいと思う。

 

 

「全く……しかし、随分自在に力を操れるんですね。」

 

 興味深そうに翼を見つめられる。

 右へ揺らせば視線が右へ、左へ揺らせば釣られて左へ。

 触りたいのだろうか?

 ユサユサ翼をバタつかせてアピールする。

 

「竜から飛び降りたときは肝を冷やしましたよ。この翼で減速したんですか?」

「語弊じゃないけどちょっと言葉が足りないかな。この翼で魔術を出したの。魔術は最終的に腕から発動する、なら増やせば便利だなと思って。」

「…柔軟な能力と発想ですね、加えて、無詠唱だからこそ出来ることです。」

 

 確かに?

 いちいち詠唱してたら腕を増やした意味がない。

 いや、口も増やせばいいか。

 

「身体能力も高い…そういえば聞いていませんでしたね、トマさんの剣術の階級は何ですか?」

「剣神流と北神流の上級だよ。」

「ええ!上級!?ルディの家系は天才ばかりなのでしょうか……。」

「剣術だけなら、にいさまやシル姉にも負けてないから!」

 

 むふふ、褒められるのは気持ちがいい。

 気分をよくしていると、カラコロと骨の音がする。

 スケルトンが再生しているのだ。

 

「あ、いけません。母なる大地に恵みを与えし我らが神よ。理に背きし愚かなる者に、神罰を与えよ。『エクソシストレート』」

 

 杖の先から輝く光によってスケルトンが消滅していく。

 神撃魔術初めて見た。

 

「テントへ戻りましょう。明日も朝早いので。」

「うん。」

 

 しっかし紛争地帯と比べると、ここらの魔物はレベルが低い。

 や、わたしが強いのかも!むふふ。

 

 

---

 

 

 ミルボッツ領、その中でも大きめの町に着いた。

 ここはワインが有名らしいが、わたしはワインを飲んだことがない!

 ウィシル領は王竜王国やミリス神聖国からきた商人達が多くて、色んな商品を見て楽しめたんだけどね。

 

「露店でちょっと買い物をしましょうか。」

「ほんと!?じゃああのお肉食べたい!」

「いいですよ、すいませーん!串2本、いや4本ください。」

 

 2本の串焼きを手渡される。

 いい匂いだ、それに大きい。

 両手にそれを持ちながら、商業エリアをゆっくりと歩く。

 右へ左へ視線を巡らせ、立ち並ぶ露店の多彩さを楽しむ。人通りも多いためぶつからないようにしながら。

 右手の串を口へ運ぶ。

 あむ、美味しい!

 

 ここに来るまで4ヶ月くらい?

 馬車と徒歩でそれだけかかり、道中で特筆すべきことは起こらなかった。

 ロキシー先生が安全な道を選んでいるからだろう。

 夜の授業では神撃魔術と結界魔術を教えて貰った。

 そう、この結界魔術、初級ではあるが、もう無詠唱で使えるようになったのだ。

 これをうまく使えばツギハギの記憶の人が使っていた技を再現できるんじゃないか?

 そう思い、彼女が寝静まった夜、1人で試してみた。

 結論から言うと、ダメだった。

 結界で自分の半径3メートルを覆ったのはいいとして、そこから術式をどう使えばいいかイメージ出来ない。

 素直に自分の体に使っても、改造魔獣を変形させても結界は変わらない。

 そもそも魔力を使った攻撃しか防げない初級結界魔術では不可能なのだろうか。

 初級じゃないと魔方陣とかいるんだけどな。

 

 無為転変が成長したきっかけを思い出す。

 そう、あの白い空間だ。

 そこで私は精神体、魂だけになった。

 もう一度あの白い空間に行けば、もっと術式が馴染んで出来るようになるかもしれない。

 今のままではきっかけがない。

 とにかくイメージが出来ないのだ。

 だから、手詰まりだ。

 

「では、今日はここに泊まります。」

 

 串焼きを頬張ってるロキシー先生が言った。

 宿に着いたのだ。

 木造の2階建てで、入り口には羊の宿と書いてある。ベッドに期待出来そうな名前。

 自分の串焼きも食べ終わった。

 

「まだ朝だけど、夜まで何するの?」

「ギルドの依頼を受けましょう!トマさんはEランクになったので、最大Dランクまで受けられます。実力的にはBかAでもおかしくないくらいですから、安心してください。」

「わかった、ロキシー先生は?」

「私はいつも通り後ろで見守ってます。危なくなったら援護します。まあその必要も無さそうですけどね。」

 

 Dランクの依頼か、ターミネートボアくらいかな?

 

 

 

 

  

 宿から出て冒険者ギルドへ向かう。

 ギルドに入って依頼を確認する。

 

 ドブさらい、ターミネートボア、アサルトドッグ……代わり映えしない依頼メンバーだ。

 つまらない。

 

「森に出たターミネートボアでいい?」

「そうですね、Dランクですし、大丈夫でしょう。でとちょっと依頼の場所がここから離れてますね。どうしますか?」

「んー、わたしがロキシー先生を背負えばすぐに着くよ!」

「やめてください、大人が8歳におんぶして貰うって……。」

 

 結局馬車で向かうことに。

 おんぶしたかったな。

 馬車の料金で依頼料がほとんど消えちゃった。

 けれどお陰で昼には着いた。 

 依頼の小さな村は、のどかさと近くに存在する森によって、ブエナ村を彷彿とさせる。

 さて、このような村からの依頼にはいくつか注意点がある。

 その中でも一番大切なのは、先に村の人々と依頼主である村長へ挨拶に行くことだ。

 さっそく農作業をしている青年に笑顔で話しかける。

 

「こんにちは!依頼を受けた冒険者です!村長の家はどこでしょうか!」

「……君らみたいな小さな子達が?」

 

 またロキシー先生子供扱いされてる。

 

「む!私はもう大人です!この子も冒険者としての実力はちゃんとあります!」

「嘘言ってないよな?……村長の家は東にあるでかい家だ。見ればわかる。」

「わかりました!ありがとうございました!」

 

 お礼を言って村長宅へ歩く。

 青年が言っていた通り、他と比べるとでかい家だったのでわかりやすかった。

 コンコンコンと扉をノックし返事を待つ。

 

「依頼で来ましたー!冒険者のトマでーす!」

 

 扉がギィ、と音を立てながら開かれた。

 中から出てきたのは白髪混じりの初老の男だ。

 

「貴方が……?」

「はい!これが冒険者プレートです!」

「……本当のようだ。しかし、グレイラット?……まぁいい、そちらの青髪の方は?」

「私はこの子の先生であり、保護者のようなものです。実力はありますよ。ほら。」

「Aランク!?これは失礼を。」

「気にしないでください。依頼が完了したらまた来ます。」

 

 挨拶完了!

 早速森へ出発する。

 森の入り口にはブエナ村と同じ櫓が立てられ、魔物の侵入を拒んでいる。

 ん?金髪の碧眼の少女もいる。

 弓を持っているので、狩人だろうか。

 メグを思い出すね。

 

「っ!ちょっとあんた達!ここは魔物の出る森よ!入らないで!」

「冒険者です!依頼で来ました!」

「冒険者……?私より小さいのに?」

 

 何回目だこのくだり。

 ロキシー先生がうんざりする気持ちがわかってきた。

 

「大丈夫です、わたし強いので!」

「ふーん、ま、死ぬくらいなら走って逃げてきなさい。私とお父さんが魔物を仕留めてあげるから。」

「それはありがたいです!ちなみにお名前は?」

「サラよ、あんたは?」

「トマです!」

 

 優しい子だ。

 これがにいさまの言ってたツンデレというものだろうか。……あれ?なんかツギハギの人の記憶にもあるな。どういうことだろう?

 

 

 

 森へ入る。

 ズカズカと深い足跡を残して進み、木々の隙間

にまで注意を払って警戒する。

 木はブエナ村のそれよりも濃い緑をしている。

 木の種類が違うのだろうか?

 それとも日当たりの関係かな?

 どちらにせよ、依頼に関係ないか。

 紛争地帯の鬱蒼とした森じゃなくてよかった。

 

 奥まで進んでいくと、魔術の詠唱を唱える声と、剣を固い何かにぶつけたような、けたたましい金切音。

 考えられるのは、村の人か冒険者。大穴で騎士団かな。

 どうしよう、行くか行かないか、聞けばいっか。

 

「行く?」

「行きましょう。無事ならスルーで。」

 

 行くらしい。

 段々音の発生源へ近づくにつれて、草木は生い茂り視界が悪くなってきた。

 しかし例の音は止んで、代わりに、心底安心したときに出る、脱力した低めの男女の声がした。

 倒したっぽい。

 けどここまで来たし、挨拶くらいするか。

 

「大丈夫ですか?」

「わ!?ビックリした。子供かい?」

「冒険者です。」

 

 浅黒い肌にドレッドの髪をひっつめにした女戦士と、長身の赤茶色のローブを着た魔術師が座り込んでいた。

 そばには絶命したターミネートボアと6匹のアサルトドッグ、ランクによっては苦戦するのも納得の戦力だ。

 

「悪いことは言わないから帰んな、多分、この森には魔物が増えすぎちまってる。あんた、Eランクだろ?」

「えっはい、よくわかりましたね。」

「ふん、この森にいるってことはDランクのあの依頼を受けたってことだろう?簡単なことさ。」

 

 ドレッド髪の女戦士は危険を忠告してくれてるが、わたしにとってはボーナスステージだ。

 

「忠告ありがとうございます!お礼に治癒魔術かけますね!」

「は?いや、お人好しすぎるだろう。そんなんじゃ冒険者としてやっていけないよ。」

「それでも、いい人にはいい事をしたいんです。ほら、治りましたよ。」

 

 次は長身の男だ。手を翳して中級治癒魔術(エクスヒーリング)を使う。

 うっ、後ろからロキシー先生の視線を感じる。

 これは、いい子だと思われている視線か?それともこの甘ちゃんが!って視線か!?

 

「無詠唱とは……!見るのは私の学校の先生以来だ、しかもこの年で…!」

 

 お、褒められちゃってる?

 むふふ、いい人を治すと気分が良くなる。

 なぜなら褒めてくれたりお礼の品をくれたりするからだ。

 

「はぁー全く、助かったよ。あたしはスザンヌ、こっちはティモシーだ。また会ったら一杯奢るよ。」

「ありがとうございます。わたしはトマでこっちはロキシー先生です!」

「どうも、ロキシー・ミグルディアです。」

 

 ずっと黙ってた先生がついに喋った。

 怒ってないかな?

 大丈夫かな?

 チラリと横目で表情を探る。

 いつもの笑顔だ、セーフ。

 スザンヌ達は少し休んでから討伐の証を取って、死体処理をするようだ。

 

「じゃ、行こっか。」

「そうですね、早いとこ見つけたいところですが。」

「そうだね……ん?」

 

 何かが近づいてくる。

 音的に大勢いることだけがわかる。

 ボーナスステージが向こうからやってきたのだ!

 

「なっまずい!ティモシー!それにトマとロキシー!逃げるよ!」

「その必要はないですよ。『土壁(アースウォール)』」

 

 高さ5メートルで厚さ1メートルくらの土壁を広げる。

 その上に乗って大剣を抜刀し、遠くから近づいてくる土煙を睥睨する。

 ふむ、落とし穴でも作ろうか。

 

「この規模なら私も手伝います。援護は任せてください!」

 

 なら何も考えず突っ込んじゃおう!

 その前に真空波、木を斬り倒し視界を広げる。

 そこに見えたのは8匹のターミネートボア、たくさんのアサルトドッグ、それと知らない魔物が多数。

 さすがに魔術で削った方がいいか。

 真空波(ソニックブーム)連打だ!

 

真空波(ソニックブーム)真空波(ソニックブーム)真空波(ソニックブーム)!』

「静かなる氷人の拳『アイシクルブレイク』!」

 

 命を刈り取る死の旋風と、氷の槍の暴力が、魔物達へ発射される。

 先頭の魔物達の首は宙を飛び、腹を貫かれ、血を撒き散らしながら地に伏した。

 されど、奴らは止まらない。

 死した魔物を踏みつけわたし達の命を狙っているのだ。

 魔物の攻撃が届くギリギリまで魔術で数を減らし、あと25匹と言ったところ。

 

「『真空波(ソニックブーム)』、ロキシー先生!」

「最後の一押しです!後は頼みます!

 霜の王。大いなる雪原の覇王。純白を纏い、一切の熱を刈り取る零の王。死を司りし冷たき王が凍てつかせん!

『氷槍吹雪(ブリザードストーム)』!」

 

「グギヤアアアアアア!!!」

「ギァアアアオ!!」

 

 全方位へ氷の槍に撃ち出され、魔物達は為す術なく貫かれた。

 あと10。

 ロキシー先生は土壁から降りて2人と一緒に土砦(アースフォートレス)で身を守る。

 ここからはわたし一人だ。

 つまり、誰も見ていない。

 

 突っ込んでくる魔物向かって走り出す。

 右へ行くと見せかけ左へ飛ぶ!

 フェイントに釣られた奴らは無視、それ以外の数匹を斬る!

 

「無音の太刀!」

「ギャウン!」

 

 音すら残さない一撃で3匹の腹をかっ捌く。

 その速度を活かし一匹に顔面タッチ!

 

「ハハッモロじゃん!!」

「ギャあーボぉ!?」

 

 ブクブクと膨らんだ顔面がボン!と破裂し脳漿が飛び散る。

 そのまま3人とは逆方向に魔物達と距離を取ることができたので魔術を使う。

 

真空波(ソニックブーム)真空波(ソニックブーム)!』

「ギャン!」

 

 鋭い風の一閃を正面に乱れ撃つ!

 この程度の魔物ならタメは要らない。連打だ!

 残ったのはターミネートボア1体だけ。

 

「フッ!」

 

 跳びはねてターミネートボアの頭に乗っかる。

 そして掌を頭に押し付け、

 

無為転変(むいてんぺん)

 

 まるで自身の腹部に吸い込まれていくように、骨格も内臓も無視して小さく丸まっていく。

 無論、急速にそんなことをすれば生物は死ぬ。

 巨大な肉団子と化した元生物は、尊厳すら弄び倒され、命を落とした。

 

 スッキリした。

 ブエナ村が無事かどうか、ずっと悩んでストレスが溜まってた。

 ロキシー先生に甘えてストレスを解消するのも限度があるからね。

 甘えてすぎてもいけないし。

 さて、3人に声をかけに行こう。

 

 

 

「いやー本当に驚いたよ、あんた達こんなに強かったんだな!」

「お陰で命が助かりました、ありがとうございます。」

 

 2人はしきりにお礼を言って、感謝の気持ちを示している。

 褒められすぎると照れちゃうな。

 

「んふふ、よし!魔物の討伐の証をとって、燃やしてさっさと帰りましょう!」

 

 

---

 

 

「これがターミネートボアの討伐の証です。」

 

 村長へ確かに証を見せた。

 大量に。

 

「これは…森にそんな大量の魔物がいたのですか!?」

「結構多かったです。それも狩りました。」

「おお!これはこれは!この村を代表して、貴方達へ心より感謝を申し上げます!」

 

 椅子から飛び上がった村長は、白髪混じりの頭をふるふると細かく振るわせ、下げた。

 その後、色を付けた報酬を貰った。

 スザンヌはこれじゃまだ足りないよ、と詰めていたが、ティモシーはそれを嗜めていた。

 ロキシー先生は終始笑顔で、機嫌がよさそうだった。

 帰りの馬車に入ると頃、サラが走って来た。

 夕焼けに汗が照らされている。

 

「あの!あんた達が魔物を倒してくれたんだよね!」

「そうです。大部分はこちらにいらっしゃるロキシー先生が倒したんですよ!」

 

 彼女頬を赤く染めている……と思ったが、はいはいって感じの呆れた穏やかな雰囲気だ。

 

「そのっ!ありがとう!あんた達が来なかったら、櫓で止めきれずに、村に被害が出ていたと思う。だから、ありがとうございました!」

 

 そう言ってサラは勢いよく頭を下げた。

 なんだか今日は感謝ばっかりされる日だ。

 むずむずする。

 

「トマさん、こんな時何と言うべきでしたか?」

 

 ロキシー先生に両手肩をポンと掴まれ、やるべき事を示された。

 そうか、感謝されたらやること。

 家族にも教えて貰ったこと。

 それは、 

 

「どういたしまして!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

幼女転生 ~二度目の異世界でも本気出す~(作者:Eureka_HAMELN)(原作:無職転生)

 ▼ 早逝ではあるが前世と比べれば穏やかな最期であった、そう思った矢先に二度目の転生である。▼ どうせあの存在Xのクソッタレが何かしたとかそんなところであろう。▼ まぁ、こうなってしまった以上致し方無い。▼ ただ前へ▼ さらに前へ▼ 全ては私の幸せな老後のために。▼ “我が三度目の人生に黄金の時代を”▼ ▼ 幼女戦記と無職転生のクロスオーバー作品です。▼ 幼…


総合評価:2991/評価:8.69/連載:3話/更新日時:2026年07月10日(金) 23:24 小説情報

天剣へと至る愚者(作者:一般通過害悪)(原作:無職転生)

ルーデウス・グレイラットの双子の弟は転生者である。▼後世には『天剣』として伝えられることになる。▼これは、彼が生前に書いた日記を辿っていく物語。▼※アンチ・ヘイトとクロスオーバーは念の為。


総合評価:3284/評価:8.26/連載:10話/更新日時:2026年08月22日(土) 15:30 小説情報

玉葱騎士、六面世界に立つ(作者:プラザ合意)(原作:無職転生)

▼何もかも忘れ、志半ばで倒れた騎士。▼彼は何の因果か、異世界で再び剣を取る。▼たとえ記憶を失っても、たとえ壊れてしまっても。▼それでも彼は、誰かを守ろうとした。▼※ダークソウルと無職転生のクロスオーバーがないので自分で書きました。玉葱と言っているものの、主人公はジークマイヤーさんでもジークバルトさんでもジークリンデさんでもないです、すみません。


総合評価:3610/評価:8.78/連載:44話/更新日時:2026年08月24日(月) 20:01 小説情報

ようこそTS美少女闘技者の教室へ(作者:ぷぷぷ)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

前世は男、今世は極上の美貌を持つ美少女。チヤホヤされるイージーモードな人生を夢見ていたはずが、気づけば日本の経済界を裏から支配する代理戦争『拳願仕合』に身を投じていた――。▼高円寺コンツェルンの代表闘技者として『拳願絶命トーナメント』を戦い抜いた主人公は、次なる任務として、あの高円寺六助の護衛を命じられる。▼


総合評価:3058/評価:8.19/連載:10話/更新日時:2026年08月19日(水) 20:00 小説情報

アストレア家の長女(作者:slo-pe)(原作:Re:ゼロから始める異世界生活)

▼ラインハルトに二つ上のお姉ちゃんがいたら。▼平和なアストレア家になってほしいなぁと。▼pixiv▼https://www.pixiv.net/novel/series/15971207▼


総合評価:2773/評価:8.65/連載:30話/更新日時:2026年08月22日(土) 16:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>