ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら 作:りんごりら
トマ視点
ロキシー先生から離れてしばらくたった
具体的には転移事件からそろそろ1年だ。
ノルンはもうすぐ5歳になる。
そう!
5歳になるということは!
お祝いの誕生日プレゼントを送らねばならないのだ!
とはいえ、まだ十数日は余裕がある。
それとなくノルンに欲しい物を聞かなければ。
とおさまと合流してから、わたしがやったことはノルンのお世話と怪我人の治療、その他魔術で出来る諸々だ。
また、ノルンには初歩的な魔術や礼儀作法を教えている。
初級魔術でも使えるのと使えないのでは天と地の差があるのだ。
とおさまは最近難民捜索について詳しく教えてくれない。
最近は顔も少しやつれてきて、お酒を飲む量が増えてきた。
それでも帰ってきた時は、変わらず笑顔を見せてくれる。
家族の情報は未だ来ず、シル姉や友達の情報も一切ない。
わたしは半ば、その事を考えないように過ごしている。
大丈夫、きっととおさまが見つけてくれる。
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二階建ての建物へ入る。
そこは捜索団の本部で、わたしはここで1日の大半を過ごす。
とおさまを会議室まで見送ると、わたしとノルンはいつもの部屋へ向かった。
その部屋には積み木や縄、ぬいぐるみなど遊べるものが揃っていて、難民の大人達はここに子供をよく預ける。
つまり、託児所である。
部屋に入るとノルンと同じくらいの年の子がちらほら見受けられる。
4、5歳くらいの子達だ。
そしてその中に立つわたし。
1人だけ8歳って、なんだか場違いな感覚。もう慣れたけど。
「あー!トマだ!」
「ノルンちゃん!」
積み木で遊んでいた女の子と、縄を振り回していた男の子がこちらを見るなりトテトテと近づいてきた。
女の子の方はメイプルで男の子の方がゲイルだ。
「おはよーメイプル!」
「おはよう、えっとね、今日はね、みんなでおままごとしたいの。」
「そっか、じゃあみんな誘ってやろう。」
わたしはノルンにカッコよく縄を振って強さをアピールするゲイルを呼ぶ。
こいつノルンにベタ惚れなんだよね。
ノルンと結婚したいならまずわたしに勝てるくらい強くなってから言って欲しい。
ゲイルよわよわ過ぎる。
そもそもノルンはゲイルのこと友達としか思ってないけど。
「ゲイル、おままごとしよ?」
「えーそれつまんないからやだ。」
こちらを一瞥もせずに返事をする。
はぁ。
わかってないなぁ君は。
わたしはアピールチャンスを授けようとしているのに。
そろっと近づきゲイルの耳元にこそこそ話をする。
(あのね、このおままごとにはノルンも呼ぶつもりなんだよ?その意味がわかってるの?)
(はぁ?それがなんだよ意味わかんねーよ。)
(ノルンと夫婦になれるかもしれないってこと。)
瞬間、ゲイルはババッと顔を振ってわたしを驚愕の表情で見た。
ほんのり顔が赤くなっている。
よし、あとはノルンだ。
「ノルン、おままごとしない?」
「んぅ?いいよ。」
積み木を手に持ったノルンが同意してくれたので、ここからはドキドキ!?役決めディスカッションだ。
メイプルが意気揚々と話す。
「じゃあねぇノルン正妻で、あたしはメイド!」
ふーん、ゲイルに希望が見えてきた。
「トマは旦那さんで……ゲイルは息子!」
あ、
ノルンと結婚してしまった。
すまないゲイル、君の意中の人はわたしの妻になってしまったよ。
まぁ仕方のないことだ。
おままごとを始めよう。
縄によって作られた家のエリアに入り、妻にただいまを言う。
「ノルーーン、旦那が帰ってきたぞー」
「あっ!お帰りなさい!旦那さま!」
ノルンは花が咲くような笑顔でわたしの手を握りおかえりを喜んでくれる。
「おかえりなさいませ旦那さま、お食事のごよういができております。」
メイプルも膝立ちで前に手を組んで、ノルンの一歩後ろからひかえめに言った。
なんかみんな演技力高い。
「苦しゅうないぞメイプル、息子はどこだ。」
「ここだ!くそ親父ぃ!」
ノルンの横でずっと黙ってたゲイルが勢いよく登場だ。
「むっ親に向かってなんだその言い方は!」
「うるさい!」
「むぅ、これは躾をしないといけないな。お前達、息子を抑えてなさい。」
立ち上がって手をワキワキさせながらゲイルに近づく。
ゲイルは咄嗟に逃げようとしたが、ノルンに右腕、メイプルに左腕をがっしりと掴まれ動けない。
「ひっ来るなぁー!やだ!!!
むふふ、無駄な足掻きだ。
ゲイルの後ろに回り込んでピトっと背中に密着する。
彼のまだ自由な両足を、わたしの両足で股を開かせるように抑える。
そのまま彼の衣服の中に両腕を入れ、おへそ周辺を触れるか触れないか辺りでさわさわくすぐる。
「わぁ!ちょっ!やめっ!ふへっあははははは!」
やっぱりコイツこれに弱いな。
男の子なんだから、もっと我慢しないといけないのに。
わたしが鍛えてあげなきゃ……!
「あははっ、まってぇ!オレっ!オレのまけ!まけでいいからぁっはははははは!!!!」
「ふむ、ノルン、コイツ情けないと思う?」
「うん、情けない。おとうさんとは大違い。」
「そっか、メイプル、コイツこのままでいいと思う?」
「だめじゃないかな?」
「そうだよね。」
もうおままごとじゃなくなってる気がするけれど、メイプルが楽しそうだしいっか。
さて、どうやって鍛えるか。
むむむむむ……
むぅ………………
自分の記憶だけじゃダメだ。
にいさまの教えと、ツギハギの人の記憶も探って考えてみよう。
思い出せ…!男の子を強くする方法を……!
はっ!
わかったぞ!
「ノルン!ゲイルの耳にふーって息を吹き掛けて!」
「いいけど、それでゲイル強くなるの?」
「なる!いつか慣れて強くなるはず!」
「そうなんだ、後でおとうさんにもしようかな。」
そう言うと、ノルンはゲイルの右耳に口を近づけ、口をすぼめてふぅーと息を吹き掛けた。
「ふぁっ…!ノ、ノルン!?それやめて!」
「やめないよ、これはねえさんがゲイルを強くするためにやってくれてるんだよ?」
そしてノルンは何度も息を吹き掛けた。
ゲイルはうごうご体を動かすが、抑え込まれて逃げられない。
次は……
「メイプル、ゲイルの足抑えて。太ももに乗っちゃえばいいから。」
「りょうかーい。その後は?」
「足の裏くすぐってあげて。」
「わかりました旦那さま。」
あ、一応まだおままごと続いてたんだ。
メイプルの動きに合わせてわたしも動く。
ゲイルの左腕の抑えがなくなった瞬間にゲイルの左側に移動。
太ももで左腕を挟み込み両腕で背中とお腹を掴む。これでおへそ辺りをくすぐれる。
と、メイプルも準備が終わったようだ。
「ちゃんと我慢してよ!」
「そんなん言ったって…ぐっ!?く……っ、ふっ…!?…ふんぅー……!……ふひっ…!」
「おー頑張れー!ノルンも続けて!」
「わかった。」
「ふへっ!?んっ……!へはっひ!んふふふ!!!」
顔を真っ赤にしながらも必死に笑いを堪えている。
その調子だゲイル!
ノルンと結婚はまだダメだけど、努力する限り可能性はあるよ!
そして、最後のこれが試練だ!
「うひゃあ!!!トマ!?なにしっ!んっ!はぇっ、んむぅ!!!っぐ……ふぅ、ぐっ、はぁん!?」
右耳の中に舌を入れる!
これはツギハギの人の記憶にあったやつだ。
これが書かれた本を読んだ記憶がある。
耳の奥までレロレロチュパチュパ。
耳介に戻ってペロペロレロレロ。
お腹をくすぐるのも忘れない。
「それなに?」
ノルンが困惑しながら聞いてきた。
んーツギハギの人の記憶って言ってもわからないだろうし、どうしよう。
ま、いいか。
「にいさまが言ってたやつ。」
「……そうなんだ。……じゃあそれも後でおとうさんに……」
これもとおさまにやるつもりなのか。
別にやっちゃダメなことじゃないからいいか。
「ひっひゃぁ!、もうっやめっ、やめてぇ!変になる!!!」
「んふふ、まだまだぁ!!!」
そう意気込んでた時、部屋の外からカツカツと音を立て、わたしを呼ぶ人の声が聞こえた。
「トマちゃんいるー?」
この声は、ヴェラさんかな?
恐らく真面目な用事だろう。
ごめんねゲイル、特訓はまた今度だ。
「呼ばれたから行ってくる。ノルンはわたしが戻ってこなかったら宿の方に行ってね。」
ノルンはゲイルを離すと俯きながら言った。
「……あたしも行きたい…………」
「ごめん、重要なやつかもしれないからノルン連れて行けない。」
「………………わかった。」
「わたし、できるだけ早く帰ってくるから。」
そう言って部屋から出た。
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案内された場所は捜索団の倉庫の一つだった。
数人の負傷者が集められている。
「今回の救助で複数の怪我人が出たの。しかも今治癒魔術使える人が出払っていて……トマちゃんに来て貰ったの。ごめんね、遊んでたのに。」
「大丈夫です!怪我人はここにいる方で全員ですか?」
「そうだよ、トマちゃん本当にありがとうね。」
一人一人に無詠唱で
今回は幸い、それで治らないケガの人はいないようだ。
治癒をかける度にお礼を言われる。
照れちゃうなーえへへ。
全員終わったのでヴェラさんに声をかける。
「終わりました!他にやることありませんか?」
「無いよ!あっでももうすぐ団長が帰ってくる……トマちゃんお迎え行く?」
「んーノルン連れてお迎え行きます!」
素早く倉庫から出で託児所へ戻る。
そしてノルンと一緒に夕焼けが水に浮かぶ石橋に着いた。
「ノルンはわたしがいない間何してたの?」
「えっとね、ゲイルはピクピクするだけで動かなくなっちゃったから、メイプルと積み木してた。
それでね!今日はじめて10段作れたんだよ!」
「10!?すごいよノルン!わたし8までしか作れたこと無いのに!」
「えへへ、あっあとね、あたし…………あ!おとうさんだ!!!」
「えっ本当だ!おーーーいとおさまーーー!!!」
腕を大きくブンブン振る。
ノルンもわたしの真似をして小さく手を振る
それに気づいたとおさまが、馬を団員に預けて走って来た。
「ただいま。トマ、ノルン。」
「おかえりなさーい!」
「おかえりなさい!」
2人とも頭をワシャワシャ撫でられ、そしてそのまま持ち上げられた。
おー!力持ち!
いつもより高くなった視界は、とおさまの身長の大きさを実感させる。
「飯食いに行くか!」
「やったー!」
「うん!」
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レストラン『レイジ・ミリス』
商業区にあるレストランで、団員もよく通っている。
ごく普通のレストランだが、客層に町人が多いらしく、物騒な感じがしない。
ついでにドレスコートもない。
椅子に座り3人でテーブルを囲む。
とおさまが頼んだのは肉とシチューとパスタと……色々だ。
ノルンはお子さまプレート的なやつで、米が兎の形をしている。
わたしが頼んだのはパンと魚介類のシチュー。
南の海で取れた魚だ。
美味しい!
「ねえさんは旅のときどんなご飯食べてたの?」
ノルンが口をモグモグ動かしながら聞いてきた。
んー、まだ礼儀作法は……いや、家族の間でそう言うことを考えるのは違うか。
礼儀に気を遣って互いに食事が楽しめなくなるなんて本末転倒だよね。
お姉さんとして教育する意識が強すぎたな。
反省。
「紛争地帯じゃ人から奪った干し肉とか川魚かな。ロキシー先生と出会ってからは町で買った食料をちまちま食べたり森の動物を狩って食べたり……あ、王竜王国の港町で食べた魚のシチューはめちゃくちゃ美味しかった。」
「トマは魚介のシチューが好きなのか?さっき頼んだのもそれだが。」
「言われてみれば、そうかも。」
パンとシチュー、このセットが好きなのか。
「ノルンはリンゴが好きなんだよね?」
「うん!」
「食べ物……いや……残るものの方が……」
「……?どうしたの?」
「や、なんでもないよ。」
うーん。
どうしよっかなープレゼント。
わたしは家族との食事を楽しみながらも、ノルンへのプレゼントに頭を悩ませた。
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宿に戻る。
ノルンと互いに体を拭いて綺麗にする。
冷たいのよりも温かい方がいいとわかってからは、桶に貯めるのはもっぱら混合魔術で作ったお湯だ。
加えて温風を作りノルンの髪を乾かす。
かあさまやわたしと同じ、金髪だ。
目の色は違う、ノルンは緑でわたしは青と灰色。
ノルンを乾かし終わったら自分の髪も乾かす。
そうしてる間にとおさまが帰ってきた。
わたし達は3人で1つのベッドに寝てる。
ちょっとだけ壊れないか心配なのは秘密。
みんな寝る準備が完了したので、ベッドに入る。
蝋燭の灯りが消えて真っ暗だ。
とおさまに抱きつきながら目を瞑っていると、変な声が聞こえた。
「っうおお!?なんだ!?」
とおさまが急に起き上がってノルンを見つめる。
……おねしょ?
「ノルン……なんで耳を舐めたんだ?」
「ねえさんがやってた。」
ぶんっと勢いよくこちらに振り向く。
「お前…それエリナリーゼに教えられたのか?」
んー……ノルンいるし、本当のことは話さない方がいいかな。
無為転変のこと、とおさまは今いっぱいいっぱいだし。
「違う、にいさまが教えてくれた。」
「ルディか……なるほどな。それあんまやるんじゃないぞ。」
これやっちゃダメなやつなの?
わたしは困惑した。
とおさまは納得したように頭を振り、再び寝た。
そして小さく
「ルディが見つかったら、そういうことを根掘り葉掘り聞いてやるか。」
暗闇で見えづらいが、確かにとおさまは、微笑を浮かべながらそう言ったのだ。