ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら 作:りんごりら
トマ視点
鼠を弄り初めてから数日後、にいさまがとうさまに怒られてると思ったら、逆にとおさまが謝ってた。なんでだろう?と思ってとおさまに聞いてみたら、
「父さんが勘違いしちゃったんだ声大きかったか?ごめんな」
「ううん別に」
「そうか…トマ、父さんも間違えることがある。もしお前が悪くないのに父さんが叱ってきたら、遠慮なく言い返してくれ」
「…………なんだか今日のとおさまは難しーこと言ってくるね…」
「難しいけど大事なことだ。人としてな。」
そう言うと、とおさまはわたしの頭をワシャワシャと撫でて部屋の奥へ行った。よくわからない……けど撫でてくれてうれしかった。その後はかあさまと魔術の特訓をしたり、おいしいご飯を食べて寝た。
次の日庭で鼠を探した。ちょっと時間がかかったけど、いた。リーリャが掃除してるから鼠はなかなか見つからない。大事に使おう。わたしは
どこをどう弄れば腕が伸びるのか、翼が生えるのか。結構な時間弄くったら、かあさまに呼ばれた。この魔術もたのしいけど、にいさまやかあさまと同じ魔術も使いたいので、わたしは鼠を誰にも見つからない草の下へ隠し、呼ばれた方へ走っていった。
鼠を弄り初めて結構経った。色々分かったことがある。
・もやもやを変えすぎると鼠は動かなくなる。
・もやもやは鼠の内臓も変えることができる。
・もやもや同士をくっつけると大体反発する。
・もやもやを弄った鼠には命令できる。
・もやもやを弄ることができるのは掌のみ。
・もやもやをうまいこと弄ると、めちゃくちゃ速い鼠ができる。
・わたしのもやもやも弄れる。鼠で掴んだ経験から右手をちょっと伸ばしてみたところ、予想通りに伸び、また直せた。痛くはなかったけど、なんか不思議な感じがした。
これだけのことがわかった。この魔術はたのしいけど、もっと自由に使える気がする。
それににいさまみたいにキラキラじゃない。あっでも火と水の初級魔術が使えるようになった。そのお祝いでかあさまからちっちゃい杖をもらった。かあさまもとおさまもたくさん褒めてくれた!もっと魔術を扱えるようになってから、もやもや操り術について話そう。たまにはにいさまにすごいところを見せたい。
わたしは4歳になった。にいさまは6歳だ。いつも通り鼠を弄ってかあさまと魔術の特訓をしてたら、雨が降ってきた。リーリャはお湯を貯めているらしい。家で本を読んでたらにいさまと緑髪の女の子がびしょびしょの状態でやってきた。
「ただいまー」
「お…おじゃまします…」
「にいさまおかえりー」
「おかえりなさいませ。ルーデウス坊ちゃま……と、お友達の方。お湯の準備ができています。風邪を引かないうちにお二階で体をお拭き下さい。」
にいさま達は二階へ行った。家の床が濡れてしまったちめリーリャが拭いていた。わたしも手伝おう
にいさまが緑髪の女の子を無理やり脱がせたらしい。初めてにいさまにうわーって感情が沸いたかも。でもにいさまはその女の子が男の子と思ってたらしくて、それならしょうがないかと思った。
にいさまも抜けてるところがあるんだとちょっと憧れが小さくなった。けれど、緑髪の女の子と話してみたらにいさまは苛められてるその子を魔術で華麗に助け友達になろうと言ってくれたらしいのだ。
尊敬が深まった。
いつものたのしい日々、かあさまは子供ができたらしくて家でゆっくり過ごしてる。魔術の特訓もお休みだ。
この頃リーリャにちょっとずつダンスやマナーを教えて貰ってる。教えてくれてるときのリーリャはちょっと厳しいけど、おいしいご飯を作ってくれるので好き。
魔術特訓ができないため剣術でもやってみようかなと思い、とおさまにお願いしたら渋い顔をされた。
「トマ、剣術っていつのは手に豆ができるし汗もかくし大変なもんなんだぞ。わかってるのか?」
「うーん…でもやってみたい。というかにいさまはやってるじゃん」
「ルディは…男の子だからな。男って言うのは剣が必要なんだ。心の中にもな。」
「やりたい!とおさまみたいにカッコいい剣を振りたい!」
「おぉ…!カッコいいか……そうか…!でも父さんみたいにカッコよくなるのは努力が必要だぞ」
「お願い…とおさま…わたしに剣をおしえて…お願ーい」
グレイラット流必殺上目遣い。何人もこの魔技から逃れることはできない。にいさまから教えてもらった必殺技だ。
「うーん…じゃあやってみるか?」
「やったー!ありがととおさまー!」
とおさまに抱きついて頭をグリグリする。すると頭をワシャワシャと撫でられた。これが好きなのだ。
庭でわたしとにいさまはとおさまに剣術を習っている。
「ヤッ!ヤッ!ヤアアア!」
わたしは気合いを入れて剣を振る。初めのうちは剣が重く体がいちいち前後に揺れ、たたらを踏む。むぅ。バランスが取れず、体がグラグラする。
「トマ、僕をを見てごらん」
にいさまはそう言うと綺麗に剣を振っていた。特別速い訳ではないが、太刀筋が真っ直ぐだった。流石にいさまだ。
「クッと踏み込んでザンだ!このクッが特に重要だぞ。」
とうさまちょっとなに言ってるかわかんない。けど1つ閃いた。わたしのもやもやを弄って体を強くしたらいいんじゃないの?でもどう弄ろうかな…とりあえず体に魔力流してみようかな。
ルーデウス視点
トマがいきなり強くなった。楽しそうにブンブン剣を振っている。太刀筋は滅茶苦茶だが、確実に俺よりも速い。兄の威厳ピンチ! まずい…まずいぞ…
恐らくトマは魔力で体を強化したんだろう。火の と水の初級魔法ができるようになったのは知っていたが、身体強化までできるなんて!俺まだ出来ないのに!ふとパウロの方を見ると冷や汗をかいていた。そりゃそうだ。剣を握って10分程度の幼女がいきなり強くなったのだ。俺もそうだがパウロにも父の威厳がある。
「あートマ?どうやってそんな剣を振れるようになったんだ?」
「これ?これはね!体に魔力を流したんだよ」
「やっぱりそうか…トマ、僕に魔力の流し方を教えてくれないか?」
「えっにいさまができないの?簡単だよ、体の隅々まで魔力を流し込む感じ」
魔力を体に流し込む...出来ない。体の外へ出すことは簡単なのにな。俺には身体強化の才能がてんで無いらしい
「うーん、難しいな。」
「まぁ気にすんな!父さんだっていっぱい剣を振ってこんなに強くなったんだからな。」
「頑張ります…」
ちくしょう。
妹への敗北感を抱えながら剣を振り続けた。
でもなんというか、平和だな。ゼニスの妊娠で皆がホワホワした雰囲気になってる。笑いの絶えない日常だ。
1ヶ月後、リーリャの妊娠が発覚した。
トマ視点
家族みんなが怖い表情をしている。
かあさまはとおさまを睨み、とおさまは目を伏した、青い顔をしている。
リーリャも悲痛そうな申し訳なさそうな表情で、にいさまは難しそうな顔で家族を見渡している。
かあさまとリーリャの話を聞いてると、何故かリーリャが出ていくことになっている。なんで?みんな仲良よかったじゃん。
「かあさま…リーリャいなくなっちゃうの?」
かあさまはわたしに目を合わさないで言った。
「それは今から決めます。」
「やだ…やだ!!!」
「母さん…さすがに出ていかせるのは…」
「あなたは黙っていなさい!」
かあさまがこんなに怒ってるのは初めて、でも今は怒られることよりリーリャが、みんながいなくなっちゃうことの方が怖い。やだ。もうやだ。目の前が滲んできた。でもわたしになにができるの。わたしができるのはもやもやを弄ることと火と水が出せるだけ。この状況になんの役にも立たない。わたしが絶望したとき、にいさまが話し始めた。
「母様。一度に二人も兄弟が出来たというのに、なんでこんなに重い雰囲気なのですか?」
……?たしかに……なんでこんな感じになってるんだろ?
「お父さん達がやっちゃいけない事をしたからよ」
「そうですか。しかしリーリャは父様に逆らえるのでしょうか?」
「どういう事?」
「僕は知っています。父様はリーリャの弱みを握っています」
「え? 本当なの!?」
え?リーリャはとおさまに逆らえないってこと?
「この間、夜中にトイレに行こうと思ってリーリャの部屋の部屋の前を通ったら、父様が……なんとかを言いふらされたくなかったら大人しく股を開けって言っていました」
「なっ! ルディ、なにをバカな……」
「あなたは黙っていなさい!!!」
うそ……とおさま本当にそんなことしたの?
「リーリャ、今の話は本当?」
「いえ、そんな事実は……」
「そうね、あなたの口からはあったとは言えないわね……」
何が起こってるのかわからない。けどにいさまが話し始めてからかあさまのリーリャに向ける視線が優しくなってる気がする。
「母様。リーリャは悪くないと思います」
「そうね」
「悪いのは父様です」
「…そうね」
「父様が悪いのにリーリャが大変な目にあうのは間違っています」
「……そうね」
とおさまが全部悪い…ってコト?
「僕はシルフィと一緒にいて毎日が楽しいのですが、生まれてくる僕の弟か妹にも、同じぐらいの年齢の友達がいたほうが良いのではないでしょうか」
「………そう、ね」
「トマもリーリャのことを好いています。いきなりいなくなったらショックを受けるでしょう。」
「それに母様。僕にとっては両方とも兄弟です」
「…………わかったわよ。もう、ルディには敵わないわね」
「リーリャ、うちにいなさい。あなたはもう家族よ! 勝手に出ていくのは許さないわ!」
かあさまはそう言うと1人で寝室に戻って…行こうとしてわたしの手を取った。
「……さ、寝ましょう」
寝室に行くと、かあさまはわたしを抱きしめ身を震わせた。
「かあさま…?」
「ごめんね…怖がらせちゃって…」
わたしはにいさまみたいに出来ない。それでも。
「かあさまは…悲しいことがあったんだよね。わたしはかあさまがだいすきだから、どんなことがあっても嫌いにならないよ…だから…」
自分で何を言いたいのかわからなくなってきたとき、ドアがノックされた。かあさまが出ると、そこにはにいさまがいた。にいさまはわたしの方を見て、その後かあさまを見てこう言った。
「母様、トマ。先ほど言ったのは僕の考えた嘘です。
父様のことを嫌いにならないでください。」
うそだったの!? にいさまが考えてることがよくわからない。
「わかってるわよ。私だって、そんな悪い男に恋をしたつもりは無いもの。馬鹿で女に目がないから、いつかはこういう事があると覚悟もしてたの。いきなりだったからびっくりしただけよ」
「………父様は女に目がないのですか?」
「そうね。最近はあまりだけど、昔は見境いがなかったわね。もしかしたら、知らないだけでルディやトマのお兄さんかお姉さんがどこかにいるかもしれないわよ」
かあさまはにいさまの頭を撫でながらこう言った。
「ルディはそんな大人になっちゃダメよ?」
「シルフィちゃんを大事にしなきゃダメよ?」
「いた、痛い、もちろんです、母様、痛いです」
いや掴みながら言った。
翌日、にいさまはとおさまに特別メニューを食らわせられていた。たしかにうそついたのはにいさまだけど、元々はとおさまが悪くない?そんな風に考えながらも、家族をバラバラにさせなかったにいさまへの尊敬は深まるばかりだった。