ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら 作:りんごりら
トマ視点
家族会議から数ヶ月、わたしの剣術はメキメキと成長していった。
とおさまが言うには剣神流初級の強さがあるらしい。けれど反対に水神流の才能はないようで、いくら特訓してもそれらしい動きができない。
わたしは不器用ということがわかった。
あーあ、剣が体にくっついてたらもっと自由に動かせるのにな。
にいさんはあまり剣術が得意ではないようで、わたしはとおさまに習い始めてから数週間でにいさまより強くなった。
にいさんは「トマはすごいなぁ、僕は魔法専門なのかなー」と愚痴っていた。
とおさまは「太刀筋はまだルディの方が綺麗だぞ!剣神流と水神流をバランスよく吸収してるしな」と言って慰めていた。
庭の隅で鼠を弄りながら考える。
もやもや操り術の名前を決めようと思う。
実は今回で名前を決めるようの会は記念すべき10回目。
なかなかいー呼び方が思いつかない。
にいさまに相談したいけど、この
わたしがおもちゃを自由におもしろくウニョウニョさせる姿を見てびっくりするにいさま。そしてこういうのだ。「すごいよトマ!こんな魔術僕も見たことない!家族皆に見せよう!きっとたくさん褒めてくれる。」
思わず興奮しちゃて抱き締めてくるにいさま。
そしたわたしのことをキラキラした目で見つめ頭を撫でてくれるのだ。
えへ、えへへへ。
思わず頬が緩む。
その瞬間、鼠は口を大きく開けそのまま口内を晒した。しかしそれだけに留まらず、尻尾が異常に太く長く伸び始め鼠の口に突っ込まれた。
そのまま体に突き刺さって肛門から尻尾の先が飛び出し、口と肛門から血を垂れ流しながら動かなくなった。
「あー変な風に魂握りつぶしちゃった。でもいっか。まだまだあるし。」
誰にも見つからない草の下にはストックした鼠がたくさんあるのだ。
どんどん成長していくわたしの力で、小さく丈夫で動かないようにする弄り方を覚えて以来、鼠の確保は要らなくなった。
わたしの心は余裕に満ち溢れていた。
新しい家族ができた。わたしに妹ができたのだ!
名前はノルンとアイシャ。めちゃくちゃかわいいー。
2人が生まれたときは大変だった。
かあさまの出産が終わったとき、リーリャも出産も始まってしまったのだ。
お婆さんの指示ににいさまはいち早く行動し、わたしも綺麗な布をあるだけかき集めてお婆さんのもとへ持っていった。
リーリャの子も無事に生まれてホッとしたのを覚えてる。
これからお姉ちゃんとして、にいさまのように立派にやっていこう。
ルーデウス視点
七歳になった。
ゼニスとリーリャは無事出産を終え、新たに二人の妹が出来た。どちらも夜泣き、朝泣き、腹減り泣きの赤ん坊だ。デジャヴを感じる。
さらにトマの誕生日会をやった。ゼニスからはリボンの付いたカチューシャを、パウロからは1本の剣を、そして俺からは……
「トマ!5歳の誕生日おめでとう!」
「ありがとにいさま!わたし今一番しあわせ!」
嬉しいこと言ってくれるぜ。さて、プレゼントを渡さないとな。ポケットから
「僕からはこの人形をあげます!」
「わぁー!すごい、これわたし?魔術で作ったの?うれしー!」
トマはきゃぴきゃぴと体を揺らして喜んだ。何日もかけて作ったのかいがあったってもんだ。
「にいさまだーいすき!」
そう言うとトマは俺に抱きついてきた。デュフ、いいんですか。美幼女にこんなことされちゃって。
前にパウロに迷宮や学校のことについて話された。
迷宮は論外、学校は行った方がいいのか悩むが、財政的にも能力的にも行く理由がなさそうだ。強いて言えば友達作りか?上手いことできりゃいいが、それができないやつもいるんだ。
やっぱり俺はパウロのように女の子に囲まれる生活を目指したい。
最近は俺の部屋でシルフィに勉強を教える事が多くなった。
その関係で、シルフィとトマが顔を合わす機会も増えた。
女子同士話が合うのか結構仲良くなっているらしい。
トマに緑髪への差別意識がなくてよかった。
ちなみにどんな話題を話しているのだろうか。
女子……と言えば化粧か!?でもシルフィもトマも化粧してるところみたこと無いしな。
無難に魔術のことでも話してそうだ。あー寝巻き姿のシルフィとトマの女子会に入って、二人の間に挟まりたい。
俺はシルフィの尻を撫で……トマの頭を嗅ぐのだ。「ルディ、大好き♡」なんて言ってくるシルフィが俺の頬にキスをする。「あー!シル姉だけずるーい!わたしもする!」おいおい困った子猫ちゃん達だぜ。
妄想をしているとシルフィが質問してきた。
「どうして水を温めると水蒸……気? になるの?」
「えっとね、空気は水を溶かすんだ。でも、溶かすためには温度が必要になる。だから、温かくなればなるほど、溶けやすくなるんだ」
今は蒸発、凝固、昇華とそのプロセスについて教えている。
「…………?」
よくわかっていない、という顔をしているが、素直な子だからか、吸収が早い。
シルフィはどんどん魔術を扱えるようになるだろう。
けれど俺はどうだ。
ロキシーと別れた頃と比べて大差ない。
魔術学校へ行った方がいいのだろうか。
そう呟くとシルフィは泣きながら抱き締めて引き留めてきた。
俺は抱き締め返しながら(さすがに尻は触らず)考える。
(俺が村からいなくなれば、シルフィはまた、一人ぼっちになる。魔術でワルガキを退治出来たとしても、友達が出来るわけじゃない。シルフィには俺しかいないのだ。)
俺は魔法の上達より大切なものを見つけた。
同時に、鈍感系主人公をやめ、シルフィとラブラブになることを決めたのだ!!!
「おいルディ……お前に手紙が来てるぞ」
パウロが入ってきたので、俺は自分の『世界』から帰ってきた。
パッとシルフィを離す。いかんいかん、 シルフィは確かに俺のことが好きだが、本当の意味での恋愛感情かどうかまだわからないのだ。
しかし、本心を我慢するのには、限界もある。
今回は耐えられたが、次は耐えられるか……。
手紙はロキシーから送られてきたものだった。
内容はシーローンの王子の家庭教師として雇われたこと、ソイツが変態だということ、俺がどれだけ成長しているか考えていること、そして水王級魔術師を目指すということだ。
俺は焦った。まさに今の状況に釘を刺されるような内容だったからだ。くそう
ロキシーおすすめの魔法大学に行くとしても、シルフィは置いていけない、どうするか……
とりあえず、俺は返信の手紙の最後に、
「P.S.パンツを盗んでごめんなさい」
と書き加えておいた。
トマ視点
みんなで夕食を食べていたとき、にいさまが話し始めた。
「父様。一つワガママを言ってもいいですか?」
「ダメだ」
かあさまがとおさまの頭をパシンと叩く、リーリャも追撃してた。なんの話だろう。
「ルディ。なんでも言いなさい。お父さんがなんとかしてくれるわ」
かあさまが優しい声を上げる。
「ルーデウス坊ちゃまは今までワガママらしい事を言ってはきませんでした。ここは旦那様の威厳と甲斐性が試される瞬間だと思います」
リーリャはそう言った。加えてとおさまは椅子に座り直して威厳あるポーズをした。
「ルディが前置きを置いてまでワガママを言うんだ、とても俺の手には負えないような凄い事に違いない」
「ちがいない」
わたしもポーズを真似して言ってみた。かあさまはクスッと笑い頭を撫でてくれた。きもちー。
撫でられながら話を聞いていると、にいさまはどうやらまほーだいがくに行きたいらしい。
でもとおさまに断られちゃった。
にいさんはとおさまの目を真っ直ぐ見つめ、仕事を斡旋してほしいと言った。
シル姉の分の学費を稼ぐようだ。誰も話さない時間が流れ、わたしはソワソワしながらにいさまへ言葉を投げ掛けた。
「にいさま、どっかにいっちゃうの?」
にいさまは優しく微笑んでから、真剣な表情に戻り言った。
「あぁ、実際行けるかはまだ決まってないが、僕はシルフィと魔法大学へ行きたい。けれどもし行くとしても、12歳まではこの家にいるよ。」
……12、今にいさまが7歳だから、あと5年でいなくなっちゃうんだ。
「そっか……寂しいなぁ……」
にいさまは椅子から降りてわたしの髪を撫で始めた。
「大丈夫、トマの15歳の誕生日には必ず帰ってくるから。もちろん、それ以外の時にもね」
そう話してウインクするにいさまにわたしは心から安心しちゃったのだ。
にいさまは椅子に座り、とおさまを真っ直ぐ見つめた。
「どうでしょうか、僕がシルフィの分の学費を稼げれば、金銭的に大学へ行くことは可能なはずです。それに、もっと魔術を高められるはずです。」
「そうか……なるほどな……」
とおさまは何かを納得したように、うんと頷いた。
「わかった。そういう事なら心当たりを当ってみよう」
かあさまとリーリャは不安そうな顔をしていたけど、とおさまはにいさまの目を見て、そう言った。
「ありがとうございます」
にいさまが礼を言って頭を下げると、夕食が再開された。
1ヶ月後、わたしはリーリャのお仕事を手伝ったりや鼠を弄ったりする日々を過ごしていた。
でも今日はいつもと違って、とおさま曰く今日の剣術はにいさま一人でやるんだそうだ。そのためシル姉のところへ遊びに行った。
「おはよーございます!シル姉いますか!」
すぐにシル姉のかあさまが扉を開け笑顔を見せた。
「トマちゃんですか、シルフィは旦那にお弁当を届けに行きましたよ。もうそろそろ帰ってくると思うので家の中で待っていてください。」
「わかりました!お邪魔しまーす!」
シル姉の家はなんか好きだ。安心感がある。
リーリゃに習ったようにお行儀よく椅子に座っていたら、シル姉とそのとおさま(ロールズというらしい)が帰ってきた。
「ただいま」
「ただいまー」
「おかえりあなた、ケガはない?」
「大丈夫さ」
「あれっ?トマちゃん?今は剣術の練習中じゃないの?」
ロールズさんの後ろからひょこっとシル姉は不思議そうにわたしを見る。
「なんか今日はにいさま一人でやるんだって。試験でもあるのかなー」
「試験?トマちゃん抜きで?なんで?」
「わたし剣神流の剣術ならにいさまに勝ってるから。にいさま秘密の特訓してるのかも」
シル姉とわいわい話している横で、ロールズさんが小さく(そうか…今日からか……)と言っているのを聞いた。しかし気にしなかった。
「魔術教えてよシル姉!わたしまだ中級使えないの」
シル姉は頼られて嬉しそうな顔をした。
「いいよトマちゃん、お母さん私ちょっと出掛けてくるね。」
ロールズさんがすかさず会話に割り込んできた。
「私もついていっていいかい?」
「いいですよー!」
「お父さん来るの?ならルディに習った私の魔術、見せてあげる」
「ありがとう、それじゃいこっか」
わたしは真っ先に扉から出ていった。(お邪魔しましたは言ったよ!)
いつもの木の下へ行こうと考えたとき、わたしはカチューシャを家に忘れたことに気づいた。
「あーわたしカチューシャ忘れたから一回家に戻るね!」
「家に戻るの?ルディいるよね、私も行こうかな」
ロールズさんは何故か焦った様子で私たちに提案してきた。
「あっあー!そうだ私の弓術みない?百発百中だよ?今からやるから見てほしいなー…………」
「大丈夫です!」
そう言うとわたしは家の方向へ走った。
また、シル姉も一緒に来るようだ。ちょっとロールズさんがかわいそう。すぐ戻るからね!
家の近くまで来ると、何故か砂ぼこりが上がっているのを見つけた。いや剣術やってるんだから当然か。ちょっとにいさま見ようかなと庭を覗いた。
「………………え?………」
にいさまが、とおさまに縄で縛られていた。
なんで……剣術の特訓なの…?
わからない
わたしが困惑しているとシル姉が追い付いてきたらしい。
「ルディ!?」
いきなり中級の攻撃魔術を無詠唱でぶっぱなした。
とおさまはそれを難なく受け流した。
ロールズさんも追い付いてシル姉になにか言っている。
わたしは呆然としながらも、とおさまがにいさまを馬車の中へ放り込むのを、見た。
「
足を本で見た兎のような形に変える。魔力を流して体を強化し、馬車目掛けて一直線に跳躍する。
「トマ!?」
とおさまの驚く声が聞こえるが、今は無視する。だって言ってた。とおさまも間違えることがあるんだって。今がそのときでしょ。
にいさまをつかんで馬車から引きずり出す。とにかくここから離れないと。あっでもにいさまも守らなきゃ。
わたしは自分の魂を変形させ、背中に4本の肉の触手を生やした。それらは先端が三つに別れていて、腕のような機能を有している。にいさまをこれで掴む。
「トマ!!!???何が…なんだそれは!?」
とうさまは動揺して動けていない。今だ!!!
兎の脚を限界まで縮め、跳躍すっ───
そのときわたしが最後に見たのは、居合いのように木刀を構えている獣族のお姉さんの姿だった。