ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら 作:りんごりら
トマ視点
3日目の昼。
バザールの近くまで移動できたので、馬車や魔物をしまう。
こんなのに乗ってたら色々怪しまれそうだ。
走ってる最中なら声もかけられないが、町に入るときに馬車のまま突っ込む事は出来ない。
これを引いたままバザールに入ると貴族とか王族、商人だと思われるかもしれない。
面倒事は避けたい。
バザールは中央の湖を店の天幕が囲む、輪の形になっていた。
「予想よりだいぶ早く着いたな」
「2日目は夜でも走らせてたからね。寝心地を犠牲にして」
「犠牲ってほど悪くありませんでしたわよ」
「わたしはフカフカのベッドで寝たいよ」
寝具にはうるさいよわたし。
無為転変で作った良いベッドばっか使ってきたから安い素材のものは気に入らないのだ。
でも兄さまのローブにくるまって寝るのは心地よかった。
「ここで1日休んで食料買って、また明日出発しましょう」
「わかりましたわ。久々の男、滾ってしまいますわ」
気合いが入ってるな。
エリナリーゼの体調が悪くなる前に着けてよかった。
ここから次のバザールまでは歩きで10日くらいかな。
昼夜問わず馬車で進んだら2日ほどかかるだろう。
ご飯や諸々を考えたら3日くらいか。
バザールに近付くにつれ活気のある人々の声が聞こえてきた。
商人達が客を呼び込み魅力を叫び、大声を張り上げているのだ。
冒険者ギルドより騒がしい。
実際にバザールに入ってみると、様々な種類の店が商売に精を出している。
例えば左の店では、皮のついた玉葱やデコボコした大きい芋が木箱に山積みにされ、干した葡萄が紐で括られ店先の天井に吊り下げられている。
右の店では、爪先まで隠れそうな丈の長い被毛の衣服や、麻で織られたであろうサラサラとした服も吊り下げられていた。
店の奥、棚を見れば青や黄色など様々な色の反物がピラミッド上に並べられている。
通路を進めどバリエーションが乏しくなることは無い。
芳しい匂いのする肉串が並べられている露店、干し肉に干し魚干し果物と干物が沢山売られてる店、色とりどりの香辛料を売っている所、店主が果物を輪切りにしてその場で食べられる店もある。
「お、ガラス売ってる」
兄さまの目を引いたのはガラス瓶のようだ。
模様の入った四角いガラス瓶が並べられている。
わたしも何か買おうかな。
服とか、食器とか。
値段はおいくらなんだろう。
「……あ、換金しないと」
すっかり忘れていた。
お金を作るための杖は何本か持ってきた。
「わたしお金に余裕がありそうな店で杖売ってくるね」
「え、お前闘神語わからないだろ?」
「あ、そうだったここベガリットだった。兄さ……姉さま着いてきてくれる?」
「わかった。俺も色々売ってお金を作るよ」
いくらになるかな。
B級の魔物だけど品質は悪くないだろうし、3000シンサくらいになればいいか。
ちなみに一食3シンサだ。
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8000シンサを手に入れた女、トマ・グレイラットです。
やー、見た目に拘った甲斐があったね!
無為転変で作ると継ぎ目が存在しないから上手くやれば美しい見た目の杖を作る事ができる。
加えて杖身や持ち手を骨を練り上げ圧縮して頑丈に作った。
二人も通貨を手に入れたので、ご飯を食べることにした。
適当な店に入り、布に座って注文する。
料理は兄さまおまかせだ。
暫くすると、白くドロッとしたスープと辛いソースがかかった蒸し肉。
肉と野菜の煮込みに小麦を練った粒が入ったもの。
これは別皿で来た煮汁をお好みでかけながら食べるらしい。
どれも食べたことのない香辛料が使われていてとても美味しかった。
特に兄さまの食い付きがよく、スープをおかわりしていた。
お腹を満たしたところで、これから宿を取り食料を買い込む訳なんだけど……
「宿?ねぇよそんなん、好きな所で眠りな」
らしい。
ここら辺の旅人は野宿が基本なのだろうか。
そろそろお風呂入りたかったんだけどな。
入ればいいか、壁と浴槽作ってお湯出して。
今考えると北方大地は良いところだった……
汗かかないし、知り合いいっぱいいたし。
「お風呂入りたいから人の少ないところで寝床作らない?」
「人気のない所は盗みが怖いだろう」
「魔物を潜ませればいい。兄さまだってお風呂入りたいでしょ」
「まあ………そうだけど」
「そうでしょ。エリナリーゼもそれでいい?」
「いいですわ。どのみちわたくしは朝帰りになりそうですし」
わたしの要望が通った。
バザールの中心から離れた場所に移動して、人もほとんどいない所を寝床にする。
小さな天幕が2つ離れた所に見えるくらいの場所だ。
兄さまが魔術でシェルターの様な、かまくら——みたいな土のドームを作る。
わたしは付近に小さな土のドームや岩を作り、その内部に魔物を潜ませた。
これで誰かが来てもすぐにわかる。
ある程度寝床の内装を整えた所で、食料を買いに行こうということになった。
しかしわたしは留守番である。
闘神語を話せる兄さまが行くのは当然で、侮られない為にエリナリーゼも着いていくようだ。
頼もしいね、だが消去法でわたしが残ってしまったよ。
「お風呂作っとこうかな」
寝床の裏側に高めの壁を建て、中に浴槽を作る。
床も土魔術でピカピカの石の様にすることで、お風呂から上がったときに足に土が付くのを防ぐ。
後は混合魔術で作ったお湯を注ぐ。
湯船に手を浸けてみると、少し熱くこの気温には丁度いい温度だった。
ふむ。
今は少し肌寒い気温だけど、夜になるともっと寒くなる。
警備は魔物に任せて先に入っちゃおう。
替えの服とタオルを持ってきて隅に置く。
白黒の外套を壁に掛け、中のワンピースを脱いで畳む。
上下の下着も脱いでワンピースと同じ濡れない位置に置く。
最後に靴下を脱ぐ。
立ったまま真下を見ると控えめな双丘があった。
触るとスベスベして柔らかい。
成長途中って感じの胸だ。
でも、兄さまと比べると小さい。
あれがスイカだとすると、これはミカンだ。
よくよく考えてみなくても、兄さまの胸デカくし過ぎたかもしれない。
しかし、兄さまが女になったらあれくらい大きいはずだし……
兄さまにはデカい胸、略してデカパイが似合うはずだし……
「くしゅん」
ブルっと体が震えてクシャミがでた。
無為転変で体を弄り冷えた状態を治す、なんて事はせず、湯船に入る。
「ふへー……」
温かいお湯がわたしと包んで、冷えた体にじんわりと熱を与えてくれる。
寒すぎて先に体を拭いたり髪を洗ったりなんて出来ないよ。
ほとんど寝転んだ体勢になる。
心地よさに蕩けながら薄目を開けると水面から爪先が見えた。
ひょっとして、兄さまがこんな風にお風呂に浸かったら胸が浮くんじゃなかろうか。
見てみたいな。
すっごく見たい。
言ったら見せてくれるかな。
兄さまの湯船に浮かぶ胸が見たいです!って。
いや、直球に頼むのは捻りがないな。
一緒にお風呂入りませんか!これならどうだ。
…………ダメか。
そもそも兄さまと一緒にお風呂入ったことがないな。
家にいた頃は家族皆体を拭くだけ、風呂にはほとんど入らない。
再会してからも、旅の道中では体を拭くだけ、北方大地じゃ部屋が別々だった。
うーむ。
いい考えが思いつかないな。
もう最悪、自分のでいっか。
「無為転変」
胸がグニャリと膨らみ、兄さまくらいのサイズになった。
「浮いてる…す…すごい…!」
胸がプカプカ浮いてる。
体を揺らすと胸も踊る。
いやデカいな。
兄さま胸デカすぎるよ。
男の時も筋肉で胸少しあったし、兄さまの胸は性別問わずデカパイなのだろうか。
父さまも同じで胸があった。
つまり、グレイラット性は皆デカパイなのでは?
確か昔父さまが言ってた気がする。
グレイラットは皆巨乳好きだって。
それならば、数々の巨乳遺伝子の歴史が積み重なってグレイラットへ蓄積し、グレイラット家は巨乳しか生まれなくなったということか。
エリスさんも年齢にしては胸が大きかった気がする。
この2年会いに行けてない。
4回くらい行こうとしたけれど、冒険者の用事やオルステッドの呼び出しと重なって行けず仕舞いだ。
久しぶりに会いたいな。
あ、ノルンやアイシャも将来巨乳になる可能性が高いのか。
そっちも見てみたいな。
だがノルンとアイシャには頼れる姉でいなくてはならないので、結局胸に飛びつけるのは兄さまだけだ。
わたしが思うがままに妹でいられるのは兄さまだけなのだ。
いや、母さま見つけたら抱きつけるな。
けれど、そういうのじゃない。
母さまに抱きつくのは全幅の信頼と愛情で、兄さまに抱きつくのはそれにちょっと別のものが混じってる気がする。
悪戯心だろうか。
親と兄でわたしが求めるものは違うのだ。
「無為転変ー」
満足したので戻す。
そろそろ髪とか体を洗おう。
「…………うん?トマー帰ってきたぞー!」
おわっ!
もう帰ってきちゃったのか。
「今お風呂入ってるー!……兄さまも入っちゃう?」
「…一人で入る」
フラレてしまった。
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お風呂に入った後は装備や着ていた服の洗濯、乾燥をした。
混合魔術でチョチョチョってしたら一瞬で終わる。
その後は兄さまもお風呂に入って、上がった後魔術で温風を当てながら兄さまの髪を櫛で梳かした。
いい匂いがした。
男の時とは変わってるけれど、兄さまの匂いだ。
落ち着く。
兄さまが男に戻ってもこれやろう。
今まで兄さまにしてこなかったのが不思議なくらいだ。
エリナリーゼはいい人を見つけた様で、先に寝てていいらしい。
わたしは兄さまに抱きついて寝た。
むふふ。
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朝が来た。
兄さまの上から起きるとエリナリーゼもくっついていた。
昨日より艶々している。
たった3日……遺跡の移動を含め4日でも呪いの影響があったのだろう。
これからは昼夜問わず馬車を走らせた方がいいだろうな。
「すぅ……ぐへっ……エリスぅ……ダメ……そん……へへ……」
兄さまもいい夢みて絶好調だ。
よだれを垂らしてにやけてる。
わたしは立ち上がり、白黒の外套を羽織って寝床から出ていく。
周囲の警戒と魔物の回収だ。
体に魔力を、術式にさらに魔力を流し自己変形から他者への変形を可能にする。
「…………誰もいないかな」
ドームと岩から魔物を回収する。
1、2、3、4…………全部生きてるね。
足りなくなったらそこらの魔物を狩ってこよう。
寝床に戻るとエリナリーゼが起きていた。
「おはようございますわ」
「おはよエリナリーゼ。ご飯の支度するからちょっと待っててね」
「わたくしも手伝いますわよ」
エリナリーゼと二人で朝ごはん作る。
テキパキと鍋に食材と水を入れて火にかける。
ドームの中が暑くなってきたので杖を取り出し冷やす。
バーニングプレイスの応用だけど……結構難しいな。
少なくとも片手間で出来るものではない。
兄さま出力も技術もとてつもない。
そういえばエリナリーゼはいつ帰ってきたんだろう。
「昨日は何時帰ってきたの?」
「日の昇り始めくらいですわね」
まだ寝てる頃だ。
そんな時間までしてたのか……それとも寝てたのかな。
「昨日はどうだったの?」
「お聞きになりたいですの?」
「うん」
「うふふ、今回の殿方はヒト族で長身の方でしたわ。言葉は分からなくてもボディタッチで誘う事はできますの。チラリと服をずらして相手の手をそこに当てれば、どんな鈍感な方でも察してくれますわ」
そうだろうか。
まぁ魂を見ればいいか。
「ふむふむ」
「合意を得たらその後は身を任せますのよ。ただしそういった事が初めて、また不慣れな方の場合はこっちからリードいたしますわ」
「ほうほう」
「場所は大体宿で行いますわ。それから…………いや、ここからはルーデウスに怒られてしまいますわね」
なんと、止められてしまった。
チャイルドフィルターがかかっている。
しかしエリナリーゼ熟練の技術と興味深い話は聞けたので満足だ。
「ん、煮えたね」
鍋がコトコト煮えて朝食が完成した。
体を揺すって兄さまを起こす。
「兄さまー起きてー」
「…ふへ……はげし…………エリ……ぅ」
「起きてー!」
「うおお!?」
無事飛び起きたことだし、朝食を頂こう。
買ったばかりの香辛料をいくつか加えたが、これが美味しい。
北方大地にはない味だ。
北方大地は高カロリーな品が多かったが、ベガリット大陸では香辛料を使うものが多い。
皆でご飯を食べ終えたら、装備や持ち物の点検をしてラパンへ向かって歩きだした。
人気のない場所まできたら、馬車を作って乗り込んだ。
後バザールには5回程度寄るだろう。
しかし、当初予想していた2ヶ月の旅は大幅に短縮できそうだ。