ルーデウスに無為転変みたいなのを使える妹が増えたら 作:りんごりら
トマ視点
6歳になった。シル姉は8歳。アイシャとノルンは2歳だ。
といっても生活はあんまり変わってない。剣の特訓に魔術の特訓、礼儀作法に家の手伝い。唯一変わったのは、鼠を弄らなくなったことだ。
剣術は剣神流中級、北神流中級になった。(とおさまがそう言った)
とおさまは北神流を教えることをだいぶ嫌がったけど、上目遣いすれば一発だ。わたしに一番あってる流派な気がする。
水神流は最近初級になった。いや、初級になりかけってところだ。全く才能がない。
攻撃魔術は火・水・風・土全部初級に!でも無詠唱では使えたり使えなかったり……風と土に関してはシル姉に教えてもらった。無詠唱を使えるようになったのはシル姉のおかげだ。シル姉は無詠唱で魔術を発動できる。わたしはシル姉に頼み込んで教えてもらったのだ。
治癒魔術は治療魔術を初級に!しかも無詠唱で!
治療魔術の感覚は、無為転変に似ている。無為転変は
生物を弄ることに関してわたしの右に出るものはいない……と調子に乗っていたらかあさまは治療魔術を中級まで扱えるらしいのだ。わたしの鼻は一瞬でへし折られた。
ここで一つ、わたしには悩みがある。それは友達が少ないということだ。
シル姉のことを悪く言うつもりは全く無いが、シル姉の周りにはあまり人が寄ってこない。
よってシル姉とよく遊ぶわたしにも人が寄ってこない。
このままじゃダメだ。
にいさまも言ってた、「友達は作ったほうがいいぞ。でももし嫌なこと言ってきたやつがいたらにーさまに言ってみなさい。
麦畑に挟まれた一本の道を歩いていく。
びゅうびゅうと吹く強めの風が麦とわたしの金髪を揺らしてる。遠くの方にはうっすら赤竜山脈が見えて、巨大な雲がゆっくり動いてる。
たぶん、世界はわたしが思うよりとても広く、雄大で、壮大で、偉大なのだろう。
だからわたしの悩みなんて、ちっぽけなものなのだ。取るに足らないことなのだ。気にしなくていいことなのだ。
「…………まったく友達ができない……。」
まず声のかけ方がわからない。
3人組で遊んでる男の子がいたので様子を伺っていたが、色々考えているうちにいつの間にか消えていた。
1人でいた男の子にはとりあえず声をかけようとしたけど、その瞬間にその子の友達がやってきた。男の子は一瞬こっちを見て不思議そうな顔をしていた。なんだか恥ずかしくなって逃げた。
2人で歩いてる男の子と女の子がいたけど、見るからにイチャイチャしていたし、年齢が上過ぎた。
次失敗したら諦めよう……とぼとぼ道の端っこを歩いていると2人で遊んでいる女の子を見つけた。そして閃いた。声のかけ方がわからないのは、他の子が何の話題を話しているかわからないかだ。そう考えたわたしは茂みに隠れ会話の内容を盗み聞きした。
「メグちゃんは誰が好きなの……?」
「えー……ハルト君かな!優しくて、私にお花をくれたの!」
「ふーん……じゃあソマル君は?」
「ないかな」
「そっか……」
「なんか私ばっかり話してるなー、ハナちゃんは好きな人いるの?」
「えぇー恥ずかしいよー……」
なるほど、好きな人を教え合うことで仲良くなれるってことね。そうと決まれば!
「こんにちゅちゃ!」
噛んだ。恥ずかしい!!!
「えっ」
「わぁ!びっくりしたー!」
ちょっと赤くなった顔でわたしは話す。
「わたしの好きな人はにいさまです何故なら綺麗で自由な魔術が扱えて頭もすっごくいいからですあなた達も好きな人を教えてくれませんか!」
駄目だめっちゃ早口になった今すぐ撤退し作戦を練り直そう。真っ赤な顔をしながら踵を返そうとしたとき、女の子の一人が小さく声を上げた。
「……私の好きな人は、実は……ソマル君なの……。」
「えっあんなやつが!?」
「うん……もっと小さい頃に失くしたペンダントを見つけてくれたんだ。それっきり話せて無いけど……」
「へーあんなやつにも良いとこあるのか」
やばい。ソマルが誰かわからない。やはり一の矢のみで仲良くなるのは無理なのか……。
「それで……えっと……あなたの名前は?」
「あぅえっ!?わたし!?わたしの名前はトマ・グレイラットです!」
びっくりした。いきなり名前聞かれたのかと思った。いや聞かれたんだ。
「そっか……私はハナ、よろしくね」
「私はメグ!メグだよ!」
「おぉー…………よろしくね!。」
なんだか雰囲気いい子達だなぁ……ハナちゃんは静かでゆったりとした感じ。長めの灰色の髪は目元まで隠していて顔はよく見えない。
メグちゃんは茶髪の短い髪で女の子だ。反応がいちいち大げさで身振り手振り体を動かす。
「トマちゃんは……いつもあの木の下で遊んでる子だよね……緑髪の人と……」
「げぇーホントに!?大丈夫?変な術で苛められてない?」
「……!?苛められてないよ!?シル姉はそんなことしない!!!」
なんでそんなこと言うんだろう。シル姉は優しくて頑張り屋で、わたしに魔術を教えてくれる尊敬する人なのに!
「まずシル姉は優しいの!わたしが魔術や礼儀作法でわからないところがあったらすぐに教えてくれるし、わたしが手伝いを失敗しちゃったときも慰めてくれた。次にシル姉は頑張り屋さんなの!お仕事に行ったにいさまに負けないくらいね!最近は一緒に礼儀作法の勉強もし始めたしそこで叱られてもめげずに練習してる。さらにシル姉には好きな人がいて、それがわたしのにいさ───」
「わぁーちょっと待って待って!!!」
「う……まって……落ち着いて…………」
「いやまだまだ喋りたりないよ!シル姉は本当にすごくて──」
「わかったわかった!そのシル姉?ってやつは悪いやつじゃないのね。」
「うん………。」
よかった、わかってくれた。それにしても緑髪ってだけでこんないい子達も差別するのか……額に赤い宝石があるわけでもないのにな。なんて考えているとぽつぽつと雨が降ってきた。
「げっ雨だ!」
「帰ろう……。」
「あ…………」
2人は走り去っていく………………友達、できなかったな…………。そうわたしが落ち込んでいたときだった。
「トマァー!また明日ね!!!」
「また…………。」
メグは大きく手を振り笑顔でまた明日と言った。
ハナは遠慮がちに、しかしにへらと笑って手を振った。わたしは一瞬呆気にとられ固まってしまったが、返事をする。
「……!また明日!!!また明日ね!!!」
家に帰った頃には服がびちゃびちゃだった。けれどわたしの心は今、晴れやかな達成感とうれしさでいっぱいだった。